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『美しい村に放射能が降った』 菅野典夫:書評(Supersymmetry Brothersさんのブログ)
http://www.asyura2.com/11/genpatu19/msg/478.html
投稿者 ジャック・どんどん 日時 2011 年 12 月 20 日 21:47:08: V/iHBd5bUIubc
 

「同心円状に、避難区域を設定してはならない」というのは、原発事故の基本中の基本らしいが、政府も原子力安全委員会もそのように働きかけた形跡は全くない。
当初の避難区域からも外れた、飯館村村長の手記である。酪農家を志し、学生時代に帯広畜産大で酪農を学んだ村長の、美しい村を守る悪戦苦闘の日々が描かれているのか?実際にまだ読んでませんが、政府が早期に政治決断して、村ごと強制移住させていれば・・・・・

Supersymmetry Brothersさんが、ブログで書評されてますので、紹介します。


Supersymmetry Brothers
@Rotsk / Yo1 Richard Otsuka(昼寝中)さんのブログより転載

http://supersymmetry.air-nifty.com/blog/2011/12/post-c933.html
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2011年12月20日 (火)

『美しい村に放射能が降った』 菅野典夫   ワニブックス (2011/8/8)

サブタイトルに「飯舘村長・決断と覚悟の120日」とあるので、震災前後の動きについてのドキュメントかと思って読み始めたのだがそうではなかった。初めの章でいきなり3月のことはよく覚えていないし、事細かに書くつもりもなく、ただこれからのことをみつめていきたいというような説明があってめんくらわせる。全体としては、なぜ飯舘村の避難に時間がかかったのかはよく説明されている。政府とのやりとりもおおよそ想像ができるくらいに書かれている。しかし、この本の半分以上は、自分の村長としての改革に関する回顧であり、いささか自画自賛めいている自分の政策についての説明なのだ。それらが下敷きになって、3月からのことが初めて理解されると考えたのかもしれない。村長の飯舘村に対する思いはよく分る。説明されている政策も、なかなかよくやっているのではないかと思わされる部分もある。3月以降の経緯は、それらの政策の延長の中で説明されているのだ。そして、それはある程度は成功している。

しかし、少しでも被曝を少なくするという観点からの対策はここにはあまり描かれていない。それは、驚くほどだといってもよい。むしろ、安全を保証する学者の言葉に従って、留まれる限界まで留まることを軸に事故対応をしていっている様子が分る。長崎大の学者が大丈夫だと言った、屋内の線量は低いので外に出なければ大丈夫だ、といったともかく全面的に汚染されているのでないなら、留まってよい場所には留まりたいという思いの方が強く、むしろ一律避難を勧告する政府にも殺人者よばわりでメールしてくる人々にも負けずに、生活を破壊しコミュニティを破壊するような避難を極力避けるという姿勢で一貫している。2年で飯舘村に戻れるようにするという、自身、根拠もなく、自信もないという宣言をしているのも、いかに村民をつなぎとめるかという配慮からである。健康被害を防ぐことはもちろん大事だが、それよりも生活環境全般が破壊されて、村民がばらばらになり、今まで人々が暮らしてきた飯舘村が破壊されてしまうことに対して、必死に抵抗しているのだ。様々な破壊があり、放射能による健康被害はその一部とみなし、冷静にそれぞれのリスクを判定しながら総合的な対策を立て、政府から除染事業を初めとした様々な譲歩を引き出しているというようにも読める。このようなところまで追い込んだのは、東電と政府の責任だが、村長もなかなかタフである。いきなりこのようなめにあわされたら、ともかく村が破壊されないようにがんばるというのはその限りでは誰にも非難できないだろうと思わされる。そのなかに、必ずしも正しくない施策がまぎれていてもだ。

もちろん、その過程で村民は被曝を強いられることになった。それがどの程度なのかを知らないので、何も言えないのだが、メディアや一般の市民からも心配の声や批判の声はあったし、当然村民からも批判はあったに違いない。特に、子供と女性の避難については緊急性が高かったと思うのだが、そのような観点からの優先順位の議論もまるで見られない。だから、おそらくは、この本を読んで村への執着のあまり村民を危機に陥れたがんこな村長という印象をもつ人もいるだろう。僕が批判を感じたのも、安全に関する意識、その一点である。数ヶ月をかけて順次行う危険回避策とともに、緊急性の高いリスクについては早急に対処するための手だてをあまりとっていないのではないかという疑問である。それが書かれていないので、わからないのだ。確かに、避難すると一口にいったって簡単ではない。それは分る。だが、何もかも二三ヶ月をかけなければできなかったということはあるまいと思う。自主的な避難以外に、村民の緊急避難はなされていないように思うのだが、それはやはりまずかったのではないか。飯舘村の放射能のレベルが高いことは、京大の今中教授等のレポートなどいくつか報告があり、場所による違いはあるにしても、全体として住むに適しない場所になってしまったことは自明だった。必要な支援もなしにできることなど何もないという問題もあったに違いない。その辺りは、本書を読めばだいたい推察がつく。しかし、それは、避難を延期する理由にできるほどのことなのか?

残念ながら、この本からは僕にはその答えは見つけられなかった。事前の準備なしには、災害時の避難などすぐにはできないということ、危ないからともかく逃げろという一方の声に対して、そうは言ってもやれることとやれないことがあり、逃げろと言われてもどうしようもない、というもう一方の声がここにあるといえばよいだろうか。村長のとった態度は、ひとつの考え方だし、見識といってよいものが村長の文章の中にはほの見えており、4-5月頃にやきもきしながら見ていた時に感じていた放射能被害を甘く見ている村長というイメージは読後少し変わったことだけは確かだ。こうした判断に至った経緯を読むと、一方的に避難を通知する政府側の浅慮が目立ってしまうからだ。そこまでは認めながらも、緊急的避難に対する配慮不足については、やはり「?」マークをつけさせていただく。村長を非難したいわけではない。危機的な状況下でこうした判断になったことを結果から見て僕などの部外者が責める言葉はない。しょうがないとしか言いようが無い。ただ、政府と行政の関係の中で、「安全」よりも「保証」が優先されていた(と僕には読める)ことには、どうしても疑問をもたざるをえない。この疑問符は、これからの原子炉事故対応・事故対策の中で十分にかみしめられなければいけない性質のものだと思う。ただ単に言いっ放しで、村長の判断を批判するものは、知らず知らず自分を棚上げにしている可能性に気づく必要がある。自分ならどうしたか、どうできたか、そして、何よりも今あなたは何をしているのか?  

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コメント
 
01. 2011年12月22日 00:54:00 : pyf9PkrBc2
いやマジに美しい村だぞ飯舘村。
事故後でも。
しかしそこは汚染まみれなんだな。見えないというのは怖ろしい。

02. 2011年12月23日 02:10:11 : YHozNHtvyg
津波被害の映像がひび頭に焼きつき、また、福島が放射能まみれと正しくも受け止めている人にとって、福島も「被災」した姿をなんとなく思い込んでしまう。
しかし、美しい風景、町並み、田畑も何も変わっていないこと・・・これが恐ろしい。こうしたなかで避難の決断を迫られる人たちが、どれほどの困難、苦しさに追い込まれるか。想像が難しい。

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