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「国家資本主義」vs「市場主義3.0」中国モデルと韓国モデルをどう評価するか
http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/509.html
投稿者 MR 日時 2012 年 9 月 05 日 16:37:24: cT5Wxjlo3Xe3.
 

• 【第5回】 2012年9月5日山田 久 [日本総合研究所調査部長]
「国家資本主義」vs「市場主義3.0」中国モデルと韓国モデルをどう評価するか

前回までに「市場主義1.0」「2.0」「3.0」と順にみてきたが、そこで明らかにしたように「3.0」は「1.0」と「2.0」の双方の限界を同時に乗り越えようというモデルであり、その意味で、先進諸国における“経済社会モデルの現時点で見通しうる到達点”ということができる。
これに対しては反論があろう。世界全体を見渡した時、新興国にパワーがシフトしており、先進国はおしなべて低成長が続いている。少なからぬ新興国が採用しているのは、国家が産業の発展に積極的に介入を行う「国家資本主義」モデルであり、それは経済システム面での市場原理の重視を基本原理とする「市場主義」への挑戦といえる。
さらには、リーマンショックを経て、市場メカニズムには根本的な欠陥があると主張する声が大きくなり、世界は再び規制強化・国家介入の時代に入ったとする見方も台頭している。そうしたなかで「国家資本主義」を採用する新興国が、グローバル経済でのプレゼンスを高めており、好むと好まざるとにかかわりなく、わが国も経済活動への積極的な国家介入を行わなければ生き残れない、という意見も出てきている。

国家資本主義とは
 国家資本主義についての体系的な書物をあらわしたイアン・ブレマーによれば、国家資本主義とは「政府が経済に主導的な役割を果たし、主として政治上の利益を得るために市場を活用する仕組み」である(『自由市場の終焉』日本経済新聞出版社)。
 その典型例が中国である。1978年の「改革開放」以来、中国は「社会主義モデル」を放棄し、経済面での市場原理の活用を進めたが、それは経済システム面での政府介入の最小化を目指す「市場主義」の方向ではなかった。あくまで共産党支配体制を維持することを目的に、市場原理を活用して富を増やし、人民の不満を解消しようというものである。

次のページ>> 抜群のパフォーマンスを示した中国の「国家資本主義」
 したがって、必ずしも市場原理に全幅の信頼を置いているわけではなく、必要と考えれば市場原理に国家が強力に介入する。例えば、金融システムは政策意図を実現するために、政府の強いコントロール下にある。中央銀行(中国人民銀行)は政府の一機関であり、政府の意向を強く受ける国有商業銀行が融資全体の3〜4割のシェアを占めている。
 また、エネルギーや通信などインフラ部門は国有企業の寡占状態にある。とりわけ、2008年のリーマンショック以降は、国有企業が存在感を増し、民間企業の活動が後退する「国進民退」の動きが指摘されている。
 ブレマーの定義では異なるが、近年躍進が目立つ韓国も、一部では「国家資本主義」として扱われることがある。国家資本主義を、国家の強力な介入によって経済発展を図る、というように大雑把にとらえれば、韓国も政府主導で産業の大再編を進め、さらにウォン安誘導や政策的なエネルギー・コストの低減を進めて、産官一体となって輸出促進に取り組んできたからだ。近年における韓国の躍進は目覚しく、産業政策における政府の積極的リーダーシップという意味での「国家資本主義」について、わが国も韓国を手本にすべきだという主張も聞かれる。

中国モデルの二面性
 中国経済の躍進の原動力となったのは、改革開放路線によって積極的に外資を導入し、その良質で安価で豊富な労働力の強みを遺憾なく発揮し、「世界の工場」となったことであった。同時に、広大な国土にインフラ投資を積極化させることで、輸出と投資の両輪で高成長を実現し、2010年にはGDP規模で世界第2位に躍り出た。
 この間、中国の「国家資本主義」は抜群のパフォーマンスを示した。1997年のアジア通貨危機発生の際、大半の東アジア諸国が為替安定のために実施していたドルペッグを放棄せざるを得なかったなかで、中国は人民元の対ドル相場防衛に成功した。2008年のリーマンショック直後も、4兆元の大型景気対策を実施し、2008〜09年と9%台の高成長率を達成した。「市場主義」を基本とする欧米経済が軒並みマイナス成長を余儀なくされるなか、「国家資本主義」の驚くべき高パフォーマンスを示した形といえる。

