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わが国が目指すべき 「市場主義3.0」の具体的ビジョン
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投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 17 日 08:55:40: cT5Wxjlo3Xe3.
 

(回答先: 「国家資本主義」vs「市場主義3.0」中国モデルと韓国モデルをどう評価するか 投稿者 MR 日時 2012 年 9 月 05 日 16:37:24)

【第7回】 2012年10月17日 山田 久 [日本総合研究所調査部長]

わが国が目指すべき 「市場主義3.0」の具体的ビジョン

前回、わが国でなぜ「市場主義3.0」の構築が必要かの理由を解説した。今回と次回では、わが国における「市場主義3.0」の具体的な姿を考える。経済システム面と社会システム面に分けて論じていこう。

経済システム改革の2本柱

「市場主義3.0」モデルにおいて、経済システム面で政府が行うべきは、基本的には市場競争の条件整備である。あくまで民間の自由な活動、試行錯誤を通じたイノベーションを基本に置くのが、バージョンを問わず、「市場主義」に共通する考え方である。その意味では、@市場競争にとっての障壁や競争条件の歪みをなくすこと、および、A自発的なイノベーションの「種子」を植え付けることが、政府が行うべき施策の2本柱になる。

@競争条件の歪みをなくす

 より具体的には、@については、国内市場に残る公的規制を緩和していくことに加え、人口減少下で経済成長を実現するには、外需取り込みが不可欠であることを踏まえれば、自由貿易協定の締結が重要課題である。この点に関しTPP(環太平洋連携協定)反対論が根強いが、これはその効果を過小評価しているためであると考えられる。政府の推進方針を支える内閣府の試算(2011年10月)は、GDPを概ね10年間で2.7兆円押し上げるとしている。これは微妙な数値であり、年間に均せば0.54%の成長率押し上げにとどまる、という言い方にもなりかねない。

 しかし、この数値は基本的に関税撤廃による効果であり、本来のTPPの効果は関税率の引き下げといったレベルにとどまらない。むしろ、その効果は知的財産権や原産地規制(物品の国籍を判定するルール)、環境規制など非関税障壁分野におけるオープンで公正なルールの構築にこそある。

 これは、製造分野における新興国の台頭が著しいなか、わが国は国内工場を増やして財の輸出を増やすというよりも、国内の生産は戦略分野や先端分野に集約して、標準的な製造過程の多くは新興国に任せ、ノウハウや仕組みの提供に対する対価で外貨を稼ぐ事業構造に転換していくことが、求められているからである。そうした事業構造転換にこそTPPやEPA(経済連携協定)を活用すべきであり、その転換に成功すれば、わが国産業の収益性は大きく改善し、成長率押し上げ効果は内閣府の試算を上回るであろう。

 EPA、TPP締結の最大のネックになっているのは言うまでもなく農業である。しかし、既存農家の保護を最優先した現行農政が維持される限り、農家収入の落ち込みは続き、担い手および農地の減少にますます拍車がかかる。@漸進的な関税率の引き下げ、A価格維持(生産調整)政策から所得支払政策への抜本転換、B中核的な担い手の育成、をセットにした農政改革が、農業自身の再生にこそ求められている。

 未来志向のビジョンに基づいて、自由貿易推進と農業基盤強化の一石二鳥の政策パッケージが、製造業と農業双方の再生につながることを国民に分かりやすく説明し、その実現に1日も早く着手することが政府に求められている。

Aイノベーションの「種子」を植え付ける

 Aについては、教育・人材育成、および、研究開発に対する支援が具体策となる。EPAやTPPを締結しても、それは制約要因の解消に過ぎず、成長基盤の強化はあくまで民間の自主的な取り組みいかんにかかっている。

 市場競争を勝ち抜くために、民間部門がノウハウや技能の集約である知識資本を、不断に形成・蓄積していくことで、先進国の競争力の源泉である全要素生産性(技術革新や経営革新など、労働力や機械設備の量的な増加では説明できない生産性)が向上する。ただし、この知識資本を不断に形成・蓄積していくプロセスに対し、人材育成投資や研究開発の促進政策を講じることで、政府は民間の活動を実効性ある形で支援することできる。

