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米紙幣偽造の歴史、ハイテク新札導入も繰り返すか米紙幣偽造の歴史スティーブン・ミーム・ジョージア大学史学部準教授
http://www.asyura2.com/10/hasan67/msg/883.html
投稿者 gikou89 日時 2010 年 5 月 12 日 00:15:27: xbuVR8gI6Txyk
 

(回答先: 苦戦が続く大手スーパーの給料比較ダイエーは大根を売れば売るほど赤字に 投稿者 gikou89 日時 2010 年 5 月 12 日 00:12:43)

http://jp.wsj.com/Life-Style/node_56613

1690年、マサチューセッツ湾植民地(Massachusetts Bay Colony)は西洋の政府として初の紙幣を発行した。その後まもなく最初の偽造犯が現れ た。当局は偽造犯との長期戦に取り組み、「耳切りの刑」や絞首刑など、あらゆる刑罰で偽造犯罪を抑止しようと試みた。植民地時代の多くの紙幣には「紙幣偽造は死刑」との警告文が書かれるようになった。

今月、ガイトナー財務長官とバーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長が出席する式典で、21世紀の偽造犯を悩ますために考案されたハイテク100ドル札が発表された。色は、ほかの単位の紙幣にすでに採用されているパステル調で、影のようにぼんやりとみえる羽ペンと赤褐色のインクつぼが描かれている。つぼには鐘が描かれており、見る角度によって現れたり消えたりする。最も驚かされるのは、紙幣の中央に紫色の帯が走り、紙幣を色々な方向に傾けると数字の「100」と「自由の鐘」がキラキラと動いて見えることだ。

 世界の100ドル紙幣の流通額は5000億ドル(約47兆円)を軽く上回る。このため、現行の100ドル札には紙幣偽造犯の熱い視線が注がれてきた。偽造犯の大半はハイテク技術に習熟した犯罪組織だ。ただ、意見が分かれるところではあるものの、本物そっくりで危険な偽札、いわゆる「スーパーノート」と北朝鮮政府の関係を示す証拠も数多くある。ほかでもないこの2つの脅威が、最新の100ドル札に驚くべき改定をもたらしたといえる。

 歴史に照らしてみると、今回の改定が最後になることはない。米国では、紙幣はずっと同じ道をたどってきた。新しいデザイン、新札の流通、そして新しい偽札。

 おそらく、ベンジャミン・フランクリンが最も大きな単位のドル札に描かれるのは理にかなっている。彼は、米国初の通貨、つまりアメリカ革命の間、戦費調達を目的に発行された「コンチネンタル・ドル」をデザインした。フランクリンは自分の肖像をデザインに使用しなかった。彼が使用したのは、彼自身が数十年前に考案した偽造防止のための神秘的な工夫だった。

 これは、「ネイチャープリント」と呼ばれるもので、一枚もしくは複数の葉っぱの絵で構成されている。本物そっくりであったことに加え、それを作るもっともな理由もあった。フランクリンは以前、葉の表面の石こう鋳型をつくる方法を考案しており、その技術を使って鉛のプレート型を作り、紙幣の印刷に用いたと思われる。葉脈は複雑に絡み合い、太さも異なるため、葉は一枚ずつ異なる。このことから、出来上がった紙幣は極めて偽造困難なものとなった。

 この新たなドル札を攻撃した偽造集団は金が目的ではなかった。彼らの目的は革命戦争の努力を弱めることで、そのための出費は惜しまなかった。1776年、英国軍がニューヨークを占領。偽造者らは英当局の監督の下で大量の紙幣を生産し始めた。彼らの店では客が破格の安値で偽札を購入することができ、事情を知らない革命家の手に大量の偽札が渡った。

 英国人が戦争の武器として贋金作りを考案したわけではない。敵の通貨の偽造は昔からある戦術のひとつだ。それでもなお、米国の愛国者たちは、偽札などまったくフェアプレーでないと考えていた。ジョージ・ワシントンは私的な書簡の中で、「我々を陥れるための敵方の謀略で、試されていないものはない」と憤慨をあらわにしている。英国出身の思想家トマス・ペインは激怒し、公開書簡を英国の司令官に送り、ドル偽造の決定を非難した。「貴殿は新たな“罪悪”を軍の目録に加えた。この考案が貴殿のものとなったのは、おそらく、偽造を思いつくほど卑劣な将軍がこれまでおられなかったからだ」と述べている。

 英国の偽札の質によりドルの信用に傷がついたものの、ドル下落の責めを真に負うべきは、戦費調達のために紙幣を大量発行した革命家達だった。不安定な政府への信頼を背景にドル紙幣の価値は下落、結局ほとんど無価値になった。この経験が、偽札・本物に関らず、紙幣に対する不安を米国人に抱かせることとなった。

