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〈衝撃リポート〉北海道大学教授らの徹底調査で判明した戦慄の真実 週刊ポスト
韓国農民にあてがわれた統一教会・合同結婚式日本人妻の「SEX地獄」
見知らぬ土地での生活、貧困、差別に「故郷に帰りたい……」と
「夫は失業していることが多い。月に給料が30万ウォン(約2万3000円)しかない時があります」
──統一教会の合同結婚式で韓国に渡った日本人妻の多くが、貧しい農村で苦しい生活をしている実態が初めて明らかになった。海の向こうから届いた彼女たちの悲痛な声。
日本人は「天の精鋭部隊」
白いウエディングドレスを着た女性と黒いスーツを着た男性が何万人も一堂に会し、規則正しく交互に並んで高らかに万歳三唱。会場のそこかしこから爆竹が鳴り響き、紙吹雪が舞えば、合同結婚式はクライマックスを迎える。信者にとって、一世一代の晴れ舞台。だが、教祖によって決められた伴侶の国籍次第で、その後の生活が大きく左右されることとなる──。
今から10数年前、「世界基督教統一神霊協会」(以下、統一教会)が行なう信者同士の婚礼イベント・合同結婚式の模様が盛んに報じられたことがあった。
特に世間を騒がせたのが、歌手の桜田淳子が会社役員と結婚した92年の合同結婚式。新体操のロサンゼルス五輪代表の山崎浩子ら著名人が参加したため、報道合戦は過熟した(山崎は翌年教団を脱会し結婚も解消)。
現在は当時ほど注目を集めることはなくなったが、今も合同結婚式は毎年のように開催されている。
桜田と山崎の結婚相手はともに日本人だったため、イメージが湧きづらいかもしれないが、実は日本人の女性信者の結婚相手としてマッチング(結婚相手としあてがて宛われること)されるのは、韓国人男性であるケースが圧倒的に多い。統一教会の機関紙などによれば、これまでの合同結婚式で韓国人男性と結婚し、海を渡った
日本人妻は約7000人。
しかも、多くの妻がソウルや釜山といった都市部ではなく、地方の貧しい農村で暮らしているのだ。
そんな彼女たちの生活実態に光を当てた本がこの3月に出版された。『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』(北海道大学出版会刊)と題された同著は600nを超え、その内容は実に衝撃的だ。
著者の櫻井義秀・北海道大学教授が語る。
「韓国の農村部は長らく、深刻な嫁不足に悩んでいる。
その対策として送り込まれたのが、合同結婚式に参加した日本人妻なのです。統一教会では在韓日本人信者を“特別な使命を持った天の精鋭部隊”と称しているが、この“特別な使命”とは、韓国に奉仕すること。韓国に嫁いだ日本人女性信者の多くが貧しい環境のなかで厳しい生活を送っている。
私たちの調査によって、合同結婚式にはこうした側面があったことがわかったのです」
1954年、韓国でキリスト教徒だった文鮮明氏によって創設された統一教会は日本で布教を開始してから、昨年で50年を迎えた。
聖書を独自に解釈した『原理講論』を教典とする。
全国に114の教会を持ち、国内の信者数は46万人超とされる。
不安をあおり高額な商品を売る、いわゆる霊感商法が度々取り沙汰されている。
09年には信者が霊感商法をしていた疑いがもたれ、特定商取引法違反の容疑で東京・渋谷や和歌山の教会が関係先として家宅捜索されている。
統一教会には「祝福」なる言葉がある。これは合同結婚式に参加し、教祖が決めた信者同士で結ばれる結婚を指す言葉で、日本人の参加は68年頃から確認されており、95年には2万4000人、00年には9500人が参加したとされる。
同じ宗教を信じる者同士とはいえ、見ず知らずの異性と結婚する「祝福」は強烈な信仰心を要する。それゆえ、元の家族と断絶するなど、トラブルの元となることも少なくない。 ましてそれが、国際結婚となればなおさらである。海を渡り、韓国へ嫁いだ日本人妻たちは、どんな生活を送ったのか。
「信者になれば結婚できる」
同書では櫻井教授の共著者として、中西尋子・関西学院大学非常勤講師も執筆している。
