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日銀「緩和補完」をめぐるドタバタ劇の顛末 日米2大イベント終わり市場はオフモード(東洋経済)
http://www.asyura2.com/15/hasan103/msg/676.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 12 月 20 日 20:19:30: igsppGRN/E9PQ
 

            神経質な動きが続いていた株式市場だが、今週は落ち着くか(写真:wavebreakmedia/PIXTA)


日銀「緩和補完」をめぐるドタバタ劇の顛末 日米2大イベント終わり市場はオフモード
http://toyokeizai.net/articles/-/97564
2015年12月20日 平野 憲一 :ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト 東洋経済


先週は、米FOMC前後の不透明感で世界中が神経質になっていた。相場は常に不透明だが、今回は1等級の不透明感(筆者観)だった。リーマンショックから7年続けてきたゼロ金利政策を解除する方向は見え、その後の利上げペースも緩やかなものになるということは織り込みつつあった。しかし、結果が出た後のドルや株価の動きが、ファンド筋への取材や内外の著名エコノミスト・ストラテジストのレポートを読み下せば下すほどわからなくなった。

■市場は米FOMCの連続利上げ政策を受け入れた

第1に、2016年度中に3ないし4回行われる0.25%の利上げが、緩やかなのかという認識がまったく統一されていなかったからだ。第2に、短期的には積み上がった左右両陣営のポジションがどういう形で解消されるのか、SQを控えて見えてこないからである。そこで予想屋を生業とする筆者としては情けないことだが、ブログやレポート、コメンテーターを務めている経済番組の中で、FOMCの結果を受けたドルや株価の反応を確認してから動きましょうと「待ち」の方針を出した。

さて、これから筆者の能天気な判断が始まるわけだが、結果発表後の比較的落ち着いたドルの動きと、16日のダウ224.18ドル高、17日の253.25ドル安で、FOMCの今後の政策の姿(年3回ないし4回の緩やかな利上げ)はマーケットには受け入れられたと判断する。緩やかなドル高円安が来2016年も続くと思われ、株高も予想される。

週末のダウ367.39ドル安は、原油安とそれに起因するハイイールド債に対する警戒感が強まり、クリスマス休暇前の手じまい売りをSQにぶつけたことが大きな下落原因であり、金融政策と直接関係ないところでの動きだったと思う。

もちろん、ここまでの原油安は多くの機関投資家にとっても大誤算で、マーケットの最大波乱要因となっている。ISM製造業景況指数は50を割り右肩下がりだし、フィラデルフィア地区連銀が17日発表した12月業況指数はマイナス5.9で、11月のプラス1.9から低下した。過剰在庫を減らしている製造業の苦しい状況を考えると、連続利上げの風は順風とは言えず、手放しで安心できるアメリカ市場ではない。

■日銀の発表に現場は大混乱

さて、18日金曜日は日本でも重要イベントの日銀政策決定会合があった。ちょうど発表時間が筆者の番組本番中とぶつかり、「緩和補完」の解釈でバタバタするなど投資家の皆様には申し訳なかったが、とてもエキサイティングな時間となった。

第1報は、若干誤報に近い「現状維持」だった。日銀が「追加緩和」ではないという見解だったので、秒単位の競争をしていたメディアのどこかが「現状維持」をスクープ、各社が追随したのだ。ところがその直後、「3000億円(ETF追加枠)賛成6反対3」と同時に「緩和を補完」と伝わって現場は混乱した。

高速システム売買は「日銀動く」で一気に走り、12時55分、あっという間に1万9869円08銭の高値を付けた。その後「補完」ってなんだという疑問から先物に売りが出て、売りシステムが稼働。高値から一気900円安となり、一般投資家はあぜんと見ているしかなかった。良い子の皆様には関係ありませんが、逆指値を使っているトレーダーでも、あまりの速さに追いつかず、しっかり損を出してしまったそうだ。

とにかく、2大イベントが終わり、今週(21日〜)から落ち着くと思っている。週末のダウは大幅安だったが、米SQでかなりの決着がついたのではないか。今週の外国人投資家は、もうほとんどがクリスマス休暇で市場にいない(休まないごく少数の人たちが、品薄状態を利用し悪さをするかもしれないが)。

今週の予定は、国内では25日に11月全国消費者物価指数、12月東京都区部消費者物価指数。海外では22日に7〜9月期米GDP確定値、7〜9月期の米企業収益確定値、レッドブック週間小売売上高、23日に11月米耐久財受注、11月新築住宅販売、12月ミシガン大消費者景況感指数確定値、そしてEIA週間原油在庫となる。24日に週間新規失業保険申請件数があるが、この日は短縮取引で翌25日は休場。日本も祝日をはさみ、今年の収益を調整する1週間になりそうだ。今週(21日〜25日)の日経平均予想レンジは1万8550円〜1万9250円。

 

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コメント
 
1. ひでしゃん[1383] gtCCxYK1guGC8Q 2015年12月20日 22:57:50 : ocstdpnOPo : a_7xIdDo@yM[3]
アメリカだけが引き締めに動く
FOMCの面々には金融引き締めするほどの景況感が得られていたのか?
アメリカに富を吸い上げるための詐術ではないのか?
日銀黒田はアメリカからの指令の制約で結局玉切れの印象を残しただけだった
今後手詰まり感が徐々に認識され市場の急激な反動が迫った感がある
ポンドショックの二の舞を演じることになるだろう
黒田日銀の面々はもともと本流の人間たちではなく専門家の中でも正統派とは見られていなかったのだから結果はこんなものだろう

