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結局、日本の安全保障をどうするのか? 一番重要な論点が抜け落ちている安保法制論議 
http://www.asyura2.com/15/senkyo186/msg/411.html
投稿者 rei 日時 2015 年 6 月 09 日 12:45:28: tW6yLih8JvEfw
 

結局、日本の安全保障をどうするのか?
一番重要な論点が抜け落ちている安保法制論議
2015.6.9(火) 筆坂 秀世
日米安保を肯定して集団的自衛権の行使を否定する矛盾

 衆議院憲法調査会で3人の憲法学者が安保法制について「違憲」だと意見表明したことが、大きな問題になっている。なかでも自民党推薦の長谷部恭男早大教授まで「違憲」だと述べたことが、与党に衝撃を与えている。

 3人の意見の概略は、次のようなものである。

 「従来の憲法解釈はガラス細工で、ぎりぎり保っていた。安保法制は踏み越えてしまっている」(笹田栄司早大教授・維新の党推薦)

 「海外に戦争に行くのは集団的自衛権で、憲法9条違反。閣議決定で、政府が積み上げてきたものが、論理的に吹っ飛んだ」(小林節慶大名誉教授・民主党推薦)

 「個別的自衛権のみ許されるという論理で、なぜ集団的自衛権が許されるのか。どこまで武力行使が許されるかも不明確で、立憲主義にもとる」(長谷部恭男早大教授)

 3人の意見に共通していることは何か。私の勝手な推測だが、恐らく自衛隊は合憲であるという立場であろう。また、これまで歴代内閣が積み上げてきた憲法解釈も「ギリギリ合憲」だという立場であろう。だが、集団的自衛権の行使は憲法上認められないということであろう。

 では、日米安保条約についてはどう評価しているのだろうか。新聞報道で見る限り、不明であるが、恐らく肯定的に見ているのではないだろうか。3人の学者を推薦した自民党、民主党、維新の党も日米安保条約を肯定している政党である。

 言うまでもなく日米安保条約というのは、日本とアメリカの軍事同盟である。2国間で軍事同盟体制を作り上げながら、集団的自衛権の行使は一切認められないというのは、最大の矛盾ではないのか。

日米安保は米国の集団的自衛権行使が前提

 “日本がどこかから攻撃されたら、アメリカが助けてくれる。それが日米安保だ”と国民は理解しているのではないか。アメリカは、自らは攻撃されていないのに、同盟国である日本が攻撃されたため集団的自衛権を行使して、日本を助けるわけである。

 ただし条約上は、アメリカが自動的に日本を助ける義務があるわけではない。あくまでもアメリカの判断である。

 第5条は、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危機に対処するように行動することを宣言する」と規定しているだけである。集団的自衛権を行使するかどうかは、あくまでもアメリカ大統領や議会の政治判断に委ねられているに過ぎない。

 とはいえアメリカが集団的自衛権を行使して日本を助ける蓋然性は小さくはない。そうでなければ日弁安保体制は成り立たない。日本がアメリカに広大な基地用地を提供し、「思いやり予算」まで提供して日米安保体制を成立させているのは、アメリカの集団的自衛権の行使を期待してのことなのである。

 憲法9条があるからだとはいえ、“相手国には集団的自衛権の行使を求め、自国は拒否する”という仕組みは、もともと大きな矛盾をはらんできたのである。さらに厳密に言えば、基地を提供すること自体が、国際的には集団的自衛権の行使と見なされることもある。

 安倍首相の祖父である岸信介首相(当時)や法制局長官は、次のように国会で答弁していた。

「一切の集団的自衛権を持たない、こう憲法上持たないということは私は言い過ぎだと、かように考えています。・・・他国に基地を貸して、そして自国のそれと協同して自国を守るというようなことは、当然従来集団的自衛権として解釈されている点でございまして、そういうものはもちろん日本として持っている」(1960年3月31日、参院予算委、岸首相)

