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“独立”する富裕層  〜アメリカ 深まる社会の分断〜
http://www.asyura2.com/13/ban6/msg/649.html
投稿者 中川隆 日時 2015 年 10 月 12 日 17:41:12: 3bF/xW6Ehzs4I
 

(回答先: ピケティで明けました 投稿者 中川隆 日時 2015 年 1 月 03 日 17:38:30)


“独立”する富裕層  - NHK クローズアップ現代 2014年4月22日(火)放送
〜アメリカ 深まる社会の分断〜

100万ドル以上の資産を持つアメリカの富裕層。
その富裕層が今、自治体の在り方を変えようとしています。
貧富の格差による社会の分断が進むアメリカ。

富裕層は税金が貧困層のためばかりに使われていると反発。
みずからが住む地区を周囲と切り離し、新たな自治体を作る動きを強めています。

女性
「高い税金を払っているのに、それに見合うサービスを受けていません。」

全米で富裕層の自治体は急増。
社会を2分する議論が起きています。

報道官
「反対派を押し切って、新たな市が誕生しました。」

オバマ大統領も危機感を強めています。

オバマ大統領
「アメリカの格差は拡大し、固定化している。」

一方、富裕層を失った自治体は税収が減り、公共サービスを削減。
貧困層が打撃を受けています。

男性
「公立病院の予算が削減されたので、私たち家族は困っています。」

深まる富裕層と貧困層の分断。
アメリカ社会はどこへ向かうのか。
最前線からの報告です。

“独立”する富裕層 税に対する不満


アメリカ南部、ジョージア州の議事堂。
先月(3月)新たな自治体の設立を求める法案を巡り、議論が交わされていました。
この法案を提出したのは会社経営者や弁護士など、富裕層を中心とした住民のグループです。

住民
「私たちが作る市の方が、税金をより有効に使える。
この法案の支持を求める。」

住民
「今の自治体は住民の方を向いていない。
私の会社をサポートしてくれる自治体を作りたい。」

一方、法案は富裕層の身勝手だと批判する声も上がりました。

反対派
「これは有色人種や貧困層を隔離するための意図的な行為だ。」


自治体の設立は地域住民の意思だとする富裕層の報告書にも、抗議が殺到しました。

反対派
「あなたが作る自治体に住みたい人はいない。
あなたはおかしい。
うその報告をしている。」

男性
「いや、おかしいのはあなただ。
私たちの報告は正しい。」

法案を提出したグループの代表、ウッドワースさんです。
経営コンサルタントの夫を持ち、自身もインテリア関係の会社を経営。
湖畔に邸宅を構えています。
自治体の設立に動いたきっかけは税金の使われ方への不満でした。
特に問題にしているのが警察官の配置です。

マリーケイ・ウッドワースさん
「私の家の近くでも麻薬取引や売春が行われるようになってきた。」

警察官は貧困層が多く住む治安の悪い地区にばかり回され、自分の地区はおざなりにされていると感じていたのです。

マリーケイ・ウッドワースさん
「自分たちが支払う税金に見合う行政サービスを受けているとは思えません。
私たちは社会を分断したいわけではありません。
ただこれまでの自治体に代わって、より自分たちに合った自治体を作りたいだけなのです。」

富裕層が作る自治体 衝撃の運営手法とは


富裕層の動きを後押ししているのが、同じジョージア州で大きな成功を収めた市の存在です。
州の北部にある人口9万4,000人のサンディ・スプリングス市です。
市民の平均年収は1,000万円近く。
医師や弁護士、会社経営者などが多く住む高級住宅地です。

市が誕生したのは2005年。
住民投票で94%の圧倒的賛成を得て、それまで属していたフルトン郡から分離したのです。
貧困層に多く配分されていた税金を取り戻そうという主張が、富裕層だけでなく中間層にも支持されたのです。

サンディ・スプリングス市 エバ・ガランボス初代市長
「私たちの税金はほかの場所で使われ、私たちのためには使われていませんでした。
1ドルの税金につき半分の50セントしか、サンディ・スプリングスに使われていなかったのです。」

住民グループ代表 オリバー・ポーターさん
「政府による所得の再分配には反対です。
人のお金を盗む行為だと思います。」

ジョージア州で50年ぶりに新たな市として誕生した、サンディ・スプリングス。
州の法律によってさまざまな財源が与えられました。
市民が支払う固定資産税の15%。
売上税の一部。
そして酒税や事業の登録料など、市の去年(2013年)の収入は、日本円にしておよそ90億円。
州で1、2を争う豊かな自治体が誕生したのです。

さらに富裕層は、市の運営にビジネスのノウハウを取り入れました。
警察と消防を除く、すべての業務を民間に委託。
同じ規模の市なら数百人は必要な職員の数を9人に抑え、徹底的なコストカットを進めました。

市民課や税務課。
道路や公園などを造る建設課。
さらに、市の裁判所の業務まで民間に委託しました。
裁判長は必要なときだけ時給100ドルで短期雇用します。


この結果、当初年間5,500万ドルと試算された市の運営費を、半分以下に抑えることに成功したのです。
コストカットによって生まれたお金は富裕層の要望によって、市民の安全を守るサービスに使われています。