次のページ>> 中国では資本ストックの収益性が急激に低下
 このように、リーマンショックを経て、米英型の金融資本主義への批判が強まるなか、国家資本主義型の中国モデルのパフォーマンスの良好さは際立っている。さらに、民間の自主的活動に任せていてはなかなか進まない、未来を先取りした大規模プロジェクトにも取り組んでいる。例えば、政府主導の強力なリーダーシップのもと、世界各国の技術・リソースを使って、最先端の環境都市の建設が行われている。この分野ではわが国は、中国のはるか後塵を拝している感がある。
 しかしその一方で、中国のモデルは様々な問題を抱えているのも事実である。中国の近年の成長パターンをみると、個人消費の伸びがなかなか高まらない一方、固定資産投資の伸び率が加速しており、結果として、経済成長率がむしろやや低下しているにもかかわらず、投資比率が急激な上昇を見せている(図表1)。固定資産投資は工場や機械のような資本ストックとなるため、投資比率の急上昇は資本ストックの収益性が急激に低下していることを示唆している。とりわけ採算を無視した不動産開発投資の弊害が懸念される。住宅価格の年収倍率からみて、沿海部の大都市では大規模な「不動産バブル」が発生している状態にある。
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 そうしたなか、中国政府もバブル抑制と成長モデルの転換に乗り出している。2010年10月から2011年7月までに5回の利上げを行い、不動産投資規制を強化した。沿海部では政府主導で高付加価値産業の育成に力を入れている。しかし、欧州情勢の悪化から輸出が伸び悩むなか、不動産投資が急減速したことで2012年前半には景気が想定以上に下振れし、不動産投資規制を緩めざるを得なくなっている。産業構造の高付加価値化も思うように進んでいない。そもそも高付加価値産業の育成には、民間の創意工夫が必要であり、「国進民退」ではなく「民進国退」への流れを強める必要があるだろう。

次のページ>> 韓国モデルの強さと弱さ
さらに、所得格差の問題が激化している。高成長が続き、確かに沿海部を中心に豊かな中間層は大量に生まれたが、内陸部ではなお多くの貧困層が残っている。政府は内陸部の主要都市でも外資導入を進めるが、物流コストのかかる内陸部でも、沿海部で成功したような成長モデルが成り立つ保障はない。

韓国モデルの強さと弱さ
 90年代末の通貨危機を経て韓国経済が復活を遂げたのは、政府主導の産業再編がきっかけであり、近年でも、UAEの原発受注、韓流ブームなど、同国の躍進が政府の強力なリードに支えられている面がある点は確かである。
 しかし、韓国成長の原動力は、グローバルな市場競争を生き抜いた、サムスンやヒュンダイなどの民間企業の躍進である。それは当初は政府・IMF主導の産業再編をきっかけとしたものであったとしても、狭い国内市場だけでは生き残れないとの危機意識から、徹底した市場調査に基づいて、未開拓であった新興国市場でシェアを高めた経営戦略の成功によるものである。政府の役割で決定的に重要であったのは、FTA(自由貿易協定)の推進や外資誘致の積極化など、あくまでビジネス環境の整備であろう。
 もっとも、韓国産業の躍進も必ずしも盤石のものではない。自前の技術開発力はなお不十分であり、それを象徴的に示すのが日本からの貿易収支がなお大幅な赤字を計上していることである(図表2)。中核部品や高度な資本財は日本からの輸入品に頼らざるをえない。また、サムスンなどの韓国企業の躍進の一方で、国としての経済は様々な問題を抱えている。所得格差が拡大し、家計債務負担は増え、国民の将来不安は高まっている。大企業は繁栄しても、国民は豊かにならないという成長と分配の分離の問題が、ここでも生じている。
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次のページ>> バブルは「市場主義」固有の問題か
バブルは「市場主義」固有の問題か
 以上見てきたように、様々な限界や過大評価があるにもかかわらず、国家資本主義モデルが存在感を増している背景には、リーマンショックで市場主義に対する批判的な見方が強まっていることが大きい。市場主義に基づいて過度に自由化された金融市場の暴走が、バブルを引き起こしたのではないかという批判である。
 しかし、すでにみたように、国家資本主義の典型である中国においてもバブルは発生している。バブルとは将来への過剰期待が生み出すものであり、それは、どのような経済システムにおいても発生しうるものである。
 重要なのは、いかにその発生を抑える仕組みをシステムに組み込むかということである。金融政策目標における不動産価格の組み入れや、カウンターシクリカルな自己資本規制の導入(好況時に金融機関の必要自己資本比率を引き上げ、不況時にはこれを引き下げる)といった、金融政策における新たなルールの導入により、対応策を考えていくべきである。
日本が「市場主義3.0」を目指す意義
 @環境都市のような未来への投資という意味での国家プロジェクトの推進、AFTA締結をはじめとするビジネス環境整備での政府の役割、B企業経営における巧みなブランド戦略、といった個別の面で、わが国が中国や韓国から学ぶべき面は少なからず存在する。
 しかし、これまでみてきたように中国モデルや韓国モデルには限界や弱点もあり、成熟した先進国としてのわが国が、経済社会システム全体として目指すべきはやはり「市場主義3.0」型のモデルであると筆者は考える。それは以下の理由による。