「基地の提供あるいは経済援助というものは、日本の憲法上禁止されておるところではない。仮にこれを集団的自衛権と呼ぼうとも、そういうものは禁止されておらない。集団的自衛権という言葉によって憲法違反だとか、憲法違反でないという問題ではない」(1960年4月20日、衆院安保特別委、林修三内閣法制局長官)

 問題は、集団的自衛権の行使をどこまで認めるかということであった。

 いまの国会での議論を見ていると野党側の追及は、集団的自衛権の行使は一切してはならないという前提に立っているが、だとすれば日米安保体制との矛盾をどう説明するのか、説得力ある論理を聞きたいものである。

「違憲の軍隊」なら、災害救助も憲法違反なのか

 共産党は、安保法制は違憲だと言う。それはそうであろう。同党は、自衛隊そのものを「違憲の軍隊」と位置付けているからだ。だとすれば議論の必要もなくなる。存在そのものが憲法違反なのだから、その「違憲の軍隊」が何をしたとしても憲法違反だということになる。武力行使と一体化するかしないか、戦闘地域に行くか行かないか、などという議論をする意味がそもそもないのである。

 災害救助だって憲法違反ということになってしまうのが、共産党の立場なのだ。つまり自衛隊を解体しない限り違憲状態はなくならない。もちろん日米安保条約も違憲の条約ということになる。自衛隊もない、在日米軍もいなくなる、まったく軍事的空白を生み出そうというのが、共産党の主張なのである。

 なぜあえてこういうことを指摘するのかと言えば、もちろん嫌がらせではない。安保法制の議論というのは、日本の安全保障をどうするのかということが問われている問題だからだ。

欠落している一番大事な議論、日本の安全保障をどうするのか?

 いまの国会論戦を見ていると、この一番大事な安全保障論が欠落している。

 法案のあれこれを捉えて憲法違反だと主張することも結構だが、もっと大事なことは日本の安全保障だ。「戦争法案」などとレッテルを張るだけではなく、それぞれの党が、そのことを明らかにして論戦に挑まないと意味がない。

 違憲論にしても、それぞれの党がどこまで違憲であり、どこまで合憲だと考えているのかを明らかにすべきである。自衛隊は違憲か合憲か。日米安保は違憲か合憲か。現行の周辺事態法は違憲か合憲か。PKO活動は違憲か合憲か・・・etc。野党間でも、実はばらばらである。

 共産党の場合には「すべて違憲」という立場のはずだ。だとすれば無防備主義を堂々と主張すべきなのである。

 民主党の場合は、大勢は集団的自衛権の行使を容認しているはずだ。では、どこまでなら容認するのか、そのことを明確にすべきである。

 政府・自民党も「切れ目のない安全保障体制」などという抽象的な言辞ではなく、もっと具体的に語るべきだ。安全保障論をもっとぶつけ合ってほしいものだ。

政府も、もっと率直に語るべき

 政府の説明も、十分なものではまったくない。ホルムズ海峡の話ばかりが出てくるが、日本にとって喫緊の課題はそんなところにはない。

 例えば尖閣諸島だ。中国の無法が続いている。アメリカは「安保の適用範囲」だと言うが、だからといって、いざというときにアメリカが日本と共に中国と戦う保証はない。だからこそ集団的自衛権の行使で大きく一歩を踏み出そうというのが、安倍首相の思惑だと思う。日本が集団的自衛権の行使で一歩踏み出せば、アメリカもいざというときに集団的自衛権を行使する確率が高まるということだ。そのことを率直に語るべきである。

 イラクなどに派遣された自衛隊員56人が帰国後自殺していたことが、明らかにされている。衝撃的な数字だ。原因はいろいろあるだろうから、なんとも断定することはできない。ただ考えてほしいことがある。自衛隊員の派遣に大義があったかどうかである。

