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結局は選挙のため…消費税軽減税率「決着」の裏側〈AERA〉
http://www.asyura2.com/15/senkyo198/msg/464.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 12 月 22 日 00:03:05: igsppGRN/E9PQ
 

軽減税率の大枠について合意した後、その内容を記者団に説明する自民党の谷垣禎一幹事長(左)と公明党の井上義久幹事長/12月12日、東京・永田町 (c)朝日新聞社


結局は選挙のため…消費税軽減税率「決着」の裏側〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151221-00000010-sasahi-pol
AERA  2015年12月28日―2016年1月4日合併号より抜粋


 生鮮食品だけでなく、酒類と外食を除く食品全般の税率を8%に据え置く──12月15日、与党がまとめた消費税の軽減税率制度は、当初の公明党の主張に沿ったものになった。

「これで公明党の顔は立った。自民、公明が組んで憲法改正へと突き進むのでしょう。財政を立て直すことより、改憲が先だと考える人が政治をやっているということです」

 閣僚経験のある自民党議員はあきれ顔で言った。軽減税率で吹っ飛ぶ税収は年1兆円。しかし、その財源をどう手当てするかは先送りしてまで、公明党の要望をほぼ丸のみしたのだ。

 これで、2017年4月の消費再増税は決まりか──そう考えるのが常識だろう。

「リーマン・ショックのような事態が起こらない限り、2017年4月の消費税増税は延期しません」
「再び延期することはないと、はっきり断言します」

 事実、安倍晋三首相は約1年前、10%への再引き上げ時期を1年半延期すると表明したとき、こう繰り返していた。しかし、自民党税制調査会の関係者はこう打ち明ける。

「財務省案を蹴ったときから、増税をつぶしたいという意図がみえみえでした」

 軽減税率協議の第1幕は、財務省の主導で動いていた。

 自民党税調の野田毅会長(当時)は財務省OBで、財政再建路線の有力者。財務省と組み、10月から始まったマイナンバー制度を活用した「還付案」を落としどころにしようと動いた。記録した買い物の履歴を元に、年4千円を上限に2%分を払い戻す。上限を設けることで、高所得者への恩恵を減らす効果も狙っていた。

「公明党税調の斉藤鉄夫会長も了解し、安倍首相にも報告は上がっていた」(関係者)

 しかし、その流れは10月に入って急変する。安倍首相が野田会長に電話し、「最高顧問に退いてほしい」と告げた。こうして始まった第2幕には、創価学会の巻き返しがあった。

 低所得者対策として軽減税率導入にこだわっていた学会にとって、後から払い戻す方式は重税感の軽減につながらず「のめない」と拒絶。公明党税調は一転して反対に回った。これで首相官邸サイドが、軽減税率に否定的だった野田会長を更迭。後任に宮沢洋一・前経済産業相を充て、「公明党とうまくやってくれ」と指示した。

 第3幕は、官邸主導で進んだ。1カ月ぶりに再開された与党協議は、品目ごとに対象にするかしないかを検討する交渉の連続になった。裏では業界も動き、議論は迷走。代わりの財源が4千億円で済む「生鮮食品と一部の加工食品」と主張する自民党側に対し、公明党も譲らない。

「公明党の主張に配慮を」と官邸も援軍に回った。自民党税調・財務省vs.公明党・首相官邸の構図になっていた。

 11月24日午前。外国訪問から帰ったばかりの安倍首相と谷垣禎一幹事長が自民党本部で会った。同席した宮沢税調会長は会談後、「首相は軽減税率は4千億円の枠内で行うことに理解を示した」と記者に語った。流れを変えたい自民・財務省側の巻き返しだった。

 しかし、これも不発に終わる。

「オレの知らないところで首相に会わすとは何事か」と菅義偉官房長官が激怒。田中一穂財務次官を呼びつけ「4千億円では足りない。枠を拡大する財源を示せ」と迫った。田中次官は首を縦に振らず、5分で退席させられたという。

