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「2000万人の貧困」 映画「子宮に沈める」が示すもの  読めば落ち込む、米超富裕層の住宅事情
http://www.asyura2.com/15/hasan94/msg/847.html
投稿者 rei 日時 2015 年 4 月 02 日 01:00:56: tW6yLih8JvEfw
 

(回答先: 「2000万人の貧困」 「無料低額宿泊所」を知っていますか 福祉はどこまで高められるか 投稿者 rei 日時 2015 年 4 月 02 日 00:43:16)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150330/279369

「2000万人の貧困」
映画「子宮に沈める」が示すもの

監督が語る「見えないものを見る」価値

2015年4月2日(木)  中川 雅之

 「子宮に沈める」というタイトルの映画がある。2010年に大阪で起きた「二児遺棄事件」に着想を受け、2013年に制作されたものだ。


 当該の事件は、社会に衝撃を持って受け止められた。3歳と1歳の幼い子供を抱えるシングルマザーが、マンションの1室に2人のわが子を50日間にもわたって放置し、餓死させる。それは多くの人が、現代の日本で起きるとは想定もしていない事件だった。

 子供を置いて男性と出かけていき、その様子をウェブ上に公開するといった母親の行為は、批判という言葉では表せないほどの猛烈な反発に遭った。

 一方で、社会が要求する「よき母親」としての役割と、現実の生活とのギャップに追い詰められた彼女の境遇は、社会に重い課題も投げかけた。

 育児放棄による餓死という結果自体は異様そのものだったが、家族や周囲との人間関係にトラブルがあり、経済的にも困窮していたという事件の背景は、増加を続けるひとり親世帯が抱える深刻な問題に、光を当てることになった。

そこにないはずのカメラ

 ここで取り上げたい「子宮に沈める」という映画は、フィクションだ。事件を基に制作したことは確かだが、その後の捜査や報道、裁判で明らかになった事実に忠実に描かれているわけではない。むしろその事件を詳しく知る人からすれば、画面に登場する家庭の設定は事件に多少似ているが、全く違うものと受け止められるだろう。

 しかし、それは当然のことだ。監督の緒方貴臣氏が目指したのは、事件の「再現」や「足跡をたどる」ことではないからだ。

 元ジャーナリスト志望という緒方監督の経歴を聞くと、「ノンフィクション」の手法を取らなかったことを不思議に感じるかもしれない。だが監督は、もはや誰も見ることができなくなってしまったものを、少しでも社会が目にすることができるようにと、あえてフィクションで映像化する道を選んだ。

 全編を通じて、カメラはある1つの家庭の内側から出ない。出演者の表情もほとんど映らず、情景描写もほぼない。ただ淡々と、主に子供に近い視点からその家の中で何が起きたかが描かれていく。


映画「子宮に沈める」では、誰も見ることができなかった密室の中にいる子供の様子を描いた。©paranoidkitchen
 恐らく歩き始めたばかりの1歳の弟に、「ママ遅いね」と声を掛ける3歳の姉。哺乳瓶に粉ミルクを手づかみで入れ、水で溶いて飲ませようとする。母が残してくれた最後のチャーハンがなくなった後は、部屋に残ったゴミ袋を漁って残飯を食べ、幼い手で缶詰に包丁を突き立てて開けようとする。

 母親と3人で遊ぶ絵を描いて時間を過ごし、ただただ、待つ。動かなくなってしまった弟に、誕生日の歌を歌う。繰り返し、水だけを飲む。

 目を背けたくなるような情景が、静かに、だが見せつけるように、次々に画面に表れる。映画の長さは約1時間半。子役を使ってこんな映像が撮れるのか、と正直思った。

見えないはずのものを「見せる」

 これは、誰も目にすることがなかった光景だ。大阪二児遺棄事件の母親も、その周囲にいる人も、誰も。その密室の中にいたのは、餓死した2人の子供だけだった。その中で何があったのかを知ることは、もはや誰もできない。科学捜査で一部、推測できることはあるのかもしれないが、我々が知りたいことの多くには、たどり着けない。

 緒方監督は、フィクションという想像力でそれを「見よう」とした。生き残った母親や、その周囲の証言をどれだけ探っても、明らかにできるのはその密室の外部にあったものだけだ。取材報道という、記者である私が置かれた立場からはどうやっても提供できない情報を、緒方監督は社会に届けようとしたと言える。

