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低線量被曝の危険性に関する知識はまだ不十分 米科学誌 ネイチャー
http://www.asyura2.com/11/genpatu11/msg/167.html
投稿者 ダイナモ 日時 2011 年 5 月 14 日 09:22:18: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.natureasia.com/japan/nature/special/nature_news_040511.php


低線量被曝が健康に及ぼす長期的危険性については、いまだにほとんどわかっていない。合理的な判断の根拠となる知識を得るには、低線量被曝に関する集団研究と発がん機構に基礎研究を組み合わせていく必要がある。

David J. Brenner

震災以降、福島第一原子力発電所では、損傷した原子炉からの放射性物質の放出が続いており(Nature 2011年3月31日号555ページ参照)、人々は不安を感じている。事故現場で働く原発作業員はどの程度の危険にさらされているのか? 地元の住民は? 日本のその他の地域では? 世界全体では、いったいどれくらい危険なのだろうか?

科学コミュニティーは、被曝の危険性を評価しようと最大限の努力をしているが、低線量被曝に関する我々の知識レベルは十分とは言えないのが現状だ。2003年に我々の研究チームが行った低線量被曝が健康に及ぼす影響についての研究は、現状できうるベストの見積もりであったが、それでもなお不確実な点が非常に多いのである1。そして、どのくらい危険なのかがわからないために、避難指示区域をどのように決めるべきか、誰を避難させるべきか、いつ避難指示を出すべきか、いつ帰宅を許可するべきかが、本当にはっきり判断できないのだ。

今回の原発事故を受けて日本政府が定めた避難指示区域や、米国原子力規制委員会(NRC)が出した避難勧告の範囲は、損傷した原子炉からどのような放射性物質が放出されうるかを推定し、それに基づいて決めたものにすぎない。しかし、たとえ最終的に放出される放射性物質の量と人々の被曝の程度がわかったとしても、避難に関して合理的な判断をすることは不可能だっただろう。なぜなら、低線量被曝が健康に及ぼす影響についての知識が圧倒的に不足しているからだ。我々は、低線量被曝が「平均的な」人々にどのような危険性を及ぼすのかを知らないし、乳幼児や子ども、遺伝的に放射線感受性の高い人々など、放射線に弱い人々の危険性についてはもっとわからない。だから、日本の現状への対応は、もっともらしい当て推量に基づいて行われていると言っても過言ではないのだ。

さらに気がかりなのは、放射性物質の放出が及ぼす長期的影響について、不確実な点が多いことである。というのも、避難指示区域内またはその周辺地域の住人よりもはるかに多くの人々に影響を及ぼすおそれがあるからだ。農産物や水産物、水など、環境中に数世代にわたって残留するごく低レベルの放射能は、長期的にどのような影響を及ぼすのだろうか。一般の人々よりも少しだけ高い放射線量にさらされる数万人の地元住民はどうなるのか、ごくわずかだけ高い放射線量にさらされる数百万人の人々はどうなるのか、そして、ごくごくわずかだけ高い放射線量にさらされる数億人の人々がどうなるのか、全くわからないのだ。ほとんどの人でさまざまながんのリスクが上昇するかもしれない。たが、その上昇は非常に小さいものだろう。さらに、数百万人の人々の発がんリスクがそろってわずかに上昇した場合でも、公衆衛生にどのような影響を及ぼすのか、知識が不十分なのだ。

低線量被曝の生物学的影響について、個人レベルでも集団レベルでも予測できないのはなぜなのだろう? 1世紀以上前に放射能が発見されて以来、放射線の危険性に関する研究はずっと続けられてきたし、50年以上も前から、かなり突っ込んだ研究が行われるようになっている2。それなら今頃は、政策決定に必要な、正確な科学的知識は、十分得られているはずではないのか?

集団研究の難しさ

端的に言えば、低線量被曝をした人々の健康への影響を直接検出し、定量化することは難しく、たいていは不可能なのだ。低線量被曝に関連した長期的健康被害の中で、最も心配されているのは、がんである。しかしながら、どのような集団でも約40%の人がいつかはがんになることを考えると、被曝した人々の集団が非常に大きく、個人の被曝線量が比較的よくわかっていないかぎり、被曝に関連した発がん率のわずかな上昇を評価することは、かなり不確実である。

これに関して情報源になりそうなのはチェルノブイリの原発事故だが、その情報はほとんど利用されていない。1986年に旧ソ連で発生したこの事故は、今回の日本の事故よりもはるかに深刻で、「最悪」の原発事故のシナリオを検証することを可能にした。被曝した人々の集団は大きく、その被曝線量の幅も広かったため、健康に関する集団研究を行うには絶好の対象であった。しかし、事故から25年が経過した今、甲状腺がんと白血病を除き、被曝した人々を対象とする大規模かつ組織的ながん研究は行われていない(Nature 2011年3月31日号547ページ、562ページ参照)。一方で、こうした研究では被曝線量の見積もりがカギとなるが、その作業はすでにかなり進んでいる3。今後、我々は、これらの研究を一般的ながんのすべてに拡大するため、いっそう努力しなければならない。

