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安倍政権誕生なら日本経済は本当に復活できるか? 金融政策で対立する“リフレ派”と“改革派”の長短
http://www.asyura2.com/12/senkyo139/msg/751.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 27 日 14:49:16: cT5Wxjlo3Xe3.
 

【第255回】 2012年11月27日 真壁昭夫 [信州大学教授]
安倍政権誕生なら日本経済は本当に復活できるか?
金融政策で対立する“リフレ派”と“改革派”の長短

安倍総裁の発言に反応を示す市場
続く株高・円安の背景に何がある?

 突然、野田首相が解散宣言を行なって以降、安倍・自民党総裁の発言に対して、金融市場はとりあえず株高・円安の反応を示している。

 その背景には、12月16日の選挙で自民党が勝利し、安倍氏が次の首相になると、日銀に対して、より思い切った金融政策の実行を要請するとの期待が盛り上がっていることがある。

 安倍氏の発言要旨を分析すると、主に2つの経済政策がある。1つは10年間で200兆円に上る大規模な公共投資を実施することであり、もう1つは日銀に対して、さらに積極的な金融緩和策の実施を要請することである。

 果たして、これらの政策でわが国経済が本当に復活し、株価の堅調な展開を期待できるだろうか。

 結論から言うと、政策の効果には疑問の余地がある。特に、短期的にプラスになっても、中長期的に見ると必ずしもわが国の経済にプラスになるとは限らない施策も含まれている。

 もともと経済政策には、多くのケースでメリット・デメリットの両面がある。そのため、経済専門家の間でも、賛否両論、様々な見解がある。特にデフレから脱却するための政策については、以前から経済学者やエコノミストの中で意見の対立が先鋭であった。今回、安倍総裁の発言は、その意見対立を一段と顕在化するきっかけとなった。

 デフレ脱却・経済再建の政策に関しては、大きく分けて2つの考え方がある。1つは、日銀が通貨供給量を大幅に増加させることで、政策的にインフレを起こす考え方だ。これが“リフレーション派”(リフレ派)と呼ばれる。

 それに対して2つ目は、日銀がいくらお金を供給しても、企業や国民がお金を使わなければ、デフレから抜け出すことは難しいという主張だ。構造改革などによってわが国経済の基礎体力を回復させることの方が重要と考える。そうした考え方を“改革派”と呼ぶことにする。

資金供給だけでデフレを脱却できるか?
“リフレ派”と“改革派”の対立点

 “リフレ派”の考え方では、インフレやデフレは基本的に貨幣的な経済現象であるから、中央銀行が積極的にお金を供給し続ければデフレから脱却できると主張する。それと同時に、円資金を大幅に供給することによって、円高傾向に歯止めをかけることが可能になると見ている。

 円高を止めて、デフレから足を抜くことできれば、わが国の経済は再び勢いを取り戻すことができるというのが基本的な考え方だ。

 一方“改革派”は、日銀がお金を供給しても、企業や国民が将来の不安などによってお金を使わなければ、お金はうまく回らないと考える。お金がうまく回らないと、デフレから脱却することは難しい。

 そのため、政策効果を高めるためには、政府が規制緩和や税制などの改革を行なって、企業経営者や人々のアニマルスピリッツ(「血気」と訳される)を回復させることが重要と考える。

 さらに為替市場の円高傾向についても、わが国の金融政策のみによってそのトレンドを変えることは難しいと見る。たとえば、円・ドルレートについても、米国という相手があるため、米国の経済状況・資金供給量などの要因が重要と主張する。

 “リフレ派”と“改革派”の両者は、お互いの見解を完全に否定するものではない。“リフレ派”も、わが国の構造改革の必要性を否定はしない。また、“改革派“は、金融緩和策が必要であることに異論はない。重要なポイントは、金融緩和策の効果と、その弊害をどのように考えるかだ。

 “リフレ派”は、一刻も早くデフレ・円高を止めるために、政策効果が顕在化するまで中央銀行がなりふり構わずお金を供給すべきという。今は、中長期的なマイナスの副作用を議論しているときではないとの認識だ。

 “改革派”は、過去の例から見ても、日銀の緩和策の効果は限定的であり、デフレ脱却のためには、回り道のように見えるかもしれないが、わが国経済の改革を行なうことが近道になると考える。逆に、短期的な弥縫策を労しても、一時的な効果しか期待できないと主張する。

