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[やさしい経済学]公共政策を考える 第5章電力自由化の影響(5) 発送電分離に光と影(6) 料金下がらぬ可能性も
http://www.asyura2.com/15/senkyo192/msg/519.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 9 月 11 日 03:25:51: Mo7ApAlflbQ6s
 


※関連参照投稿

「“旧電力”9社で発電総量の96.5%シェア:その自由化が電力会社に対する“勝手気まま優遇政策”になると理解されぬ日本」
http://www.asyura2.com/12/senkyo141/msg/816.html

「「電力自由化」と電力供給活動の特殊性:「電力自由化」は電力会社の勝手気ままな利益追求を許しかねない政策」
http://www.asyura2.com/12/senkyo142/msg/113.html

「発送電の分離 改正案が衆院本会議を通過:本旨は料金の自由化、電力会社の利益のため大企業は安く一般家庭は高くなるという話」
http://www.asyura2.com/15/senkyo185/msg/368.html

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※ 日経新聞連載

[やさしい経済学]公共政策を考える

第5章 電力自由化の影響

(5) 発送電分離に光と影 

東京理科大学教授 橘川武郎

 2020年に電力システム改革の第3段階として、電力会社の送配電部門を別会社化する「発送電分離」が実施されます。これにより戦後日本で続いてきた発送配電の一貫経営が廃止され、10電力体制は事実上の終幕を迎えます。この発送電分離にはメリットとデメリットがあります。

 第1のメリットは電力業界の競争が活発化することです。電力供給の中枢を担う送配電部門を大手電力から切り離し中立性を高めれば、新規参入した事業者が送電線や電柱を使いやすくなります。

 00年以来の部分自由化で、大口需要部門では地域を超えた電力会社間の競争が可能になりました。にもかかわらず東日本大震災以前は、九州電力が中国電力管内のイオン宇品店(広島市)に供給した1例しかありませんでした。このような状況を打破するうえでも、発送電分離は大きなインパクトを与えるでしょう。

 第2のメリットは再生可能エネルギーの拡充を促進することです。送電部門の中立性を徹底する発送電分離が再生可能エネルギーの拡充に資することは間違いありません。

 一方で、発送電分離には、デメリットもあります。

 第1のデメリットは、日本の電力業がもつ高い系統運用能力に傷をつける恐れがあることです。電気はためることができないため停電が起きやすいという取り扱いの難しさが伴います。わが国の電気事業の最も優れた要素は、停電を回避する系統運用能力の高さです。それは、発送配電一貫の垂直統合体制の下で培われてきました。発送電分離でこれに傷をつけることにならないかと心配されるのです。

 第2のデメリットは、発電・送電・配電設備間のバランスのとれた投資を行いにくくなることです。小売り全面自由化と発送電分離が実施されたのちに、初期投資が膨大で回収に時間がかかる発電設備の建設が適切に行われるかについては懸念を禁じえません。5年後に迫った発送電分離は、その光と影の両面に注目する必要があります。

[日経新聞8月28日朝刊P.27]

(6) 料金下がらぬ可能性も 

東京理科大学教授 橘川武郎

 2016年の電力小売り全面自由化および20年の発送電分離で、小口契約者を含む電力需要家が自由に電力会社を選択できるようになることは間違いありません。この点は、電力システム改革の大きな成果だと評価できます。

 一方で、小売り全面自由化と発送電分離によって電力料金が低下するかというと、必ずしもそうなるとは限りません。自由化とは市場に任せることであり、市場では需給関係によって価格が決まるからです。現時点で電力はどちらかといえば供給不足の状態にあり、このままだと全面自由化後、電力価格が上昇する恐れは否定できません。

 たしかに全面自由化直後には競争の激化に伴い、電力料金は低落するでしょう。しかし、中長期的には料金の緩やかな上昇が生じる可能性は高いのです。電力自由化で先行した諸外国でも、同様の現象がしばしば観察されました。

 今年7月に経済産業省は、2030年度のエネルギー需給の新たな見通しを策定し、そのなかで「電力コストを現状よりも引き下げることを目指す」方針を打ち出しました。その際、二つのグラフを示し、電力コスト引き下げを実現するためには発電用の燃料費の削減と、固定価格買い取り制度(FIT)による再生可能エネルギー電源関連の買い取り費用の抑制、の2点が焦点になると説明したのです。