女性職員
「事故発生、けが人なし。」

ここは24時間市民から通報を受け付ける、民間の緊急センターです。
市民の承諾を得て、住所や家族構成、持病の有無など、さまざまなデータが登録されています。

10秒以内に電話を取ることが義務づけられ、90秒で警察や消防が出動します。
市が市内全域に配置する警察官はおよそ150人。
早ければ2分で、現場に警察官が到着するといいます。
現在、市民の9割が公共サービスに満足と回答。
うわさを聞いた富裕層が、全米から相次いで流入し人口が増えています。

市民
「(この街が)好きかって?
大好きよ。
ニューヨークから移り住んで来たけど、ここにはすべてが揃っているわ。」

市民
「とても安全だと感じています。
サンディ・スプリングス市に住めて幸せです。」

今サンディ・スプリングス市の設立と運営のノウハウを知りたいと、全米各地から視察が相次いでいます。
そのほとんどが、税金の使われ方に不満を持つ富裕層だといいます。
サンディ・スプリングス市を手本に誕生した自治体は、ジョージア州ですでに5つ。
現在、フロリダ州、テキサス州カリフォルニア州などで30余りの自治体が、新たに誕生しようとしています。

サンディ・スプリングス市 ラスティ・ポール市長
「自治体は税金を当たり前だと思わないことです。
税金に見合うサービスを提供しなければ、市民はすぐ不満をため、税金を払わなくなります。
公共サービスの質を高めて、市民に税金を払う動機を与え続けるのです。」

“独立”する富裕層 アメリカ 深まる分断

このように富裕層が、自治体を作る動き、今後、全米に拡大していくと見られています。
一方で富裕層がいなくなった自治体は、歳入が減って、一部公共サービスの削減を始めています。
貧困層の暮らしに暗い影を落とし始めています。

富裕層を失った自治体 貧困層に打撃が


ジョージア州フルトン郡。
サンディ・スプリングス市の設立などによって、年間40億円余り税収が減りました。
南部のサウス・フルトン。
郡の中で最も貧しい地域で、住民の生活に大きな影響が出ています。

機械部品のセールスをする、アブラハム・ワトソンさんです。
今年(2014年)に入り、次々と公共サービスが打ち切りになっていると訴えています。

アブラハム・ワトソンさん
「臭いです。
ごみが腐り始めています。
ごみ収集車がめったに来なくなったので。」

3人の子どもを持つワトソンさん。
暮らしに余裕がない中、公共サービスの利用は欠かせません。
家の近くにある、フルトン郡が運営する図書館です。
子どもたちは放課後や週末、ここで読書や宿題をしてきました。
しかし今年の2月、突然開館時間が2時間以上短縮されました。

算数の勉強に使っているパソコンも、閉館時間が来れば強制的にシャットダウンされます。

子ども
「閉館につき使用不可。」

アブラハム・ワトソンさん
「閉館するから切ったんだ。」

閉館時間の変更は、事前に住民には知らされていませんでした。

アブラハム・ワトソンさん
「誰が閉館時間を決めているのか?」

職員
「議会で承認されたんですよ、予算が削減されたから。」

アブラハム・ワトソンさん
「郡の議会で?
予算の削減が理由?」

職員
「予算の削減。」

フルトン郡の一般会計です。
歳入が減少し続け、ついに2年前歳出が上回るようになり、公共サービスの削減が余儀なくされているのです。
図書館のほかに、郡が運営する公園の予算も削減されました。
20か所ある高齢者センターの食事代は、一部値上げになりました。

中でも深刻なのが、貧困層の治療を中心に行う公立病院の予算削減です。
2,500万ドル、日本円でおよそ26億円が削減されることになりました。
医師の数が減らされ、診察に支障が出るのではないかと不安が広がっています。

フルトン郡 ビル・エドワーズ議員
「郡の税収が少なくなれば、当然その範囲でやりくりしなければなりません。
やむをえずサービスをカットしているのです。
私は、フルトン郡の住民が状況を理解することを望んでいます。
さもなければ、フルトン郡の財政は破綻してしまいます。
これだけは、なんとしても防がなくてはなりません。」

ワトソンさんは公立病院の予算削減が、息子のキャメロン君に与える影響を心配しています。

アブラハム・ワトソンさん
「この子には右耳に障害があります。
耳がふさがった状態になっているのです。
息子の治療ができる専門医の数が削られてしまうから、予算の削減は本当に困ります。」

全米で貧富の格差の研究をしてきたコナー准教授です。
富裕層の自治体設立が格差の拡大に拍車をかけていると、警鐘を鳴らしています。

テキサス大学 公共社会学部 マイカン・コナー准教授
「アメリカ社会では分断が深まっています。
同じ地域の中でも少し離れただけで、全く違う社会が生まれています。
経済面でも教育面でも、機会の平等が失われているのです。
このまま富裕層の独立が続けば、公共サービスを支える人がいなくなってしまいます。
それを顧みず、社会の分断は進む一方です。」

“独立”する富裕層 アメリカ 深まる分断

ゲスト堤未果さん(ジャーナリスト)

●格差拡大し加速化する社会の分断 この動きをどう受け止める?

今まさにアメリカは、経済格差が完全に1%の持てる者とそれからそれ以外の持たざる者、完全に国を分断してしまっていると。
そういう状況になっています。
(分断されていると。これが法律の下に行われている。自治体を作るという動きはそうだったが?)
はい。
もともと合法的に市が独立するということはもちろん可能なんですけれども、サンディ・スプリングス市のように、統治機能まで含めて民営化してしまう、民間に委託して、そうするともう税金というものが全く意味が変わってきて、サービスをお金で買うという契約社会になっていくわけですね。
その分税が、税金が囲い込まれることになるので、不動産の価格は上がる、その周りの地域が税収が減って、荒廃していくと。
ですから全米の都市の中に、捨てられた居住区のようなものが、点々と今存在している状況になっております。

●富裕層やその周辺地域 実際に取材に行ってどうだったか?