「ヘリコプターからお金を撒け」
従来の金融政策では対処できない

 1990年代、世界経済が堅調な展開を示す中で、わが国がデフレに悩み景気低迷に直面していた頃、欧米の経済専門家の間では、「日銀が一層の金融緩和政策を採れば、問題は簡単に解決される」との指摘が多かった。中には、現在FRBの議長であるバーナンキ氏のように、「ヘリコプターからお金を撒けばよい」という先鋭的な発言もあった。

 しかし、欧米諸国が大規模な不動産バブルの後始末=バランスシート調整の最中にある現在、かつてのような「貨幣供給を増やせば全てが解決する」という単純なリフレ万能論は陰を潜めている。

 その背景には、米国のFRB、欧州のECB共に必死に金融緩和策を実施しているにもかかわらず、今までのところ、期待されたような効果が顕在化していないことがある。

 つまり、米国もユーロ圏諸国も、今通貨供給量を増やしただけでは、深刻な経済問題が解決できないことを、身をもって感じているのである。経済低迷に苦しむ日本を嘲笑することが、できなくなっているのである。

 最近、経済専門家の中にも、大規模なバブルの後など特定の経済状況の下では、金融政策の効果には明らかな限界があるとの認識が広がっている。通貨供給量をどれだけ増やしても、企業などの経済主体がお金を使うことを逡巡する状態が続くと、通貨の流通速度=金回りの度合いが低下して、金融緩和策の効果が減殺されることになるのである。

 また、積極的な金融緩和策を続けることでデフレから脱却し、インフレ状態になったとき、今度はそのインフレ率を都合の良い水準に止めることが難しくなる。悪性のハイパーインフレの怖さは、第一次世界大戦後のドイツの例を見ても明らかだ。

 さらにもう1つの懸念は、日銀による国債の引き受けや買入れが長期間続くと、国債発行に歯止めがかからなくなることだ。政府が国債をいくら出しても、それを日銀が購入し続けると、理論上、無制限に国債の発行が可能になる。国が青天井に国債を発行すると、いずれ国債の信用力が低下することは避けられない。つまり、国自身が信用を失ってしまうのである。

対立では一貫した金融政策ができない
政府と日銀の明確な協調体制が必要

 こうして考えると、デフレから脱却するためには、政府と日銀が明確に協力して経済の活性化を図ることが必要なことがよくわかる。政府が「デフレは日銀のせいだ」と言って、デフレ脱却の責任を日銀に押し付けても何も生まれない。

「日銀法を改正してでも、日銀により積極的な金融緩和策を実施させろ」との主張は、一種暴論の響きさえある。その主張を突き詰めると、政府の意にそぐわない日銀総裁は、いつも首を切られることになりかねない。

 それでは、一貫した金融政策を採ることはできない。それで、有効な金融政策の運営ができるはずはない。

 政府は、規制緩和や産業政策などを通して、デフレ脱却のためにやるべきことを率先して行なう姿勢を示した上で、日銀との明確な協調体制をつくらなければならない。

資金供給は大事だがそれだけではない
アニマルスピリッツを取り戻す政策へ

 デフレから抜け出すためには、お金を供給するだけでは効果は上がらない。せいぜい、経済活動や資産価格の下支えの効果しか生まない。企業や国民がお金を安心して使える環境を整えることが重要だ。

 わが国の場合には、企業の活動をもっと自由にするために規制緩和策をとることが必要だ。研究開発費に対する優遇税制の導入などの1つの選択肢になるだろう。それらの施策によって、企業が持っている本来のアニマルスピリッツを取り戻す手伝いをするのである。

 一方、国民の心配を解きほぐすことも重要だ。もともとわが国の家計はお金を持っている。社会保障制度の改革などによって、国民が心に抱える心配事を1つずつ取り除く努力をすべきだ。

 人々が安心して生活できるようになれば、お金を使えるようになるはずだ。そうした状況になれば、日銀が供給する潤沢なお金が上手く回るようになる。

 つまり、政府の政策運営によって、企業や家計の経済主体が安心して、お金を使える環境になり、そこに日銀が供給するお金が上手く噛み合う。それこそが、わが国経済がデフレから脱却し、新しい成長過程に向かって歩き出すための構図だ。