2. 2015年12月21日 17:00:36 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[98]

 
視点:アベノミクスの「リセット」=竹中平蔵氏

慶応義塾大学教授
[東京 21日] - 安保一色から経済重視へ回帰した安倍政権に必要なのは、政策の「リセット感」だと、竹中平蔵・慶応義塾大学教授は指摘する。具体策としては、公共インフラ運営を民間に委ねるコンセッション方式を活用した東京・大阪間リニア新幹線開通など、スケールの大きな政策論議の必要性を説く。

同氏の見解は以下の通り。

<国税庁と年金機構を統一し、歳入庁新設を>

2016年は、アベノミクスのリセットがうまく行くかが問われる年だ。リセットには、2つの側面がある。1つは、14年4月の消費税増税後に落ち込んだ経済の仕切り直し。もう1つは、世間に映る政策論議の印象を安保一色から経済重視に引き戻すことだ。

実は、このいずれのリセットボタンも15年後半にすでに押されているが、「リセット感」はまだ十分に出ているとは思えない。

例えば、名目国内総生産(GDP)600兆円目標を掲げるのは良いが、これは従来の成長率目標(実質2%・名目3%程度)を言い換えただけに過ぎない。名目3%成長を6年続けたら、現在500兆円のGDPが1.2倍の600兆円になるのは自明の理だ。

また、法人減税の前倒しが話題になっているが、現在32%台の実効税率を29%台へ引き下げることは、国際標準に照らせばマイナーチェンジだ。さらに、政府が企業に賃上げや設備投資の拡大を求めるのは自由だが、企業が現預金をため込んでしまうのもデフレ下では合理的な経営判断だったからだ。この姿勢は今後物価が上がってくる中でおのずと変化するだろうが、国内に振り向けられるかは、ひとえに投資機会の多寡にかかっている。

残念ながら、構造改革によって投資機会を創出する努力を政府が十分に行っているとは思えない。特区レベルの取り組みで例外はあるが、農業・医療・福祉など様々な分野で民間の活力を阻む壁は依然として多い。民間主導の好循環を生むためには、今以上の規制緩和で投資機会を大きく増やしていくことが求められる。

一方で、財政や社会保障に対する不安も払拭(ふっしょく)しなければならない。はっきり言って、歳出削減に向けた流れは、小泉政権時と比べて大きく後退したままとなっている。小泉政権下の「骨太の方針2006」では、歳出にキャップ(上限)を設けた。しかし、アベノミクス下では単年度のキャップは財政の硬直的な運営を招くとの批判もあり、18年度に中間目標を設け、いわば複数年で緩やかなキャップを設けた形になっている。

緩やかなキャップしか設定できないのであれば、歳入面でやるべきことがあるだろう。例えば、税や社会保険料の徴収漏れ対策だ。

実は、日本には広義の税である社会保険料も含めると数兆円規模の徴収漏れがあると言われている。せっかくマイナンバー制度を導入したのだから、将来的に国税庁と日本年金機構を統一して歳入庁を新設し、この問題の解決にあたるぐらいの構想力が欲しい。

特に首相直属の経済財政諮問会議には、マクロ経済運営の王道を行くようなスケールの大きな政策論議を期待したい。それができれば、本当の意味でのリセットができると思う。

<五輪後にらみ官民共同でリニア新幹線整備>

もう1つ、リセット感につながるスケールの大きな構想として、供給力の強化をもたらす国家プロジェクトを提唱したい。公共インフラの運営権を民間に売却するコンセッション方式を活用したリニア中央新幹線整備計画だ。

JR東海は、リニア新幹線について27年にまず東京(品川)―名古屋間、45年に大阪までの延伸開業を目指すとしているが、悠長すぎるように感じる。一企業に荷が重いならば、名古屋から先は公共事業として整備し、その運営を民間に委ねる手法も検討の余地があるだろう。そのうえで、27年の東京―大阪間の全面開業を目指せば良い。

これは、20年の東京五輪後の日本経済を考えるうえでも、期待をつなぐ目標となるのではないか。振り返れば04年のアテネ五輪後、ギリシャには財政赤字が残った。それを見た英国は12年のロンドン五輪に向けて「レガシー」という言葉を使い、五輪後に何を残すかを考えた。そして国際会議や展示会などMICE(マイス)に対応した都市づくりを進め、実際、ロンドンは今やMICEの先進地となっている。

日本も五輪後にますます厳しい財政状況が予想されるのだから、民間の活力を生かしつつ期待をつなぐための大きな仕掛けを今から考えるべきではないか。リニアが難しいと言うならば、例えば人口20万人以上の全都市にコンセッションを義務づけるのはどうか。大きな金額が動くだけでなく、「行革」の側面も持ち得る。

こうした構想は、絵に描いた餅とは思わない。国家戦略特区でもすでに進展はある。農業分野に企業が続々と参入している兵庫県養父市や、国内では事実上38年ぶりとなる医学部新設が決まった千葉県成田市などはその好例だ。

また、コンセッションについても、仙台空港と関西・伊丹空港の引き受け主体が決まったほか、上下水道や高速道路でも計画が具体化している。このうち関空のケースは、世界的に見ても大きな規模だ。こうした動きが加速すれば、リセット感は高まるだろう。