「理想と現実のギャップが大きくなった」

 「いわゆる理想の生活、『こうあるのが当然』といった生活と、現実との間にすごくギャップが生まれやすくなっていると思います」と、緒方監督は言った。

 大学入学、就職、結婚、育児。そうした人生の転機に、人はその先の未来に希望を膨らませる。「充実した学生生活を送って、いい企業に入る」「仕事を頑張って評価される」「相手を思いやり、幸せな家庭を築く」「子供を愛して、仕事も頑張る」。周囲も本人らに対して、そうした未来が確約されているように振る舞うのが礼儀でもあり、当然のこととされている。

 だが、これらを経験した多くの人が理解している通り、こうした未来を獲得するのは決して簡単なことではない。努力が必要であり、そして往々にして社会情勢にも左右される。どれだけ希望の職場で必死に頑張っても、会社の経営自体が傾けば、夢に描いた未来はついえる。

努力が報われやすい時代と、そうでない時代

 一定の努力をすれば、ほぼ確実に生活が改善していく時代が日本にはあった。ともすれば、努力をしなくても生活は改善した。だが現代の日本はそうではない。上の世代が「みんなが獲得できる未来」と考えた生活は、より大きな困難を乗り越えなければ獲得できないものになった。

 緒方監督はしかし、そうした“不都合な真実”について「見えにくくするシステムが強烈に働いている」と見る。

 100円ショップに並ぶ商品が、その値段で売られているのは誰かが安価な労働力で作ったからだ。肉がスーパーに並ぶのは、家畜を育てる人が居て、食肉加工する人が居るからだ。だがそうした社会のつながりを意識しないままに、生きていける仕組みが世の中を分断している。「実際の世の中はつながっていて、誰かの生活は、必ずほかの誰かの犠牲や献身のもとに築かれている。だが、それが意識されない」(緒方監督)。

 核家族化と生活様式の都市化により、個人の生活はほかの誰もが立ち入れない聖域として扱われるようになった。個人のプライバシーは今もなお、その保護の壁を厚くしている。そのこと自体は必要なことであったとしても、自分とは違う他人の生活があるということに、想像力を働かせにくくなっているのではないか。

川崎中1殺害に思う

 2015年2月、神奈川県川崎市で起きた中学1年生殺害事件を引き合いに出す。事件発覚当初、顔にあざを作って帰ってきた子供に気づかなかったと言って、被害者の母親は世論から集中砲火を浴びた。だがひとり親や共働きが増えている現代では、子供とすれ違い生活をしている人は多い。しかし、そうしたことに思いを至さないまま、批判の矛を振り上げる人もまた数多くいる。

 緒方監督は言う。「事件が起きて、シングルマザーが男性と付き合っていることが分かると途端に『子供をほったらかして性欲を優先するなんて』という批判が起きる。だけど、子供のためにこそ、生活を共にしてくれる男性を求める母親は多い。そんなこと、少し想像すれば当然で、同じ立場になればそうする人が多いのでは」。


緒方貴臣監督は「見えにくいもの」を見ようと社会に目を凝らす
「多様化」に隠れた家の中

 昔に比べれば働く女性が増え、24時間営業の店で深夜働く人も増えた。ひとり親が増え、高齢化で介護する親族を持つ人も増えている。そして何より、単身世帯が増えている。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の全世帯に占める単身世帯の割合は2010年に32.4%だったが、これが2035年には37.2%に増加する。人口減少局面にあって、単身世帯数も同じ期間に1割増える見通しだ。

 1人暮らしの人がすべて、周囲との関係が希薄なわけではない。しかし相対的に見れば、複数の人が暮らす世帯に比べて、様々な人と関わる機会が少ないことは間違いない。

 「ライフスタイルの多様化」はメディアで呪文のように繰り返されている。だが、多様化したそれぞれのライフスタイルがどのようなものか、我々はあまりに知らない。それは各家庭という密室の中に、押し込められている。

詐欺被害からの自殺

 少し話は変わるが、緒方監督が参考にと示してくれた視点についても、説得力があるものなので紹介したい。

 「振り込め詐欺」という手口は一般に知られるようになったが、その被害にあった人で、その後自殺に追い込まれる人が後を絶たないのだという。

 その理由の多くが「自分の子供と詐欺を判別できなかった」ということに対する自責の念だ。そしてそれに付随するように「あの人は自分の子供と他人が分からなかった」という世間の目や、失敗をしたことに対して親類から受ける非難が二次被害となり、被害高齢者が孤独感を募らせるのだという。