サンディ・スプリングス市自体は、本当にお金持ちの社会主義国のような、天国のような、ぴかぴかですばらしい所だったんですけど、本当に目に見えないフェンスが建っていて。
(目に見えないフェンス?)
はい、フェンスで囲われている、合法的な特権地区というような形ですね。
先ほども言いましたように、税収がほかで減っていきますので、やはり仕事がなくなって、まず治安が悪くなるんですね。
そうすると犯罪率が高くなりますから、ますますフェンスは高くなっていく。
ここがやっぱり1番大きいです。
サンディ・スプリングス市のような所の近くにある都市で取材をしたときに、公共サービスの1つとして刑務所を維持できないから開放すると。
(刑務所を開放する?すると、どうなるのか?)
そうなると囚人が街に解放されて、たくさん普通に歩くようになるんですけれども、警察もまた公務員ですから、警察は失業中なわけです。
ですから非常に恐ろしいSFのような状況になっていて、片や、目に見えないフェンスの中の富裕層の地区は、非常にハイテクでハイセキュリティーの地区になっていると、すごくコントラストが激しかったですね。

●公共サービスの1つ 教育という点ではどうだったか?

アメリカは、教育予算が連邦と自治体と半分ずつ予算を出すんですけれども、サンディ・スプリングス市のような例えば富裕層の街というのは、公立の学校にやる必要がないので、公教育にお金を出すという概念がなくなっていくんですね。
そうしますと、公立の学校が切り捨てられていった州では、自治体では、貧困層の子どもの受け皿がなくなっていくので、教育難民、学校に行かれなくなった子どもたちが、もう全米各地の都市であふれているという、そこまで事態が進んでおります。
(先進国のアメリカで、そういうことがすでに起きている?)
そうですね。
ブッシュ政権、オバマ政権と続いた2大政権で公教育を解体して、教育ビジネスという民間サービスに委託するということを国が後押ししてやってきたんですね。
ですから公教育というのは、弱い立場の子どもたちを平等にすくい取るという社会的共通資本ですから、これが徐々に解体されているということです。

●フェンスを隔て、本当に互いが見えないのか?

そうですね。
これは本当に今、アメリカで起きていることというのは、1つの国の中に2つの違う国が存在しているような感じで、例えば日本で若年ホームレスは私たちの目に映らないというようなこといわれますけれども、フェンスの中の富裕層にとって、フェンスの外の荒廃した、捨てられた居住区の人たちは、やはり見えないわけですね。
全くお互い別の次元に住んでいるような、そんな状況になっています。
(別の次元?)
はい。

●格差是正のためにある公共サービス 富裕層がその義務を放棄するとどうなる?

公共ですとか税金ですとか、共同体とか、もっといってしまうと、もう国とは何かという、そのコンセプトが全く違うものになっていく。
お金を払って、その分のサービスをもらうという契約社会のようになっていくわけですよね。
ですから言ってみれば、お金がなくなったらそこでそのコミュニティーに、地区の中には恐らくいられなくなると、それが縁の切れ目のようになってしまう。
公共という概念があれば、弱い立場になったり、急に事故に遭って障害を負ってしまったり、高齢になってしまったりという、困った立場になったときは、税金を払っている分、国や自治体が守ってくれると、それが公共の概念なんですけれども、全くこれが対極にあるという、こちらは株式会社化された自治体であり、国家だということになっています。

●アメリカンドリーム 今は存在しないような状況?

80年代ぐらいまでは頑張れば報われるとか、努力すればチャンスをつかめば、マイノリティーでもスターになれる、そういうのがあったんですけれど、今、構造として1%が99%を切り捨てていく構造を、国の政策が後押しをしているために、アメリカンドリームが機能する構造自体が崩れていると。
そしてまた中流層が消滅していますから、ますます富める者はますます富む、それ以外の者は地盤沈下していくという、国の構造が全く変わってしまっているんですね。

●アメリカという国は今後どうなっていくのか?

今アメリカ国内にも2つの流れがありまして、オバマ大統領はブッシュ政権の政策を継承して、1%のための、より1%が大きくなっていくような政策の方向性を進めてはいるんですけれども、一方で、1対99%の分断はおかしいじゃないかと、失われたものをもう一度取り戻したいという声が、相当アメリカで大きくなっている。
これ今、どちらの流れがこの国を、未来を引っ張っていくかという、今ちょうど岐路にいるという。
(岐路とは、国を見つめ直す時期ということか?)
国とか共同体は何かということですね。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3488_all.html  

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コメント
 
1. 中川隆[-6380] koaQ7Jey 2017年10月02日 10:24:08 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]

カタルーニャ独立運動とナショナリズム 2017-10-02

 州都バルセロナを擁するスペインの東北部、カタルーニャ州において、スペインからの独立の是非を問う住民投票が強行され、混乱に陥っています。


『スペイン カタルーニャ州の住民投票開始も混乱
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171001/k10011164091000.html

 スペイン北東部のカタルーニャ州で、スペインからの独立の賛否を問う住民投票が始まりました。しかし中央政府は、投票は憲法違反だとして、警察が、一部の投票所の封鎖に乗り出し、住民との間で衝突に発展して複数のけが人も出ており、混乱が広がっています。