<TPPは最高の安全保障、日本は先行批准も選択肢>

最後に重要な点を言い添えれば、15年に環太平洋連携協定(TPP)が大筋合意に至ったことは、安倍政権の大きな成果だ。

世界では今、いくつもの「メガFTA(自由貿易協定)」構想がしのぎを削っている。米国と欧州連合(EU)の間で進む環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)協議や、日中韓FTA構想、そして東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国に日中韓、インド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)構想、さらに旧来からある北米自由貿易協定(NAFTA)や南米南部共同市場(メルコスール)の新たな動きも加わり、複雑な様相を呈している。

こうした状況下で、日米が中心となって先陣を切り、世界のGDPの4割を占める地域において、投資や国有企業、労働・環境など幅広い分野のルールづくりで大筋合意したのは、文字通り画期的なことだ。

TPPは自由貿易促進という経済的なメリットだけでなく、それ以上に、地政学的に重要な意味を持つ。なぜなら、相互の投資が進み、地域内で深いサプライチェーンが整備されれば、切っても切れない最高の安全保障関係になるからだ。

ただ、不安があるとすれば、16年に大統領選を迎える米国で議会承認が難航する可能性があることだろう。万が一、米国が批准できないような事態に陥れば、同国のアジア太平洋地域に対するコミットメントが揺らぎ、影響力が低下するのは必至だ。

実は米国は、はしご外しの常習犯でもある。古くは第1次世界大戦後、当時のウィルソン米大統領が国際連盟の創設を提唱したものの、米議会の反対で加盟できなかった。近年では、京都議定書の未批准や国際通貨基金(IMF)改革の批准の遅れが記憶に新しい(IMF改革は12月18日に米議会がようやく承認)。

この点について安倍政権にできることは限られるが、場合によっては、日本が先行して批准するのも米国に対するプレッシャーとしては有効だろう。日本は交渉参加まで2年かかった。言い換えれば、予備期間が2年あったので、TPP批准は米国に比べればハードルが低いはずだ。世界の新たな通商体制をけん引するチャンスを日本は逃してはならない。

*本稿は竹中平蔵氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

*竹中平蔵氏は現在、慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長。1951年和歌山県和歌山市生まれ。一橋大学経済学部卒。日本開発銀行(現日本政策投資銀行)などを経て慶大教授に就任。2001年小泉内閣で経済財政政策担当大臣。 02年経済財政政策担当大臣に留任し、金融担当大臣も兼務。04年参議院議員当選。05年総務大臣・郵政民営化担当大臣。現在、政府産業競争力会議の民間議員、国家戦略特別区域諮問会議の有識者議員を務める。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの特集「2016年の視点」に掲載されたものです。
http://jp.reuters.com/article/view-heizo-takenaka-idJPKBN0U11GN20151221


視点:消費増税の凍結と科学研究予算の倍増=若田部昌澄氏

早稲田大学教授
[東京 21日] - 2016年の日本に必要な決断を3つ挙げるとすれば、消費増税の凍結と科学研究予算の倍増、そして政府の名目国内総生産(GDP)600兆円目標と合致する金融政策運営だと、早稲田大学の若田部昌澄教授は指摘する。

同氏の見解は以下の通り。

<消費増税の凍結と財政再建戦略見直しが必要>

2017年4月に、消費税の再増税(8%から10%への税率引き上げ)が予定されている。これを回避するためには、16年10月までには決断が必要となる。

14年4月の増税後、経済の回復はまだまだ弱く、17年の再増税は日本経済に大きな打撃を与えるだろう。増税にこだわるあまり経済再生を腰折れさせるようでは元も子もない。増税の暁には首相が唱える20年までに名目国内総生産(GDP)600兆円を目指すという宣言は画餅に帰すだろう。

増税は国際公約ではなく、実際に15年10月の増税は回避された。その後、長期金利はさらに低下し、国債の信用リスクを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッドも低位安定している。一部のエコノミストが予測したような、消費税先送りによる株価の下落も起きなかった。

なお、一部の財政学者は経済停滞の理由を人手不足などの供給制約に求めているが、現状で失業率は下がり続けていながら名目賃金の急上昇は実現していない。需給ギャップが存在することからも日本経済の問題が需要不足であるのは明らかだ。

増税の凍結に合わせて、財政再建戦略を見直し、本当に信頼するに足る戦略を策定することが必要である。第1に、何よりも必要なのは、増税のみによる財政再建は不可能であることを率直に認め、経済成長を優先する財政再建戦略に切り替えることだろう。名目GDP600兆円を目指すという首相の掲げた目標はその中心になり得る。

第2に、補正予算から本予算にかけて、緊縮的ではない予算措置が必要だ。無駄は許容してはいけないが、緊縮では財政再建はできない。

第3に、消費税を社会保障目的税とすることをやめるべきだ。逆進性の強い消費税は、そもそも社会保障の財源としてなじまない。社会保障費が消費税増税の人質となっている現状をやめるべきだ。そのためには社会保障と税の一体改革に関して野田民主党政権当時の12年6月に交わされた民主、自民、公明の「3党合意」の破棄が必要だろう。

<ノーベル賞連続受賞でも安心は禁物、科学研究予算の倍増検討を>

15年もノーベル賞受賞者を輩出して、日本の科学界の水準の高さが示された。しかし、これで安心してはいけない。いってみればノーベル賞は過去の栄光をバックミラーでみているようなもので、今後については暗雲が立ち込めているからだ。

研究に必要なのはお金と自由な思索にふける時間。お金については国の研究予算が減少している。また、04年の国立大学の独立行政法人化で、研究者にとって貴重な思索にふける時間も減っている。

この問題については、豊田長康氏(鈴鹿医療科学大学学長)の研究報告書が詳しい(「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究 〜国際学術論文データベースによる論文数分析を中心として〜」)。