 結局、自民党の谷垣幹事長が折れて決着した。

 公明党の協力がなければ選挙を戦えない、という事情はあるだろう。しかし、税制という国家の根幹が、政党間の貸し借りで決まっていいのか。

しかも、唯一決まっている財源4千億円は、低所得者の医療・介護費に上限を設ける「総合合算制度」に充てるはずの予算だった。

「軽減税率は高額所得者ほど恩恵を得る制度」と指摘する学者は少なくない。所得の多い人ほど、消費する額も多いからだ。同じ額を投ずるなら、低所得者にまるまる届く制度の方が効果的だ。総合合算制度を潰して軽減税率に注ぐことが低所得者にやさしい政治だろうか。

「白紙に戻したのは創価学会ということになっているが、官邸が裏からサインを出したのではないか」

 そんな臆測さえ流れている。

「安倍さんは、消費増税を抱えて選挙に臨みたくない。17年4月を延期する理屈がほしい。そこで考えたのが“準備が整っていない”を口実にすることです」

 政界に詳しい官僚OBは言う。

 では、安倍官邸が消費増税より優先したいと考えるテーマは何か。「改憲」で大方の見方は一致する。そのためには、来夏の参院選で与党が3分の2の議席に達することが近道だ。

 成功経験もある。安倍首相が14年末の衆院選で、消費税率再引き上げの延期を国民に問うとして大勝した。参院選でも同じ手を使うのではないか、という観測がもっぱらだ。その口実が「軽減税率の準備が整っていない」になる公算は大きい。

 

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コメント
 
1. 2015年12月22日 14:40:49 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[101]

消費再増税、デフレに戻らないのが実施条件=甘利経済再生相

[東京 22日 ロイター] - 甘利明経済再生担当相は22日の閣議後会見で、2017年4月に予定されている消費税率10%への引き上げ実施は「増税でデフレに戻ることがないのが条件」と述べた。政府のデフレ脱却判断では、物価が2%の目標に近づいている方が判断しやすいとの見方を示した。

政府は昨年末、当初15年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げを17年4月に延期する際、経済環境次第で増税を延期する「景気条項」を削除した。しかし、甘利再生相は当時「財務省に対して『これで10%はいただきと思うな』と伝えた」と披露し、「8%への引き上げで消費の反動減がなかなか収束しなかったことなどを踏まえる」と強調。再増税の実施でも景気の現状を慎重に判断する姿勢を示した。

政府が同日公表した経済見通しが2016年度の消費者物価指数を1.2%と試算し、政府・日銀の物価目標の2%には届いていないことに対しては「必ずしも2%達成の是非のみがデフレ脱却の条件ではない」と指摘。GDPデフレータなど他の物価指標を参照すると指摘した。一方、「消費者物価指数が2%に近いほうがデフレ脱却と判断しやすい」とも付け加えた。

(竹本能文 編集:内田慎一)
http://jp.reuters.com/article/amari-idJPKBN0U508P20151222


焦点:首相周辺に消費税10%延期の声、衆参ダブル選と連動の思惑

[東京 21日 ロイター] - 安倍晋三首相の周辺では、2017年4月に予定されている消費税率10%への引き上げ延期を主張する声が増えてきた。キーワードは「成長重視」。その決断の是非を問う衆参ダブル選を来年7月に実施するのではないかとの思惑も、政府・与党の周辺で盛り上がっている。首相周辺で何が起きているのか、水面下の動きを探った。

<成長重視の首相、財務省への不信感>

「モディ首相とは、成長重視という点で意見が一致しました」──。安倍首相はインド訪問直後の14日、経済界のリーダーを集めた官邸での夕食会で、「成長」という語句に力を込めた。

複数の首相周辺の関係者によると、安倍首相にとって「成長」は、縮こまりがちな日本経済に活力を与える強力な武器という位置づけだ。

財政赤字の縮小でも、成長による税収増を重視し、社会保障費の膨張を消費増税で賄おうとする財務省の主張とは、相容れない部分が多い。

そんな安倍首相と財務省の溝は、ひょんなことから表面化してしまう。昨年9月の訪米で、安倍首相は著名な米大学教授らと昼食会を催したが、その席で「財務省の試算は信用ならない」と述べた。