次のページ>> 日本が「市場主義3.0」を目指すべき理由
 わが国が、高賃金を払うだけの付加価値の高い産業を持続的に生み出すには、市場競争における試行錯誤が重要であり、経済システムは市場原理重視を基本としていくことが不可欠である。一方、社会システム面では、世界最速のペースで進む少子高齢化により、財政負担を抑えつつ分配問題への対処を行うことが、日本ほど求められている国はない。「市場主義3.0」とは、正にそうした要請に応えるモデル――経済面では市場原理を重視し、社会政策面では政府の積極関与のもとで民間による効率的なサービス供給を進めるモデル――であるからだ。
「市場主義3.0」の、民間参画による効率的な社会政策を目指すという面に着目すれば、それは中国や韓国にとっても参考になるであろう。実は中国や韓国も深刻な所得格差問題を抱えると同時に、今後急激なスピードで少子高齢化が進んでいくからだ。その意味で、わが国で「市場主義3.0」のモデルが構築できれば、それはとりもなおさず同じ問題に直面するアジア新興国にとって、将来の経済社会モデルになるであろう。
(以上の議論については拙著『市場主義3.0』〈東洋経済新報社〉もご参照ください)
質問1 「市場主義3.0」、「国家資本主義」のうち、日本はどちら近いモデルを目指すべきだと思いますか?
市場主義3.0 56
国家資本主義 16
その他のモデル 28
http://diamond.jp/articles/-/24254

「市場主義3.0」=米英モデルと北欧モデルの
収斂の先にあるもの

前回、前々回で「市場主義1.0」および「市場主義2.0」について解説してきた。両者は、経済システムにおける“市場原理の重視”に共通点を持つ一方、社会システムでは“市場原理重視vs政府介入重視”で、対照的であることがご理解いただけたと思う。これまで具体的なケースとして、前者の典型を米英、後者を北欧として紹介してきたが、実は90年代以降、両者はそれぞれ固有の問題への対処策を講じるなかで徐々に変容してきており、現実には互いが接近する動きがみられている。
もちろん、各国には国民性や歴史的経緯の違いもあって完全に同一化することはありえない。しかし、一定の収束がうかがわれ、その方向性にあるものが筆者の呼ぶ「市場主義3.0」にほかならない。その具体像を明らかにする前に、90年代以降の北欧および米英における動向についてみておきたい。