 おそらくその点について、“リフレ派”も“改革派”も共感できる部分は多いはずだ。そう考えると、政治サイドからの「日銀総裁の首を取ってでも・・・」という主張は、ただの勇み足にしか聞こえない。
http://diamond.jp/articles/print/28460


『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』

Q:安倍自民党の金融政策は正しいのか


   ◇回答
    □真壁昭夫  :信州大学経済学部教授  


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       ■■ 編集長から(寄稿家のみなさんへ)■■

 Q:1287への回答ありがとうございました。一昨年、「G2010」という電子書籍
製作・販売会社を作りました。現在、ウェブサイトの全面リニューアルの作業を、来
月中旬を目指して、 行っているところです。会社名は変わらず「G2010」ですが、わ
たし自身の著作、およびわたしがプロデュースする作品のために「村上龍電子本製作
所」というブランドを新たに設けることにしました。

 参考のために、最近いろいろなウェブサイトを改めて眺めているのですが、ツール
としてのインターネットがほぼ成熟を終えたような気がしました。わたしがインター
ネットをはじめたころは、「ホームページ」と「電子メール」だけで、まだブログも
ありませんでした。やがて、ツイッターが生まれ、Facebookに代表されるSNSが登場
して、オンラインショップもごく当たり前のものになり、インターネットの裾野は広
大なものになっています。

 さまざまなサイトを眺めていて、ウェブデザインも、独自の表現・専門領域として
定着したように思いました。つまり、ポスターなどの商業デザインや、本の装幀、雑
誌のデザイン&レイアウトと同じように、ウェブデザインという専門領域が完全に出
来あがったということです。本の装幀家に紙や印刷技術の知識が必要なように、ウェ
ブデザインは当然ながらコーディングなどの技術と結びついています。わたしは、ツ
イッターもSNSもほとんどやりません。いまだに、ウェブサイトと電子メールの可能
性を考えるのが、もっとも合っているようです。

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■今回の質問【Q:1288(番外編)】

 安倍総裁率いる自民党は、デフレや円高からの脱却を最優先として、物価上昇率の
目標を2%に設定するとして、そのための日銀法の改正も視野に入れているようです。
このような金融政策は、正しいのでしょうか。

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                                  村上龍
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 ■ 真壁昭夫  :信州大学経済学部教授

「金融緩和策の有効性」

元々、経済政策には、多くのケースでメリット・デメリットの両面があります。その
ため、経済専門家の間でも、政策の有効性については様々な見解が存在します。特に
デフレから脱却するための政策については、以前から、経済学者やエコノミストの中
で意見が対立しています。

デフレ脱却の政策に関しては、大きく分けて二つの考え方があると考えれば分り易い
でしょう。一つは、日銀が通貨供給量を大幅に増加させることで、政策的にインフレ
を起こす考え方です。こうした考え方を採る人たちを、一般的に“リフレーション派
(リフレ派)”と呼ぶことが多いようです。

もう一つの考え方は、日銀がいくらお金を供給しても、企業や国民が、お金を使わな
ければデフレから抜け出すことは難しいという主張です。この考え方によると、政府
が規制緩和や税制改革、さらには社会保障の改革などを行うことによって、わが国経
済の基礎体力を回復させることの方が重要と思われます。そうした考え方をする人た
ちを、“改革派”と呼ぶことが多いようです。

二つの考え方の最も異なる点は、日銀の金融緩和策の有効性についてです。“リフレ
派”は、積極的な金融緩和策の有効性を高く評価します。基本的に、インフレやデフ
レは貨幣的な経済現象であるため、中央銀行が積極的にお金を供給し続ければデフレ
から脱却できると主張します。

一方、“改革派”は、金融緩和策の効果には限界があると考えます。というのは、日
銀がお金を供給しても、企業や国民が、将来への不安などによってお金を使わなけれ
ば、お金はうまく回らないと考えるからです。お金がうまく回らないと、デフレから
脱却することは難しくなります。そのため、政策の効果を高めるためには、政府が規
制緩和や税制などの改革を行って、企業経営者や人々のアニマルスピリッツ(血気と
訳される)を回復させることが重要と考えます。