中西氏は韓国で暮らす日本人女性信者に聞き取り調査を行なっており、その過程で訪れた地方のある農村では、30人近くいた日本人妻全員が統一教会の女性信者という経験をしたという。
中西氏は、結婚によって韓国に渡った7000人の日本人妻のうち、約60%にあたる4000人ほどが地方に暮らしていると見ている。
なぜ、都市部ではなく地方に偏るのか。
(写真あり)
マッチングの様子。教祖である文鮮明氏が決定する
教団が関連団体を使って」結婚難にあえぐ農村部の男性に「信者になれば、日本人と結婚できますよ」と、勧誘していたのだという。
「ある地方の村の教会には『純潔な結婚 真の結婚』というビラが置かれていました。そこには『日本、タイ、モンゴル、フィリピン等国際結婚も可能』と書かれ、統一教会の傘下団体の名前が記されていた。“日本人女性信者との結婚”が布教のツールになっていたのです。しかし、その誘いに乗ってくる韓国人男性の多くは結婚目的で入信したに過ぎず、統一教会を結婚相談所くらいにしか思っていない。日本人女性は熱心な信者ですから、そのズレが後に様々な問題を生むことになるのです」(中西氏)
例えば、中西氏が聞き取り調査したAさんのケース。現在はソウルからバスで4時間もかかる田園地域で暮らしているが、最初に結婚相手の写真を見た時、「私の人生これで終わった」
と思った。まったく好みとは違うルックスだったという。 結婚相手を決めるマッチングは、写真や書類を元に“霊的な根拠の下”で教団によって判断される。性格の不一致や好みのタイプではないという事態は日常茶飯事のようだ。
合同結婚式後、すぐに夫婦生活が始まるわけではない。韓国での暮らしに慣れるため、まずは夫の地元にある教会に住み込むことから始まる。時には数か月に及ぶ住み込みを経た後に夫婦生活を送ることになるのだが、日本人女性の悩みの中で、もっとも多かったのが性に関するものだった。
「若い頃に入信した日本人女性の場合は、結婚まで純潔を保っている人も多い。そして夫婦生活を始めるにあたって行なわれる『3日行事』で初めて肉体関係を結ぶのです」(櫻井氏)
『3日行事』とは、教祖の文氏と彼の妻の写真を前に、祈蒔したり塩を撒きながら3日間連続でセックスをするというもの。
初日と2日目は女性上位なのだが、3日目は男性上位と体位が決まっている。もし体位や祈祷の言葉を間違うと天の許しを受けるための講習会に参加し、もう一度初日からやり直さなければいけない。
先のAさんの場合は、この3日行事が終わった後も大変だった。無職の夫は一日中家にいるので昼間から体を求めてくる。
「部屋のカギを閉めて、夫から逃げました」
と純朴なAさんはいうが、夫にとっては待ちに待った花嫁であり、無理のないことなのかもしれない。
■韓国で急増する国際結婚
90年には韓国国内の結婚件数のうち1.2%だった国際結婚が、05年には13.6%に急増。農村地帯が多い全羅南道では22・68%と4組に1組の割合となっている。
(写真あり)
韓国の農村に貼られていた結婚勧誘のビラ
(『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』より)
舅が「教科書問題をどう思うか?」
日本人妻の悩みは尽きない。経済的な苦しみもまた彼女たちを襲う。
中西氏が説明する。
「韓国は超学歴社会なのですが、農村部の男性は中学校卒という人も珍しくはない。そうなると自ずと仕事も制限されます。『夫は失業しているのでサラ金に借金をしている』『月給がたったの30万ウォン(約2万3000円)しかない』と嘆く声もありました。
妻自身が働くしかなく、タオル工場でフルタイムの仕事をして家計を助けている女性もいた」
それでも彼女たちは離婚という選択を取りたがらない。逆に、現地の日本人妻同士が集まり、「自分たちはよくやっている」とお互いを励まし合っているぐらいだという。彼女たちの支えとなっているのは、統一教会の経典だ。
『原理講論』の中にアダムとエバの話がある。アダムは神の禁を破り悪魔と情を交わしたエバを許すが、神は2人もろとも楽園から地上に追放する。そして彼らの子孫である全人類に悪魔の汚れが及ぶ──。櫻井氏の解説。