 スペイン第2の都市バルセロナを中心とする北東部のカタルーニャ州は、独自の言語や文化を持ち長年スペインからの独立運動が続いていて、日本時間の1日午後4時ごろから独立の賛否を問う住民投票が始まりました。
 州政府は、投票の結果独立賛成が過半数を占めれば一方的にスペインからの独立を宣言するとしています。

 しかし中央政府は、投票は憲法違反で無効だとして実力で阻止する措置に乗りだし、一部の投票所で投票箱などを押収したことを明らかにしました。
 各地の投票所では投票しようとする住民とこれを阻止する警察の機動隊との衝突にも発展し、一部では、警察がゴム弾を発射するなどしてけが人も出ています。(後略)』


 スコットランドのイギリスからの独立騒動の時も指摘しましたが、スコットランドにせよ、カタルーニャにせよ、いわゆる「ナショナリズム」に基づき、各地の住民が独立を求めているのではないと思います。


 むしろ話は逆で、スコットランドやカタルーニャの独立運動は、イギリスやスペインの「ナショナリズムの崩壊」の一環であると確信しているのです。


 カタルーニャ州が独立を志向するのは、元々、民族的に特色があるのは確かです。イザベル女王とフェルナンド国王が結婚し、カステーリャ王国とアラゴン王国が統合された際に、カタルーニャも併合されたのです。


 もっとも、それ以上に重要な事情は、カタルーニャがスペインの経済の中心であることになります。カタルーニャ州は、自動車産業などが発展し、スペインのGDPの20%を生産している地域なのです。


 スペイン中央政府に税金をたくさん支払っているにも関わらず、交付金が少なく、
「カタルーニャ州は損をしている」
 ということで、独立運動が盛んになったのでございます。


 日本で言えば、
「東京から税金を吸い上げ、地方交付税などで地方に回している! 東京都民は損をしている! 独立だ!」
 といった感じでございましょうか


 国家とは、ナショナリズムがなければ成立しません。ナショナリズム(国民意識)の本質は、非常事態発生時の「助け合い」の気持ちになります。


 東京都の税金が地方に交付税として配分されるのは、
「非常事態発生時に、日本の各地方がそれなりに経済力(モノやサービスを生産する力)を保有していなければ、助け合いができない」
 ためです。


 分かりやすい例を出すと、このまま東京一極集中が続き、人口の大半が首都圏で暮らすようになった日本国において、首都直下型地震が起きたらどうなるのか? です。


 もちろん、日本の各地は被災地を助けようと努力はするでしょうが、経済力がなければどうにもなりません。


 東京から税金を吸い上げ、各地に配分する地方交付税は、「東京都民の安全保障」という観点からも、正当化される政策なのでございます。


 ところが、価値観から「安全保障」を排除し、「カネ」を中心に考えるようになると、それこそ、
「東京から税金を吸い上げ、地方交付税などで地方に回している! 東京都民は損をしている! 独立だ!」
 といったバカげた話になりかねないのです。というよりも、そのまんまの独立運動を繰り広げているのが、現在のカタルーニャ州です。


 カタルーニャ独立運動は、カタルーニャ州民のナショナリズムの高揚でも何でもありません。単なる、スペイン王国のナショナリズムの崩壊過程なのでございます。


 東日本大震災の際に、
「東北は神戸とは違い、GDPを稼がないから、復興させる必要はない」
 といった主旨のことを述べた官僚(元官僚?)がいたという話を耳にしました。


 次なる震災が「首都圏」だったとき、我々(都民)は東北の「同じ国民」にも助けてもらわなければならない。そのためには、何としても東北を復興させ、経済力を蓄積しなければならない。


 といった、国家の安全保障の概念が、グローバリズムの蔓延により失われ、国民の「助け合いの精神」が壊され、一人一人が非常事態に対して脆弱になっていている。


 ナショナリズムの崩壊と安全保障の弱体化は、別に日本に限った問題ではないことが、カタルーニャ独立運動から見て取れるのです。


 我々、人間は、一人一人は本当に弱い存在です。我々は一人で、東日本大震災のような大規模自然災害に立ち向かえますか? 北朝鮮や中国といった敵性国家の侵略行為から、個人で家族を護れますか。


 できるはずがありません。


 だからこそ、「国民が助け合う」というナショナリズムを基盤に、国家が成立している。少なくとも現代という時代において、人間は国家という共同体なしでは生きられないのです。この現実を「人類」は改めて認識しなければなりません。
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/


2. 中川隆[-6363] koaQ7Jey 2017年10月03日 01:04:09 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]

カタルーニャ州はスペイン東北部の地中海岸にあり、交通の要地として古代から栄えていました。中世にアラゴン・カタルーニア連合王国として栄えていましたが、スペイン王国成立後は統合されていました。

 とくに1714年にスペイン継承戦争でブルボン家による支配が始まると、カタルーニャは独立を求めて武力蜂起しましたが鎮圧され、ほとんどの自治権を失いました。今でも人気サッカーチーム・FCバルセロナの本拠地であるカンプノウでは、前半の17分14秒に「独立コール」が沸き上がります。またそこから300年後の2014年にも、非公式ですが独立を問う住民投票が行われました。

 フランコ独裁政権が瓦解した直後の1979年に自治州となりましたが、これはスペイン全土が17の自治州にまとめられたからで、カタルーニャだけに自治が認められたわけではありません。