我々はまた、今回日本で被曝した人々を対象に大規模な集団研究を行うことが合理的であるかどうかも検討し始めなければならない。ここでは、被曝したすべての人々の被曝線量を個別に確定することがカギとなる4。これは、放射線の危険に関するあらゆる研究に当てはまることだ。

だが、低線量被曝をした人々の研究から得られる情報には根本的な限界がある。被曝に関連したがんの発生数は、常に、背景となる「自然な」がんの発生数に比べて非常に小さいと考えられるだけでなく、被曝が原因のがんとそれ以外のがんを区別する方法もないからだ。そのため、集団研究だけでは、極低線量被曝の危険性に関する情報を提供できない可能性がある。

基礎研究による補完

そこで、集団研究を補完するアプローチ、すなわち、低線量放射線ががんを引き起こす基礎的機構を、遺伝子、染色体、細胞、さらには器官のレベルで研究することが必要になる。この機構は非常に複雑であるため、研究はなかなか進展しない。しかしながら、長い目で見れば、発がん機構の解明から集団研究の結果を検討することは、極低線量被曝が健康に及ぼす影響について必要な情報を得るために、最良の、そしておそらく唯一の方法なのである5。

米国には、低線量被曝の危険性に関する基礎科学の支援に主眼を置く研究プログラムが、エネルギー省によるものが1つだけある。だがその研究プログラムも、米国で現在行われている予算交渉において、大幅な削減、ひいては廃止の危機に瀕している。

低線量被曝の危険性をめぐるこうした不確実性により、欧米諸国の原子力発電の未来についての議論が難しくなってきている。我々は今、原子力発電について重大な岐路に立っているのだ。老朽化してきた多くの原子炉を新しいものに置き換えていくべきなのだろうか? それとも、原子力発電を放棄するべきなのだろうか? これらの重大問題について合理的な判断をするために、低線量被曝の危険性を今よりもっと正確に把握しなければならない。さもないと、「放射線はどんなものでも危険である」と「低線量被曝は危険ではない」という極論をめぐる議論しかできなくなってしまうからだ。

原発事故や放射性物質を利用したテロに対して合理的な判断をするためにも、原子力発電の未来について合理的な政策決定をするためにも、CTスキャンなどの医療用画像装置や空港の新型X線検査装置の急激な普及に伴う健康への影響について考えるためにも、低線量被曝が健康に及ぼす危険性の理解に向けて、これまで以上に努力する必要があるのだ。

David J. Brenner はコロンビア大学放射線学研究所(米国)に所属。高線量および低線量被曝のリスク評価の研究を行っている。

(翻訳:三枝小夜子)  

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コメント
 
01. 2011年5月14日 10:39:19: JtQUVIl8Cs
良くICRPが御用機関であるといった、批判が目に付くが、ICRPは国際的なものであり、批判にさらされて簡単にたえられなくなるような間抜けな基準は作っていない。海千山千の国を相手にしているからである。日本政府が勝手に或いはマスコミの報道のせいで、「XXはICRPの勧告」などと誤解を与えているからややこしい。
例えば、以下のコメントを読めば判る話である。間抜けな解釈をしているのは日本という国である。
下のコメントにさらにコメントを加えると、ICRPは規制当局は、いったん決めた参考レベルをさらに下げる努力もしなさいとも言っているのである。まず参考レベルを儲けてそれ以下になるように頑張り、達成できたらその参考レベルを下げる努力をしなさいということである。
では、なぜ20mSvなのか? ICRPはLNTモデルで1Svで(大ざっぱにいって)5%の人が癌になると推定している。20mSvでは丁度1000人に1人が癌になる計算である。それを超えてはICRPも容認できませんと言っているのである。1000人に1人以下というのは低レベルリスクと見なす事ができるぎりぎりの範囲である。それ以上のリスクは高リスクと見なされる。日本では車を12000台並べれば、そのうちの1台が交通事故で人1人を死亡させる計算になる。10000台に1人以下なので大変少ないリスクとなる。以前は交通戦争といわれた時代が有り、1000台に1人以下のリスクの範疇に入った。
リスクの評価とはそんなものである。
20mSvという値の線引きはその変からきている筈である。
では、なぜICRPの基準がややこしいのかは、低レベル線量の被曝ではこの投稿にあるようにはっきりと判っていないからである。
ホントに、100mSvが全く問題ないと考えている(科学的に、そして科学を信じている)学者がいるのである。
しかし、ホントは判っていない。地震が予知できないのと同じレベルと思って良い。