これは渾身の力作というべきで、「日本の研究力(学術論文)の国際競争力は質・量ともに低下した」こと、「学術分野の違いにより論文数の動態は異なるが、国際競争力の高かった分野ほど論文数が大きく減少した」こと、そしてその要因として、1)「高等教育機関への公的研究資金が先進国中最も少なく、かつ増加していないこと」、2)「高等教育機関のFTE(注:フルタイムの研究時間数で測った)研究従事者数が先進国中最も少なく、かつ増加していない」こと、3)「博士課程修了者数が先進国中最も少なく、増加していない」こと、4)「論文数に反映され難い政府研究機関への公的研究資金の注入比率が高く、大学研究費の施設・設備費比率が高い」ことなどが指摘されている。

豊田氏は、日本のピーク時を取り戻すには、「各大学の基盤的研究資金、FTE研究者数(研究者の頭数×研究時間)、および幅広く配分される研究資金(狭義)」を現状から25%増加、韓国に追いつくには50%増、主要7カ国(G7)諸国や台湾に追いつくには倍増する必要があると指摘している。

もっとも、科学研究費で幅広く配分される「基盤研究(C)、挑戦的萌芽研究、若手研究(B)」の研究資金は、15年度予算で323億円。倍増しても646億円である。折しも、政府の総合科学技術・イノベーション会議専門調査会は15年12月10日、「第5期科学技術基本計画」の最終答申案において、政府の研究開発予算を国内総生産(GDP)の1%程度を5年間続ける26兆円の構想を示した。成長戦略を言うならば、政府は本気で科学技術振興にテコ入れすることが望ましい。

<名目GDP600兆円達成と整合的な金融政策運営>

政府の目標と日銀の物価上昇率目標は整合的に運営される必要がある。現時点で、日銀は2%の物価上昇率を目指しているものの、その到達時期は16年の後半にずれ込んでいる。

第1に、日銀は目標値が生鮮食品とエネルギーを除く総合指数(日銀版コアコアCPI)なのか、食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)なのか、それとも生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)なのかを再度明確にすべきである。現状で、原油価格が最安値を更新しており、コアCPIでの2%達成はかなり難しい。他方、コアコアCPIは現状で上昇傾向を示している。

第2に、予想インフレ率をどこまで重視するかを明確にすべきだ。予想インフレ率は上昇傾向を示しておらず、今後は物価上昇のスピードが鈍化する可能性がある。以上が示唆するのは日銀による追加緩和であるが、そのための論理の整備が必要である。

第3に、政府が掲げる名目GDP600兆円達成について日銀はどう関与するのかを明確にすべきだ。短期的には財政政策の役割が大きく、名目GDPには実質成長率が関わるため、日銀だけの責任にはならないとはいえ、名目値に影響を及ぼすのは中長期的には金融政策である。金融政策論では名目GDP水準目標の望ましさも取りざたされている。政府と日銀の間での目標共有について、改めて確認することが望ましい。

なお、12月18日の金融政策決定会合で、日銀は「補完措置」を導入した。これは日銀の言うとおり、あくまで現行の金融緩和を継続するための「補完措置」であって、14年10月31日のような追加緩和ではなく、一部の報道でいう「バズーカ3」などというのは全く当たらない。

ただし、「補完措置」は追加緩和ではないが、今後の追加緩和を否定するものでもない。16年中のどこかで追加緩和が必要になると私は考えるが、今回はまだ追加緩和と呼ぶべきではない。日銀も必要とあれば躊躇(ちゅうちょ)なく緩和をすると言っており、その可能性はある。

*若田部昌澄氏は、早稲田大学政治経済学術院教授。1987年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院経済学研究科、トロント大学経済学大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学、ジョージ・メイソン大学、コロンビア大学客員研究員を歴任。専攻は経済学、経済学史。「経済学者たちの闘い」「改革の経済学」「危機の経済政策」「ネオアベノミクスの論点」など著書多数。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの特集「2016年の視点」に掲載されたものです。
http://jp.reuters.com/article/view-masazumiwakatabe-idJPKBN0U30AN20151221?sp=true


 
視点:日本経済再生に移民政策は不可避=ケネス・ロゴフ氏

ハーバード大学教授
[東京 21日] - 世界で最速の部類に入る人口減少速度と世界最大の過剰公的債務問題の組み合わせは、日本経済にとって極めて有害だと、ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は指摘する。人口問題解決には移民問題への取り組みが不可避であり、経済再生にケインズ主義的な刺激策が役立つと考えるのは「ナンセンスだ」と説く。

同氏の見解は以下の通り。

<人口問題解決なくして構造問題解決なし>

人口動態は宿命だ。人口減少問題に取り組むことなしに、日本が長期の構造問題を解決することは不可能である。

日本は、欧州に比べれば、非常に大きなアドバンテージを持っている。フランスの前期高齢者(young old、65―74歳)は引退を望んでいるが、日本のその年齢層は働く意欲がある。ただ、これだけでは、大きな助けにはなるが、十分とは言えない。

日本は、働いている母親たちの環境を良くするために、大きく前進する必要がある。例えば、ジョブシェアリングの制度を整えたり、テレコミューティングなど在宅勤務の選択肢を改善したりすることなどが考えられる。

さらに、移民問題に取り組むことは不可避だ。日本は最近、就労目的の在留期間を最長5年に延長することなどによって、例えば外国人の建設労働者に(事実上)門戸を開いた。大阪などの一部地域では、家族ごと受け入れる実験的試みも行われている。しかし、やるべきことはもっとたくさんある。医療や介護の現場などでは、外国人労働者に対するさらに大きなニーズがある。