「これが、そのまま韓日の関係にも用いられている。
朝鮮侵略の歴史がある日本は『エバ国家』として現代における奉仕の義務があり、『蕩滅(贖罪)』が課せられています。対して韓国は『アダム国家』という奉仕される立場にある」
どんなにつらい結婚生活であっても、この考えがあるため彼女たちは耐え忍んでいるのだ。
在韓日本人信者向けの機関紙『本郷人』には、信者たちの結婚生活における悩みが多数掲載されている。
嫁姑問題などもあるが、日本とは趣が異なる。
〈舅の最初の言葉が「教科書問題をどう思うか?」だった。予想外の言葉だったが、「私の父母の時代のことですが、私が嫁いだら過去の過ちを償わせてもらいます」と答えた) 〈兄弟を日本人に殺されている姑からは、とにかぐイジメられている〉
反日感情が強い世代からの圧迫は想像以上のようだ。かといって、夫が守ってくれる訳でもない。
(夫には仕事がなく、日本から持ってきたお金でやりくりしていたが、それが底をついた。以後、朝4時に起きて『世界日報』(※統一教会の関連会社が発行している新聞)の配達をして生計を立てている)
韓国での苦しい生活が罪の清算だと受け止めていると同時に、離婚や脱会が罪を増やす行為だと教えられていることも、彼女たちの我慢の原動力となっている。
櫻井氏がいう。
「一度、統一教会の教えである原理を知った者が、それを捨てることは原理を知らない者以上に罪深いこと。霊界に行ってもなお永遠に責め続けられる、という考えを植え込まれているんです。賠罪と恐怖で支配されているといってもいい」
暴力や生活苦から逃げ出す妻も
しかし、我慢の限界に達し、離婚に踏み切る女性もいる。「どうしても結婚生活に耐えられず、離婚して日本に戻ってきた女性信者がいました。親や周囲の人の説得もあり、教義への矛盾を感じた彼女は、ふと横にいる子供を見て、『愛のない相手との間に生まれたこの子は何?』と茫然とした。子供には罪はないが、出生を思うと複雑な感情になったのでしょう」(櫻井氏)
もちろん全てが悲惨なわけではない。都市部の歯科医と結ばれ、優雅な生活を送る日本人妻もいる。結婚し子供ができたことで幸せを感じている日本人妻もいるようだ。
ある脱会信者が複雑な心理を明かした。
「女性信者は皆、文氏の花嫁の立場にあるんです。夫はあくまで文氏の身代わりで種を与えるだけの存在。文氏の子供は神の子で、その子を生んだというのは大きな誇りになります」
とはいえ、異国の地での生活に耐え忍んでいる日本人妻がいるのは事実だ。
統一教会の霊感商法などの被害の救済に取り組む『全国霊感商法対策弁護士連絡会』の渡辺博弁護士がいう。
「現役信者は認めないでしょうが、韓国での結婚生活の中で夫の暴力や生活苦から逃げ出す日本人妻は結構いるようです。統一教会では、もともとの家族との縁を切って合同結婚式に参加する人が多く、日本に帰る場所がない人もいる。彼女たちの中には離婚後も仕方なく韓国に留まる人もいる」
統一教会は、本誌取材にこう回答した。
「大部分の婦人はソウル市、仁川市などの首都圏に住んでいます。残りの7つの『道』(編集部注・日本の県のような行政区) に、それぞれ平均500人づつが住んでいますが、それらの『道』でも、大半の人は都市部で暮らしています。
『本郷人』に(婦人たちの不満などを)掲載した理由は、
『みんなで助け合おう』という互助精神からでした。
7000人もの婦人がいれば、中には順風満帆とはいかず、苦労に見まわれる人も現われることでしょう。
そこで、最も援助を必要としている人を紹介し、みんなで援助していたのですっ 05年以降は『国際家庭支援センター』ができ、早急な問題解決が可能になっています」(広報局)
幸せな生活を夢見て韓国へと渡った日本人妻たちは、今、何を思っているのだろうか。P-145
───
「週刊ポスト」6月4日号 平成22年5月24日(月)発売
編集人 飯田昌宏
発行人 秋山修一郎
小学館 発行
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