自分の経験から考えると、現在のわが国の経済状況からみれば、金融緩和策の効果に
は限界があるという考え方の方が説得力はあると思います。90年代中盤の経済低迷
期以降、日銀は基本的に金融緩和策を取ってきました。特に、1999年2月、日銀
はゼロ金利政策を採り、積極的な金融緩和策の実施に踏み込みました。

それにも拘らず、実際には民間部門の資金需要が伸びませんでした。結果として、金
融システムの中に溜まった資金は国債の購入に向かい、国の資金調達を支援すること
になりました。いくら日銀がお金を供給しても、企業や家計がリスク回避や将来不安
などでお金を使わないと、金融政策の効果がかなり限定されるということを肌で感じ
ました。ということは、民間部門の経済主体が安心してお金を使える状況にすること
が重要ということになります。

そうした経験から考えると、デフレから抜け出すためには、人々がお金を使おうとい
う気になった時、潤沢な資金供給が必要になるということができると思います。金融
緩和策の重要性を否定するつもりはありませんが、金融政策だけでデフレから抜け出
すという考え方にはやや違和感を持ちます。大切なことは、政府と日銀が、それぞれ
の役割期待をしっかり果たすことだと思います。

                       信州大学経済学部教授:真壁昭夫


   Q: 安倍自民党の金融政策は正しいのか

   ◇回答 
    □中島精也  :伊藤忠商事チーフエコノミスト     
    


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■今回の質問【Q:1288(番外編)】

 安倍総裁率いる自民党は、デフレや円高からの脱却を最優先として、物価上昇率の
目標を2%に設定するとして、そのための日銀法の改正も視野に入れているようです。
このような金融政策は、正しいのでしょうか。

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                                  村上龍
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 ■ 中島精也 :伊藤忠商事チーフエコノミスト

デフレからの脱却が金融政策だけで実現可能か、という問いに対しては、デフレや円
高から脱却すれば、あとはどうなっても構わない、というのであれば実現可能と答え
ます。日銀に無茶苦茶な緩和をやらせれば、余剰マネーが資産バブルを誘発するで
しょうし、為替は円安に振れる筈だからです。けど、そのような金融政策が正しい政
策か、という問いに対しては、その結果として生じる弊害を考慮すれば、正しいと言
い切るわけには行きません。

成長期待が高い経済では金融緩和により金利が低下して、融資を受けやすくなれば、
企業は借金して設備投資を増やす行動を取るでしょう。そういう条件のもとでは金融
政策の景気浮揚効果は大きいと言えます。高度経済成長時代の日本はそういう経済条
件を満たしていました。しかし、現在の日本経済は成長期待が低いという決定的な違
いが有ります。グローバル化や少子高齢化など日本経済を取り巻く環境が激変してい
るのに、構造改革や成長戦略を先送りにしてきたつけです。

成長期待が低い経済では金融緩和を実施しても、企業は設備投資を増やしません。設
備投資を行って、供給力を増やしたところで、肝心の需要の伸びが望めなければ、過
剰設備となって企業は苦しむだけです。よって、金融緩和効果を高めるためには、先
ず、潜在成長率を高めるよう、規制緩和などの成長戦略を実行するのが肝心です。そ
れを横に置いといて、大胆な金融緩和でデフレ脱却しようと思えば、どういう経済状
況になるかを以下に想像してみたいと思います。

現段階よりはスケールの異なる大規模な金融緩和を採用すると仮定しましょう。日銀
がリスク性のある金融資産をもっと大胆に買いあさることにすれば、株価や不動産価
格は上がるでしょうし、資産効果により消費が上向き、経済成長率が高まることが予
想されます。また、円安で輸出企業の採算が好転して景気にはプラスとなります。更
に、日銀が国債を直接引き受けしなくても、二次的に市場から大量に購入すれば、政
府は国債価格の下落(国債金利の上昇)を回避しつつ、公共事業の拡大を行うことが
可能となります。

このように当面はこれらの政策で日本経済は成長が刺激されるでしょうが、一方で、
肝心の潜在成長率が低いままでは設備投資が出ませんので、自律的な経済回復にはつ
ながりません。よって、成長率を一定の高さに保とうと思えば、エンドレスに金融緩
和を続けなければならなくなります。そうでない限り、景気は頓挫してしまうことに
なります。財政や金融政策の刺激策は基本的には呼び水であり、それ自体が成長の牽
引力ではないからです。

