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クルーグマン 「ゴルト,ゴールド,ゴッド」  「不況と状況」
http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/424.html
投稿者 MR 日時 2012 年 8 月 26 日 11:26:54: cT5Wxjlo3Xe3.
 


クルーグマン「ゴルト,ゴールド,ゴッド」(NYT,2012年8月23日)

次の副大統領候補となっているポール・ライアンをめぐる議論の大半は,これまでのところ,彼の財政案にもっぱら集中している.でも,ライアン氏が出してるアイディアはたくさんある.それじたいは,ふつうならいいことではある.

ただ,彼の場合,そのアイディアの大半はフィクションの世界からでてきたようなしろものだ.具体的には,元ネタはアイン・ランドの小説「肩をすくめるアトラス」だ.

思春期に読み損ねたみなさんに紹介しておくと,「肩をすくめるアトラス」はファンタジーもので,生産的なひとたち――なんなら「雇用創出者」と言い換えてもいい――が自分たちに感謝を示さない社会からサービスを引き上げてしまう世界を描いている.この小説の目玉は,64ページにもおよぶ演説だ.これを語るのは怒れるエリートたちの首謀者格であるジョン・ゴルトという人物.フリードリッヒ・ハイエクですら,この演説パートは読み通さなかったと認めている.それでも,この本は長らく思春期男子のお気に入りとして読み継がれている.大半の男子はそのうち卒業するんだけど,一部には,生涯にわたって熱を上げる人たちもいる.

で,ライアン氏はそういう熱狂的読者のひとりだ.たしかに,この数年は彼もランド主義をひっこめようと努めてはいる.「都市伝説」なんて呼んだりしてね.その理由は難なく理解できる:ランドは熱心な無神論者なんだ.無神論なんて,共和党支持基盤は耳に入れたがらない.まして,ランドの「中絶は道徳的な権利だ」という宣言なんて,とんでもない.

でも,ライアン氏は率直そうな言動もしてる.ランドの思想を推進することを目指すアトラス協会ってのがある.2005年に,彼はそこでランドは自分の政治的キャリアの原動力だと行った:「〔政治思想のソースとして〕1人の思想家,1人の人物をあげよと言われれば,アイン・ランドを挙げます.」 さらに,自分のスタッフとインターンたちにはランドの著作を読むよう求めているとも発言している.

さて,ライアンの財政プログラムは明らかにランド主義の観念を反映している.前のコラムで言っておいたように,ライアン氏が財政赤字に関して真剣だという評判を勝ち取っているのは,分不相応だ.彼の政策は実際には赤字を増やしてしまう.でも,彼は富裕層減税と貧困者支援削除におそろしく真剣に取り組んでいる.まさに,ランドが成功者をあがめ奉り「たかり屋ども」をさげすむのと軌を一にしている.

この点は重要だ.助けを必要とする人たちを支援するメディケイドやフードスタンプその他のプログラムの過酷な削減を進めるにあたって,ライアン氏はたんにお金を倹約する方法を探しているだけじゃあない.それと同時に,とても明確に,貧困者の生活を困難にしようと試みている――それが彼らのためになるといって.この3月に,不運な人たちへの支援を削減する案を説明した際に,彼はこう発言している.「セーフティネットをハンモックに変えて健常者に惰眠をむさぼらせ他人に依存して安逸をむさぼるような生活に落とし込むことを望んではいないのです.そんなことをすれば,彼らの意欲を失わせ,生活の大半において自立し自活するインセンティブをなくしてしまうことになります.」

どういうわけだか,この不況下で失業手当とフードスタンプに頼ることを余儀なくされてるアメリカ人は,安楽なハンモックでのうのうとしているかのように感じなきゃいけないことになってるみたい.

いや,話はまだこれだけじゃない:「肩をすくめるアトラス」は明らかに金融政策に関するライアン氏の見解も形成している.何度も何度も自分の予測が完璧に間違ったというのにいまも彼はこれに固執している.