私は、人口動態をめぐる問題が、とてもデリケートな社会問題を包含していることは理解している。日本は、自国の強みのすべてを残しつつ、人口を増加させる諸方策を見つけることが重要だ。

<ケインズ主義的刺激策はナンセンス>

日本はまた、長期にわたって財政の脆弱性にも対処しなければならない。世界最大の公的債務(国民所得に対する比率)と世界で最も速い部類に入る人口減少速度の組み合わせは、極めて有害なものだ。ケインズ主義的な刺激策が、抜本的な構造改革よりも、日本経済を再び成長させるカギだと信じている人もいるようだが、それはまったくナンセンスだ。

日本は、過剰な公的債務が低成長としばしば関連している「パブリック・デット・オーバーハング」の典型例だ。巨大な赤字は時間的猶予を与えてくれるかもしれない。しかし、それは長期的な問題解決策ではない。

*ケネス・ロゴフ氏は、ハーバード大学教授(経済学、公共政策)。ニューヨーク連銀経済諮問委員。2001年から03年まで国際通貨基金(IMF)のチーフ・エコノミスト兼調査局長。10代からチェスの名人として世界的に知られ、国際チェス連盟から国際グランドマスター(最上位のタイトル)を授与されている。カーメン・ラインハート氏との共著に「国家は破綻する 金融危機の800年」(日経BP社刊、原題はThis Time Is Different)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの特集「2016年の視点」に掲載されたものです。
http://jp.reuters.com/article/view-kenneth-rogoff-idJPKBN0U309Q20151221

 

 

需給ギャップ、7─9月‐0.44% 生産1─3月にしっかり増加=日銀月報

[東京 21日 ロイター] - 日銀が21日に公表した12月の金融経済月報によると、7─9月の需給ギャップはマイナス0.44%と2四半期連続のマイナスとなった。もっとも、労働需給の引き締まり傾向が続いており、4─6月のマイナス0.67%からは小幅改善した。

需給ギャップは日本経済の潜在的な供給力と実際の需要の差。国内総生産(GDP)から推計する内閣府に対し、日銀では、生産設備の稼働率や失業率・労働参加率などから試算している。

日銀試算の需給ギャップは今年1─3月期にプラス0.19%とプラス圏に浮上したものの、4─6月に中国をはじめとした新興国経済減速の影響などを受け、生産設備の稼働率の低下などを背景に再びマイナスに沈んだ。

ただ、需給ギャップの参考指標である短観の設備判断と雇用人員判断をもとにした「短観加重平均DI」(過剰─不足)は緩やかな改善基調が続いており、先行きの需給ギャップも改善が見込まれている。

<輸出、「持ち直し」に上方修正>

月報では、景気の現状について「輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている」との判断を維持した。

ただ、輸出は、自動車関連の伸びを中心に9─11月の実質輸出が3カ月連続でプラスとなったことなどを背景に「一部に鈍さを残しつつも、持ち直している」に上方修正した。前月は「このところ横ばい圏内の動きとなっている」としていた。

生産については「横ばい圏内の動き」に判断を据え置いたが、先行きは在庫調整の進捗とともに、「緩やかに増加していく」と展望。10─12月に「緩やかな増加に転じる」見込みで、来年1─3月は「不確実性は大きいが、自動車関連を中心に、しっかりとした増加となる」とみている。

(伊藤純夫 編集:内田慎一)
http://jp.reuters.com/article/boj-gdp-idJPKBN0U40I520151221

EU離脱めぐる英世論、懐疑派の主張弱まるか By SIMON NIXON
2015 年 12 月 21 日 14:58 JST

 国民投票の結果を予想するのは微妙だということは、当然よく分かっていることだ。政治指導者らが、避けることが可能ならば国民投票に決して問わずに済ませる一因はここにある。キャメロン首相が、英国の欧州連合(EU)残留の是非を国民に問うかどうか迷った際、フランスのサルコジ前大統領は次のように警告を発したと言われている。政府は質問を選ぶが、どの質問に答えるかは有権者が判断することだ。

 結局、キャメロン首相は与党・保守党に対して選挙を求めるEU反対派の英独立党などからの圧力を懸念し、国民投票の実施に抵抗すればすぐに退陣することになる可能性があるとみて、サルコジ氏のアドバイスを無視するしか道はないと考えたのだ。ここにきて、国民投票が足早に近づいている。12月17・18日のEU首脳会議後、キャメロン首相は公約してきた英国のEU加盟条件を変更する提案の確保に自信を表明し、来年いよいよEU離脱の是非を問う道筋をつけた。

 一般的な見方としては、国民投票は予断を許さない。一部の世論調査によると、有権者は割れている。キャメロン首相は満足できる合意を確保できると自信を示しているが、首相が要求していることの多くは、EU市民が英国に仕事を求めて流入する動きを制限する役には立たないと、反EU陣営は意気揚々と指摘している。一方、EU加盟支持派は、EU市民が4年間英国に在住しなければ税額控除を認めないとする要求をキャメロン首相は達成できず、この失敗がEU残留を主張する運動に影を落とすことを心配している。