よって、成長戦略なき金融緩和の推進は大きな弊害をもたらすリスクが大きいのです。
1つはバブルを起こして景気を浮揚させようという試みですから、早晩、バブル崩壊
に見舞われるのは必至でしょう。資産価格の暴落でバランスシート不況の再来となり
ます。また、国債の事実上の引き受けとなれば、財政規律は緩み、現時点でもギリ
シャより悪化している政府債務は一段と膨らむことになるでしょう。永遠に国債の下
支えは不可能であり、いつかの時点で国債価格が下落すれば、国債利払いは急増して、
政府は支払不能に陥ることになりかねません。

何度も言いますが、デフレの原因は成長期待の低さにあるのです。よって、積み残し
の規制緩和など成長戦略を実行することで、成長期待を高めて投資を刺激するのがデ
フレ脱却の王道です。異常な金融緩和でバブルを引き起こしたり、世界の非常識であ
る国債の中銀引受などの政策により、デフレ脱却を目指そうとするやり方が正しいと
は思えません。


                      伊藤忠商事チーフエコノミスト:中島精也


■ 水牛健太郎 :経済評論家

正しくないと思います。

デフレ脱出のためのインフレターゲットの基本的な考え方は,物資に対してお金の量
が多ければインフレになるはずだ、ということです。歴史的に、財政危機に陥った政
府が通貨を大量に発行したためにハイパーインフレを引き起こしたことが何度もあり、
そうしたメカニズムが存在することは間違いありません。ハイパーインフレの歴史的
な教訓から、高率のインフレから脱出するために中央銀行が金融を引き締めるという
政策、ひいては、何かにつけて紙幣を増刷したがる政府から、金融政策の担い手であ
る中央銀行を独立させるという制度ができました。

リフレ派と言われる人たちは、「マネーの増加→インフレ」というメカニズムを信頼
し、それが実現しないのはどこかに間違いがあるからだ、という論理を主張していま
す。具体的には、中央銀行がインフレを恐れて思い切った金融緩和を行わないことが
間違っているのであり、中央銀行にインフレターゲットを義務付ける、ないしは政府
の監督権限を強めることにより、際限なく金融緩和できるようにすべきであると考え
ています。

「マネーの増加→インフレ」というメカニズムは、その単純さゆえになかなか反論し
にくいものがあります。ポール・クルーグマンのような権威のある経済学者もこれを
強く主張し、「さっさと不況を終わらせろ(End This Depression Now!)」といった
タイトルの本を出したりします。経済は政策で思いのままになるのであり、そのよう
にしないのは愚か者だと言わんばかりです。

理論的にクルーグマンに反論することは、私のような経済学修士号を辛うじて得た程
度の評論家には到底無理です。ただ「本当にそうなのかな。う〜ん」と頭を抱えるば
かりなのですが、それでもやはり納得できないのです。

その違和感は、直感としか言いようがなく、私の直感など誰も信じなくて当然なので
すが、それでもあえてそれを言葉にすれば「デフレを終わらせるのがそんなに簡単な、
テクニカルな問題なら、とっくに終わってるんじゃないのかな」ということです。人
類がお金を使い始めて少なくとも数千年の歴史がありますし、江戸時代にも既に金融
政策らしきものはありました。デフレという現象も、インフレほど頻繁ではないにし
ても、たびたび起きています。デフレを終わらせる特効薬があるなら、とっくに処方
箋が書かれているはずではないでしょうか(ハイパーインフレに関しては、ある程度
確立した処方箋があるのですから)。そしてそれを発見するのは、学者ではなくて、
金融政策の最前線に立っている当局者ではないかと思うのです。床屋政談ではあるま
いし、「あの連中はみんなそろって愚か者なのだ」などと怪気炎を挙げても、現実か
らは遠ざかるばかりです。