2011年の序盤に,下院予算委員会の議長に就任したばかりのライアン氏は連銀議長のベン・バーナンキをひどく責め立てた.一次産品価格と長期金利の上昇は高いインフレの先触れだと彼は言い切った.「国家がその市民にする仕打ちとして,貨幣の毀損ほど悪質なものもありません」と朗々と言い放った.

その後,インフレ率はまるで挙がらなかったし,長期金利なんて急落した――もしまんまとバーナンキ氏が金融引き締めに追い込まれていれば,アメリカ経済の現状はきっといまよりずっとひどいことになっていただろう.でも,ライアン氏は自分の金融論について動じていないみたい.なんで?

えっとね.さっき触れた2005年のアトラス協会での演説で,彼は金融政策について考えるときはいつでも「フランシスコ・ダンコニアによる貨幣に関する演説」に立ち返るんだって発言してる.それって誰さ? お気になさらず.その演説(たった23パラグラフの長さでござい)は,金[きん]への妄執が度外れちゃった一例だ.この登場人物(ゴルトの腹心)は,たんに金本位制への復帰を主張するばかりか,紙幣というものを非難し,金貨への復帰をもとめる.

ちなみに,アメリカの貨幣供給は金貨やら銀貨なんかより圧倒的に紙幣が多い.1800年代初期からずっとそうだ.だから,もしライアン氏がホンキでフランシスコ・ダンコニアのお説を通したければ,1世紀どころか2世紀も時計の針を巻き戻さなくちゃいけない.

ここに重要な点ってあんの? えっとですね,共和党が選挙で当たりくじにを引けば,ライアン氏はまちがいなく次の政権で影響力をふるうことになる――次のことも覚えておこう,聞き飽きるほどよく言われているように,大統領が死亡すれば彼がただちにその職を引き継ぐ.だから,実行すれば大恐慌の再現へと大幅に近づいてしまう金融政策論をライアン氏が抱いているっていうのは,ぼくらにとって心配の種なんだよ.

また,それ以上に,ライアン氏が現代の共和党の大思想家だとみなされてるって事実も考えてみてほしい.その知的指導者が露骨なまでにアイディアの大部分をひどく非現実的なファンタジー小説から借りてきてるってことから,共和党についてどんなことがわかるかな?

(Paul Krugman, “Galt, Gold and God,” New York Times, August 23, 2012)

 


SHOWING 1 COMMENT


keinear
経済/金融政策についてアホだということが分かる。

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「不況と状況」BY PAUL KRUGMAN

以下の文は、Paul Krugmam,”Slump And Circumstance“の翻訳になります。誤字・誤訳の指摘はコメント欄にお願いします。

 The New Statesman誌の面白いアイデア――2010年早期に即座の緊縮財政を要求する書簡にサインした経済学者のところへ行って、イギリスが二番底の景気後退に陥る中で、今でもオズボーンの政策を支持するのか尋ねてみた。その中のたった1人だけがイエスと答えた一方、9人がオズボーンは景気刺激策に反対してることを再考すべきだと主張した。

よくやった。でも、僕がガッカリしたのは、その放蕩経済学者の多くが素直に過去の過ちを認めずに、状況の変化への反応だって主張してること。

だって、状況は全然変わってないんだから。イギリス経済はその時も落ち込んでいたし、今だってそう。経済が落ち込んでいる中での緊縮財政は、特に伝統的な金融政策が限界に達している時には、始めから明らかに酷いアイデアなんだ。ありていに言えば、2010年に僕が緊縮財政について書いたことは、数年たった今でもまったく問題なく見える。

実際のところ、緊縮派は基本的なマクロ経済学を窓の外に放り出すことを選択した。そのネガティブ・サプライズを予想できなかったのは、彼らが間違った方向へ向かった結果だ。

追記:山形浩生さんの指摘により訂正しました。


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08/18/2012 – 4:28 PM
By anomalocaris
Posted in Paul Krugman


Comments (6)
← 本を値札で判断しないで by Tim Harford
クルーグマン「ゴルト,ゴールド,ゴッド」(NYT,2012年8月23日) → 


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6 コメント表示中


optical_frog
おつかれさまです.文中でリンクが貼られている "Myths of austerity" には翻訳がありますね:
緊縮財政神話 by Paul Krugman (http://econdays.net/?p=169)

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1 週 前 1 いいね!