首相周辺の関係者によると、その5カ月前に実施した消費税5%から8%の引き上げで、個人消費が予想を超えて落ち込み、そのことが安倍首相の脳裏から消えなかったという。

結局、消費増税後の国内景気は足取りが弱く、2014年度の実質国内総生産(GDP)の成長率はマイナス1.0%に落ち込んだ。

リフレ政策で気脈を通じている経済学者に対し、安倍首相は最近になって「自分の任期中、2度もマイナス成長になるのはダメだ」と、本音を漏らした。

<軽減税率で見えた官邸・公明の蜜月>

ただ、昨年11月に安倍首相自身が「リーマン・ショック並みの国際金融危機が来ない限り増税する」と明言していた経緯がある。17年4月の消費税10%を再延期するハードルは高い。

消費増税の軽減税率をめぐる「ドタバタ劇」は、こうした環境の下で展開された。最終的に生鮮食品に加え、加工食品まで軽減税率の対象となり、外食は外された。

ハンバーガーショップで、ハンバーガーを注文し、店内で食べると10%で持ち帰りは8%という線引きが話題になり、テレビのワイドショーでも取り上げられ、あっという間に国民の「常識」となった。

複数の関係筋によると、安倍首相や菅義偉官房長官ら官邸サイドは、来年の参院選を意識し、公明党の主張を「丸飲み」したとみられているが、消費増税の「負のインパクト」を減らしたいという意向が、今回の決着に強く反映された。

安倍首相に近いある経済学者は「財政再建は拡大均衡でないと達成できない。そのことは総理もよくご理解されている」と指摘する。

<財源に外為特会の埋蔵金構想>

だが、軽減税率実現のための財源1兆円をどう確保するのかは、2016年度の税制改正大綱に明記されなかった。

この間、官邸内には、特別会計に隠れた「埋蔵金」を使えばいいとの見解も浮上していた。そこでターゲットになったのは、外国為替資金特別会計だ。

外為特会における資産と負債の差額は、2013年度時点で約20兆円。官邸内にあったのは、その部分を財源として使うべきとの指摘だった。

これに対しては「為替が円高に振れれば一気に縮みかねない。安定財源とは言い難い」(財務省)との声もある。

さらに財源として歳入化する際には、外貨売り/円買いとなるため、実質的な為替介入効果がある。財源確保のため毎年、政府が「為替介入」して市場に影響を与えるべきではないとの考えもある。

<10%延期を主張するリフレ派>

来年秋以降、財源問題が噴出している可能性が高まっているが、別の展開を予想する市場参加もいる。

三菱UFJモルガンスタンレー証券・シニア・マーケットエコノミストの六車治美氏は、リポートの中で「安倍首相はちょうど1年前、消費税率引き上げ延期について、国民の信を問うとし、解散・総選挙に踏み切った。もし、再延期はないとの公約を撤回するならば、同じ政治判断(解散・総選挙)が下されても何ら不思議ではない」と指摘した。

政府が1月4日に通常国会の召集を決めたことで、日程上の懸案もクリアされた。150日間の会期末にあたる6月1日に衆院を解散すると、憲法で規定されている解散から40日以内の選挙実施の条件に、かねて参院選の本命の日時と見られていた7月10日投開票という日程が合致する。安倍首相の手に、衆参ダブル選というカードがもたらされた。

11月26日、3人の経済学者が官邸を訪れた。いずれも大胆な金融緩和と減税を柱とした経済成長を重視するリフレ派の若田部昌澄・早大教授、野口旭・専修大教授、浅田統一郎・中大教授だ。

この会合に財務省関係者の同席は許されず、マクロ経済政策をめぐって突っ込んだ意見交換があったもようだ。その直後、野口教授と浅田教授はロイターの取材に応じ「物価2%(エネルギー除く日銀版コアコア)と失業率2.7%を達成していなければ増税は延期」(野口氏)、「経済状況がどれほど好転していようと増税すれば物価・成長率ともに下押しする」(浅田氏)と語った。

それから8日後の今月5日、菅義偉・官房長官は都内の講演で「物価2%と名目GDP(国内総生産)600兆円は、何としてでも達成したい」と力説した。

政府関係者とのコンタクトが多いある外資系証券の関係者は「菅さんが再び2%に言及したのは、達成できないほど経済が悪いなら、増税は延期というメッセージではないか」(大手外資系証券)と解説してみせた。