現在の日本のデフレに関しても、金融の緩和はずっと行われてきました。リフレ派の
人に言わせれば「不十分なのだ」ということになりますが、それではどこまでやれば
十分なのかは明らかではありません。「効果がない=不十分な証拠」ということなら、
「効果が出るまでやる」ということになって、きりがありません。「この薬は効くは
ずだ」という前提で薬を飲ませ、効かなければ「もっと飲め」ということなら、最後
には飲みすぎで死んでしまうかもしれません。死んでしまえばどんな病気もなくなり
ますが、それを「治った」とは言わないでしょう。

現在の日本のデフレは、人口の高齢化・減少や、物価水準の低いアジア経済との一体
化など、様々な要因が絡んでいるものだと思います。金融政策だけで解決できる問題
ではないでしょう。いたずらに金融当局にプレッシャーをかけても意味がないと思い
ます。

                           経済評論家:水牛健太郎

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コメント
 
01. 2012年11月27日 15:05:40 : XF7MTTC3G9
【財政破綻のすすめ:1】
http://www.adpweb.com/eco/eco690.html

「財政破綻」というキーワード
今週は、財政破綻にまつわり興味ある文章を読んだのでそれを取上げる。
(11年)11月7日付日経新聞、経済教室の「財政再建コストを測る」
(小林慶一郎一橋大学教授)という論説である。

小林慶一郎氏について、本誌は否定的な論調ではあるが01/3/26(第2
01号)「銀行の不良債権問題(その1)」を始め何度か取上げたことがあ
る。この学者は、元々は数学者であり、シカゴ大学で経済学を学んでいる。
筆者は、まず彼のこの経歴に不快感を感じていた。実際、正直言って「数
学界の落ちこぼれの経済学者」「シカゴ大学というカルトの殿堂の出身者
」といった先入観でこの学者を見ていた。

筆者は、昔から、経済学が数理経済学に偏重するようになってから経済学
の堕落が始まったと思っている。また数学界の落ちこぼれ学者を有り難が
っている日本の経済学界を異常と感じていた。また今日数式を解くことが
経済学を学ぶことと勘違いする風潮が蔓延している。

経済学が数学を利用するのは分るが、彼等は数式に乗るよう経済現象を過
度に単純化したり、非現実的な仮定を用いまた現実離れした前提条件を置
いてモデルを構築し分析する。例えば「生産要素(生産設備・労働)は常
に100%使われている」といったばかげた仮定を平気で用いたモデルで「財
政支出による追加的な需要はハイパーインフレを招くだけ」という、絶対
に有り得ない結論を導き出しこれを喧伝している。

彼等は得意の数学を駆使し精緻な分析を行うが、肝心の前提条件がボロボ
ロであるため、現実離れした結果が出る。ところが一頃、ケインズ経済学
への反発からか(ソ連の崩壊前後から)、この手の経済学者がノーベル経
済学賞を受賞するケースが増え、彼等こそ経済学者の本流と勘違いされた。
日本では彼等の一派が長らく「そのうち円や日本国債の暴落が起る」と主
張している。ところが現実の経済の動きは全く逆に動いている。

しかし彼等は、現実の方が間違っていると言い訳を捜し回る(多くの場合
「国民の金融資産が大きいから破綻の時期が遅れているだけ」と苦しい弁
明を行う。これを言い始めてどれだけの歳月が過ぎたのだ。)。自分の経
済モデルは正しいが、規制緩和が進んでいない現実経済の方が間違ってい
ると言って逆ギレする新古典派(ニュークラシカル)のエコノミストと似
ている。

彼等にとって現実の経済の動きより、自分達のモデルの正統性の方が大事
なのであろう。とんでもないこの種の経済学者は、自分達のいい加減なモ
デルに合うよう社会の方を変えることを主張する。まさに「構造改革派」
とは彼等のことである。

前置きが長くなったが、小林教授の文章のポイントを列挙すれば「財政再
建と破綻のコストの比較考量が重要」「財政が破綻するとインフレや銀行
危機誘発」「政府による外貨資産購入で将来の円安防げ」となる。ただし
最後の「外貨資産購入うんぬん」の話は省略する。

小林教授は、財政の持続可能性の観点から必要な増税、特に消費税の増税
率を提示している。これには何人かの経済学者の新古典派一般均衡モデル
を使った研究を紹介し、これらを参考に財政持続のために日本は30〜35%
の消費税が必要になると結論付けている。また消費税増税がいやならそれ
に相当する財政支出の削減が必要になると述べている。ここまではよく聞
く話であり目新しさはない。