 1カ月に1回でも、子供が実際に電話をかけてくるような人は、詐欺の電話との違いを判断できる。でも何年も連絡をしなければそれは難しくなる。家族の関係性の乏しさが高齢者から判断材料を奪い、もの寂しさが警戒感を奪う。

 警察がどれだけ振り込め詐欺に対する注意を呼びかけても、被害がなくならないのは、手口の巧妙化だけが理由ではない。「だまされやすい環境」にある人が増え続けているからだ。犯罪自体の取り締まりよりも、そうした環境に多くの人が居ることに対策を講じた方がいい可能性もある。

 一人暮らしの高齢者の家庭に、カメラは回っていない。その生活の様子を、本人以外はさほど知らない。いわゆる「孤独死」をする高齢者の全国統計はないが、東京都では2013年に4515人。10年間でおよそ1.5倍に増えた。全国では3万人に及ぶとされている。彼らは生前、どんな暮らしをしていたのか。どんな思いを抱いていたのか。死後、それを知る手段はなくなる。

 他人の目が届かない「密室」は今、日本に猛烈な勢いで増え続けている。その内側が、バラ色の桃源郷である可能性もある。しかしドアを開けた途端に底なしの穴が、ぱっくりと口を開いている可能性もある。

子宮という「箱」

 「子宮に沈める」のタイトルは刺激的だ。母性あるいは女性の象徴である肉体的器官に沈めるものは、これまた子宮が象徴する「命」だ。命を産む器官に命を沈めるという背反が、女性の苦悩を痛烈に表現する。

 だが、このタイトルを決めた緒方監督は子宮という言葉に「もう1つ象徴させているものがある」と言う。それが「箱」だ。ここまで使ってきた「密室」という言葉でも言い換えられるかもしれない。

 人は子宮という箱を出てから、その生を歩み始める。正確には、お腹の中にいる時から命を持っているわけだが、人生のスタートはそこを出てから、と考えるのが一般的だ。

 幼少期に親や家族だけの世界で多くの人が育ち、その後、徐々に学校などでほかの関係を築いていく。家庭という箱から、社会の関係性の中で生きていくようになる。

密室がもたらす「死」

 子宮に沈めるということは、箱の中にもう一度押し込める、という意味になる。密室の箱の中に入れられれば、人は社会性を失う。それは幼い子供や高齢者でなくても、ある面で「死」を意味するということを、映画のタイトルは暗喩している。

 今あなたは、住居を別にした両親、あるいは子供夫婦、独立した兄弟の家庭の「箱」の中を、どれだけ見ようとしているだろうか。マンションの隣に暮らす人の「箱」の内側を、どれだけ知ることができているだろうか。

 現代社会は、それぞれの箱の中に干渉することを望ましいとしない。干渉するのは粗野で、疎ましく、無礼で、多くの人が避けようとする。だが他人からの干渉がなくなることで、人々が失うものもやはりある。

 人はどこまで、他人の境遇に寄り添い、共感することができるのか。

 3月23日に公開したこの連載の初回で、ある女性の事例を紹介した。尾島遥さん、36歳(記事はこちら)。2度の結婚と2度の中絶、1度の流産を経て、今も生活困窮にあえぐ女性だ。

 予想をしていたことではあるが、彼女のストーリーには賛否両論があった。無責任とも取れる彼女の行動は数多く、困窮状態になったのは「自己責任だ」とする読者からの反応は強かった。

「もっと違う人の事例がいい」

 ある1つのコメントを引用する。

 「私の感想は、この人に『子供がいなくて良かったな』ってことです。子供がいたら、もっと不幸になっているかも。この記事では、自己責任と片付ける人が増えそうです。もっと困っている人の記事を載せてもいいのでは」

 当該記事でも書いた通り、私自身も彼女の経歴に100%共感したかと言えばそんなことはない。遥さんの行動に首をかしげることは多かったし、無責任な行動を非難したい気持ちもわき上がった。しかし、彼女の生まれ育った家庭環境は、その後の人生を歪めるに十分なほど、劣悪だとも思った。