 米国憲法はその不安の産物だった。憲法の金融に関する条文は州による硬貨・紙幣の発行を禁止、その一方で連邦政府には「通貨の製造」を認めた。連邦政府による「紙幣」の発行の是非については、憲法は触れなかった。

 それでも、州議会が免許を与えた民間銀行のおかげで、紙幣の使用は広範になった。銀行は、通貨の単位やデザインを決めて独自の紙幣を発行し始めた。何千種類もの「銀行券」が流通し、それぞれがすべて異なるデザインを採用。ベンジャミン・フランクリンやほかの「建国の祖」が紙幣を飾ることもあったが、無名の政治家、ギリシャ・ローマの神々、奴隷、インディアンや日常生活の様子など、ありとあらゆる人物(事物)が描かれた。少し変わったところでは、サンタクロースやウミヘビ、暴れ回るシロクマなども描かれた。

 このことで、偽札は言うまでもなく、本物の紙幣を憶えることはほぼ不可能となり、19世紀に入って最初の数十年は、ある歴史家が言うところの「偽札の黄金時代」となった。この時代、何百万ドルもの偽札が市中に横行した。これらの偽造の背後にいる黒幕は、国家の妨害工作ではなく、金を稼ぐために偽札を作った。

 偽造犯達の多くは庶民の「英雄」となり、偽札の製造、流通、販売のための全国的な犯罪網を組織した。当時は有効な警察力がなかったことから、偽札作りで刑罰を受けることはなかった。偽造犯起訴に対する連邦政府の関心はほぼ皆無で、起訴に必要な資金・人的資源もなかった。ある新聞社の編集長は1818年にこう嘆いている。「偽造犯と偽札があまりに横行しているため、偽造は罪という意識が人々から失われたようだ」。

 銀行も反撃に出た。特殊インクや透かし模様など、現行の偽造防止技術の多くを含む、より精緻な紙幣の製造を委託した。彫刻技師達も、これまで以上に精緻で複雑な模倣不可能な模様を作り出そうとした。しかし、偽造犯達は、いかなる技術的な障害も乗り越えようと努めた。

 新技術とは、諸刃の剣になりかねないものだ。21世紀のデジタル技術と同様、写真の発明が偽造に新たな展望を開いた。1850年代まで、銀行券のインクは黒一色だった。しかし、本物そっくりの偽造の氾濫(はんらん)が新たな色彩のインクの創出を後押しし、三酸化クロムを使用した新種の緑のインクが1857年に登場した。このインクで印刷された繊細な緑色の線は、当時の白黒写真では再現できなかった。写真に撮ると、繊細な緑色の線は黒いかたまりに見えてしまった。

 緑のインク登場の4年後には、南北戦争がぼっ発した。資金不足に陥った北部諸州は、紙幣発行に関する憲法上の縛りをあっけなく素通りし、この「パテント・グリーン・ティント」を使った新たな国家紙幣を発行した。この紙幣は「グリーンバックス」の呼び名で知られるようになる。同紙幣はまもなく、連邦免許と通貨発行権を付与された銀行が発行した、同じ色調の紙幣と並んで流通した。

 一方、南部は独自の通貨を発行した。熟練彫刻師と必要物資が不足していたため、同通貨「グレイバック」の見映えは悪く、戦争が進むにつれて価値が下がり、やがて「コンチネンタル・ドル」と同じ運命をたどった。

 南北戦争は米国の貨幣および偽札の歴史における重大な転機となった。旧来の地域の民間通貨システムは去り、新たな国家紙幣が生まれた。それでも偽造者は消えず、彼らは早速、連邦紙幣の模倣を始めた。政府がこれを愉快に思うわけはない。南北戦争の終わり頃、「偽造を行った者には、法定刑として、最長で禁固15年と重労働か1000ドルの罰金、あるいはその両方が科せられる」との文面を盛り込んだ新たな紙幣も登場した。

 しかし、このような文面も、偽造撲滅へ向けた運動がなければ無意味な脅迫に等しかった。撲滅の任務を担当したのは新設の国家警察組織、「シークレット・サービス」だった。それまでシークレット・サービスは大統領の護衛に当たっていたが、ここにきて国内の偽造通貨経済を一掃することで有名になったのである。南北戦争後に始まり、1890年代までにほぼ完了したこの撲滅運動について、ジャーナリストらは競って誇大記事を書いた。1901年のある新聞は、シークレット・サービスについて興奮気味にこう伝えている。「静寂な不夜城である政府の一部門。犯罪者を捕らえる時以外、決して姿を現さない。犯罪と犯罪者が彼らの脳裏から離れることは片時もない」。