 その際に重要なのは、外国人の力を借りることである。具体的には、いくつかの大学を集中的に国際化し、世界中からトップレベルの研究者や優秀な留学生を集めることが肝要である。それにより、外国人の能力を取り込むことができるとともに、日本の学生や研究者自体が大きな刺激を受け、グローバルレベルへの底上げ効果が期待できる。具体策としては、「グローバルCOEプログラム」を、外国人研究者の積極的参画を条件とする形で、予算を大幅増額して再構築することが考えられよう。

 一方、企業の自主的な取り組みとしては、本社やマザー工場の人材グローバル化が重要である。本社の役員や部長クラス以上の主要ポスト、さらにはマザー工場の現場リーダー層に、海外で活躍する優秀な外国人を積極的に登用することで、海外各地で開発されたノウハウや知見が日本国内に集約されることになる。一方、世界各地の優秀人材が本社やマザー工場で働くことで、国籍を超えた人脈が形成され、その企業のDNAを体得することになる。さらに、日本人の優秀な人材を海外各拠点の主要ポストにつけることで、企業のDNAを海外拠点に伝道するとともに、彼ら自身のグローバル経験が深まる。

 こうして、国内外を問わず、主要ポストを国籍に無関係に優秀な人材が経験するようになれば、日本本社と海外各拠点との間のコミュニケーションがよくなり、企業としてのグローバルな一体感も高まる。そうなれば、日本本社はヒト・チエ・カネの「ハブ」となり、世界各国の事業が拡大すれば、自ずとロイヤリティーや直接投資収益の形で、日本国内に富が還流する仕組みが構築されることになろう。それは正に先に述べた、ノウハウや仕組みの提供に対する対価で外貨を稼ぐ事業構造への転換に通じる道である。

労使関係システム改革の重要性

 欧米諸国が「ケインズ型福祉国家」から「市場主義」に移行するとき、実は経済システムの改革よりも社会システムの改革が決定的な役割を果たした。具体的な鍵となったのは「労使関係(雇用システム)」と「社会保障制度」の転換である。

「1.0」タイプの米英では労働組合の解体と、社会保障の削減で市場原理の自由度を上げ、「2.0」タイプの北欧や2000年代に構造改革に取り組んだドイツなどでは、組合が市場原理を受け入れ、社会保障を市場原理への適応支援に転換した(その後、「1.0」は貧困問題への対応の必要性の高まりから、「2.0」では財政悪化圧力への対応から、政府が社会政策に積極的に関与する一方、社会サービスの提供自体は民間事業者への業務委託、あるいは社会的企業やNPOといった民間自主組織の活動により拡充・効率化する動き――「市場主義3.0」に収束する動きがみられている)。

 つまり、「ケインズ型福祉国家」から「市場主義」への移行にあたって決定的であったのは、「反成長・反市場タイプ」の労働組合や社会保障は、「縮小・衰退」か「改革・転換」を余儀なくされたことである。そこでは、社会システムを「市場原理から守る」ためのものではなく、「市場原理に適応する」ためのものという発想の転換があったことが決定的なポイントである(具体的には第4回を参照)。

 わが国は欧米に数十年遅れた段階で、「ケインズ型企業福祉」から「市場主義」への移行が求められているが、この基本的発想の転換が出発点になろう。そのうえで、「労使関係」と「社会保障」の2つのシステムを、抜本的に見直すことが求められる。今回に残された紙面で「労使関係システム」の改革の具体的なあり方について述べ、「社会保障システム」については次回述べたい。

 現行「労使関係システム(雇用システム)」について、わが国の特徴は終身雇用と年功賃金を両輪とする日本的雇用慣行とされる。しかし、それはトータルな雇用システムの半分を語っているに過ぎない。もう半分は日本的雇用慣行が適用されない非正規労働者の世界である。正社員の世界と非正規の世界の二重構造となっているのが、日本の雇用システムの全体像であり、正規社員に適用される日本的雇用慣行は「市場原理から守る」性格が強く、非正規が景気変動に応じて調整される「市場原理に適応する」ためのものであった。