勝手に 王様になった菅政権   民主・自主・公開 の 3原則 [ 武田邦彦 (中部大学)]
http://www.asyura2.com/11/genpatu10/msg/876.html
>このブログで何度か書いたが、放射線防護の法律は1年1ミリを限度としている。
それに対して1年20ミリという基準は国内に全く強制力のない国際放射線防護委員会の勧告である。
国際放射線防護委員会がどんな勧告をしても、日本政府はそれに従う義務はない。事実、これまでも日本の国内の放射線に関する法律は、国際放射線防護委員会の勧告を受けて独自に委員会を開き、最終的には日本の法律の形となって初めて国内で効力を発する。
今回「国際放射線防護委員会」を隠れ蓑にして「ICRPが言ったから20ミリまでOK」という奇妙な論理を展開している。
以上の事は、ICRP2007勧告を読んでいないのではないかと思われる内容。
ストレートに言わせていただくと、ICRP2007勧告では、普通の状況では1mSv/年にしなさいという事であり、どうしようもない場合には、規制当局が規制値を1-20mSv/年にしてもいいですよ、ただしICRPは法的位置づけは規制当局の責任で決めなさいとしている。
つまり、今回の場合でも1mSv/年で規制しても良いわけである。20mSv/年にした法的位置づけは、今回は規制当局つまり政府の責任ですといっているわけです。ICRPはこの20mSvにかんして法的責任はとらないといっているわけです。ようは、ICRPはあくまでしようがないときに使う規制値の最大値は1-20mSvといっているわけであって、自己責任で値を決めてもICRPとして黙認しますという意味でしょう。政府に「ICRPが言ったから20ミリまでOK」というお墨付きを与えていない事はあきらかです。
「1年20ミリという基準は国内に全く強制力のない国際放射線防護委員会の勧告である」というのもおかしく、正確性がかけている。これでは政府の言う解釈と同レベルである。1年1mSv以下の規制値に関してはICRPは責任はあろうが、1-20mSvに関しては「参考レベル」つまり自信ないよと言っているのである。おまけに責任は規制当局、つまり今回は政府持ちといっているのである。つまり、ICRP2007勧告と言う書類には載っているが、その値を勧告(推奨或いは決定)しているわけではない。勧告できない。参考にしてねといっているだけである。
ただ、勘違いしてはいけないのはICRPは規制の基準を作る側なので規制値については厳しい側に立っているはずであるので、実際20mSv/年を越えたら本当に危険であると解釈するのは現時点ではできない。いまは議論のレベルであって、専門家にも判らない段階。そこで100mSvまでは安全安心という話も出てくる。私は、専門家でないのでこの議論には加わらない。
何れにせよ、20mSv/年に関して言えばICRP2007勧告は参考にしかならない。よって、政府は決定した根拠を国民に示す必要がある。また、法的責任を明確にする必要がある。今後、この基準で何かあれば国が法的に責任をとる必要があるという事である。
今の政府が、良く知らない国民にICRP勧告を正確に伝えていないのが問題である。そのうちICRPも怒りだすのではないか。

以下はICRP2007勧告の内容の一部
(線源関連の線量拘束値と参考レベルの選択に影響 を与える因子)
(236)・100mSv より高い線量では、確定的影響の増加、 がんの有意なリスクがあるため、参考レベルの最大 値は年間 100mSv
・100mSv を超える被ばくの正当化は、被ばくが避けら れない、人命救助、最悪の事態を防ぐ状況の場合 (237)拘束値及び参考レベルは 3 つのバンドで示される
(239)1mSv 以下
計画被ばく状況に適用され、被ばくした個人に直接 的な利益はないが、社会にとって利益があるかもし
れない状況(例:計画被ばく状況の公衆被ばく)
(240)1~20mSv 以下
個人が直接、利益を受ける状況に適用(例:計画被 ばく状況の職業被ばく、異常に高い自然バックグラ ウンド放射線及び事故後の復旧段階の被ばくを含 む)
(241)20mSv~100mSv 以下 被ばく低減に係る対策が崩壊している状況に適用 (例:緊急事態における被ばく低減のための対策)
(242)線量拘束値、参考レベルは、被ばくの種類、個 人と社会の被ばく状況等から特徴付け、さらに国、 地域の属性を考慮に入れ、国際的な指針等を考慮し た最適化プロセスによって策定

(3)現存被ばく状況
(284)・管理についての決定がなされる時点で既に被ばくが発生している状況
・どのような構成要素が管理になじまないかの決定は、規制当局の判断が必要
(286)・最適化プロセスの最終目標は先験的に決めるのではなく、防護の最適化レベルは状況次第で決まる
・最適化の目的は、個人線量を参考レベルより下げること
・特定の状況を管理するために行う参考レベルの法的位置付けを決めるのは、規制当局の責任
(287)参考レベルは、通常、予測線量 1mSv から 20mSvのバンドに設定


02. 2011年5月14日 21:01:05: jkqlg1hWd6
1~20mSv 以下
個人が直接、利益を受ける状況に適用

20mシーベルト以下の被爆を受けるが、避難しないでその場所に住み続けることによる利益が、被爆のリスク(1000人に1人ガンになる)よりも大きい状況という事である。


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