 こうした一般的な見方にもかかわらず、この数週間でいくつかの点が明らかになった。

 まず、これまで疑問視されたことがあったとしても、キャメロン首相はどのような交渉結果になろうともEU加盟継続を国民に働きかけることは明らかだ。表向きは選択肢を限らずにいるが、首相は英国をEUに残留させることに注力している。離脱準備に公式の時間を使ったことは一度もない。保守党の結束を保つために「離脱」運動になびこうとしても、英国の安全と経済繁栄のためにEU加盟の重要性を強調する声明をあまりに数多く発してきたので、自らの信頼を損なうわけにはいかない。実際、現時点では「離脱」運動をしても有権者の多くがあからさまな不信感を示し、首相に対する支持はかえって邪魔になるに違いない。

 次に、一般に考えられているよりキャメロン首相に対する政治的な抵抗は小さい可能性がある。EU懐疑派は政府閣僚らのEU離脱運動を認めるよう要求している。だが、全閣僚は首相の交渉方針を支持している。一部の閣僚がこのやり方は間違い、あるいは失敗だと主張したいならば、辞任を覚悟するはずだ。1人や2人の辞任はあり得るが、主要政党幹部は首相に反対し、反EU運動が敗れた場合、自らの政治生命が絶たれることを承知している。

 3つ目として、反EU運動は、世論調査では明らかに支持を固めつつあるようだが、足並みがそろってはいない。実際、運動は二分しており、両者の間には個人的で政治的な深い溝がある。現状維持がいかに耐え難いことか。そして、もっと良い代替策があるということを、英国民に納得させるのは至難の業だ。しかも、EUを離脱した場合に英国の将来がどうなるかについても、両者の間で見解は一致していない。EUの単一市場への加盟を維持し、EU市民が英国に居住し働く権利を含め、EUの諸規則の適用を続けるかどうかだ。そうしないならば、どのような形での新たな関係を求め、それぞれ拒否権のある他のEU加盟27カ国をどうやって納得させるかが問題になるだろう。

 4点目は、EU懐疑派の最強の論点とみられている主張が、一番の弱点かもしれないということだ。移民の危機とテロの脅威が一般国民の意識で合わさり、英国はEUを離脱して自国を守りたいだけだという単純な切り口になっていることは疑いない。だが現実に、最近の危機は反対の状況を証明している。欧州は共通の対応が求められる大規模な共同保障という課題に直面している。シリアやリビア、ウクライナを安定させる方策を模索し、ロシアやトルコに対して共通の政策をとり、難民の取り扱いに関する共通の基準を定め強化し、国境を越えるテロ攻撃に対し一緒に対応を講じている。

 だからと言って、EU残留支持派は安心してはいられない。サルコジ氏が警告した通りだ。だが、どちらの方向にも意外な結果になり得る。本当のところ、英国の国民投票は欧州全体にみられる同様な政治論争の新たな変形にすぎない。フランスの極右政党・国民戦線のルペン党首が的確に特徴づけた国際主義者と国粋主義者の対立と同じだ。国民戦線が敗北したフランス地方選挙など、最近の欧州での選挙はすべて、EU懐疑派が主流派政治家の頭痛の種になるほど大きくなっているものの、勝利するほど大きくはなっていないことを示している。

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スペイン与党の過半数割れ、緊縮策が打撃
By MATT MOFFETT AND JEANNETTE NEUMANN
2015 年 12 月 21 日 14:39 JST

 【マドリード】スペインのラホイ首相率いる国民党は、20日の総選挙で過半数議席を得られなかった。緊縮策が不評な与党側が過半数議席を得られなかった選挙は今年、ギリシャ、ポルトガルに次いで3カ国目だ。

 今回の選挙では、2大政党が2つの新党にかなりの議席を奪われる結果となった。スペインは経済危機からの建て直しを図っているが、議席が細かく分かれたことから政権運営には大きな課題が伴いそうだ。

 ラホイ首相率いる保守派の国民党は第1党を維持したが、単独与党政権の樹立に必要な票は得られなかったため、スペインは少数政権ないし連立政権となる。同国は一連の緊縮策や労働改革を経て2013年半ばにリセッション(景気後退)を脱し、今年の成長率は3%前後と、ユーロ圏の主要経済で最高になる見通しだ。だが、失業率は依然20%を上回っており、ラホイ氏が首相に就任した11年の水準からわずかに低下しただけだ。

 欧州では、数十年にわたって政治を支配してきた脆弱(ぜいじゃく)な連立政権や主流政党が、数年前から続く欧州大陸の経済的苦境や移民流入による緊張を感じている。スペインは4年にわたり盤石な過半数政権下にあったが、今度はそれら欧州諸国と同種の政治的不安定に直面するとみられる。

 フィンランドは、医療改革をめぐる亀裂による連立政権崩壊の危機を土壇場で回避した。スウェーデンでは、社会民主労働党率いる政府が予算をめぐって中道右派政党と対立した。フランスの主流政党は、反移民的な政策を掲げて人気を高めている国民戦線を相手に苦戦している。

 スペインの選挙では有権者の半数近くが、ラホイ首相の導入した緊縮策を拒否する政党に票を投じた。ギリシャとポルトガルで今年行われた総選挙でも、スペイン同様の歳出削減と増税を導入した連立政権側は過半数を得られていない。

 政治コンサルタント会社テネオ・インテリジェンスの政治リスクアナリスト、アントニオ・バローゾ氏は「今回の選挙で一つわかるのは、左派が、非常に細分化しているとはいえ、スペインで再び台頭しているということだ」と述べた。

 連立を目指す政党幹部の駆け引きは、数日ないし数週間続く見通しだ。

 開票がほぼ完了した時点で、国民党の獲得議席は350議席中123議席と、ラホイ氏を首相に導いた4年前の選挙から大きく減少した。汚職疑惑と高い失業率が打撃となった。

 やはり汚職疑惑がダメージとなった社会労働党の獲得議席は90議席。ただ、新党の極左のポデモス党が、地方の同盟政党と合わせて69議席を獲得しており、同党との連立で恩恵を受ける可能性がある。

 ラホイ氏の国民党は、中道の新党シウダダノス党と合わせて少なくとも176議席を得られると期待していた。だが、シウダダノス党の獲得議席は40にとどまるとみられ、両党合わせた議席は163議席と過半数に届かない見通しだ。

 選管によると、投票率は73.2%と、4年前の選挙を5ポイント近く上回った。

Albert Rivera, president of Theiudadanos Party, speaks with members of the media after voting in Barcelona.