<ダブル選可能な国会日程>

自民党内には、安倍首相が消費増税の再延期を判断し、その是非を問うために通常国会の会期末・6月1日に衆院を解散し、7月10日に衆参ダブル選に雪崩れ込むというシナリオがささやかれている。

安倍首相と親しいリフレ派の論客である高橋洋一・嘉悦大教授は、14年の衆院選を消費増税延期の主張で戦って勝利した経緯に触れ、その経験に「味をしめた」可能性があるとみている。

自民党の谷垣禎一幹事長は11月30日、「いろいろの可能性がある」と述べたが、12月1日には「首相もお決めになっていないと思うし、私もこの時期に解散するとかしないとかということは、まだ全く考えていない」とコメントした。

解散権を握る安倍首相は5日、「全く考えていない」と答えた。だが、解散に関しては、事前にどんな受け答えをしても「許される」というのが永田町の常識。1986年7月6日の衆参ダブル選の際には、当時の中曽根康弘首相が、事前に何度もダブル選の可能性を否定。後に「死んだふり解散」と呼ばれ、結果は自民党の圧勝。その後、自民党は中曽根総裁の任期を1年延長する党則改正を実行した。

<リスクは株安>

金融市場では「増税延期と衆参ダブル選が、円安・株高のエンジン」(外為市場関係者)と期待する声が出ている。

だが、ダブル選を目指す中で、大きな障害になりかねない事態が発生しつつある。株安現象だ。

米利上げ後のNY株式市場は調整を続け、日経平均は18日に発表した日銀の量的・質的金融緩和(QQE)の補完策をめぐって乱高下。21日も大幅続落して一時、1万8600円台まで下落した。

ある国内市場関係者は「衆参ダブル選期待で、来年5月から6月にかけて日経平均が2万2000円から2万3000円まで上昇しているシナリオを描いていたが、様子が違ってきた」と打ち明ける。

米利上げで中国などの新興国からの資金流出が加速するようなら、原油価格の下落もあいまって市場にリスクオフ心理が台頭。株価は日本だけでなく世界的に下落圧力を受けかねない。

株価が下落基調に転換した場合、ダブル選戦略は大きな制約を受ける可能性がある。

消費増税とダブル選をめぐる思惑が、2016年前半の大きな「テーマ」になることは間違いないようだ。

*不要な文字を削除しました。

(竹本能文 梅川崇 取材協力:リンダ・シーグ 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/tax-10-abe-idJPKBN0U40SO20151221



16年度政府見通し、実質1.7%・名目3.1%成長 駆け込み需要も寄与

[東京 22日 ロイター] - 政府は22日、16年度経済見通しと経済財政運営の基本的態度を閣議了解した。実質経済成長率は1.7%で、15年度の1.2%成長から高まる。増税前の駆け込み需要もあり、消費や設備投資などが寄与。名目成長率は3.1%の518.8兆円となる見通しで、リーマン・ショック前の07年度を超える。

15年度の見通しは当初の1.5%成長から1.2%に下方修正された。16年度は1.7%成長だが、このうち0.3%が消費税の10%への引き上げ前の駆け込み需要となる。また15年度3.5兆円の補正予算の効果による押し上げ効果も0.4%織り込まれている。

これらを単純に差し引けば実力ベースでは1%程度の成長となる。

他方で、消費者物価(総合)の伸びは15年度の0.4%から1.2%まで上昇する。需給ギャップが縮小することが背景。原油価格は一段と下落する見通しだが、輸入デフレーターの下落が国内総生産(GDP)の押し上げ要因となり、名目GDPの伸びは3.1%まで上昇し、安倍政権が掲げる名目3%成長を実現する。金額ベースでは518.8兆円に拡大、15年度に続き2年連続で500兆円台となる。

(中川泉)
http://jp.reuters.com/article/gdp-jp-idJPKBN0U505X20151222

 

