(回答先: 足踏み景気（１）雇用好調でも消費低調 パート増え賃金伸びず 投稿者 あっしら 日時 2015 年 10 月 18 日 04:01:41)

足踏み景気
（２）強気の設備投資計画 在庫増で不透明感増す

　世界的な供給過剰感の強まりや国内新車販売の低迷を受け、今春から減産体制を敷いていた鉄鋼業界。「10月以降の粗鋼生産量はある程度は回復する」（日本鉄鋼連盟の柿木厚司会長＝ＪＦＥスチール社長）。業界が描いていたそのシナリオに狂いが生じている。

　自動車や機械、建材の素材となる薄鋼板３品種（熱延、冷延、表面処理）のメーカー・流通在庫は７月末に406万トンと適正とされる400万トンに近づいていた。だが、価格が比較的高い日本市場を狙って韓国勢などが攻勢を強めた結果、輸入材が増加。在庫は８月末には425万トンと再び増えた。９月も豪雨や大型連休で荷動きは鈍く、業界内では「在庫の大幅な低下は見込めない」と失望感が広がる。

足元好調でも…

　中国の景気減速や世界的な株安の影響が製造業にじわり広がる。経済産業省による在庫指数は緩やかに上昇し、生産は弱含む。

　国内で高水準の生産が続く化学業界。食品ラップから自動車部品まで幅広く使われるエチレンの国内設備稼働率は８月まで21カ月連続で90％台を維持する。１ドル＝120円前後の円安・ドル高水準が定着し、輸入品に比べて国産品の価格競争力が高まったためだ。だが、９月に訪中した化学大手幹部は現地需要の落ち込みを目にして「中国の景気減速の影響を無視できない」と身構える。

　もっとも、日銀が発表した９月の全国企業短期経済観測調査（日銀短観）では今年度の大企業・全産業の設備投資計画が前年度比10.9％増と、６月調査（9.3％増）から上方修正された。変調の兆しはあるものの、企業は設備投資になお前向きな姿勢を見せる。

　実際、得意とする技術と製品で勝負をかける企業の動きは止まっていない。アルプス電気はスマートフォンのカメラレンズの駆動に使う部品などの増産に向けて100億円の投資を計画通り今月から実施。村田製作所もスマホ向けの通信関連部品の増産に新たに約120億円投じる。訪日観光客に人気の美容フェースマスクや紙おむつ向け高機能不織布では旭化成や三井化学が国内工場での増産投資を計画する。

　問題は前向きな投資がどこまで持続するかだ。

　日本工作機械工業会がまとめる受注統計。８月に中国のスマホ向け加工機の受注減が響き、受注総額が23カ月ぶりに前年実績を割り込んだが、９月の速報値では頼みの綱の内需もマイナスに転じた。内需の前年割れは27カ月ぶりだ。

延びる社内決定

　内需を支えていたのは省エネ性能の高い機械に対して最大１億５千万円を支給する補助金制度だ。政府が３月に受け付けを始めると、これまで設備更新を控えてきた中小企業が飛びついた。ただ、約800億円の予算枠はすでに使い果たした。今は忙しい生産現場もまもなく「特需」がはげ落ちる。

　大阪府のある製造機械メーカーの担当者は「国内に設備投資案件はあるのに受注に至らない」と嘆く。「顧客の社内決定が延び延びになっているようだ」（担当者）

　強気の設備投資計画を見せつけた日銀短観。だが、足元の動きが十分に反映しきれていない可能性がある。年末に向けて、下方修正する動きが広がるかが焦点となる。

（景気動向研究班）

［日経新聞１０月１５日朝刊Ｐ．１］

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