 しかし、前回見た通り、環境変化は日本的雇用慣行の限界を露呈させ、非正規労働者の比率の高まりの結果として若者層に大量に未熟練労働者を生み出し、将来の日本全体での人材劣化が懸念される状況にある。正社員のシステムそのものを「市場原理に適応する」ものに転換する必要が生じているのだ。

 環境変化に迅速に適応して産業転換を行うには、端的には、企業がスキル人材の外部調達を増やし、不採算事業から撤退が円滑にできるようにする必要があるからである。とりわけ、本社やマザー工場の人材グローバル化を進めるには、正社員の流動性を高め、外国人に代表される異なる価値観を持つ人材を受け入れる組織風土の構築が必要になっている。正社員の流動性が高まれば、企業の若者への採用意欲を回復させ、非正規の正規化のルートを太くすることにもつながるであろう。

 しかし、それは正社員の解雇をしやすくすればよい、という単純な話ではない。米英や北欧で雇用の高い流動性が経済活性化につながっているのは、職種・職務別の労働市場が形成されていることが前提になっている。転職の過程で正当に技能やスキルが評価され、職場が変わってもそれまでのスキルが活かされ、新たな技能が身についていくことが、雇用流動化を経済再生につながる条件である。企業がスキル労働者をスキル労働者として雇うには、社会横断的にスキルがわかる仕組みを整備することが必要なのである。

労働市場改革の3つの具体策

 そこで、職種・職務別の労働市場をいかに形成するかであるが、わが国では3つの取り組みから始めることが有効であろう(図表)。

 第1は、企業人事システムに職業概念を強く入れ、特定職種でキャリアを深めるプロフェッショナルを本気で尊重することである。真のプロフェッショナルは一企業内でとどまっていては育成できず、企業の枠を超えた同一職種内での交流が必要になる。その結果として、企業横断的なプロフェッショナルの人的ネットワークが形成され、自ずと企業間の流動性が高まる。これにより、プロフェッショナル人材の労働市場が形成されよう。

 第2は、職種限定型正社員を明示的に導入することである。職種限定型正社員とは、これまで正社員といえば、いわば包括契約として企業に属し、属人的に仕事を与えられてきたが、あくまで仕事内容を明確にしたうえで、企業と無期の雇用契約を結ぶというスタイルである。いわゆる日本型正社員は、仕事内容・労働時間・勤務時間が選べない滅私奉公的な働き方であるが、職務型正社員では、処遇はやや低いが仕事内容が選べるため労働時間や勤務地の選択の余地がでてくる。この職種限定型正社員は、ある職種についての企業をまたぐ形でのスキルを持つ存在であり、雇用流動化がしやすい労働者であるといえる。

 第3は、人材派遣制度を抜本的に再構成することである。労働者派遣事業については原則自由化する一方、派遣労働者の保護のために単純業務に従事できる期間を3年以内に限定し、その間の職業訓練の義務付けを行う。それにより、3年後には基本的に何らかの分野の専門職としての技能を身につけるようになる。こうした新しい派遣制度を普及させるには、企業内の各業務を単純・見習い業務(トレーニー業務)、特定分野単純工業務、特定分野多能工業務、マネジメント業務に仕分けし、それぞれに単純業務派遣、専門職派遣、直接雇用社員を一部オーバーラップさせながら対応させることを基本に、就業形態を一定の時間をかけて再編していくことが求められる。

 それにより、専門派遣の割合が現状よりも相当程度高まることが予想されるが、その結果、企業は産業再編に必要な有力な雇用調整手段を手に入れるとともに、専門派遣労働者のスキルが社会横断的に共有されることで、中小企業を含めて企業の競争力も底上げされるはずである。働き手個人も、勤め先企業が倒産したり、事業を縮小しても、他の企業で仕事を獲得することが出来やすくなる。

 以上の3つの仕掛けを通じ、正社員のシステムを「市場原理に適応する」ものへと変えるとともに、現在は分離されている正社員の世界と非正社員の世界を接続し、労使関係システム全体を「市場原理に適応する」ものにすることができよう。

(以上の議論については拙著『市場主義3.0』〈東洋経済新報社〉もご参照ください)

http://diamond.jp/articles/print/26412  

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