北欧で進む
社会サービス分野への民間参入

 前回、「市場主義2.0」について解説を行った際、その原型は北欧モデルにあると述べた。ここでより厳密に定義すれば、“市場原理重視の経済システム”と“政府介入重視の社会システム”の組み合わせである「2.0」の原型は、「戦後から80年代までの北欧」でのモデルと言い直す必要がある。90年代以降の北欧では、純粋な「2.0」のモデルは変容を余儀なくされているからである。スウェーデンのケースでみてみよう。
 90年代初め、先進各国は、80年代後半期に大規模に発生した世界的な不動産バブルの崩壊に直面した。スウェーデンも例外ではなく、それは金融システムの崩壊をもたらすとともに、経済・財政・雇用に大打撃を与えた。経済成長率は91年から3年連続でマイナスとなり、90年に1.7%であった失業率は93年には9.0%にまで一気に上昇した。90年代初頭には黒字であった一般政府財政収支も、94年にはGDP比で10%を超える赤字に陥った。
次のページ>> “政府による積極関与”と“民間によるサービス供給”
 こうした状況下、1994年に発足した社会民主労働党を中心とする中道左派内閣は、歳出削減を中心とする思い切った財政再建策を打ち出す。数年間でGDP比8%にも及ぶ意欲的な財政緊縮策に着手したのである。これに伴って、医療・介護・保育など社会保障関連支出も抑制・削減が目指された。「市場主義2.0」の特徴は、政府(地方政府も含む)が「社会サービスを直接供給する」ところにあり、80年代までのスウェーデンでは医療・介護・保育・教育分野で公務員が大幅に増加していた。しかし、90年代には財政緊縮のために、これら分野の公的雇用が大きく減少することになった。
 一方、大都市部を中心に民間事業者への業務委託が進められ、「社会サービスは政府部門が直接供給する」という従来モデルの変容が進んだ。民間委託の動きは2006年以降の穏健党を中心とする中道右派政権のもとで一層積極化され、医療・介護、保育・教育のほか、職業訓練の分野にも広がっている。ただし、運営費の大部分は地方税を財源とする公費から拠出されており、「社会政策における“政府部門による積極関与”と“民間部門によるサービス供給”の組み合わせ」により、公平性と効率性の両立に向けた新たなモデルが模索されている。
 デンマークにおいても、90年代に入って、中道左派政権のもとで新自由主義的な政策がとられており、コペンハーゲン・カストロップ空港や電話公社の民営化など、公共セクターの改革が進められた。2000年代に入って中道右派が政権を担うようになると、新自由主義色はいっそう強められ、NPM(ニューパブリックマネジメント)に基づく効率化、独立法人化、病院の自由選択制の導入など、市場原理重視の政策が行われてきた(鈴木優美『デンマークの光と影』リベルタ出版)。デンマークでは、医療や教育サービスは公的部門が直接提供する基本は維持されているが、それでも民間病院が少しずつ増え始めており、社会サービス分野における民間事業者の参入がみられる。

米英における
社会政策の拡充の動き

 一方、米英についてもモデルの変容がみられる。第2回でレーガン・サッチャー時代の米英の経済社会モデルである「市場主義1.0」は、90年代以降のグローバル経済の構造変化によって限界が生じていると述べた。そうしたなか、米英でも限界を乗り超えようという取り組みが行われてきた。
次のページ>> 「第3の道」のキーコンセプトは「福祉から就労へ」
 英国では、1997年にブレア政権が誕生するが、社会政策面では従来の労働党の持つ社会保護的な考え方に、経済面では経済原理重視の考え方を取り込み、グローバリズムを積極的に受け入れようとした。いわゆる「第3の道」である。その鍵となったコンセプトは「福祉から就労へ」であり、弱者保護のための社会保障から就労促進のための社会保障への転換を図った。それは正に、北欧の社会保障に関する考え方に通底するものであった。
 ブレアの「第3の道」は、左派が新自由主義(市場主義1.0)に接近することで、グローバル化が進む経済の現実を受け入れる一方、新自由主義では解決できなかった、新しいグローバル環境がもたらす先進国での「貧困層増大」という問題に対処しようという試みであった。その成否には賛否両論があり、本質的には新自由主義の域を出ず、政権奪取のためのスローガンに過ぎなかったという見方もある。実際、国際比較をすれば、英国の社会保障規模はなお小さい方であり、本質において「市場主義1.0」の側面が色濃く残っていることは事実ではある。
 しかし、サッチャー改革で崩壊の危機にあった医療制度を拡充し、教育への公的予算を増やした。さらに、注目したいのは、医療・教育といった社会サービスに対する政府の関与を強める一方で、PFI(プライベートファイナンスイニシアティブ)やPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)という手法を導入し、病院や学校の建設に民間資本を導入すると同時に、経営体として民間事業者の参入を積極化させ、公共サービスの効率化・多様化を図ったことである。
 この「社会政策における“政府の積極関与”と“民間によるサービス供給”」という組み合わせは、前節にふれたスウェーデンでの取り組みと本質的に同じである。キャメロン中道右派政権でも「大きな社会」というコンセプトのもとで、社会政策の重要性の認識が継承される一方、社会起業家などの民間の力を取り込もうとしている。
 また、米国では、1993年に発足したクリントン政権が、ブレア政権が掲げた「福祉から就労へ」という基本コンセプトを先取りして、就労と福祉を連結させる社会保障の新しいあり方を追求していた。
次のページ>> 「市場主義3.0」の特徴とは
 具体的な仕掛けとして、民間の教育訓練プロバイダーを積極的に活用しつつ、官民共同でジョブマッチング、職業訓練、生活支援などの就労促進のためのサービスを、ワンストップで提供する仕組みが強化された。ここでも、公的な支出の一方民間事業者によるサービス提供により、社会サービスを強化しようという動きがみられる。
 オバマ政権でも、中道左派の立場から、国民皆保険を目指す医療制度改革が取り組まれ、いわゆるグリーン・ニューディール構想を具体化した2009年の経済回復・再投資法では、保育支援など多くの社会政策が拡充された。