 カタルーニャ州の面積はスペイン全土の6.4%ですが、人口は16%にあたる750万人、GDPは20%をこえています。カタルーニャ州は貧しい州を援助させられているとの不満がくすぶります。

 今回のカタルーニャ州の住民投票では、スペイン中央政府が数千人の警官を派遣して実力行使で妨害したため投票率が42%しかなく、独立反対派の大半は棄権したようでもあり、カタルーニャ州全体の民意としてはやや不透明です。

 スペイン中央政府は、カタルーニャ州が強引に「独立」すれば、すべての自治権を停止すると公表しています。同じように独立志向の強いバスク州やガリシア州などに飛び火することを警戒しているはずです。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2097.html


3. 中川隆[-6370] koaQ7Jey 2017年10月03日 18:54:05 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]

2017年10月03日
カタルーニャ独立か スペイン政府は全力で防止

人種、民族、宗教は同じだが、不況のスペインより独立した方が得というのが主な動機
引用:http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/images/PK2017100202100182_size0.jpg

カタルーニャ独立住民投票が実施

スペインのカタルーニャ州で独立住民投票が実施され、州政府は賛成票が9割を占めたと発表しました。

プチデモン州首相は9月2日にテレビ演説し、「共和国をつくる権利を勝ち取った」と宣言しました。

投票結果の報告を受けた議会は、2日以内に独立を宣言すると見られている。



スペイン政府は投票自体が「存在していない」と言い独立を認めない姿勢を見せています。

カタルーニャは独立後に欧州連合(EU)へ加盟し、欧州の防衛機構に参加したいようだが、外国との交渉は行われていない。

スペイン検察はプチデモン州首相を逮捕する可能性があるとしており、2014年の住民投票では州首相が公民権停止処分を受けていた。


スペインの裁判所は、独立住民投票は違憲という判決を下しており、スペイン政府は住民投票そのものが違法だという立場を取っている。

カタルーニャ自治州の有権者は約530万人で、948市町村に約2300の投票所が設置されました。

スペイン機動隊は319か所の投票所を閉鎖し、投票用紙の没収や関係者の身柄拘束、ウェブサイトの閉鎖などが行われた。


カタルーニャ自治州は面積でスペインの6.3%だが、人口では16%とかなりの割合を占めている。

九州と四国と沖縄を合計(約1,815万人)した割合約14%より多く、日本から九州四国沖縄が同時に独立するのに匹敵している。

スペインが必死にならざるを得ない理由がここにあり、独立されたら目に見えて国力が落ちてしまう。

カタルーニャが求めているのは「お金」?

カタルーニャは自治州として議会を持ち、広範な自治権があり、経済力ではスペインの5分の1を占めている。

2008年のリーマンショック以来スペイン経済は停滞し、財政赤字も深刻化し、政府からの交付金より税負担のほうが重くなっていた。

カタルーニャ自治州は独立すればスペインの財政赤字を負担せずに済み、経済的にも発展すると主張している。


これは例えば九州や四国が日本から独立すれば、「日本の借金1050兆円」は払わなくて良いというのに似ている。

これだと残された本体は、借金を返すのがより難しくなり、税収はさらに減少し財政悪化するでしょう。

2014年11月にも住民投票が実施され、有権者の34%が投票し、80%以上が独立に賛成しました。


ただこれではカタルーニャ有権者の27%しか独立賛成には投票しておらず、他の66%の有権者は住民投票そのものに反対だった可能性がある。

今回の住民投票では警察によって投票用紙が没収されたり投票所が閉鎖されたため、投票できなかった住民が居ると考えられます。

集計された投票は約226万票で、有権者全体約530万人の42%に相当し、没収や閉鎖がなければ投票率50%を超えていたでしょう。


報道によるとスペイン警察は9月30日に、2300施設のうち約1300施設を閉鎖したとも言われていて、最大100万人以上が投票できなかった可能性もある。

カタルーニャでは独立を求めるデモが、バルセロナ等では独立に反対するデモがあり、各地で警察などと衝突しました。

カタルーニャ独立運動の特徴は、人種や民族が独立したいわけではなく、「金を払いたくない」という要求が独立運動に発展した点にあります。


他の国の独立運動では、民族や宗教が異なっているが、カタルーニャは主として経済的な利益を求めている。

むしろカタルーニャの独立意識は古代ギリシャの都市国家に近く、近代国家や帝国主義の独立とはかなり違っている。

もしカタルーニャの独立が認められたら、国家の概念も変わっていくかも知れません。
http://www.thutmosev.com/archives/72915472.html


4. 中川隆[-6348] koaQ7Jey 2017年10月09日 10:03:16 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]

2017.10.09
警官隊が暴力的に住民投票を妨害したカタルーニャでは体制転覆を繰り返すソロスが独立派を支援


カタルーニャではスペインから独立すべきかどうかを問う住民投票が実施され、92%が独立に賛成した(投票率43%)という。この投票をスペイン政府は非合法だと宣言、警官隊を投入し、暴力的に投票を妨害した。2014年のウクライナでとは雲泥の差だ。

ウクライナの場合、アメリカのネオコンやNATOを後ろ盾とするネオナチがチェーン、ナイフ、棍棒を手に石や火炎瓶を投げ、さらにブルドーザー、ピストルやライフルを持ち出していたが、それでもビクトル・ヤヌコビッチ政権は警官隊に暴力的に対応しないように支持していた。それでも気に入らないバラク・オバマ米大統領は当時のウクライナ政府に対して警官隊を引き揚げさせるように求めている。​最終的に反政府派は無差別の狙撃を始めた​。