Tatsuo Fujimoto
緊縮財政で経済が救えるなんてのは商売の経験がない人の話だね。しかし政治家は緊縮が好きなものがなる商売だ。したがって、制度設計が間違っているんだろうと思うよ。

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1 週 前

hirooyamagata
通常、マクロ経済の問題に対して「商売の経験がある/ない」で話をしたがるのは、マクロ経済と普通の商売とのちがいをそもそも理解していない人です。そして具体的なことを言わずに「制度」と口走りたがるのは、普通は単なる無為無策を告白しているのにすぎません。

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1 週 前 返信 Tatsuo Fujimoto 2 「いいね!」

hirooyamagata
just fine は、「すばらしく」というよりは「まったく問題なく」にしたほうがいいと思います。ニュアンス的にもそうだし、クルーグマンも自分の言ったことがすばらしいというほど厚顔ではありません。

あと、題名なので今さら変えるのはアレですが、Circumstance は環境よりは状況にしたほうがいいかと思います。環境だと、エコのほうの話だと思ってしまうので。

いいね! 返信
1 週 前

anomalocaris
山形さん
ご指摘ありがとうございます。just fineは上手い訳が浮かびませんでした。

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1 週 前 返信 hirooyamagata

keinear
仰るとおりです。

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1 週 前
http://econdays.net/?p=6980

 

 

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コメント
 
01. 佐助 2012年8月26日 22:10:56 : YZ1JBFFO77mpI : TUhrPgEJIU
キン本位制をゴミ理論として黙殺しているが世界恐慌から早期に脱出できる
国家の指導者は、「キン本位制(キン保有高を自国の通貨発行枠とし、国家間の収支の最終決済に使い、固定為替システムを復活させる)なら、バブルの崩壊から早期脱出できる」そして日本の円は、日本商品の世界的優位性からドルやユーロと共に、心ならずもいやいや新基軸通貨になる。

中国とインドの民間のキン保有高は、米国と欧州の公的保有高を上回っている。日本も、1980年代のバブル期に、キンの輸入総量は、米国と欧州の公的保有高を上回った。又,南アフリカとロシアは,世界最大のキン産出国である。民間のキンの売買と輸出を禁止し、
国家だけが買上げる政策を採用すれば、キン保有で米国と欧州を越え、基軸通貨国になるチャンスはある。これらの国は、多民族国家&多部族国家であるために、韓国国民が外貨危機の時、ギンを国家に拠出して助けたように、一致して行動することは困難である。

ドルは、各国の外貨準備通貨が、ユーロヘ移動することを阻止し、その暴落を食い止めるために、心ならずも、ニクソンが遺してくれたキンとのリンクを宣言するだろう。そしてユーロは、ドルとの均衡安定を回復するため、加盟国のキンをかき集めて、ユーロの固定通貨圏の動揺を防止するため、心ならずも、第三次キン本位制に移行するのだ。円は、米国に気兼ねし、世界のキン争奪戦に立ち遅れるために、国内の天皇家(日銀が隠している)と民間に保有するキンを流出させる。そこで、ドル外貨を使ってキン争奪戦に参加することになる。

こうして、今回の世界信用収縮恐慌は収束し、日本は2007年の経済指数を回復することができる。この新しい基軸通貨体制により、戦争なしに世界信用収縮恐慌が収束されることができる。


02. 2012年8月27日 07:47:36 : Eu2TWVHq9d
その紙屑がコースターくらいにしか使えなくなるまで金本位制を駄目だと云えるのならそれも良かろう

03. 2012年8月27日 12:37:09 : cqRnZH2CUM

>インフレ率はまるで挙がらなかったし,長期金利なんて急落した――もしまんまとバーナンキ氏が金融引き締めに追い込まれていれば,アメリカ経済の現状はきっといまよりずっとひどいことになっていただろう.でも,ライアン氏は自分の金融論について動じていない