 つまり経産省は30年に向けた電力コストの引き下げに関して、電力システム改革による料金引き下げ効果を織り込まなかったのです。電力自由化が必ずしも料金低下をもたらすとは言い切れないのが実情なのです。

[日経新聞8月31日朝刊P.19]


(8) 海外も成否分かれる

東京理科大学教授 橘川武郎

 電力小売り全面自由化や発送電分離に関しては海外に少なくない先行事例があります。それらが伝える教訓は、どのようなものでしょうか。

 一言で表現すれば、成功事例もあれば失敗事例もあり、一概には言えないということになります。

 そもそも電力小売り全面自由化を実施しているところとしていないところが併存します。例えば米国は2014年時点で全50州のうち、全面自由化が13州とコロンビア特別区、部分自由化が6州、自由化中断・廃止が5州、非自由化が26州と分かれるのです。

 一方、欧州では03年の欧州連合(EU)電力指令の改正により、法的分離方式による発送電分離と07年7月までの電力小売り全面自由化が義務づけられました。ただし、家庭用小売市場の競争活発化は大きく進展している英国と、それほど進展しないドイツやフランスとに分かれます。

 注目したいのは、電力システム改革が成果をあげている国・地域では長い歴史の積み重ねがある点です。英国では1926年の電力供給法によって発送電と配電とを分離する、いわゆる「グリッド・システム」が導入されました。米国で成功事例といわれる北東部のペンシルベニア州とニュージャージー州では1927年に電力会社3社が世界初の広域電力プール(発生電力の卸電力市場への集約)を形成しました。それ以来の様々な経験や試行錯誤を通じて英国や米国北東部では電力システムが錬磨され、今日の成果へと結びつけたのです。

 これとは対照的に1998年に電力小売り全面自由化を実施した米国のカリフォルニア州では2000年から01年にかけて停電が頻発し、電気料金が急騰。自由化が頓挫することになりました。カリフォルニア州の電力危機の原因は、準備不足による制度設計のミスにあったといわれています。これから小売り全面自由化と発送電分離へ向かう日本においても、拙速を避け行き届いた制度設計を行うことが重要でしょう。

[日経新聞9月2日朝刊P.28]

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 第5章 電力自由化の影響

(1) 本格的な改革スタート 

東京理科大学教授 橘川武郎

 今年4月から、本格的な電力システム改革がいよいよ始まりました。
 今回の改革は「電力自由化」という表現がしばしば使われますが、実は自由化はすでに20年前から始まっていました。1995年から2008年にかけて4次にわたり実施された部分的な自由化で、新規参入や競争が可能な分野が徐々に拡大していたのです。

 具体的には00年に契約電力2000キロワット以上、04年に500キロワット以上、05年に50キロワット以上の需要家が自由化対象に組み入れられました。これにより電気料金は着実に低下し、95年度から05年度の間に約18%下落したのです。

 一方、自由化対象を小口の家庭用などに広げる電力小売りの「全面自由化」は08年にいったん見送られることが決まりました。また自由化分野が需要全体の約6割を占めるにもかかわらず、肝心の電気事業者間の地域を越えた競争は、東日本大震災以前は1件しか起こりませんでした。

 これらを踏まえれば、日本における電力自由化は道半ばで頓挫したといわざるをえない状況でした。その状況を大きく変えたのは、11年3月に発生した東京電力福島第1原子力発電所の事故でした。

 電気事業が国家管理下におかれたのは第2次世界大戦前後の約12年間だけであり、基本的には民営形態で営まれてきた点に日本の特徴があります。民有民営の電力会社が企業努力を重ね、「安い電気を安全かつ安定的に供給する」という公益的課題を達成する方式を採用してきたわけですが、福島原発の事故は肝心の電気事業における民間活力が十分に機能していないことを国民に印象づけました。

 その結果、電気事業の改革を求める声が高まり、懸案の小売全面自由化を含む抜本的な電力システム改革が実施されることになったのです。
  
 きっかわ・たけお 51年生まれ。東大経済学博士。専門は日本経営史・エネルギー産業論


[日経新聞8月24日朝刊P.17]


(2)ガス改革にも波及 

東京理科大学教授 橘川武郎

 今年始まった本格的な電力システム改革は、(1)家庭用など電気の小口消費者が電力会社を自由に選択できるようにする(2)卸電力市場の活用を通じて電力需給の安定を図るとともに送配電制度の透明性を高める(3)電力会社の送配電部門の中立化を徹底する、などの目的をもっています。