【第121回】 2015年12月22日 上久保誠人 [立命館大学政策科学部准教授]
アベノミクスに「物わかりのいい」財務省などいらない

?2015年9月の安保法制成立後、予想通り安倍晋三政権は「経済政策」に集中している(第117回)。首相は、「新しい3本の矢」(希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障)によって、「名目GDP600兆円」「希望出生率1.8の実現」「介護離職ゼロ」を達成する「一億総活躍社会」を打ち出した。そして、その実現に向けて補正予算が組まれ、自民党税制改革大綱ではさまざまな減税策を決定した。また、2017年の消費税率の10%への引き上げに向けて「軽減税率」導入のための自民党・公明党の連立与党の協議も結着した。

?この新しい経済政策には、来年7月の参院選に向けて国民に「期待」を持たせるだけのものという批判がある。だが、安倍政権の支持率は回復し、安保法制審議前の水準に戻った。結局、アベノミクスにいろいろな問題点があっても、それが「失われた20年」の長期経済停滞に苦しむ国民に一息つかせているという事実が侮れないことを、あらためて痛感させられる。経営者も現場のサラリーマンも、アベノミクスを簡単に否定しがたい心情があるのだろう(第109回・2P)。予想通り、安保法制の時の激しい反対運動は雲散霧消し、選挙をやればこれまでと同じく、「安倍政権がまだマシ」という消極的支持を受けることになるのだろう。

?しかし、安倍政権の積極的な経済政策の陰で気になるのは、「最強の官庁」財務省の存在感が希薄なことだ。今回の論考は、そんな財務省に「喝」を入れることを目的としたい。結論から言えば、「物わかりのいい」財務省などいらない。今こそ財務省は、耳が痛い「財政健全化」をしつこく言い続けて、政治家、他省庁、業界、メディアから批判される「悪役」に徹するべきである。

選挙対策としか
言いようがない補正予算

?この連載では、安倍首相が「一億総活躍社会」を打ち出すやいなや、各省庁が早くも「一億総活躍」予算獲得に向けて動き始めたことを指摘した(第117回・4P)。いつものように、従来からの政策に過ぎないものを「一億総活躍社会」の看板を掲げて打ち出し直して、新たな財源を確保して省益拡大につなげようとする「省庁間の縄張り争い」となった。その結果、3.5兆円規模の補正予算は、明らかに「選挙対策」としか言いようがないものとなってしまった。

?例えば、年金額が少ない高齢者に1人あたり3万円、総額3300億円を配ることが盛り込まれた。低年金者には資産を多く持つ人もいて、全員が貧しいとは限らない。これには、小泉進次郎氏など自民党内からさえ、「なぜ高齢者ばかりかと若い世代は思う」「バラマキのイメージが先行してしまう」と批判が噴出した。

?また、補正予算には環太平洋経済連携協定(TPP)関連対策も盛り込まれたが、その3分の1近くは、公共事業で農地や集落を整備する農業農村整備事業だ。これでは、かつて猛批判された「ウルグアイ・ラウンド対策費」となにも変わらない。参院選を前に、TPPへの農家、漁業者の不満を和らげようとする思惑が露骨に見え過ぎている。

?補正予算の財源は、「税収の上振れ分」(約1.9兆円)が中心となる。アベノミクスによって、短期的にせよ税収が増えたことはいいことだ。しかし、国債発行残高がGDP(国民総生産)比で160%を超え、地方債分を含めると200%を超える状況の財政赤字の深刻さを考えると、税収の上振れという貴重な財源を補正予算で消費することが正しい選択なのだろうか。しかし、補正予算を巡る攻防では、自民党の族議員や各省庁が「一億総活躍」「TPP対策」予算獲得に狂騒する一方で、財務省からそういう「正論」がさっぱり聞こえてこなかったのだ。

菅官房長官が財務省を抑え込んだ
軽減税率導入の攻防

?一方、税制に目を転じると、自民党、公明党の連立与党が、「2016年度税制改正大綱」を決定した。この過程では、首相官邸が、財務省や自民党の財政再建派を抑え込んで主導権を完全に握っていた。まず、企業の利益にかかる「法人実効税率引き下げ」や、2017年4月から10%への消費再増税の際に導入する「軽減税率」に難色を示していた野田毅自民党税調会長を更迭した。新しい税調会長に起用されたのは、首相に近い宮沢洋氏だった。