まあ、過剰な金融緩和が、新興国の経済を過熱し、バブルや途上国でのインフレを悪化させ、競合する輸出国の外需を奪うことは間違いないが、

不動産バブル崩壊とリーマンショックという米国の金融恐慌を鎮めたのが、バーナンキであったのも間違いない


また欧州金融恐慌のせいもあり、その後のQE2なども米国自身にとって悪い結果にはなっていない

つまりバーナンキがやり過ぎだったかと言えば、現時点ではノーということであり、日本化デフレを何とか食い止めているという状況だろう


共和党が政権をとり、
バーナンキを切ってFRBをタカ派に変え、過激な緊縮政策を行えば、米国経済がデフレスパイラルに落ち込み、世界金融恐慌と戦乱の時代へと移行していくリスクは高まるだろう

実際には、現実的に変わるかもしれないが


04. 2012年8月27日 12:44:01 : cqRnZH2CUM

今、金は、金融における地位は非常に小さく、通貨代替物としての機能はほとんどない
そして商品により近いリスク特性になっている

世界経済が壊滅的に崩壊し、2世紀くらい生産力が低下するという事態(核戦争)でもない限り、マネーゲームの対象にはなっても、金融における主役にはなれない



05. 2012年8月28日 10:32:36 : upPOFUceS6
・Goldを低利でリースして市場で売却し、その資金で高利の金融派生商品を
  世界中に売りまくり、利益を上げていたウォール街の銀行群。
 
 ・その市場で叩き売られたGoldを買い進み、密かに莫大な量のGold現物を手
  に入れた勢力。

 ・世界の中央銀行までもがGoldの売却に邁進した1990年代。

 ・1999年9月のIMF総会で宣言されたワシントン合意(中央銀行の
  Gold売却の上限制限)

 ・追い詰められたJPモルガンとチェースMは、合併することで辛うじて破綻を
  免れた。

 ・敗北者は世界中の中央銀行、商業銀行、投資銀行群。

 ・勝利者は、世界中のGold現物を奪い去った勢力。

 ・ワシントン合意とは、世界中のGoldを奪い去った勢力の勝利宣言。

 ・そして今世界中の中央銀行がGoldの現物保有に奔走している。

 ・しかしもう手遅れ。10万トンにものぼるGoldはチューリヒの山中に隠
  されている。
  
 ・何も知らない民衆は、やがて出現するNWO銀行発行のNWO通貨を目の当たり
  にして、信用の裏付けとなるGoldの 真の価値 を思い知ることになる。

 ・手許にあるGold現物を今売却するなど 愚の骨頂。

 ・次の金融津波に飲み込まれたくなければ、手許に保有しておくことだ。


06. 2012年8月28日 11:26:43 : Wg3S07Yplk
民主党、共和党の・・誰々が・・ドル覇権体制の舵取りをしても
その金融イデオローグ・・テクノクラートが誰々であっても
国際ユダヤ金融の巻頭支配に変わりはあるまい!!

ロックフェラーか、ロスチャイルドかの・・米国金融街の席替えを揶揄したところで・・緊縮vs緩和の市場風俗=2項対立を差配する・・中央銀行制度の功罪を延命補完するだけの物でしかない「NYT記事」でした。

缶コーヒーを1本空けて損した!!
相変わらず、疲れる投稿だ!!


07. 2012年8月29日 00:15:37 : VcaS1gMDas
ヨーロッパがユーロにしたら急速に金融が崩壊しだした、それ以前にドルが崩壊しだした。
銀から下にある通貨が何を齎すのか、それは貧困であり空虚なグローバリズムですかないことはだいたい見えてきた。それでもアメリカはやろうと云うのならそれはもう紙くずに鉄くずになるまで俺らはやるよって云うサインなのだ、これをどう思うって話なんだな最早、そんな遠くは無いよ

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