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「本庶佑さん ノーベル医学・生理学賞の意義」〜免疫のブレーキを外すオプジーボ/土屋 敏之・hk
http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/673.html
投稿者 仁王像 日時 2018 年 10 月 02 日 20:10:30: jdZgmZ21Prm8E kG2JpJGc
 

(回答先: ノーベル賞 本庶さんに日本各地から祝福の声〜医学・生理学賞の受賞に/nhk 投稿者 仁王像 日時 2018 年 10 月 01 日 21:13:46)

「本庶佑さん ノーベル医学・生理学賞の意義」(時論公論)/土屋 敏之/・hk
2018年10月01日 (月)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/306335.html
土屋 敏之 解説委員

今年のノーベル医学・生理学賞の受賞者に、京都大学特別教授の本庶佑さんが、選ばれました。日本人がノーベル賞を受賞するのはアメリカ国籍を取得した人を含めて26人目で、医学・生理学賞ではおととしの大隅良典さんに続いて5人目となります。

本庶さんは1942年京都市生まれの76歳。京都大学医学部を卒業し、アメリカ、カーネギー研究所や東京大学などで、免疫学・分子生物学の研究に取り組んできました。今回の受賞理由は、「免疫の反応を抑えるブレーキ役になる蛋白質を発見し、この発見に基づいて全く新しいがん治療の原理が確立された」とされています。一般には、画期的な抗がん剤と言われる「オプジーボ」を生み出すことにつながった発見とも言えます。

ただ、本庶さんの研究はこれだけではなく実に多岐に渡ります。37歳の時に大阪大学医学部の教授に迎えられるなど、早くからその業績は高く評価され、「ノーベル賞に最も近い日本人の一人」とも言われました。例えば1970年代末から体内で様々な免疫物質が作り分けられる仕組みを解明してきました。80年代には免疫に関わる複数の信号物質を発見したり、その機能を突き止めました。
そして、1992年、本庶さんの研究室では今回の受賞理由となった「PD−1」という物質を発見しました。

私たちの体の免疫は、体内に入り込んだウイルスなどを退治する重要な働きをしている一方で、過剰に働くとアレルギーの原因にもなり、ちょうどいい働き具合をする必要があります。PD−1はこの免疫の働きにブレーキをかけて調節する重要な蛋白質です。

本来、免疫細胞はがん細胞を攻撃して体を守る働きがあります。ところが、がん細胞は免疫の攻撃を逃れるため、特殊な物質を出して免疫細胞のPD−1に結合させます。すると、ブレーキが働いて免疫の働きが抑制され、がんへの攻撃をやめてしまうのです。

そこで、PD−1に言わば蓋をすることが出来ればブレーキははずれ、免疫細胞は本来のがんを叩く役割を十分に発揮することができるのです。

体が本来持つ免疫の力でがんを叩こうという「免疫療法」は1970年代頃から世界で試みられてきましたが、なかなか十分な結果が出ませんでした。本庶さんは、「従来の免疫療法はいかに免疫のアクセルを踏むかを考えてきたが、体にはそれを抑えるブレーキの働きがあるので、むしろブレーキを外してやらないといけないのではないか」と考えました。そのブレーキ役こそがPD−1だったわけです。
今回の本庶さんの受賞は、アメリカ、MDアンダーソンがんセンターのジェームズ・アリソンさんとの共同受賞です。アリソンさんも、本庶さんと同じ頃、免疫のブレーキ役をしているCTLA−4という別の物質を発見し、やはりがん治療薬の開発につなげました。本庶さんやアリソンさんたちの発見をきっかけに、多くのがんに効果がある画期的な治療薬が実現することになったのです。

免疫のブレーキ役・PD−1に蓋をする物質として開発が進んだニボルマブ、別名「オプジーボ」と名付けられた薬は、2014年にまず「悪性黒色腫」という皮膚がんの一種の治療薬として認可されました。その後、肺がんや腎臓がん、胃がん、中皮腫など多種多様ながんに効果があるとして次々に対象が広がっています。普通抗がん剤は、肺がん、乳がんなど、がんの種類が違うとそれぞれ異なる薬であることが多いのですが、本庶さんたちの研究が生み出した薬はこれとは逆に幅広いがんに効果的です。これは、体の免疫機能を最大限発揮させるという共通の働きに目をつけたものだからです。本庶さんやアリソンさんたちの発見を元に、こうした免疫のブレーキを外すことで様々ながんに効く薬の開発が近年急速に進み、がんの薬物療法は劇的に変わりつつあります。
一方でこのオプジーボという薬については、その値段が非常に高いことで大きな議論を呼んできたのも事実です。「人類のために最大の貢献をした人に与える」というノーベル賞の精神に立ち返れば、こうした薬が、今後、貧富を問わず世界の人々を救うためにより生かされていくことが望まれるでしょう。
ただし、強調しておきたいのは、本庶さんたちの基礎研究の価値は、本来こうした薬としての利用が拡大するか否かとは別にあるという点です。そもそも基礎研究は、直接薬の開発や経済的利益のために行うものではありません。人類の叡智を増すような科学的価値の高い画期的な発見であっても、それが実生活に役立つかどうかは、その後の技術開発の結果や社会のニーズによって初めて明らかになるもので、PD−1の場合、科学として画期的な発見であったと同時に、後に画期的な新薬にもつながった、と言えます。
それを象徴するのが、このPD−1という物質の名前です。PD−1の研究は、もともと薬の開発を目ざしたものではなく、全くこれと異なる「細胞が自ら死ぬ仕組み」を解明しようとするものだったのです。細胞は、その役割を終えるなどすると自ら死ぬ仕組みをプログラムされていると考えられていました。
こうした、「プログラムされた細胞の死」を起こす原因となる物質を探している中で最初に見つかった物質だったため、Programmed cell Death 1、略してPD−1という名前をつけたのです。その後の本庶さんたちの研究の結果、実はこの物質が、免疫の働きにブレーキをかけている重要な物質だとわかったのです。

本庶さんは、著書の中で「生命科学はやってみないとわからない要素が非常に多く、1万個の種をまいてもおいしい実をつけてくれるのはたった数本の樹」だと述べて、基礎研究を重視し、なるべく多くの種をまく必要性を訴えています。また、この発見が国立大学が法人化される前の比較的めぐまれた研究環境だった時代に生み出されたものだったことを挙げ、現在のように短期間で成果を挙げることを求めがちな風潮では、特に若い研究者が自由な研究が出来なくなっていくことに警鐘を鳴らしています。
受賞を受けて臨んだ記者会見では本庶さんは、「基礎医学分野の発展が一層加速し、基礎研究に関わる多くの研究者を勇気づけることになれば、私としては望外の喜びです」と語っていました。ノーベル賞受賞に盛り上がる今だからこそ、20年、30年先の社会を見据えて、基礎科学の価値をあらためて考えてみることが大切ではないでしょうか。  

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