「法人実効税率」については現在の32.11%から来年度に29.97%、18年度に29.74%まで下がることになった。減税規模は1兆円程度で、巨額の利益を得ている自動車業界や金融業界は大きな恩恵を得ることになった。「軽減税率導入」については、消費税率が10%になっても、酒類と外食を除く、コメや野菜、鮮魚などの生鮮食品、パンや麺類、合いびき肉などの加工食品、ジュースなどの飲料、チョコレートなどの菓子類など、さまざまな飲食料品が8%に据え置かれることが決定された。

?しかし、1兆円規模に上る軽減税率に対する安定財源の確保については、「16年度末までに法制上の措置を講じ、安定的な恒久財源を確保する」と記しただけで、事実上来年の参院選後に先送りされた。その結果、「社会保障と税の一体改革」で決まっていた「社会保障充実策」の一部が見送られることになってしまった。

?軽減税率は、欧州で導入されている。しかし、経済学理論的には、「軽減税率は対象品を購入する豊かな者へも恩恵があり、弱者対策に特化できない上に、実務上は軽減税率が適用される対象と非対象の区分けが難しい。税務官僚に裁量の余地が大きすぎるので、弱者への負担軽減策としては、給付金(給付付き税額控除)のほうが望ましい」とされているものだ(「高橋洋一の俗論を撃つ・第132回)。

?そのため、財務省は基本的に軽減税率に賛成ではないとされていた。財務省が、いわゆる「財務省案」を提案して軽減税率の議論を迷走させた局面があったが、それは軽減税率そのものを潰すためだという指摘もあった(「週刊ダイヤモンド?Close UP」)。また、自民党内にも軽減税率に反対の声があり、当初は軽減税率を生鮮食料品に限る予定だった。

?自民党と公明党の協議では、対象品目を生鮮食品に絞るという自民税調の方針を受けた谷垣禎一幹事長と公明党が対峙した。公明党は、支持母体の創価学会と強いパイプを持つ菅義偉官房長官に働きかけた。谷垣幹事長・自民税調と菅官房長官・公明党がにらみあう構図となった。

?菅官房長官は、田中一穂財務次官、佐藤慎一財務省主税局長を呼び出し、「今は自公連立政権の正念場なんだ」「加工食品を加えてもできるよう財源を探すのが財務省の仕事だ」「できないなら17年4月の消費増税は先送りだ」と迫った。田中財務次官が抵抗すると「もうおまえらは手を出すな。これは政局なんだ」と一喝したという。また、公明党は自民党参院議員に「軽減税率に反対するなら、次は推薦を出せない」と通告したという。当初、公明党案に難色を示していた議員は、次々と切り崩された。

?結局、安倍首相が谷垣幹事長を官邸に呼んで「生鮮食品など4000億円だけではだめだ。初年度から加工食品を入れる。公明党の主張をのんでほしい」と通告することで結着した。谷垣幹事長は「首相指示」にまったく抵抗できなかった。公明党の主張が全面的に受け入れられることになった。安倍首相は、公明党の安保法制成立への協力に配慮すると同時に、軽減税率で公明党に恩を売って、来夏の参院選だけでなく衆参同日選、消費増税先送り、憲法改正などの足がかりにしたいと考えたとされている。

財務省・財政再建派が
安倍政権を包囲できなかったのはなぜか

?昨年12月の衆院選で自民党が圧勝した後、この連載では、安倍政権が「白紙委任」を得たかのように「やりたい政策」をどんどん実現していくことにならず、財務省が安倍政権を包囲することもあるかもしれないと指摘していた(第96回)。

?残念ながら事態は正反対に進んだ。だが当時は、財務省がまだ元気だったため、それほどおかしな見方ではなかったと思う。安倍首相が解散権を行使した理由は、財務省が増税実現のために命懸けで行動しており、これを潰すには解散しかなかったからだといわれていた。あの時、明らかに安倍首相は財務省に追い詰められていたのだ。