ところが小林教授の今回の話で面白いところは、「今日の政治状況を見て
も分るように、このような増税や財政支出の削減は無理」と判断している
ところである。つまり彼は日本の財政が持続困難であり破綻に向かうと言
うのである。そしてこの「財政破綻」という言葉こそまさにキーワードで
ある。本誌が初めて小林慶一郎氏という経済学者を取上げて10年が過ぎた
が、随分と現実的になったものと筆者は感心した。筆者もこれしかないと
思っている。


02. JohnMung 2012年11月27日 15:06:35 : SfgJT2I6DyMEc : BLa3jGOndk

 私は、安倍自民にはまったく期待しない。民自公談合3党と維新は、大政翼賛への道、改憲、言論表現統制、徴兵徴用、戦争スタンバイへの道である。

 私の安倍晋三に対する疑念は特に、文鮮明の統一協会壺売り、相続税脱税などの疑惑、及び山口組の金庫番との関係である。以下、再掲。

 安倍ちゃんとくれば、下記のスレ中の写真。みなさんはどういう関係の方々だと思われますか?

「安倍晋三氏と朝鮮が繋がっている数々の証拠!大手マスコミが触れない安倍自民党総裁の秘密!(正しい情報探すブログ)」
 http://www.asyura2.com/12/senkyo137/msg/490.html
 投稿者 マジメウサギ 日時 2012 年 10 月 21 日 00:42:19: LiTIAH.ExHmqw

 永本壹柱(山口組の金庫番)から統一協会壺売り安部晋三様へ
 「あなた(安倍様)にとって私(永本) ただの通りすがり
 ちょっとふり向いてみただけの 異邦人」(「異邦人」ー久保田早紀ー)でしょうか?

 議員会館内で、この写真は、誰が見ても、見ず知らずの関係とは思わないでしょう。
 安倍ちゃんは、元首相だから、街角や商店街などでも、これほどの写真は無理でしょう。

 安倍ちゃんは、どうも、韓国・朝鮮系や893の方々と昵懇のように思えてならない。
 自民党のみなさんはどのようにお思いだろうか?

 誤解のないように、重ねて付言するが、自民はもとより、民主も公明も、そして維新などは、日米既得権益層の利権擁護・増進を旨とするシロアリ一派であり、多くの国民の敵・売国奴である。


03. 2012年11月27日 15:06:55 : XF7MTTC3G9
【財政破綻のすすめ:2】
http://www.adpweb.com/eco/eco690.html
経済厚生上のコストの比較
小林教授の文章で次に重要な概念は「経済厚生上のコスト」というもので
ある。具体的には増税、または財政破綻が及ぼす国民経済への悪影響とい
ったものである。教授は増税・財政支出削減による「経済厚生上のコスト
」は新古典派一般均衡モデルで算出できるとしている。

これによると30〜35%の消費税で国民の消費が1.5%減るのと同じと述べ
ている。たったそれくらいと思われるが、新古典派一般均衡モデルの精度
についてはあまり突っ込みたくない。おそらく何かの間違いであろう。

ここで小林教授の文章で最重要なキーワードである「財政破綻」の説明を
する。教授は、増税や財政支出削減は無理であり、結果的に足らない財源
は国債を発行し、これを中央銀行(日銀)が買入れる他はないと結論付け
ている。そしてこの中央銀行が国債を買う事態をまさに「財政破綻」と定
義している。

つまり何てことはなく筆者達が主張しているセーニアリッジ政策を「財政破
綻」と呼んでいるだけである。おそらく日銀による国債買入れだけでなく政
府紙幣発行も「財政破綻」と言うのであろう。しかし日銀による国債買入れ
は毎月行われていることであり、日銀の国債保有残高は70兆円程度あると推
定される。つまり日本は既に教授の言うところの「財政破綻」状態がずっと
続いていると言える。

しかし一方の「財政破綻」(中央銀行による国債買入れ)の「経済厚生上の
コスト」を測る計量モデルがないことを教授は指摘する。そして「財政再建
(増税や財政支出削減による)と破綻のコストの比較考量が重要」と一つの
結論を出している。