このクーデターではイゴール・コロモイスキーという三重国籍(ウクライナ、キプロス、イスラエル)の富豪や世界的な投機家のジョージ・ソロスが資金を提供していたと言われている。このソロスは自身の基金を使い、規模は大きくなかったようだが、2014年からカタルーニャの独立運動も支援していたと伝えられている。言うまでもなく、ソロスが国を乗っ取ろうとする目的は私利私欲。それ以外にはない。

9月にはイラクのクルド組織が独立を問う住民投票を実施、やはり圧倒的な多数が賛成したという。この組織は1960年代からイスラエルの指揮下にあり、今回の住民投票の黒幕はネオコンとイスラエルだと見られている。ここにきてクルドが注目されているのは、新たな侵略戦争の主力になりそうだからだ。

2011年春からシリアを侵略、バシャール・アル・アサド政権を倒すためにアメリカ、イスラエル、サウジアラビアを中心とする勢力が送り込んだ傭兵、つまりアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)はシリア政府の要請で介入してきたロシア軍によって壊滅寸前の状態。そこで、トルコの反発を承知でクルドを前面に出してきたわけだ。

ここにきてサウジアラビアもこうした武装集団への支援を打ち切る姿勢を見せているようだが、これが事実ならアメリカにとって深刻な事態。1970年代からアメリカの支配システムを支えてきたペトロダラーはサウジアラビアを中心に動いてきたからだ。アメリカや国連がサウジアラビア批判を強めてきたなら、サウジアラビアのアメリカ離れは事実の可能性が高いと判断できる。

カタルーニャの独立にアメリカの政府や有力メディアが好意的だとするならば、逆のことが言える。つまり、独立をアメリカ支配層が望んでいるということだ。実際、NATOはカタルーニャの独立に賛成しているようだ。

カタルーニャでは1930年代に自治が認められたが、ナチス時代のドイツを後ろ盾とするフランシスコ・フランコが独裁体制を樹立すると自治は認められなくなる。自治が復活するのはフランコが死亡した1975年の後。独立運動が復活するのは2006年からだ。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201710080000/


5. 中川隆[-5716] koaQ7Jey 2017年12月25日 10:11:54 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]

2017年12月25日
カタルーニャ州選挙で独立派が勝利も 逮捕や国外逃亡で過半数割れ

独立派は選挙で勝ったが、数名が逮捕中なので議会は過半数割れ
引用:http://media.ws.irib.ir/image/4bn48a043ea878yuqo_800C450.jpg

カタルーニャ州議会選挙

スペイン・カタルーニャ州の州議会選挙が2017年12月21日に実施され、独立派が過半数を得ました。

選挙は比例代表制で、定数135議席のうち独立派の3党で70議席を獲得し、もし小選挙区制だったらもっと多くを占めていた計算になる。

これに先立つ2017年10月1日にはカタルーニャ自治州による独立住民投票が実施され、9割以上が独立に賛成していました。


スペイン政府は憲法上独立投票は無効だと言い、警官を配備して投票を妨害したり、投票所を閉鎖させたりした。

プチデモン州首相は2日以内にカタルーニャ共和国の独立を宣言するとしていたが、スペイン政府は州首相や閣僚を逮捕する方針を示した。

プチデモン州首相はベルギーに逃亡したが、独立派が持っていた議席は政府に没収され、独立運動は潰された。


州政府はEUに加盟するのを独立後の政策の基本としていたが、交渉に応じた国は一カ国もなかった。

こうした前置きがあって12月21日にカタルーニャ州議会選挙が実施され、独立派は約52%の議席を獲得しました。

67議席だと50%を割り込むので、過半数といっても3議席の差だが、議会は再び住民投票や独立宣言などを行う事が出来る。


スペインのラホイ首相の国民党(PP)は、たった3議席しか獲得できず、求心力の低下が懸念されている。

投票前後にスペインの株価指数などは下落し、混乱が長期化するという懸念がもたれている。

ただ独立派3党の議席は分散していて、最大議席を獲得したのは、反独立強硬派のシウダダノス党になった。

独立は再び潰されるか

今回の当選者には独立派の70人中7人が独立投票を実施した罪で逮捕されたり逃亡していて、実際には議会に出席できない。

すると現実の州議会の議席数は「独立反対派65」「独立派63」になり、実は反対派が多数を占めている。

独立住民投票を実施したプチデモン前州首相はベルギーに滞在しているが、スペイン政府は引渡しを求め、帰国すれば逮捕される。


こうした情勢を見ると国際社会、特に英仏独などの欧州主要国がカタルーニャに賛成しない限り、再び政府に鎮圧されるでしょう。

欧州主要国は今の所、州議会との接触すら拒絶しており、相手にしない態度をとっている。

英仏独もまた自国内に独立を希望する地域やグループを抱えているためで、自国に飛び火するのを恐れている。


カタルーニャ独立問題の特徴は、通常独立運動は民族や宗教、政治主張などの対立で起きるが、そうしたものとは関係がない点です。

カタルーニャは「カタルーニャ民族」でもスペインと異なる宗教でもなく、共産国家やイスラム国家を作ろうとしているのではなかった。

独立したほうが経済的に豊かになれるという主張で、例えば東京が日本から独立するのに近い。


スペインは経済政策失敗などで長い不況が続いており、対照的にカタルーニャは経済成長を続けていました。

独立すればカタルーニャは政府への「上納金」を払わずに済み、スペイン政府の債務を払わなくても良くなります。

こうした金目当ての独立なので、国際社会にはもう一つ同情が広がり難い。
http://www.thutmosev.com/archives/74189329.html