Spanish Prime Minister Mariano Rajoy waves after casting his vote at a polling station during Spain’s general election on Sunday.

A nun holds her ballot before casting her vote in Ronda, southern Spain.
A voter prepares a ballot before voting in Madrid.
The leader of the Spanish Socialist Party, Pedro Sanchez, casts his vote in a polling station in Madrid.
A woman casts her vote for the national elections in Madrid.
Albert Rivera, president of Theiudadanos Party, speaks with members of the media after voting in Barcelona.
Spanish Prime Minister Mariano Rajoy waves after casting his vote at a polling station during Spain’s general election on Sunday.
http://jp.wsj.com/articles/SB10421733196172483684504581429153935111760


 


 

アングル:苦境の米シェールガス業界に暖冬が追い打ち
[21日 ロイター] - チェサピーク・エナジー(CHK.N)をはじめとする米シェールガス開発業者が正念場を迎えようとしている。既に多額の債務を抱え、原油価格下落のあおりを受けて苦闘しているところに、暖冬が到来しているためだ。暖冬によって暖房需要が減退し、天然ガス価格も下落しており、経営環境が厳しいこの局面で収入が急減する恐れが出てきた。

気象情報サービスの米アキュウェザーのシニア予報士、デール・モーラー氏によると、例年12月後半までには、全米の3分の1から半分の地域が雪で覆われるのに、今年は主として人口が少ない中西部の北半分やロッキー山脈周辺に降雪が限定されている。

こうした中でポイントロジック・エナジーのバイスプレジデント、チャールズ・ネブル氏は、米国中のガス田では「どうやって成長するかを考えるどころか、どうやったら生き残れるかの心境にある。そして今は天気のことしか関心が持たれていない」と指摘した。

足元ではテキサス州に拠点を置くマグナム・ハンター・リソーシズ(MHRCQ.PK)とキュービック・エナジー(CBNRQ.PK)が破産を申請。米天然ガス生産第2位のチェサピークは、エバーコア・アドバイザーズと協力して債務再編や資産売却を模索している。

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18日にはニューヨーク・マーカンタイル取引所で、米天然ガス価格が100万英熱量単位(BTU)当たり1.68ドルと16年ぶりの安値に沈み、1990年代以降で初めて来年第1・四半期中の受け渡しまでの取引が軒並み2ドルを下回った。

IAFアドバイザーズ・アンド・クライテリオン・リサーチのエネルギーアナリスト、カイル・クーパー氏によると、あと2カ月暖冬が続けば、天然ガス先物は1.25ドルまで下落する可能性がある。これは開発業者にとって採掘コスト割れを意味する。

<減産迫られる事態も>

一方、暖房用の天然ガスが欠かせない地域にとって、この12月はかつてないほど気持ちが楽になりそうだ。アキュウェザーのデータでは、12月前半は暖房が必要な気温に達した日数の割合がシカゴでは毎年平均より36%、セントルイスでは42%少なくなった。

このため先週の米天然ガス在庫は1年前よりも16.4%増加。半面、生産は9月の過去最高水準からわずかにしか減っていない。

MDAウェザー・サービシズの気象予報士ドン・キーニー氏は、過去2回の冬は厳しかったが、今回はエルニーニョ現象の影響で穏やかな状況が続く可能性があるとみている。

来春になっても在庫が減らなければ電力会社の貯蔵スペース不足の問題などで、開発業者は減産に動かざるを得ない。

これまで業者は実際に減産しなくても済んでいた。例えば2002年の暖冬期には、より妙味のある原油開発にシフトしたのだ。

しかし現在は原油先物価格も約6年ぶりの安値となっており、新規油田開発を進めようという意欲も高まっていない。

<ヘッジもままならず>

天然ガスを輸入に頼っているアジア地域などでは価格は米国よりもずっと高い。ただ米国から即座にそうした地域に天然ガスを輸送できるインフラは整っていない。米国産天然ガスの最大5%を消費するまでに成長したメキシコ市場向けにはパイプラインが通っているが、拡張してもそれに見合う需要が出てくるかは不透明だ。

米国内では天然ガス価格が非常に安くなったことで、電力会社による石炭からの切り替えが進み、この面での天然ガス消費が今年過去最高水準(米生産量の35%)になったのは明るい材料といえる。

それでも暖冬が開発業者にもたらしている悪影響の方がはるかに大きい。業者は価格下落からのヘッジもままならずにいるのが実情だ。

コンサルティング会社エナジー・アスペクツによると、独立系上位20社の来年見込まれる生産量に対するヘッジ比率は32%と、過去数年間よりも大幅に低い。
http://jp.reuters.com/article/usa-natural-gas-drillers-idJPKBN0U40F220151221?sp=true


 

 