 これらを達成するためにシステム改革は3段階に分けて遂行されます。改革の原案を策定した政府の電力システム改革専門委員会は2013年2月、報告書を作成し、改革の工程表を発表しました。

 今年4月に実行に移された第1段階では「電力広域的運営推進機関」が設立されました。これは、(2)の目的を実現するための施策です。

 16年4月からは、(1)の目的を達成するため電力小売りの全面自由化が実施されます。ただし、この段階では電気料金規制は撤廃されず、経過措置として残存するのです。

 20年4月からは、電力会社の送配電部門の法的分離が行われます。(3)の目的の達成を目指すこの発送電分離の施行に合わせて、経過措置として残っている電気料金規制は撤廃される予定です。

 第3段階の発送電分離を決めたのは15年6月に成立した改正電気事業法です。その際、ガス事業法も改正され、都市ガス事業も17年をメドに小売りの全面自由化が、そして22年をメドに大手3社(東京ガス、大阪ガス、東邦ガス)の導管部門の法的分離が、実施されることになりました。

 電力システム改革は、ガスシステム改革にまで波及したのです。16〜17年の電力・ガス小売り全面自由化を機に、日本のエネルギー業界は、新たな「大競争時代」を迎えることになります。

[日経新聞8月25日朝刊P.28]


(3)広域機関の動向に期待

東京理科大学教授 橘川武郎

 電力システム改革の第1段階として4月、電力広域的運営推進機関(広域機関)が発足しました。

 同機関の主要な業務は(1)需給計画・系統計画を取りまとめ、周波数変換設備、地域間連系線等のインフラの増強や区域を超えた全国規模での系統運用等を図る(2)平常時に各区域の送配電事業者による需給バランス・周波数調整に関する広域的な運用の調整を行う(3)災害等による需給逼迫時に発電量の増加や電力融通を指示して需給調整を行う(4)中立的に新規電源の接続受け付けや系統情報の公開に関する業務を行う、などです。

 この機関が必要となったのは、東日本大震災時に既存の電力会社中心の広域系統運用システムが十分に機能せず、計画停電などを引き起こしたからです。また、再生可能エネルギーの増大に伴う電力系統の広域的調整へのニーズの高まりや、電力自由化で活発となる競争の公正化を図るための系統運用の中立性の確保も設立の要因となりました。

 昨年、北海道、東北、四国、九州、沖縄の電力各社が、大規模太陽光発電所の急増による系統運用の混乱を回避するため、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)に基づく接続申し込みに対する回答を保留し、社会問題となりました。最初に表面化した地域は九州でしたが、もし九州と本州とを結ぶ連系送電線が拡充され、九州の電気を中国・関西地方に送ることができるようになれば、この問題はある程度解消します。

 このような地域間連系の拡充にも、広域機関はリーダーシップを発揮することができます。同機関への期待は系統運用の中立性の確保という理由だけでなく、再生可能エネルギー電源の拡充という観点からも高まっているのです。

 広域機関が力を発揮するためには各エリアの送配電会社とのあいだで、役割や責任をどのように分担するかなど、解決すべき課題も残っています。今後の広域機関の動向から目が離せません。


[日経新聞8月26日朝刊P.26]


(4) 業種や地域超え競争

東京理科大学教授 橘川武郎

 2016年4月に電力システム改革の第2段階として電力小売り全面自由化が実施されます。

 1951年の電気事業再編成以来、日本の電力業は9電力体制(88年の沖縄電力の民営化以降は10電力体制)のもとで営まれてきました。この体制は、(1)民有民営(2)発送配電一貫経営(3)地域別分割(4)独占、という4つの特徴をもちますが、来年の電力小売り全面自由化によって(3)と(4)は終結することになります。

 地域別分割と市場独占を完全に廃止する全面自由化後の電力市場では、これまで大口の自由化部門で事業を展開してきた特定規模電気事業者(PPS)と呼ばれる新電力会社が、新たに自由化される小口の家庭用などの分野にも進出します。異業種からの参入も相次ぐでしょう。

 それ以上に注目されるのが既存電力会社による他地域への進出です。電力需要が集中する首都圏エリアでは東京電力の弱体化もあり、中部、関西、九州などの電力会社が進出する準備を進めています。

 これに対抗して東京電力は東海・近畿圏へ逆進出を図る動きを見せています。これらの既存電力会社による他地域への進出は、すでに小口販売ノウハウを身につけている点から全面自由化後の競争の本命となる可能性があります。