 あくまでも一般論だが、大義があれば、隊員が真に意義を感じていたなら、また違った結果になったのではないか、と思うからだ。安保法制が、どういう結論になろうとも自衛隊員の大義なき派遣だけはやめてもらいたい。これは政治家の大きな責任である。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43986
 

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コメント
 
1. 日高見連邦共和国 2015年6月09日 12:54:46 : ZtjAE5Qu8buIw : mFuG9qQlTk

>共産党の場合には「すべて違憲」という立場のはずだ。だだとすれば無防備主義を堂々と主張すべきなのである。

はい、でも出来ないでようね。(笑)

『生活の党と山本太郎となかまたち』はどーなんだって?聞きます、ソレ?(笑)
当然“国連中心(尊重)主義”による、王道・中道の“安全保障”デス!!


2. 2015年6月09日 13:01:05 : v06aCyQKdk
 
 上の安保談義で抜けている論点は、
 
(1)日米間は対等な国どうしの関係ではない
 
(2)米国の政策は義理人情では動いていない
 
という視点だ。
 

米国・英国・仏国・中国・露国は、世界の国々の中で、日本よりも特権的な地位を世襲的に与えられている高貴な特別な国である。
 
そして、ある戦争で集団的自衛権を行使して日本が米軍を支援しても、その恩義こたえて米国がその次の戦争で自動的に日本を支援してくれるわけでもない。
 
日本を支援するかどうかは、その時々の米国の利益を、米国政府と米国民がどう判断するかによる。
 



3. 日高見連邦共和国 2015年6月09日 13:11:15 : ZtjAE5Qu8buIw : mFuG9qQlTk

>>02

その通りです。

“今まで”は、日本の国益と米国の国益が“ほぼイコール”でした。
で、これからは・・・?保証はどこにもありません。


4. 2015年6月09日 14:46:21 : AH7shZpMig

今まで通り、自国が攻撃された時だけ、安保発動で米軍と協働で防衛にあたる、と言うのはどうじゃ。

アメリカがそれでは嫌だと言うなら、日本から出て行ってもらえば良かろう。

アメリカにとって日本は東アジアの唯一の橋頭保であるから、アメリカも飲まざるを得まい。

ほんとに出ていくぞ、となれば、自分だけで防衛するさ。

まぁその前に少なくとも中国との関係は改善を要するがね。


5. 日高見連邦共和国 2015年6月09日 14:50:23 : ZtjAE5Qu8buIw : mFuG9qQlTk

>>04

それも一つの選択肢だと思います。

いずれにしても、アメリカには一度“ブラフ”かます必要があります。

俺たちは今まで通りの“飼い犬”じゃねーゼ、ことによったらロシアや中国と組んじゃうゼ、って。
(実際アメリカは中国とネンゴロな関係を結びたがって秋波送ってるし〜)

コレは喧嘩の常識だと思いますか?(笑)


6. 2015年6月09日 15:19:32 : xPxTPEij1M
まず集団的自衛権の定義を理解してないので、その後の主張に破綻をきたしてしまっているが。

7. 日高見連邦共和国 2015年6月09日 15:58:23 : ZtjAE5Qu8buIw : mFuG9qQlTk

>>06

しかも連中、“集団安全保障”の理念も消化しきれてない・・・。(笑)


8. 2015年6月09日 17:07:58 : pOdq6TjgQw
筆坂は安全保障は軍備拡充や運用のことだけだと思い込んでいるようだが、安全保障とは紛争に至らないリスク回避を先に構築することのほうが軍備とその運用を巡る技術論よりはるかに重大だとなぜ思わないのだろう。
中国と本当にドンパチやりあおうと思っているのだろうか。
中国の影響を受ける周辺国すべてを引き入れ東アジアにおける集団安全保障機構を構築し対話によって紛争のリスクを減らしす努力をすべきだといえないのか?
領土問題は話し合うことでしか、解決の道はない。
要するに妥協しあうことだ。
それが嫌なら戦争ということになるが、破滅がわかっていてそんな道を選ぶために米軍のお供を選ぶのが自国を守ることだとは俺は思わない。