 20世紀初頭までには、米国通貨の偽造を予防することが比較的に容易になっていた。また、1913年の連邦準備制度創設を経て、同通貨はより統一的で簡素になっていた。ベンジャミン・フランクリンが100ドル札のデビューを飾り、ドルは重要性を増し、ついには、英国ポンドに代わって世界の主軸通貨の座に就いた。残念なことに、この「出世」に外国政府の注目が集まった。「真似は最も正直なお世辞」との古いことわざが物語るように、ヨシフ・スターリンは発足間もない彼の諜報機関にドルの偽造を命じた。


スターリンの命令は、表向きは資本主義国家への攻撃のためだっただろうが、実のところ、ソビエト連邦はハードカレンシーがどうしても必要だったという事情があった。

 ソビエトから流入した100ドル紙幣は並外れて高品質で、当初はシークレット・サービスを困惑させた。しかし、その高品質も、撲滅を指揮した人々のプロ精神にはかなわず、ベルリンで始まった一連の逮捕劇の後、偽造は失敗に終わった。その後まもなく、ソビエトは国際的な立場を考慮して偽造事業を中止した。

 第二次世界大戦中、ナチスはソビエトよりもはるかに首尾よく通貨の偽造をなし遂げた。ナチスは、ザクセンハウゼンの強制収容所で彫刻技師などの職工を集め、英ポンドと米ドルの驚くほど精巧な偽札を作るためのチームを作った。しかし、ポンドの偽札の流通量は限られたため、英国への打撃は少なかった。ドルの偽造事業も戦争が進むにつれ、とん挫した。

 大戦後、精巧なドルの偽札が大量に流通することはなく、数十年間、100ドル紙幣の外見が変わることはほぼなかった。1980年代後半、いわゆる「スーパーノート」が登場。極めて精緻に作られた100ドル札のスーパーノート(一部には50ドル札も発見された)は捜査官らを困惑させた。スーパーノートを所持した北朝鮮の外交官が頻繁に逮捕されるのを見て、多くの人々が秘密主義の北朝鮮の政治体制に疑念を抱いた。ジョージ・W・ブッシュ大統領時代には、米国はドル偽造で北朝鮮を公式に提訴した。この方針はオバマ政権も基本的には変えてはいない。

 スーパーノートがどこで製造されたかは別として、この偽札は数十年ぶりとなる大規模なドル札の改定を後押しした。最初の大規模なドル紙幣の改定は、1996年に導入された新100ドル札。このドル札には、人物の顔が大きく描かれ、透かし模様が入り、色が変わるインクが用いられた。この時以来、紙幣には人物が大きく描かれることが標準となった。ただ、今回発表された100ドル紙幣はすべてがまったく異なる。

 デザイン改定の中核をなすのは、紙幣を垂直に走る紫色の帯だ。この帯は、数字の「100」と「自由の鐘」と思われる絵の形をした何十万もの非常に小さなマイクロレンズで覆われている。複雑な光学技術により、マイクロレンズが重なって、ひとつのまとまった模様を作り出す。紙幣を傾けると帯がアクティブとなり、まるで模様が動いているかのような錯覚を作り出す。

 この技術は「モーション」と呼ばれている。同技術の特許を保有する製紙会社クレインによると、モーションは「次世代の偽造防止技術」だという。モーションは、色が変わるインクなど、第一世代の偽造防止技術とは異なり、ナイトクラブのような薄暗い場所でも役目を果たすことができる。

 新100ドル札はハイテクの極みだ。モーションの帯、透かし模様、偽造防止糸、マイクロ印刷、色が変わる「100」の文字とインクつぼの内側の鐘の絵、これらすべての偽造防止技術があれば、その効果は数え切れないほど鍵とチェーンを備えたマンションのドアに匹敵するほどだ。新ドル札は「安全」を声高に叫んでいる。しかし、これだけ多くの「安全装置」があるということは、偽造犯が昔の「安全装置」をあまりにも軽々とクリアしてきたことを意味するのではないか。

 クレイン社は、「モーションが巧妙な偽造を防御する素晴らしいバリアとなる」としている。おそらくそうだろう。ただ、今も世界のどこかで、偽造犯達が「暗号」を解くべく新札の研究に打ち込んでいることは確かだ。そして、いつか暗号は破られる。

 (スティーブン・ミーム氏はジョージア大学の史学部準教授で、著書に「貨幣偽造者の国(A Nation of Counterfeiters)」がある。)
 

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