 さらに忘れてはならないのは、電力小売りの全面自由化を受けて17年にはガスの小売り全面自由化が実施されることです。これまで大口市場に限定した形で行われてきた電力会社とガス会社との競争が小口まで含めて全面化することになります。このように、電力小売り全面自由化の影響はきわめて大きいのです。

[日経新聞8月27日朝刊P.31]


※(5)及び(6)は冒頭部


(7) 発電投資の活性化必要 

東京理科大学教授 橘川武郎

 電力システム改革によって必ずしも電力料金が低下するわけではないのは、小売り全面自由化と発送電分離によって発電設備を新増設する投資が抑制される恐れがあるからです。投資抑制が起これば電力需給はひっ迫し、料金引き上げ圧力が生じます。

 2008年に電力小売りの全面自由化が見送られた際も、発電投資への影響が最大の理由とされました。当時は地球温暖化対策の観点から原子力発電所の増強に期待する風潮が強く、原発新増設の足かせとみなされたのです。

 11年の東京電力福島第1原子力発電所事故を契機に原発を巡る状況は一変しましたが、電力自由化が発電投資を抑制する恐れがあるという状況には変化がありません。したがって電力システム改革を進めるには電源をいかに確保するかが重要になるのですが、政府の施策は不十分です。

 今年7月、2030年度の電力需給見通しを新たに策定した際に政府は、原発のリプレース(既存炉の建て替え)を想定から除外し、既存炉の運転期間延長だけに注力する方針を打ち出しました。

 また再生可能エネルギーの比率は国民が期待した水準よりも低い22〜24%という見通しを示し、地熱、太陽光、風力発電の新増設に水をかけました。さらに火力発電のなかで最大のウエートを占める液化天然ガス(LNG)火力の新増設も、原発比率を押し下げることを危惧して消極的な見通しを設定したのです。

 発電投資を活性化する施策が講じられなければ、電力システム改革は十分な成果をあげません。原発のリプレースも真剣に検討すべきです。原発を使う場合に厳守しなければならない「危険性の最小化」という原則からみても必須の条件だといえます。

 30年度における再生可能エネルギーの比率は30%程度まで拡大すべきです。さらに天然ガスの低廉な調達に努めてLNG火力開発を促進すべきです。電力需給見通しは早期に見直す必要があるといわざるをえません。

[日経新聞9月1日朝刊P.28]


※(8)は冒頭部


(9) 経営革新の大きな機会

東京理科大学教授 橘川武郎

 電力自由化が既存の電気事業者にとって経営革新の大きなチャンスになります。

 「民営公益事業」方式を採用してきたわが国の電力業において、電気事業者が民間活力を発揮することは決定的な重要性をもちます。ところが1970年代の石油危機をきっかけに、電力会社は電気の安定供給のみに経営努力を集中するようになり、電気の低廉な供給にはあまり関心を示さなくなりました。コストに一定比率の利益が確実に上乗せされる総括原価方式にあぐらをかいて、民間活力を後退させたのです。

 2011年の東京電力福島第1原子力発電所事故は、電気事業における民間活力が十分に機能していないことを白日のもとにさらしました。事故の反省から実施されることになった電力システム改革を通じて、民間活力を復活させなければならないのです。

 小売り全面自由化と発送電分離を通じて競争が本格化することは、電力の需要家にとって有益であるばかりではありません。長い目でみれば、電力会社にとっても競争はプラスに作用します。新規参入者や地域を越えた競争に直面し、電力各社が切磋琢磨(せっさたくま)すれば、民間活力は再び向上するでしょう。

 しかも、今回の電力システム改革はガスシステム改革と連動しているため、エネルギーを巡る競争の本格化はガス市場でも生じます。これまで大口需要家に限られていた電力会社のガス販売やガス会社の電力販売は、小口需要家にまで対象を広げ、さらに勢いを増すことでしょう。

 2014年10月、東京ガスの広瀬道明社長は「20年までに首都圏の電力需要の1割を獲得する」と表明しました。石油・通信などの異業種企業も競争に加わります。エネルギー産業において電力、ガス、石油という業界の壁は打破されてゆきます。電力システム改革は総合エネルギー企業をめざすし烈なレースの開始を告げる号砲となるのです。

(次回から「航空規制の在り方」を連載します)

[日経新聞9月3日朝刊P.29]

 

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