9. 2015年6月09日 17:10:19 : pOdq6TjgQw
補足
なお、集団安全保障と集団的自衛権の概念はまるで異なることを断っておきます。

10. 日高見連邦共和国 2015年6月09日 17:14:16 : ZtjAE5Qu8buIw : mFuG9qQlTk

>>08>>09

仰る通りです。そして、ゆえにこそ“国連尊重”の立場を軽んじてはならないのです。

いかにソレ(⇒国連)が現状、“役立たずのトーヘンボク”だとしてもね・・・(笑)


11. 2015年6月09日 17:25:51 : PJRNQmxLCA
>>09さん
>集団安全保障と集団的自衛権の概念はまるで異なることを断っておきます。
 
 そうですね。
 
 国連平和維持活動(PKO)などの国連集団安全保障とは、旧宗主国連合による国連を通した旧植民地の分割統治維持活動のことです。
 
 

12. 2015年6月09日 17:27:48 : YxpFguEt7k
これが混乱の発端だそうですよ。

リチャード・L・アーミテージ
ジョセフ・S・ナイ
「集団的自衛の禁止は同盟の障害である。」
http://ch.nicovideo.jp/iwj/blomaga/ar90847

この一言で、日本の小役人が右往左往してしまう…
独立しましょう。


13. 2015年6月09日 17:41:42 : pOdq6TjgQw
>>10
おっしゃるとおり国連はトーヘンボクです。
別に国連を手本にすることはない。
コメントでどなたさんか書いてたが、国連は安保理事国の利害調整の場であって紛争を解決する場ではなくなっている。
だからウクライナ紛争でロシアのプーチンは、国連を当てにせず欧州安全保障協力機構に仲介に入ってもらっている。
つどつど破られはするが停戦監視も行っている。
欧州安全保障協力機構は冷戦の遺物扱いだったが、冷戦崩壊後むしろ紛争は高まったとの認識から機能強化され、NATOが米国の利害に呼応するEU補完の集団的自衛権を露骨にロシアとの対立を煽る中、独自の色を見せている。

当該地域が寄って集団安全保障機構を築けばいい。
そういう時代になった。
日本は相変わらず米国のケツについていれば間違いはないと思っているが、まったく遅れている。


14. 日高見連邦共和国 2015年6月09日 17:49:05 : ZtjAE5Qu8buIw : mFuG9qQlTk

>>13

それも大いなる“見識”です。


15. 罵愚 2015年6月09日 17:59:53 : /bmsqcIot4voM : JGfMSWmTO6
 けっきょく野党には安保政策がない。対案が示せないから、審議遅滞でしか存在感が示せない。与党もそれは織り込み済みだから、ひと月、ふた月、ガスを抜いて終わるんだろう。

[32削除理由]:削除人:アラシ
16. 日高見連邦共和国 2015年6月09日 18:10:12 : ZtjAE5Qu8buIw : mFuG9qQlTk

>>14 『バカ』・・・失礼、『バグ』

対案もなにも“今の法制度を慌てて替える必要はない”、これが明確な対案だ。

立派な見解だろう、文句あるか?(笑)


17. 2015年6月09日 20:26:18 : s7nGwLHZd2
文句があるなら詭弁を弄していないで、憲法を改正すればいい。
うその積み重ねで憲法解釈を勝手に変えてはいけない。

これは。どんな立場をとろうと変わらないはず。


18. 罵愚 2015年6月10日 04:34:11 : /bmsqcIot4voM : JGfMSWmTO6
Res 16
 つまり、それって、安全保障政策がないのが、安全保障政策だってことにならないのなぁ?

