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「2000万人の貧困」 「無料低額宿泊所」を知っていますか 福祉はどこまで高められるか
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投稿者 rei 日時 2015 年 4 月 02 日 00:43:16: tW6yLih8JvEfw
 

「2000万人の貧困」
「無料低額宿泊所」を知っていますか

福祉はどこまで高められるか

2015年4月1日(水)  中川 雅之

 「無料低額宿泊所」という福祉施設がある。行き場のない生活困窮者の生活を安定させるものだが、「貧困ビジネス」と批判されることもある。
 日経ビジネス3月23日号の特集「2000万人の貧困」では書ききれなかった、この施設の現状について紹介する。
 「無料低額宿泊所」という施設があるのを、ご存じだろうか。2010年の調査で、全国に488施設あり、約1万5000人が入所している施設だ。

 社会福祉法に規定されているもので「生計困難者のために、無料又は低額な料金で簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他施設を利用させる事業」とされている。1万5000人のうち、1万4000人近くが生活保護の受給者だ。

 運営には届け出が必要だが、これのほかに届け出がなかったり、社会福祉各法に位置づけのない「法定外施設」もあったりする。こちらは実態がなかなか正確に把握できないが、生活保護受給者の住所などから各自治体が把握しているものだけで、2010年に約1万6000人が入所していた。

困窮者の受け皿の1つ

 生活保護の受給に、原則として持ち家は認められていない。資産価値が低いと認められる場合は家に住み続けながら受給できるケースもあるが、「まずは家を売ったお金で生活を」と求められることもある。そういった場合、生活保護の受給者はまず自分の定宿を確保することが必要になる。

膨張する「安全網」のコスト
●生活保護費の年次推移

出所:厚生労働省(2013、2014年度は予算ベース)
 通常の賃貸アパートなどのほかに、そうした困窮者の受け皿となるのが無料低額宿泊所だ。

 この話は、ある1人の男性の物語から始めたい。初めに断っておくがこの男性が語る内容が、無料低額宿泊所の実情すべてではない。だが、事実としてこうしたことが起きているということをまずはご認識いただきたいと思う。

子供に断られた支援


 その男性は65歳。生活保護で生活しており、今は一般のアパートに移ったが、10年以上にわたり、首都圏の無料低額宿泊所を転々としてきた。健康食品を販売する会社の営業職などで働いていたが、50代である日突然、目が覚めると顔の筋肉が全く動かなくなっていた。医者には「自律神経の病気」と言われ、3カ月入院した。入院費を払うことができず、「福祉」の世話になることになった。

 治癒はしたが、働き続けることができなくなった。30代の時に離婚しており、子供も2人いるが、頼れる関係ではなかった。生活保護の受給申請の時に役所から子供に連絡は行ったようだが、生活の支援は断られたようだ。

月2万〜3.5万円の「小遣い」

 初めは、横浜だったという。役所から紹介された無料低額宿泊所に入った。だがその後、東京都や千葉県の施設を転々とする。現在いる埼玉県を訪れたのは、2015年からだ。

 1カ所にとどまれないのは、「生活環境が劣悪だから」と男性は言う。施設によって設備は大きく異なると言うが、たいていの施設で、2畳ほどのスペースに押し込められた。個室ではなく、1つの部屋を2つ、3つにパーテーションなどで区切っている。部屋に鍵はかからず、冷暖房設備がないことも多かった。

 生活スペースの問題もあるが、人間関係も1カ所にとどまれない大きな要因だという。生活音が筒抜けで、他人のいびきや足音でもトラブルが起きる。また、多くの施設で入所者の誰かが運営者に「寮長」となることを依頼され、管理者になっていたが、その寮長が権力を振りかざすようなケースもあった。

 毎月、月初めに生活保護の受給を受けた。施設から車に乗せられて役所の窓口を訪れ、受給した約12万円の生活保護を袋ごと事業者に渡すという流れが多かった。事業者はそこから家賃、食費、光熱費などを引き、差額を男性に戻す。大体、月に2万〜3万5000円だった。

トイレの窓から逃げた

 手持ちの金がそれだけでは、施設を出ようと思っても暮らしてはいけない。男性によると「転居」の機会は唯一、保護費の受給で役所を訪れるときという。窓口でお金を受け取り、出入り口には行かず、裏口やトイレの窓から「逃げる」のだという。

 しかし、逃げたところで行く場があるわけではない。賃貸アパートを借りようにも敷金・礼金は賄えず、保証人もいない。生活保護の受給者だと言うと、貸してくれない部屋もある。「最近はマックも、夜中の2時くらいになると追い出されるようになっちゃったし」。