6. 中川隆[-13844] koaQ7Jey 2018年8月04日 16:42:51 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-17599]

愛国的リバタリアンという怪物 - 内田樹の研究室 2018-08-04


これは2017年の6月に劇団態変の金満里さんの求めに応じて寄稿した一文である。
杉田水脈発言から「社会的弱者は殺してもいい」と言って19人を殺害した植松聖に言及する人が多かったので、旧稿を筐底から引き出して諸賢のご批判を請うことにした。

相模原の大量殺人事件のもたらした最大の衝撃は、植松聖容疑者が事前に安倍晋三首相宛てと大島理森衆院議長宛てに犯行を予告する内容の書簡を届けていたことにある。

それは単に権力者を挑発するための犯行予告ではなく、自分の行為が政権と国会多数派には「好ましい」ものとして受け止められ、権力からの同意と保護を得られるだろうという期待をこめたものだった。逮捕後も容疑者は「権力者に守られているので、自分は死刑にはならない」という趣旨の発言をしている。

もちろん、これは容疑者の妄想に過ぎない。けれども、何の現実的根拠もない妄想ではない。彼の妄想形成を強化するような現実が今の日本社会内部にはたしかに存在しているからである。

アナウンサーの長谷川豊は事件の直後の2016年9月に自身のブログに「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」というタイトルの記事を投稿した。これには批判が殺到し、専門医からも事実誤認が指摘されたが、この人物を日本維新の会は千葉一区から衆院の立候補者として擁立するということが先日発表された。

重篤な病人や障害者に対する公然たる差別発言にはまだ一定の社会的な規制が働いており、有名人の場合には、それなりの批判を受けて、社会的制裁が課されているが、在日コリアン、生活保護受給者やLGBTなどの社会的弱者に対する差別や攻撃の発言はほとんど何のペナルティもないままに垂れ流しされている。

際立つのが片山さつき議員で、生活保護受給者は「実質年収4百万円」の生活をしているという無根拠な都市伝説の流布に加担して、生活保護叩き発言を繰り返してきたが、最近も捏造投稿に基づいてNHKのニュース内容にクレームをつけて、生活保護受給者が社会福祉の「フリーライダー」だという世論の喚起に励んでいる。もちろん、本人がそう「信じている」という信憑の問題もあるのだろうが、「そういうこと」を公言すると選挙で票が集まるという現実的な打算も同時に働いているはずである。

アメリカではドナルド・トランプ大統領が「弱者叩き」の代表格である。「ラストベルト」のプア・ホワイトたちの輿望を担って登場したはずのトランプだが、就任後実施された政策は富裕層への厚遇措置ばかりで、移民排斥や、海外企業の国内移転への圧力などの「雇用対策」は今ここにいる社会的弱者のためには何の利益ももたらしてはいない。選挙公約だったオバマケアの廃止は、それによって2400万人が医療保険を失うという予測が公表されて、さすがに与党共和党も加担できず、改廃法案を撤回するという騒ぎになった。アメリカの有権者はそのような人物を大統領に選んだのである。

これはおそらく全世界的な傾向である。社会的弱者たちは、自己責任で弱者になったわけであり、いわばそういう生き方を選択したのだから、政府や自治体が、公金を投じて彼らを支援することは「フェアではない」というロジックは目新しいものではない。これは「リバタリアニズム(libertarianism)」というかたちで、建国当初からつねにアメリカ社会に伏流していた考え方である。アメリカが世界に冠絶する覇権国家となり、その国の作法や価値観が「グローバル化」したことによって、アメリカ的な「リバタリアニズム」もまたグローバル化したということだと私は理解している。

「セルフメイド・マン(selfmade man)」というのは建国以来、理想とされてきたアメリカ市民像だが、要するに誰にも頼らず独立独行で自己実現を遂げることである。「リバタリアン(libertarian)」というのは、その過激化したかたちである。
リバタリアンは、人間は自分の運命の完全な支配者であるべきであり、他者であれ公共機関であれ、いかなるものも自分の運命に介入する権利はないと考える。だから、リバタリアンは政府による徴税にも、徴兵制にも反対する。当然ながら、社会福祉のための原資の提供にも反対する。

ドナルド・トランプが徴税と社会福祉制度につよい嫌悪感を示すのは、彼がリバタリアンの伝統に連なっていることを示している。トランプは選挙期間中に対立候補から連邦税を納めていないことを指摘されて、「すべてのアメリカ人は納税額を最小化するために日々知恵を絞っている。私が連邦税を払っていないのは私が賢いからである」と述べて支持者の喝采を浴びた。これは別に露悪的な発言をしたわけではなく、ほんとうにそう思っているからそう言ったのである。彼に喝采を送ったプア・ホワイトたちは、自分たちとは桁が違う大富豪であるトランプの「納税したくない」というリバタリアン気質が「自分と同じだ」と思って、その発言に賛意を評したのである。

トランプは軍務の経験も、行政の経験もないはじめての大統領だが、それは軍務に就くことも、公共機関で働くことも、どちらもリバタリアンとしては「やらないにこしたことはない」仕事だからである。アメリカの有権者たちは彼の「公的権力を用いて私利私欲を満たすが、公益のためには何もしない」という態度がたいそう気に入ったのである。