[32削除理由]:削除人:アラシ
19. 日高見連邦共和国 2015年6月10日 08:51:40 : ZtjAE5Qu8buIw : mFuG9qQlTk

>>18

『現状のあやふやでグズグズ』なシステムの方が、
安倍が進めようとする『欺瞞に危うさを重ねた』システムよりも、
“まだもとも”だと言ってるの、分からね?(笑)


20. 2015年6月10日 17:30:21 : IJjjrLkBu1
   米国と一口に言ってもペンタゴンと国民議会は思考回路に大きな違いが有る。  従って、幾らペンタゴンが暴れたくても予算を決定するのは議会であるから、何をするにも議会がウンといわなければ出来ないのは、米国ではシビリアンコントロールが機能しているということだ。
  従って、ペンタゴンとしては悉く中東の覇権に失敗し、それどころか今や内戦が勃発してのっぴきならない事態を引き起こしているから、予算を議会で承認してもらうのも一苦労であろう。ペンタゴン存続の危機でもあるのではないか。
  よって、例えばオスプレイを60億円で売れると見込んでいたところ、何と220億円も出すという国が表れた。しかも、ベトナム戦に使用した中古も良いところの兵器も高値で購入してくれる。喜び勇んで議会に報告したそうである。
  世界の先進国は、空爆でも全く平和が来ないので、そろそろ手じまいをしたいところであろう。今後は新興国、途上国と日本に後始末を頼みたい、といったところだろう。だから必至でイラクなどで戦闘訓練をし、早いところ引き継いでしまいたいのである。それには、日本に向けては中国の脅威の喧伝は不可欠であり、これで目一杯軍備を拡張させ、ついでに世界各地の紛争地域へも行ってやってくれ、ということである。門前で中国と睨みあい、かつまた日本以外に駐屯地も与えられずに中東やアフリカに戦闘に行くなど、自衛隊は介護施設の職員より忙しく、徴兵制にでもしない限り到底手が回らないこと必至である。
  無い袖は振れない。喧嘩とあれば拳銃やナイフを持って駆け付けるグループへの仲間入りはとてもでは無いがムリである。普通、素人にはそういう声は掛らないものだが、その筋(ペンタゴン)から声が掛るということは、やはりどこか、靖国詣ででリベンジを誓ったり、日本会議の面々だとか、そういう匂いを安倍政権がプンプンと漂わせている、ということだろう。
  
  

21. 罵愚 2015年6月11日 17:19:58 : /bmsqcIot4voM : JGfMSWmTO6
>19
 まともだと思うのが井の中のゆでガエルなんだよ、戦後70年、何人の犠牲者が見殺しにされてきたことか、おまえさんが犯人なんだよ。

22. 日高見連邦共和国 2015年6月12日 09:05:43 : ZtjAE5Qu8buIw : mFuG9qQlTk

>>21

そして論理性や民主主義の意思決定プロセスを無視して強引に“変える事”が正義だとでも?(笑)


23. 罵愚 2015年6月12日 15:05:30 : /bmsqcIot4voM : fFuZjuQMHM
>そして論理性や民主主義の意思決定プロセスを無視して強引に“変える事”が正義だとでも?(笑)

 だから、平和憲法こそがその『強引に“変える事”が正義』のプロセスでつくられたものなんだよ。


24. 2015年9月07日 01:33:34 : NudAN8eU6c


農と島のありんくりん

移り変わる自然、移り変わる世情の中で、真実らしきものを探求する


え、第1次大戦は集団的自衛権が引き起こしたって?
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-3d71.html

今日は、この通りすがりさんの前半部分の一節を考えてみましょう。

「集団的自衛権は第一次世界大戦を引き起こした主原因との見方もあり、もっと慎重に扱わなくてはいけないと思います」

●ないよ。どこで仕入れたんですか、こんなデマ。

この方が真面目だというのは伝わってくるのですが、不幸にも反対派のプロパガンダを自分で検証しないで、丸呑みしてしまっています。

この方は反対派特有の、どうして戦争が不幸にも起きてしまったのか、そこまで遡って考えようとしていません。

●ですから、安直な情報に飛びついてしまっています。戦争のケーススタディをしっかりやらねば原因が分からず、原因がわからねば反対も賛成もありません。

さてこの方は、去年100周年を迎えた第1次大戦について、それが集団的自衛権が起こしたと言っているのですが、当時「集団的自衛権」という概念そのものがありませんでした。

●第1次大戦を考える前に、「集団的自衛権」の「集団的」ってなんでしょうか?