「市場主義3.0」の
特徴とは何か

 以上みてきたことをまとめれば、「市場主義1.0」と「2.0」は、互いに影響を及ぼし合いながら改善を目指してきたが、両サイドから、「“政府による積極関与”と“民間によるサービス供給”」あるいは「公的な所得分配機能強化/市場原理重視のサービス供給」という、新たな社会モデルに接近する動きがみられる。
 医療・教育・雇用などの社会政策分野において、政府が積極的に関与して「社会的公平」の実現に対する働きかけを強める一方、その具体的なサービス供給は民間に委ねるという点に共通項を見出せるのだ。ちなみに、90年代半ば以降社会支出のGDP比をみると北欧諸国で低下する一方、米英で上昇しており、社会システム面での公的支出規模という量的側面からも収束傾向が窺われる(図表)。
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 こうした社会システムと経済面での市場原理重視の組み合わせ―「経済システム面での市場原理重視/社会システム面での政府による積極関与と民間によるサービス供給のミックス」こそが、「市場主義3.0」にほかならない。より具体的には「市場主義3.0」の経済社会モデルは、以下の特徴を持つ各サブシステムから構成される。
次のページ>> 「貧困層の増大」と「国家財政の悪化」の同時解決を目指す
第1に、産業システムとして、公的規制の緩和・撤廃を進め、企業の新陳代謝を促して時代の要請に合う形で産業構造の転換を図る。既存産業分野を公的に保護しようという発想は基本的に有しない。
 第2に、労働市場システムとして、産業構造転換に伴う労働移動を促進する。公的な職業紹介・職業訓練は公平にサービスを受けられるように、その制度設計に政府が積極的に関与し、費用も公的に保障する一方、サービスの提供は民間事業者に任せる。
 第3に、社会保障システムとして、年金・医療・介護分野など引退世代向けについては給付を抑制する。一方、保育や職業訓練など現役世代向けについては、費用を公的に負担して社会的公平を確保する一方、サービス供給主体は民営を基本として競争を促進する。
 重要なのは、「市場主義3.0」とは、「市場主義1.0」および「2.0」の双方がそれぞれの限界・問題点への有効な対応策を模索するなかで、収束の方向性がみえてきたという点だ。第2回で述べた通り、「市場主義1.0」の限界は、トリクルダウン効果の消滅により、経済活性化のもとでの「貧困層の増大」という問題が生じていることにあった。この「貧困層の増大」に対し、「3.0」は所得再分配機能の強化で対応する試みである。
 一方、「市場主義2.0」も社会保障費の増大による「国家財政の悪化」という問題に直面し、財政基盤が弱体化した。この状況に対し、「3.0」ではサービス供給主体を民間に任せることで、歳出の効率化と経済活性化による歳入増という効果をあげようとするのである。
 先進諸国は@グローバル経済における新興国台頭、および、A少子高齢化の進行、という共通の環境変化に直面している。@はトリクルダウンの一段の希薄化を通じて「貧困層の増大」圧力となる一方、Aは社会保障費の一層の増大を通じて「国家財政の悪化」をもたらす。こうした環境変化の方向性を勘案すれば、これらの2つの構造問題――「貧困層の増大」「国家財政の悪化」――を同時に解決しようとする「市場主義3.0」の有効性は高まり、各国で今後そのモデル構築に向けた取り組みが一段と進むものと考えられる。
(参考文献)山口二郎『ブレア時代のイギリス』岩波新書
(以上の議論については拙著『市場主義3.0』〈東洋経済新報社〉もご参照ください)
http://diamond.jp/articles/-/23567/votes

#市場主義3.0 発想は悪くないが
問題は、そんなにスマートに公権力が民に介入やサポートできるか、
具体的に、どういう制度で担保するか
 

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コメント
 
01. 2012年9月05日 17:58:37 : WFvVlluDdo
3,0てのがわかりにくいぜ。

単純に西欧型モデル(独仏など)といえばいい。そうすれば物まね大得意のジャパン人はあっというまに足りいれるだろうね。ただしノブリスオブリッジがカンソンミンピにとってかわればだけどさ。


