森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 惜しいことをしたものだ
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週刊実話　2014年10月23日 特大号

　国税庁が昨年の「民間給与実態統計調査」の結果を発表した。私はこの統計が最も信頼できる賃金統計だと思っている。それは、税務の一環として作られる統計なので、ここで企業がウソをつくと税務署からにらまれてしまうからだ。

　さて、この統計で給与の状況をみると、昨年、民間事業所が支払った給与の総額は200兆3597億円と、前年に比べて4.8%も増えた。ちなみに一昨年は▲2.4%だったから、所得環境が一変するほど改善したことがわかる。

　昨年はアベノミクスで景気がV字回復した年だった。アベノミクスがサラリーマンに与える恩恵はなかったとよく言われるが、そうでないことは、この数字が雄弁に物語っている。

　給与総額が増えたのは、一人当たりの給与が増えたことと雇用者数が増えたことの両方が影響している。

　1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は414万円で、前年比で1.4%増えている。一方、給与所得者数は、2.0%の伸びで、給与総額は3.4%増ということになった。こうした中で、源泉徴収された所得税額は、8兆7160億円で、前年比11.4%も増えている。

　ちなみに前年は▲3.1%だった。

　景気が回復したら給料が上がり雇用も増える。その結果、企業が支払う給与総額が増えて、税収が大幅アップする。昨年、まさにそうした好循環が起きたのだ。税収が二ケタも伸びたのだから、こうした状況を続けていけば財政再建に確実に向かっていっただろう。ところが、今年4月の消費税率引き上げで景気回復の芽を摘んでしまった。本当にもったいない話だ。

　しかし、今回の民間給与実態統計は、手放しでは喜べない事態も映し出している。それは、格差の拡大だ。

　まず雇用形態別にみると、正規雇用者の数は1.5%伸びたが、非正規は5.3%も増えた。雇用が増えたのは圧倒的に非正規だったのだ。一方、平均年収でみると、正規は前年比1.2%増の473万だったのに対して、非正規は▲0.1%の168万円だった。正規は非正規の2.8倍の年収を得ているが、その格差がさらに開いたのだ。

　また、所得階級別にみると年収100万円以下の人が7%増えているのに対して、年収2500万円以上は何と40%も増えている。低所得層と富裕層がともに激増したのだ。

　こうした格差拡大を税制面で是正することは、もちろん可能だ。例えば、所得税の累進度を強化して、高額所得者からより多くの税金を取って、それを低所得層に定額減税のような形で分配すればよいだけだ。ところが政府は、低所得層に負担の大きい消費税の税率を引き上げてしまった。これが格差拡大に拍車をかけてしまったことは間違いないことだ。

　現在、政府は住民税が課税されていない低所得層に対して1万円の臨時福祉給付金を支給しているが、格差縮小のためには焼け石に水程度の効果しかない。

　もしかすると、政府は、あえて格差の大きな社会を作ろうとしているのかもしれない。それが本当かどうかは、この状況で消費税率の再引き上げに踏み切るのか、あるいはTPPでどのような交渉結果を出すのか、雇用面の規制をどう変えるのかなどを見ていけば次第に明らかになっていくだろう。

コメント
01. 2014年10月18日 20:53:59 : jXbiWWJBCA 多くの超富裕層は法人形態で資産を保全し、法人への課税の抜け道は多く、海外への資産移転も容易であり、資産所得への課税は難しい。 つまり現状では「所得税の累進度を強化して、高額所得者からより多くの税金を取って、それを低所得層に定額減税のような形で分配すればよいだけ」とはならない。
02. 2014年10月18日 21:40:46 : AJpuhoXswA 格差が大きくなれば治安は悪くなる。企業の顧客に対するサービスも格差される。 既得権層はガードマン付きの区域以外には出かけられなくなる。底辺層は大企業と言えども安心してサービスを受けられなくなる。スラム街が出現し警察でさえ避けたくなる地域が日本に出てくる。 昭和と同じ感覚でいるととても危ない事は分かった。
03. 増税反対 2014年10月18日 23:23:00 : ehcoR2LmdzYII : P4FRsgQQvM 「格差縮小のためには焼け石に水程度の効果しかない。」 　　訂正します。 「格差縮小のためには焼け石に水程度の効果すらない。」
04. 2014年10月20日 20:31:09 : atxeyfN6Rs 国は雇用をアメリカ様のおっしゃる通りにするのだろう。竹中が頑張っている。働いたらご飯が食べれる社会が最低限で憲法ではそれ以上の生活を保障しているのだが、国は働いても食べられない社会を希求しているのだ。国民の数を減らせ運動だ。一方で人口減少を防ぐと言う。口とやることは真反対なのである。政府にとって貧乏人が増えると一ついい事がある。集団的自衛権の施行で命も保証できないいや命を出せと言っても自衛隊の募集はしなくて済むようになる。国は悪知恵だけは本当によく働く物だ。日本は植民地だから自分で何も考える事が出来ないからどうせアメリカ様の御意向だろう。本当に良い国にしがみついている。使い捨て国家日本となるのもそう遠くない話だ。それでも国民は国にしがみついている。自民党さんは清和会さんは国民のためにしっかりやってくれると信じている。ポケットから金出せお前は命を出せと言われているのにまだ何の事か理解しない国民とはどんな国民なのか。バカな日本人よ、言葉が出ない。
05. 2014年10月20日 20:41:23 : atxeyfN6Rs 森永さんも名目でなく実質賃金を話してもらわないとまるで安倍と同じ嘘つきになってしまう。最近森永さんもメディア（テレビ）に出過ぎて仲間がみんなチャランポランの吉本連中になり話が少しオチャラケになってきた感じがする。国民にとり大切な事は真剣に話をして欲しいものだ。森永さんもその内朝鮮人になってしまうのではないかと心配だ。どんなんかって、騙し、ペテン、裏切り、嘘等何でもありの人間、政治家に多い、なぜかって、なりすまし日本人が多いからだ。
06. 信陵君 2014年10月21日 11:20:45 : ni8b7lPstfka. : Xwlemfst1A 　消費税は平成9年に5%に引き上げられて、今年また8%に引き上げられました。どちらも景気回復しつつある時期に増税されています。何故そのような時期にわざわざ消費を冷え込ませ、景気を悪くすることをしたのか?霞が関の官僚は当然景気が悪化し、企業倒産が増加して政府に入る法人税と所得税が減少し、消費税は増えても税収総額は減少することは知っているはずです。政府の借金が一千兆円を超えているというのに何故税収を減らすことを故意にするのでしょうか?長い間その答えが見つかりませんでしたが、昨年の暮れに[機会不平等]斉藤貴男著.という本を読んで日本の支配層の狙いがわかりました。支配層の人々は自分達の子共達や孫にも今の自分達と同じように日本を支配させ、支配層に入れたいのです。頭が悪くてはなかなか支配層に入ることはできません。そのために子共達に幼いころから教育に金をかけ家庭教師をつけ、塾に行かせたりします。早くから受験競争に勝ち抜けるようにするのです。逆に被支配層の子共達が受験競争に強くなっては彼らは困るのです。ですから被支配層である一般国民が子供の教育にお金をかけることができないようにできるだけ貧困にしようとしているのだと思います。また、人件費を下げることは霞が関の官僚の天下り先を確保し、政治献金する大企業の経営者の要請でもあります。要はこの国を1%の超大金持ちと99%の貧困層にしようということですね。

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• 低所得者５１万人増、高所得者１３３万人増。平均以上の高所得者がずいぶん増えている。 てんさい（い） 2014/10/20 11:44:24 (0)

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