戦後、宅地化が進んだ後も、用水路は昔の姿のまま残った。岡山県民にとってそれは日常風景で、安全のために柵を設けようとすると、「柵があると用水路の掃除がしにくくなる」「道が狭くなって不便」という声が上がり、同意を得にくかったという。

　しかし、転機は２０１３年夏に起きた。岡山市中区の用水路に自転車で走っていた女児（当時８）が転落し大けがを負った。県警が調べると、その年の用水路転落死者は１３人で、全国最悪。さすがに自治体や警察も対策に本腰を入れ始め、岡山市は今年度、柵の設置といった対策費２億３７００万円を計上した。県警は「夜間照明がない」「下り坂」「カーブの先」「左折した直後」など４５５カ所を危険箇所と認定、３月末までに２０８カ所で対策を行った。

　とはいえ、岡山県民にとって用水路は今も身近な存在だ。岡山市内の製造業の男性（３６）は「子どもの頃、用水路でザリガニをとって遊んだ。飲み会の後に水辺を歩き、酔いをさますこともある」と話す。市川医師は「落ちた人の半数以上が歩行者。柵のない用水路は日常の風景で、そこで命を落とすと思っていない人が多い」と指摘。「親近感」が命取りになりかねないと警鐘を鳴らす。（小川奈々）

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　１０月下旬に岡山市南区東畦の用水路に高齢者が転落し死亡した事故を受け、
岡山南署は４日、現場近くのスーパー・ニシナフードバスケット東畦店で
ＬＥＤ（発光ダイオード）ライトなどを配り、買い物客らに注意を呼び掛けた。

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