 賛否が渦巻くだろうと思いながら、それでも彼女の話を連載の初めに書いたのは、こうした困窮者の支援という話になった時、我々がいかに「その人が支援に値する人物かどうか」を見極めようとしているかということに、触れたかったからだ。

「ストーリー」で選別される支援

 日本には今、2000万人を超える「貧困層」がいる。そのうち、「この人は助けてあげたくなる」とみんなに思われるような人が多いわけではない。だが、「この人には過失がないから、支援する」「この人は過失があるから支援しない」というような選別をすることが、どれほど正しいのかは、私には分からない。

 我々メディアも、特にこうした「貧困」などの取材の場合には、できるだけ読者の共感を呼べるような事例を探す。本人の過失を問いにくい「子供」のケースはいい。だが大人の貧困を扱う場合、我々は極力「不可抗力」または「相当程度、情状酌量の余地がある」ケースを探す。例えそれが全体から見れば少数だとしても、そうでないと記事が商品にならないからだ。

 だが残念なことに、そうした共感を呼ぶ事例ばかりを集めていけばいくほど、現実とは乖離していくケースもある。少なくとも私には、貧困はまさにそのケースに当たった。

 酒で体を壊したり、借金を作ったり。客を殴って怪我をさせ、閉店に追い込まれたという個人事業主もいた。困窮に陥る理由はまさに人それぞれだが、本人に過失を感じないケースには、ほとんど巡り会えなかった。だが、そうした“しょうもない事例”は記事にしない。往々にして読者に訴える力が弱いからだ。

 だがこの取材を通じて、私の中には1つの疑念も浮かんだ。共感を呼べるケースを記事にし、そうでないケースを記事にしない。そんなことを続けると、読者の中に「助けてもいい困窮」と「そうでもない困窮」が生まれることを助長するのではないか、と思ったのだ。

 分かりやすいストーリーには、「悪者」と「正義の味方」がいるといい。「悪者」の味方をするのにも、「正義の味方」を糾弾するのにも勇気がいる。分かりやすい善悪があればあるほど、人の共感は得やすくなる。それは事実だ。

「答えではなく考えるきっかけを」

 だが実際は、正義や美談ばかりではこの世界はできていない。正義の味方でもなく美談の主人公でもない人には、メディアの「ストーリー」になる資格はないかもしれない。だが現実には、そうした人が困窮者の大多数なのではないかと思う。


 緒方監督は私に、「僕の映画に答えはないんです。子供が餓死しなきゃいけなかった原因を追究していないから、『こうなりたくなければ、こうした方がいい』といったメッセージはありません。でも、何が起きたかを見ることで、強制的に人は考える。答えを与えるのではなく、考えるきっかけを与えたかった」と語った。

 年の近い映画監督が語る言葉に、「記者」という肩書を会社に与えられている自分が、ジャーナリズムの源泉を教えられるような思いがした。

身近な人の密室に、光を当てる

 関係性の希薄化と、身近な人に対してさえ欠き始めてしまった想像力が、この社会のあちこちに深い闇を生んでいる。「貧困」は、その闇から出てくる事象に過ぎない。

 光を当てることができるのは、その内側を知ろうとする「関心」だけだ。凄惨な事件が起きた時、世間の関心は一気にある1つの事例に向かう。だが、その事例はいつもどこか特殊で、「この部分は私と同じかもしれないが、ここは違う」という思いばかりを、人に抱かせる。

 我々の関心が向かうべき先は、マスコミを通じて知る、一生関わることのない他人の人生だけではないはずだ。身近にいる人の密室の中に、何があるのか。そこに手を伸ばすことを皆がやめた時、社会は大きなセーフティーネットを失うことになる。

 「共感できない人は救わない」「救わないでもいい」という態度では、あなたが手を差し伸べても、それをつかめる人はごくわずかだ。逆に言えば、皆が同じ人にだけ救いの手を差し伸べることにもなる。今、分かっているだけでもこの国には2000万人分の“貧困”がある。私のようなメディアの人間が描かない、あなたのすぐ傍にある真実に、できることなら目が向けられてほしい。

このコラムについて
2000万人の貧困

日本を貧困が蝕んでいる。月に10.2万円未満で生活する人は日本に2000万人超と、後期高齢者よりも多い。これ以上見て見ぬふりを続ければ、国力の衰退を招き、ひいてはあなたの生活も脅かされる。