02. 2012年9月05日 21:27:40 : Pj82T22SRI

>。ヨ経済システム面での市場原理重視/社会システム面での政府による積極関与と民間によるサービス供給のミックス」こそが、「市場主義3.0」

>第1に、産業システムとして、公的規制の緩和・撤廃

法人に対しては自由競争と適者生存は「市場主義1.0」

>第2に、労働市場システムとして、産業構造転換に伴う労働移動を促進する。公的な職業紹介・職業訓練は公平にサービスを受けられるように、その制度設計に政府が積極的に関与し、費用も公的に保障する一方、サービスの提供は民間事業者に任せる。
>第3に、社会保障システムとして、年金・医療・介護分野など引退世代向けについては給付を抑制する。一方、保育や職業訓練など現役世代向けについては、費用を公的に負担して社会的公平を確保する一方、サービス供給主体は民営を基本として競争を促進する。

個人に対しては福祉国家というのは、北欧の考え方「市場主義2.0」で
サービス供給主体は民営を基本というのが「市場主義3.0」のポイントだとしたら「市場主義1.5」が正しいネーミングだろう


03. 2012年9月05日 21:28:32 : PbtRCqBu7g
終戦直後の日本には、軍国主義と敗戦への反省もあってか、日本の官僚は
官尊民卑の中にも多少の「ノブレス・オブリージュ」的発想を持ち合わせていた
のかも知れません。

平和が60年以上続き、父母も祖父母もトップエリートで殆ど貴族のような高級官僚が
増えてきて「官尊民卑のどこが悪い?」と開き直っていますね。

また、終戦時に小学生だった世代も鬼籍に入り始め、「戦争を知らない」がために
逆に好戦的になっている政治家(「平和ボケ右翼」とでも呼びたい)が増え、
こいつ等は本当のケンカを知らないから悪賢い官僚どもに良いように丸め込まれて
ますな。

韓国のように政権交代すると前政権で利権を貪った物は片っ端から牢屋行き、という
のも極端ですが、日本の政治にももう少し緊張感が必要ですね。


04. 2012年9月05日 22:58:52 : ASoliZlDAM
韓国モデル?

金大中大統領が、いつの間にかアメリカに収奪されてしまった。
と嘆いておった。
これが韓国モデルか?モデルではない、アメリカの植民地が正解だろう。

にほんも、将来そのようになりたいのか?
そうなりつつある、政治家の国家自負が欠如しているからでないか?
アメリカにたなびきすぎる。
日本国民なのだぞ! 政界に、にほん武士はいないのか?


05. 2012年9月06日 05:22:18 : poRxZgP8CY
大局を誤らない政治家、清廉な官僚、会社は公共財と考える経営者、勤勉な労働者、聖職者としての教師、地域の絆、自然に対する畏敬、こういう日本型モデルに回帰すべきじゃないのか?

06. 2012年9月06日 22:25:25 : nCmEDTXI5Q
日本が目指すのは、内需循環型経済体制だ
そのためには、ベーシックインカムが理想
世界経済はもう泥沼で、輸出産業は厳しい
輸出産業も国内では、シェアが高いのでシャープでも延命出来る可能性は有る
まあ、でも考えを変えて貰う必要はある

07. 2012年9月06日 23:55:06 : LWcJ2Rp8kk
10年後話をしよう。
今あれがいい、これがいいと中身を確認せずに動くのは軽挙妄動というものだ。

08. 2012年9月07日 00:08:46 : zhFjt5aVkA
10年後なんて、呑気なこというな
もう、切羽詰まっている

09. 2012年9月07日 00:16:17 : zhFjt5aVkA
>>6
確かにサムスンのように、国がお金を投入して支えながら国民は貧しくなり、儲けるのは禿たかより、国民に金を配って日本製品を買って貰う方が経済的に循環する。
もう外需なんて頼ることは絶望的だから、円高どうこうの問題じゃない。
外貨は十分だ。目減りするだけだしな。

10. 暴論有理 2012年9月07日 23:41:08 : Lhw6YrhSkkinE : WFvVlluDdo
無理無理

ジャパン人には。

欧米以上に格差が広がるに違いない。

単一民族のくせに戦前までの封建制が戦争で貧乏人を殺したのとおなじさ。

教育が選別をして弱いものいじめを制度化してるのがジャパン人だ。

これは日本党員と裏日本人の隔離だ。

同じジャパン人だからなんて発想はやめたほうがいいぜ。上流は敵だと思え。かつてのボルシェビキの反富農闘争は犯罪だったけど今のジャパンの反上流闘争は正当性を持つ。

参考 http://www.asyura2.com/10/social8/msg/866.html
「日本党員と裏日本人」


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