そしてもう一つの結論が「財政が破綻するとインフレや銀行危機誘発」とい
うことである。ここでいう銀行危機誘発とは、中央銀行による国債買入れに
よって大幅なインフレが起り国債価格が下がり、つまり国債価格の暴落によ
って銀行の経営が危機に陥るという話である。

ここから小林教授の文章の中で明らかに事実と違う点を指摘する。まず「中
央銀行による国債買入れによって大幅なインフレが起る」という箇所である
。今日の日本のように大きなデフレギャップが存在する場合、中央銀行の国
債買入れによる追加的な需要増(財政支出の増加)があっても簡単には物価
上昇は起らない。さらに今日の消費の構成は、需要が増えることによってむ
しろ価格が下がる物の割合が大きくなっている(電化製品や通信関連消費な
ど)。

実際、日本で日銀が国債の買い切りオペを始めてからそれが原因で物価が上
昇したという話は聞かない。むしろ財政支出を増加させるため、もっと大胆
に国債を発行し日銀がそれを買入れるべきと筆者達は言っているのだ。また
もちろん筆者達は、無制限に日銀の国債購入や政府紙幣の発行をしろと言っ
ているのではない。国民が容認できる物価上昇の範囲内のセーニアリッジ政
策である。

また「中央銀行による国債買入れによる大幅なインフレが国債の暴落を招き、
国債を保有している銀行の経営を危機に陥らせる」という表現がまことに奇
妙と言いたい。中央銀行が国債を買入れるのに、なぜ国債価格が暴落するの
か明らかに矛盾している。極端な話、発行している国債の全てを買い切っても
良いのである。

ただ文章の全体を通して面白いという部分がある(もっともそれがないのなら
本誌でわざわざ取上げることはない)。前述のように「財政破綻」の「経済厚
生上のコスト」を測る計量モデルがないことを教授が指摘している点である。
小林教授は財政再建(増税や財政支出削減による)と「財政破綻」(中央銀行
による国債買入れ)の経済厚生上のコストを測り、より厚生上のコストの小さ
い政策を選択すべきと述べている。

まさにこれこそ筆者が日頃主張していることである。セーニアリッジ政策によっ
て有効需要が増え物価が上昇する可能性はあるが、これによってGDPが増え国民
所得が増え消費が増える。一方、増税(消費税増税)や財政支出削減という財政
再建政策なら確実に物価が上昇するが実質国民所得は減少する。両方とも同じ物
価上昇が起ると想定されるが、筆者は明らかにセーニアリッジ政策(教授の言う
財政破綻)の方が厚生上のコストは小さい(むしろコストはマイナスと思われる
)と考える。
そして小林教授には是非ともこの研究を進めてもらいたい。ただ新古典派一般均
衡モデルを使うのはやめてもらいたいものである。他にもっとましなモデルがあ
るであろう。


04. 2012年11月27日 16:31:41 : YxpFguEt7k
玉造順一氏
「相変わらず自民党の阿倍総裁は労働組合批判を繰り返している。同じ国民を◯と×に分断する保守主義って何なんだろうか?
 加えて、資本主義の民主主義国では、使用者側と労働組合を社会的パートナーと位置付けるのが普通。そういう勉強が足りないのか、選挙のために仮想敵を作りたいだけなのか。」
https://twitter.com/jun1tama/status/273042064256663554

「僕、カッコイイ? 僕、軍の最高責任者に見える?」が一番気になる人。
オツムは三流。


05. 2012年11月27日 17:02:14 : cWIBtbognM
経済なんか安倍お坊ちゃまくんにまかせられないし、
お坊ちゃまくんの頭の中は改憲、徴兵、戦争する準備しか
考えてないように感じます

06. 2012年11月27日 18:29:35 : rHOEQaqtBk
マニフェストをものの見事に反故にした、民主党政府のおかげで国民は政府を信用していない。
マニフェストの進捗を示す工程表はどうなった?
いまさら、選挙毎のマニフェスト発表してもネコやハトですら見向きをしない。

だから、国民は自衛するしかない。
つつましく生きるしかない。
無駄使いせず、節約して生活する。

信じて託せる物がないんだよねー。
この上、円の価値が下がれば国が衰退するだけだ。

そんな状況で景気が良くなる訳ないでしょ。



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