寄ってくるスカウト

 ではどうするのか。「上野駅とかで座ってるとね、声かけてくるのがいるんですよ。行くとこないならうち来るか?ってね。めし食わせて、風呂入れてやるよ。ところで生活保護はもらってるかっていう感じです」。

 男性によると、そうやって声をかけてくるのは大体、施設側から「1人いくら」でキックバックをもらっているスカウトなのだと言う。

 「自分がこんな生活をすることになるとは夢にも思わなかった」と男性は話す。彼の人生は、病気になってからあっという間に暗転していった。「病気になって転々とするうち、運転免許も失効してしまった。今思えば、免許さえあればタクシーの運転手くらいできたかもしれないのに」。

「声をかけられるのはありがたい」

 こうした無料低額宿泊所は、生活困窮者を囲い込んで生活保護を吸い上げているとして「貧困ビジネス」などと批判されることもある。ただ、この男性は、宿泊所での暮らしは耐え難かったと言う一方で、「路上で雨風と世間の目にさらされるのに比べれば、やはりそうやって声をかけてくれる人をありがたいとも思う」と話す。

 宿泊所の居住空間について、法的な規制はあまりない。自治体によっては条例で1人当たりの床面積を指定しているところもあるが、男性は「違反の取り締まりなどに、行政はそれほど熱心ではない」と話す。「行政だって、行くとこがないっていう人に紹介できる場所がなくなったら困る。事業者側なんかむしろ、『行政の代わりに自分たちが受け入れてあげている』という感覚じゃないかな」という。

福祉のあるべき姿とは

 この男性のように環境に耐えきれず逃げ出そうとする人もいれば、そこに居続ける人もいる。事業者の違いも、感じ方の差もあるため、この証言だけで無料低額宿泊所全体の質について話すのは避けるべきだ。

 だが、行政などの窓口を通して紹介された施設でもこの男性のように感じる人がいる。それは困窮者の「ぜいたく」なのか、「福祉の不足」なのか。自分が生活困窮に陥った場合に想像を膨らませて、あるべき姿を考える必要がある。

 NPO法人(特定非営利活動法人)のエス・エス・エス(SSS)。2013年末時点で、無料低額宿泊所127施設、約4600人を受け入れている、同事業の国内最大手だ。移転や改装などで居室の完全個室化を進めており、2013年に個室は1487室と、前年から62室増えた。居室全体に占める割合は51%になった。

 SSSが力を入れているのは、住環境の改善だけではない。竹浦史展事務局長は「無料低額宿泊所は、困窮に陥った人が次の安定した生活を取り戻すための一時避難の場所。地域のケースワーカーなどと連携して、いかに自立を支援するかが重要」と話す。

自立を支援

 2002年に開設した「葛西荘」(東京都江戸川区)を訪れた。定員48人で、全て2人部屋だが1室8〜10畳あり、1人当たり4〜5畳のスペースが取れている。

 特筆すべきなのは、2014年3月から2015年2月までの間に、退所した118人の理由だ。アパートへの転宅など「自立」と認められるものが71人と6割強を占める。ほかの退所理由は福祉施設など、そのほかの社会資源への移動が8%、未届が18%などだ。

 働けない高齢者や傷病者が比較的少ないことも影響しているが、それよりも奏功しているのが、施設側で就労支援を手掛けていることだ。入所者の状況に合わせて、どんな仕事ならできそうかを考えるほか、働くことに後ろ向きになりかねない精神面のサポートをする。葛西荘では、取材時点で「働くことができる」と思われる23人のうち、16人がアルバイトなどで就労中、7人が求職活動中だった。

 2013年9月に入所したAさんは、事業に失敗して生活困窮に陥った。それが理由で家族とも離れた。収入は生活保護に頼っている。66歳だが体は健康。施設側の計らいで、入所者向けの食事を作る厨房のアルバイトを続けている。

 近く、施設を出て近くのアパートに転居することになった。転居してからも同施設に通い、厨房のアルバイトは続けるという。

 アルバイトでの収入は月に数万円。働いた分、もともと約12万円の生活保護費が減額されるため、働いてもAさんの実入りが増えるわけではない。だがそれでも、自宅があり、職場に通い、働いて賃金を得ることは人に生きがいを与える。

「自分はラッキーだ」

 Aさんは「自分のせいで、他の人が収めた税金で暮らすことになってしまった。全額を稼げないのは申し訳ないが、いくらかでも働いて収入があれば、税の負担を減らせる。おんぶに抱っこになってしまってはいけない」と話す。

 また「自分はラッキーだ」とも話す。もともとは無料低額宿泊所という存在すら知らなかった。生活困窮という立場になった時、「初めてのことで、どこに相談したらいいのか、何をしていいかも全然分からなかった。自分はたまたまいい巡り合わせで、働くことができ、もう一度人生を生きられる。だが、こうしたことを知らずに、困っている人もいるはずだ」。