●もちろんそれは「国家間の集まり」を指します。多くの国が、戦争を防ぐために協力し合っているシステムのことです。

●実は、この考え方が生れたのは、第1次大戦の後なのです。国連の前身である国際連盟が考え出した新しい戦争予防のための仕組みです。

それまで、戦争はそれぞれの国の固有の権利だと思われていました。長年、欧州では戦争が絶えず、常にどこかでドンパチやっていました。

そして1914年、人類史上かつてない大戦争が起きました。第1次世界大戦です。

(写真 第1次大戦 ウイキペディアより)

この結果、実に5千500万の人が犠牲になっています。これは、以後の第2次大戦まで含んだすべての戦争犠牲者数を上回るものです。

では、この大戦争がなぜ起きたのかといえば、分からないと答えるのがもっとも正直な答えかもしれません。

歴史家はいくつもの仮説を出していますが、定説とまで言えるものはないようです。

ただし、「集団的自衛権が大戦の主原因という見方」は、寡聞にして存在しないようです。

そりゃそうでしょう。集団的自衛権の概念自体、この大戦争の後にできた新しい概念だからです。 原因になりたくてもなれません。

●第1次大戦以前の、列強の離合集散的「同盟」を、現代の集団的自衛権と勘違いしているにすぎないのです。、

いや、3B政策と3C政策との間の戦争だったんだ、という俗説があります。

3B政策とは、ドイツが、ベルリン−ビザンチン(コンスタンチノープル)−バクダッドの線で進出することに対して、英国がケープタウン−カイロ−カルカッタの線で進出したので、戦争になったというものです。

三国同盟vs三国協商といった説明もここから出ています。しかしこれとセルビアで皇太子を暗殺した一弾とどう関係があるのでしょう。

(写真 1914年、サラエボ事件。逮捕される暗殺者。彼の背後にはセルビア軍の秘密結社があったとされる)

●そもそも先ほど述べましたが、ここでいう三国ナンジャラと、今のNATOのような集団的安全保障体制とは、本質的にまったく別物です。

では、大戦の勃発の経過を簡単にふり返っておきましょう。 もっとも有力な説を紹介します。

皇太子を殺されたオーストリアは、当然、激怒しましたが、セルビアに対してすぐさま軍事行動をとるつもりはなく、ドイツの支援やセルビアの背後にいると見られていたロシアの動きを探っていました。