日経ビジネス3月23日号に掲載した特集には収められなかったエピソードやインタビューを通じて、複雑なこの問題を少しでも多面的に理解していただければ幸いだ。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20150331/279446/?ST=print 
読めば落ち込む、米超富裕層の住宅事情 
米ウエストウイング社の榑松寿延社長に聞く
2015年4月2日(木)  鈴木 信行

前回、ベールを脱いだ異色企業「平成建設」の米国進出計画。文字通り「米カリフォルニア州に大工を引き連れ、純和風の高級住宅を建てに行く」という一大プロジェクトだ。住宅は典型的な地産地消商品で、米国には米国のハウスメーカーが居並ぶ。また、本当に最高品質の日本住宅を建てるには、木材などの材料を日本から大量に持ち込むことも不可欠で、コストも跳ね上がる。それでも秋元久雄社長は、@本格的な日本住宅は住み心地や素材の循環性、美しさなどで世界に類のない居住空間、A米国の超富裕層は東洋的アート、特に日本家屋への造詣が深いなどを根拠に、新規事業の潜在力の高さを熱く語った。
今回は、平成建設と現地でタッグを組む米ウエストウイングの榑松寿延社長に、米国の超富裕層は本当に日本の家を買うか聞いた。
(聞き手は鈴木 信行)