 首都圏のある自治体で、福祉に関わる職員は「困窮者が行ける場所がなければ、相談に来られても困る。10数年前はあまり無料低額宿泊所の環境を考えられず『とりあえず入れられればいい』という発想だったが、今は徐々に環境改善の方向に向かっている」と話す。

知られざる困窮者の生活

 ただ、福祉施設の環境改善は喜ばしいが、悩ましい問題でもある。主に公的支援で暮らしている人たちに対して、どれほどの環境を与えるのが「適正」なのかという問題があるからだ。

 例えば居室を改装するのには当然費用がかかるが、事業者の収入源が生活保護である実態からすれば、実質的には公的資金で困窮者の生活を向上させているとも考えられる。財政がひっ迫する中で、市民に理解が得られるかは分からない。

 かといって政府が検討しているように、生活保護の中の「住宅扶助」を削減するなどして、福祉事業者にお金が残りにくくなれば、「劣悪」とされる福祉の住環境は改善しない。「市民は、自分が生活困窮になった際にどんな場所でどんな生活をするかを知らない。そのことが、議論を阻んでいる」(同職員)。

 昨今では、「刑務所の福祉施設化」という問題も指摘されている。「塀の中」の方が外よりも暮らしやすいと考えて、万引きなどの軽犯罪を繰り返して刑務所生活を続ける人が増えているとされる。

増える高齢者の盗み

 法務省の「犯罪白書のあらまし」(2014年版)によると、窃盗の認知件数は2003年から減少し、2013年は実に40年ぶりに年間100万件を下回った。

 だが、高齢者についてみると全く逆の傾向になる。2013年は10万人当たり106.8人と、1994年と比べ約2.5倍に増加。高齢者人口の伸びを大きく上回っており、2013年に検挙された窃盗全体の24.5%を65歳以上が占めた。1998年ごろまで半分を占めた20歳未満の比率は24%まで減り、今やこの国で最もモノを盗んでいるのは高齢者だ。

 2013年の新受刑者は2万2755人で、そのうち60歳以上は3962人と17.4%を占めた。前年から0.7ポイント増え、比率は過去最高となった。

深刻な再入所

 深刻なのは「再入所率」だ。2013年の新受刑者のうち、入所が2回目以上の人は全体の59%。だがこれを65歳以上に限ると、2回目以上の割合は73%に上る。6回目以上の割合も39%と、全年齢の15%より大幅に多い。

 回数は単純に積み上がるので、年齢が上がるほど回数が増える傾向はある。だが、第1の犯罪から5年以内に第2の犯罪をするような「累犯」の割合も65歳以上では6割と、全体よりも10ポイント高い。

 法務省の担当者は「服役した高齢者が出所しても、行き場がなく再び犯罪をして舞い戻るケースが多い」とする。病気になっても処置が期待でき、刑務官などを話し相手にすることもできなくはない。

 実は、冒頭に紹介した無料低額宿泊所を転々としている男性も、取材中私に「生きてても仕方ないから死んじゃおうとはよく考える。それか、生きているなら盗むとか悪いことばかりに頭がいく」と話した。この男性は幸いにも窃盗などの犯罪には手を染めていないと言うが、生活困窮者に対する支援が不十分なままなら、犯罪者が次々と生まれる可能性もある。

 言うまでもないことだが、刑務所は福祉施設ではない。本来の目的から外れて“利用”されてしまうのは、福祉の不足が困窮者を追い詰めているということを、示唆している可能性もある。

刑務所の“目的外利用”が映すもの

 貧困に陥る理由は人それぞれで、他人に責められかねない過去がある人も多い。中には法を犯した人もいるだろうが、既に罪を償ったケースもあるだろうし、そもそも多くの人は犯罪者ではない。

 経済的に余裕がある人に比べて、何かが劣っていた可能性はある。だがそれは、困窮者が「犯罪者よりも苦しい生活」を強いられる理由には一切ならない。「自分とは関係ないこと」として、困窮者がどんな生活をしているかに目を向けないことは、自らが転落した時のリスクを増大させているとも言える。

このコラムについて
2000万人の貧困

日本を貧困が蝕んでいる。月に10.2万円未満で生活する人は日本に2000万人超と、後期高齢者よりも多い。これ以上見て見ぬふりを続ければ、国力の衰退を招き、ひいてはあなたの生活も脅かされる。

日経ビジネス3月23日号に掲載した特集には収められなかったエピソードやインタビューを通じて、複雑なこの問題を少しでも多面的に理解していただければ幸いだ。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150331/279448  

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