ここでもし、オーストリアがただちにセルビアに単独で報復攻撃をしたなら、第1次大戦は起きなかっただろうといわれています。

しかし、オーストリアはウンウンと悩みます。ハッキリ言って、ロシアが出て来た場合、勝算がなかったからです。

一方、ロシアは当然オーストリアがドイツと共に戦争を仕掛けてくると予想して、総動員体制を発令します。

では、ロシアが本気でやる気だったのかと言えばノーです。やらないとスラブ圏の盟主としてのメンツがたたないと思ったからイチビッただけでした。

言い忘れましたが、セルビアがあるバルカン半島は、今なお「欧州の火薬庫」と呼ばれています。

それは、ドイツを盟主とするゲルマン系の勢力と、ロシアを盟主とするスラブ系の瀬力のちょうど真ん中に位置しているからです。

この二大勢力が腕相撲をしているバルカン半島での一発が、ロシアを総動員命令に走らせたのです。

このロシアの総動員に敏感に反応した国がありました。それがゲルマン系のボスのドイツでした。

ドイツはロシアとの独露条約が延長されず、フランスがロシアと同盟を結んだことで、挟み打ちされることを恐れていました。

そこで、考え出されたのが、まず西のフランスを降伏させて、次に東に旋回してロシアを撃つというシュリーフェン・プランだったわけです。

そしてドイツはロシアの総動員令を宣戦布告の前兆ととらえて、シュリーフェン・プランを発動します。
※参考資料シュリーフェン・プラン - Wikipedia

●で、ドイツがどこに侵攻したと思いますか?とうぜんのこととして、セルビアだって思うでしょう。違うのです。中立国のベルギーだったのです。

●ドイツは何の紛争事案もなかったベルギーに対して侵略を開始します。

それはベルギーが弱いと思ったからで、ドイツはベルギーに関心があったのではなく、フランスとの戦争の「通り道」だったからにすぎません。

ドイツの予想に反して、ベルギーは小国でありながら頑強な抵抗をして、シュリーフェン・プランを打ち砕くために大きな働きを演じます。

●ちなみに、中立国ベルギーは第2次大戦の時も、同じようにただ「通り道」だというだけでドイツにもう一回侵略されています。

●なおベルギーは第2次大戦後、積極的にECに加盟し、さらにNATOの中軸国のひとつになっています。

●現在のNATOの司令部は、ベルギーの首都ブリュッセルにあります。

● この方が言うように、もし第1次大戦が集団的自衛権が原因で起きたとしたら、二度も侵略を受けたベルギーが中立を捨てて、集団安全保障体制の推進者になっているって不思議じゃありませんか。

●よく反対派の人たちは安易に、「中立国になれば、平和でいられる」と言いますが、ベルギーをよく見てからもう一回言って下さい。ほんとうにこの人たちは歴史を知らない。

(写真 ブリュッセルのNATO本部。日本も欧州に位置していたら当然加盟していたであろう)

それはさておき、ドイツはベルギー国境からフランスを屈伏させ、そこで反転して東のロシアに向うという壮大な妄想計画を持っていたのです。

(図 シュリーフェン・プラン ウィキより)

この戦争計画は、制作者である第二帝政ドイツ参謀総長の名をとって「シュリーフェン・プラン」と言います。
※シュリーフェン・プラン

ま、作った当人は、この計画が実施される前に亡くなっているんですかね(苦笑)。

まったくバカバカしい話ですが、このドイツの戦争計画が、ロシアの総動員令で自動的に誘爆してしまったというわけです。

ほかにも説がありますが、この説が今のところ有力です。

さてさて、この第1次大戦の結果を受けて、「もう戦争はこりごりだ。もう戦争をできない仕組みを世界で話しあってつくろう」としたのが、国際連盟です。

(写真 国際連盟総会)

ご承知のように、これは提唱国の米国が不参加を決め込むなど、結局は失敗して、再度、世界は戦争に巻き込まれていきます。

●しかし、この時に初めて誕生したのが、国際平和維持の仕組みである「集団的自衛権」と、その発展形態である「集団的安全保障体制」なのです。

●なぜか極東の島国では、これを正反対に「戦争になる」と叫んでいる人がいるようなので大変に困ります。消防署や警察を、火付け強盗だというのと一緒です。

●戦争は人類のもっとも古い病です。だから、きちんとどのように病気に罹るのか、どうしたら防げるのかを真剣に考えねばなりません。

口先だけで、「病気は悪です」といっても、病気はなくなりません。

●今の反対派の人達は、「消防も警察も薬もいらない。うちには9条のお札が貼ってあるから大丈夫だ」と叫んでいるようなものです。

●個人的信念なら自由ですが、これを「国民の声を聞け」などと言われるのは、私としては大変に迷惑です。


2015年9月 3日 (木)



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