榑松寿延(くれまつ・としのぶ)
1984年 日系建設会社USA支店の代表に就任。1997年ウエストウイング社設立。現地で日系企業の進出サポートを手掛ける。
前回は、平成建設の秋元さんに米国進出計画をお話ししてもらったんですが。
榑松:「信じられない」「荒唐無稽だ」という読者が多いんでしょう(笑)。まあ無理もない話です。僕も米国で長い間、日系企業の現地進出をお手伝いしていますが、こんな計画を立てる企業は平成建設が初めてです。僕の方からはもう少しファクトベースで、この話が決して夢物語でないことをお話しします。
秋元さんは「カリフォルニアに行けば、どんなに高くても日本の高級住宅を買える超富裕層がごろごろいる」とおっしゃっていました。
榑松:その通りです。米国経済をマクロ的に分析しますと、GDPの3分の1は3つの州から生まれています。どこだと思いますか?
ニューヨークとか、平成建設が打って出るカリフォルニアですか。
榑松:ほぼ正解です。昔はカリフォルニア、フロリダ、ニューヨーク、あるいはカリフォルニア、イリノイ、ニューヨークが米国の3大富裕州でした。最近はテキサスが浮上してきて、カリフォルニア、テキサス、ニューヨークの3つの州がGDPに最も貢献している3州となっています。
南カリフォルニアこそ世界屈指の富裕層居住地
その3州はただ人口が多いだけでなく、富裕層も沢山暮らしている、と。
榑松:そうです。資産100億円以上の富裕層の居住地を米国の地図にマッピングすると、間違いなくこの3州にお金持ちが集中していることが分かります。広い米国の中でも、高額商品を買える富裕層は割と固まって暮らしているんですね。超高級住宅販売を展開するならこの3州のいずれかですか、平成建設さんは「まず日本に近い所から」という判断で、カリフォルニアを最初の進出先にしました。特に南カリフォリニアですね。カリフォルニアの住民所得の約半数は、南カリフォルニアの5つのカウンティーから発生しています。
そこに行くと、本当に大金持ちがごろごろいるんですか。
榑松:(新聞のコピーを出しながら)これは『オレンジカウンティー・ビジネスジャーナル』という地元紙に載った富裕層リストです。自己資産額を見て頂くと、日本で想像する金持ちとは全くスケールが違うことが分かります。
リストには資産額順に富裕層の方が並んでいますが、1位のDonald Bren氏の資産は15ビリオンドル…。ビリオン!?
榑松:150億ドルですね。
150億“ドル”? 1ドル100円として計算すると、1兆5000億円! 計算合ってます? 2位の方は3.2ビリオンドル。それでも3200億円。10位の方で1.5ビリオンドルだから1500億円、30位の方でも350ミリオンドルで350億円。みなさん、何にお金を使っているんですか。
「資産200億円で普通」の世界
榑松:例えば「年代物のフェラーリを1台25億円で買った」といった話は聞きます。後は美術品ですね。『オレンジカウンティー・ビジネスジャーナル』に載っているのは、オレンジカウンティーの中でもトップクラスの超富裕層です。ここまで行かなくても現地には資産200億円程度の普通の富裕層は沢山います。
200億円で普通ですか…。秋元さんの情報によると、そうした富裕層向けに、オレンジカウンティーには今も100ぐらいの超高級住宅街が造成中とのことでしたが。
榑松:その通りです。建設中の住宅街は1区画500〜1000坪で、富裕層は200万〜2000万ドルの土地に、1000万ドルの住まいを建てるのが相場です。
桁が大きいのとドルと円と坪が入り乱れて、もう何が何やら分からなくなってきました。
榑松:多くが海が目の前の一等地で、外観はトスカーナ風です。
トスカーナ? いずれにせよ、とにかく南カリフォルニアには想像を絶するお金持ちが沢山いて、平成建設が総力を結集してとんでもない超弩級の高級住宅を売り出しても、買える人はいる。これは間違いないと。
榑松:そうです。
でも、どんなにお金があっても、自分が欲しくないものにはお金は払わないですよね。米国の富裕層は本当に、秋元社長の言うように、在来工法と木材で大工が匠の技を駆使して造る日本住宅に関心があるのでしょうか。
榑松:建築全体をいきなり売るのは、今は難しいと思います。外観規制もありますし。だからこそ平成建設の、まず「和室」の販売から始めるという作戦は、とてもいい攻め方だと思います。先ほどもお話ししたように、超富裕層はかなりの確率でアートに関心が深く、日本の美術にも造詣が深い。
ここまでの富裕層となると、美術品くらいしかお金を使う先がないでしょうしね。
榑松:日本を何度も訪れている方も沢山います。日本の美を巡る旅ですから泊まるのは、外資系の高級ホテルと言うよりは、京都の俵屋旅館や神奈川・箱根の強羅花壇といったタイプですね。彼らに、あの“小空間の美”を自宅に再現しませんかとアプローチしていけば、絶対に需要があります。既に、個人的なネットワークを通じて20人近くの富裕層にお話をしていますが大変好評で、実際に2、3人は本気で自宅に“和のゾーン”を作ろうと検討してくれています。年内にも着工できるかもしれません。
どんなゾーンになるんでしょう。
榑松:和モダンが基調です。空間内のインテリアには、日本の伝統工芸をふんだんに取り入れます。漆、和紙、着物の生地…。有田焼を始め金沢、京都の焼き物を壁の中やテーブルの角に埋め込むとかアイデアは様々です。そうした和の空間を、富裕層の家一軒一軒ごとにプロデュースしていく。そこは寛ぎの空間、もてなしの空間だけでなく、彼らがこれまで収集した美術品の展示スペースとしての機能も持たせようと思っています。
「食」が日本化し始めた米国、「住」も
なるほど。車1台に数十億払える人たちですから、気にいってくれるなら、何だってできますよね。
榑松:それに米国では、様々なものが「日本化」しつつある気がするんですよね。特に顕著なのは「食」で、最近は米国人も食の安全や健康などを口にするようになっています。私の知る所では、小学校の自販機ではもうコークは置いていません。オレンジジュースもダメなはずです。置いてあるのは水とお茶です。
「食」が日本化したら、「住」も日本化する、と。
榑松:ジョルジオ・アルマーニ氏は大変な日本贔屓で、スエーデンの別荘は和モダンだそうです。
スケールが大きすぎてもはやピンときていませんが、強い説得力は感じます。
榑松:カリフォルニアで和モダンが流行する根拠はまだありますよ。5年ぐらい前からアジア系の富裕層が物凄く増えているんです。中国系、フィリピン系、ベトナム系、インド系…。こういうアジア系がどんどん成功しています。こうしたアジアの方はやはり日本という国にはある種の憧れを持っていて、和モダンも大変訴求力があると考えています。
中国、フィリピン、ベトナム、インドですか…。アジアの人はみんな、頑張ってるんですねえ…。『オレンジカウンティー・ビジネスジャーナル』のリストも、3位と4位はアジア系の方ですね。3位のJohn Tu氏は資産額が3.1ビリオンドルと。
榑松:ああ、ツさんね。
もしも資産3000億円の知り合いがいたら
えっ、知り合いなんですか?
榑松:台湾出身の実業家の方ですよ。
総資産3100億円ですか。あやかりたいなあ、あやかりたいなあ。
榑松:あやかりたいですね(笑)



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