今の日本で起きている「弱者叩き」はアメリカ原産のリバタリアニズムが日本に漂着し、日本独特の陰湿なしかたで退廃したものだと私は理解している。
トランプのリバタリアニズムはこう言ってよければ「あっけらかん」としている。ロシアとの内通疑惑が暴かれたことによって、彼が「愛国者」であるかどうかについてはアメリカ人の多くが疑問を抱いているだろう。けれども、リバタリアンにおいて、愛国者であることは「アメリカ人的であること」のための必要条件ではない(国家や政府などというものは「ない方がいい」というのが正統的なリバタリアンの立場だからである)。

けれども、日本では公的立場にある人間は「国よりも自分が大事」というようなことを(心で思っていても)口には出さない。仮に、安倍晋三が所得税を払っていなかったことが発覚したとしても、彼は「私は賢いから税金を払わずに済ませた」という言い訳をしないだろうし、その言い訳に喝采を送る有権者も日本にはいないはずである。日本ではリバタリアンも愛国的なポーズをすることを強いられる。
だから、日本では「リバタリアンでありながら、かつ愛国的」という奇妙な生き物が生まれてくる。現代日本に跋扈しているのは、この「愛国的リバタリアン」という(「肉好きのベジタリアン」とか「気前のいい吝嗇漢」というような)形容矛盾的存在である。

一方において、彼らは自分が獲得したものはすべて「自己努力によって獲得されたもの」だから、100%自分の所有に属し、誰とも分かち合う気がないと断言する。同じ理屈で、貧困や疾病や障害や不運などによって社会的弱者になった者たちについても「すべて自己責任で失ったもの」であるので、そのための支援を公的機関に求めるのは筋違いであると主張する。ここまではリバタリアン的主張であるが、日本の「愛国的リバタリアン」はこれに愛国主義(というより排外主義、外国人嫌い(ゼノフォビア))をぱらぱらとまぶして、社会的弱者というのは実は「外国人」であるという奇妙な社会理論を創り出す。ここが日本のリバタリアニズムの独特の歪みである。

日本型リバタリアンによると、社会的弱者やあるいは社会的弱者を支援する人たちは「外国人」なのである。仮に血統的には日本人であったにせよ、外国渡来のイデオロギーや理説に「感染」したせいで、「外側は日本人だが、中身は外国人」になっているのである。だから、社会福祉や教育や医療などの活動に公的な支援を求める組織や運動は本質的には「日本の国益よりも、彼らが忠誠を誓っている外国の利益に奉仕するもの」なのだという妄説が出来上がる。生活保護の受給者は多くが在日コリアンであるとか、日教組の背後にはコミンテルンがいるとか、朝日新聞は反日であるとか、翁長沖縄県知事は中国に操られているといった類のネトウヨ的妄説はその典型的なものである。

語っている本人もさすがにほんとうだと思ってそう言っているわけではいないだろう。にもかかわらず、彼らが「反政府的な人間=外国人」というスキームに固執するのは彼らにリバタリアンに徹底する覚悟がないからである。

リバタリアンであれば、話はすっきりしている。貧乏なのも、病気なのも、障害者であるのも、すべては自己責任である。だから、それについては他者からの同情や公的支援を当てにしてはならない。医療保険制度はいらない(医療は「サービス」なのだから金を出して買え。金がないやつは死ね)。公立学校も要らない(教育は「サービス」なのだから、金を出して買え。金がないやつは働いて学費を稼ぐか、有利子で借りろ)。社会福祉制度はいらない(他人の施しがないと生きていけないやつは死ね)と、ずいぶん非人情ではあるけれど、バケツの底が抜けたように「あっけらかん」としている。

しかし、さすがに日本では(心ではそう思っていても)そこまでは言い切れない(居酒屋のカウンターで酔余の勢いで口走ることはあるだろうが、公的な立場ではなかなか口にはされない。

その不徹底をとりつくろうために、日本的リバタリアンは「排外主義」的イデオロギーを装飾的に身にまとう。そして、貧乏人も、病人も、障害者も、生活保護受給者も、みな本質的には「外国人」であるという摩訶不思議な理説を噛ませることで、話のつじつまを合わせようとするのである。

相模原事件の植松容疑者はその意味では障害者支援をめぐる問題の本質をよく見抜いていたというべきだろうと思う。彼自身は生活保護の受給者であったが、その事実は「わずかな賃金を得るために、他人に顎で使われて、自分の貴重な人生を空費したくない」という彼のリバタリアン的な気質と齟齬するものではなかった。けれども、自分以外の生活保護受給者や障害者は彼の目には許し難い社会的寄生者に見えた。この矛盾を彼はどう解決したのだろうか。自分には公的支援を受けることを許すが、他人には許さないという身勝手な識別を可能にする境界線として最終的に彼が思いついたのは「私は日本人として日本の国益を優先的に配慮しているが、彼らはしていない」という「日本人/非日本人」スキームであった。

だから、植松容疑者がこれは「日本のために」したのだとか、「社会が賛同するはずだった」とかいう自己弁明を繰り返し、「国益を害するものたち」を「処分」する「官許」を首相や衆院議長に申請したことには論理的には必然性があったのである。彼は自分が「愛国的リバタリアン」という政治的奇形物であり、現在の日本の政界の指導者たちの多くが程度の差はあれ自分の「同類」だと直感していたのである。
http://blog.tatsuru.com/2018/08/04_1031.html


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