米労働市場、完全雇用とスラックは紙一重か
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ネブラスカ州リンカーンの平均時給は、2014年秋に失業率が2.5%を下回るまでは横ばいだった PHOTO:JEFFREY SPARSHOTT/THE WALL STREET JOURNAL
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JEFFREY SPARSHOTT
2015 年 12 月 21 日 11:55 JST
 米国の労働市場に関しては、どれぐらい需給が逼迫(ひっぱく)すれば賃金上昇は実際に加速するのか、という疑問がある。
 ネブラスカ州リンカーンでは、2014年秋に失業率が2.5%を下回るまで平均時給は横ばいだった。それ以降、賃金は急上昇した。昨年10月以降の上昇率は前年比で10.9%にも達した。失業率は今年10月時点で2.3%だ。
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米国全体(青)とネブラスカ州リンカーン(赤)の平均時給上昇率(3カ月移動平均)
 米国全体の失業率が2.5%まで下がならいと賃金上昇の兆しは出てこない、との声は全く聞かれない。だが、どのような状態を完全雇用と呼ぶのかについては、いくつかの疑問がある。失業率は08年の水準まで低下しているが、他の指標は力強さを欠く。
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 米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は先週、「一般的な失業率には反映されないスラックが存在し続けているとの評価を変えていない。私は労働参加率の低迷に加え、パートタイム雇用の水準が少し異常に高いことも指摘してきた」と述べた。
 FRBは先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、06年以来となる利上げに踏み切り、その理由として雇用とインフレが目標を大きく上回る可能性を挙げた。
 インフレの過度な上昇や低下が生じない「適温」の失業率を自然失業率(NAIRU)と呼ぶ。足元では労働需要はあるが、賃金上昇率はインフレ高進につながるほど高くはない。
 雇用の最大化と物価の安定を法定の使命とするFRBは、このNAIRUを達成したい意向だ。一般的な失業率については、FRB関係者らの長期見通し(中央値)は12月時点で4.9%となっている。
 ただ、エコノミストの間では、NAIRUの具体的な水準や、米経済が既に完全雇用に達しているかどうかについて意見が割れている。10月と11月は失業率が5%で、賃金は上昇の兆しを示した。
 ドイツ証券の国際チーフエコノミスト、トルステン・スロック氏は「当社では現在、米経済のNAIRUは5%と認識している」とし、「FRBの観点から言えば、足元の米労働市場には過熱の兆しが見られる」と述べた。
 JPモルガン・チェースのエコノミストらは、失業率が16年末までに4.5%へ低下し、自社で5%と推測するNAIRUを大きく下回ると予想している。同エコノミストらは「この数年間は労働市場の需給の緩みがインフレに下押し圧力をもたらしてきたので、需給の引き締まりは早晩インフレの押し上げ要因となるだろう」と述べた。
 もっとも、誰もがNAIRUを5%と考えているわけではない。
 左派系シンクタンクの経済政策研究所(EPI)のエコノミスト、エリース・グールド氏は「大半の指標の基調は正しい方向にあるが、名目賃金上昇率と働き盛り世代の就業率は依然として目標範囲から大きく外れている。これは米経済が完全雇用に達するのはまだ先だという十分な証拠だ」と述べた。
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米国の25〜54歳の(季節調整済み)就業率
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米国の失業率(季節調整済み)【水色:公式失業率、紺色:プラス、求職意欲喪失者、桃色:プラス、縁辺労働者、えんじ色:プラス、経済上の理由でやむなくパートタイムに就いている者】
 モルガン・スタンレーのエコノミストらは、NAIRUが17年に4.6%まで低下し、FRBが低金利政策を長期化する余地がさらに生まれるとみている。
 では、何が問題なのだろうか。失業率が非常に低ければ賃金は上昇し、賃金上昇は物価やインフレ率を押し上げる。最終的に労働供給が逼迫すれば雇用の伸びも抑えられる。それが問題だ。
 カンザスシティー地区連銀のネブラスカ担当エコノミスト、ネーサン・カウフマン氏は「雇用の伸びはこの地域全体で相当鈍っている」とし、「その一因は単純に、失業率が今のように低ければ、ある時点で労働市場が引き締まり、雇用はもう以前のようなペースでは伸びなくなる、という現実にありそうだ。雇用の伸びがやや鈍ると予想するのは自然なことだと思うが、労働市場はまだかなり堅調に見える」と述べた。
 ネブラスカ州全体の民間部門の賃金上昇率は、全米平均を上回っている。ネブラスカ州の最低時給は15年初頭に7.25ドルから8ドルに上昇し、16年初頭には9ドルへ上昇するが、多くの企業はそれ以上に引き上げている。同州の大手民間企業ブライアン・ヘルスは11月、入社当初の最低時給を8.45ドルから11ドルに引き上げた。
 ブライアン・ヘルスの人事部門幹部のジャン・ガービン氏によると、同社は難民向け英語学習コースを提供するなどして、労働市場の未活用資源を活用する考えでもある。ネブラスカ州の推計では、この2年間にミャンマー、イラク、ブータンなどからリンカーンに移住してきた難民は毎年400人程度に上る。
 しかし、同州最大の都市オマハの例を見れば、完全雇用とされる状態とスラックの兆候が紙一重であることがよく分かる。リンカーンから車で1時間ほどの距離にあるオマハでは、失業率が2.9%のため、十分な人員を確保しづらいと感じる企業は多い。ところが、賃金は上昇していない。むしろ今年はリンカーン都市部の平均時給がオマハ都市部のそれを初めて上回った。
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ネブラスカ州の民間部門平均時給【青:オマハ、えんじ色:リンカーン】
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