?また、総選挙以前に、そもそもアベノミクス「第一の矢(金融緩和)」は財務省出身の黒田東彦日銀総裁、「第二の矢(公共事業)」は総額10.2兆円の12年度補正予算、総額92.6兆円の2013年度予算という過去最大規模の予算編成を行った財務省が放っていた(第61回)。財務省は、アベノミクスの陰の推進者であり、着実に8%、10%へと増税実現の環境を整えていた。

?更に言えば、安倍首相やアベノミクス支持の政治家、いわゆる「リフレ派」経済学者らは、実は日本の政界・学会でマイノリティに過ぎなかった。安倍政権誕生前、野田佳彦政権において「民主・自民・公明による消費増税のコンセンサス形成」によって、実に衆参両院の8割が賛成するという圧倒的な多数派が形成され、消費増税関連法案が成立した(第40回)。

?三党合意の成立には、90年代前半の「政治改革」の時代に台頭し、自社さ政権で政策立案の経験を共有した与野党の財政・税制通の存在があった。民主党の野田首相(当時)、峰崎直樹氏、五十嵐文彦氏、自民党の谷垣禎一総裁(当時)や、伊吹文明氏、町村信孝氏、野田毅氏らである。そして、野田政権を自民党のベテランが導く形で三党合意が形成されていった。与謝野馨氏、柳沢伯夫氏など、自民党政権末期に税制改革に取り組んだ元政治家も、彼らの間に立って政策立案に関わった。これは、20年に渡って築かれた人脈だったのだ。

?これに対して、安倍首相、麻生太郎副総理・財務相、菅義偉官房長官、甘利明経済再生相や、そのブレーンである「リフレ派」「公共事業推進派」の学者は、「三党合意」の意思決定から外されていた人たちだった。ここ20年の経済財政政策の流れでは、実はマイノリティだった。しかし、安倍首相やアベノミクスを推進する政治家・学者はようやく権力を握った時、外されていた恨みからか、従来の経済・財政政策を否定する意思決定をしたのだ。

?しかし、消費増税先送りを巡る財務省・財政再建派の政治家の包囲網が、安倍首相に解散総選挙という「伝家の宝刀」を抜かせるほど厳しいものだったとすれば、それはアベノミクス支持派がいまだ、政界・学会でマイノリティに過ぎないということを示していたはずだった。だから、財務省と財政再建派の政治家はいつでも安倍首相を包囲することができると考えた。だが、筆者の予想は残念ながら外れた。財務省は安倍政権を包囲することはできず、安倍政権に完全に抑え込まれたしまった。

?安倍政権が財務省を完全に抑え込めたのは、やはり国政選挙3連勝で得た圧倒的な政治的エネルギーを得たことが大きいだろう。結局、政治家は選挙がなにより大事だ(第117回)。谷垣幹事長や党税調に集まっていた財政再建派の政治家でさえ、選挙で圧倒的な強さを見せる安倍首相の前には、静かにするしかなくなっていったのだ。

?昨年12月の衆院選後、2016年7月まで、しばらく選挙がない期間があり、財政健全化に腰を据えて取り組む期間が与えられたようには見えた。だが、安倍政権はその期間を安保法制の成立に費やしてしまった(第115回)。安保法制国会審議中に安倍政権は「新たな財政再建計画」をまとめたが、内閣支持率を落とせない状況下で、「経済成長頼みの財政再建」と批判されるものとならざるを得なかった(第117回・3P)。そして、安保法制が成立すると、すぐに次の参院選を考えざるを得なくなった。

財務省は官僚批判にひるまず
「悪役」であるべきだ

?かつて「最強の官庁」と呼ばれた財務省は、幹部のほとんどが「東京大学法学部出身」の「日本最強のエリート集団」であり、「国士的な官僚」が「健全財政」を旗印に天下国家を論じ、大衆迎合に陥りがちな政治家に諫言してきたものだった。だが、財務省は変わってしまったように思う。90年代以降、財政赤字の拡大や金融政策の失敗、幹部のスキャンダルの頻発によって厳しい批判に晒され、組織存続の危機に陥ったためであろうか。政治力が弱体化しただけではなく、世論にも敏感になったようだ。

?いわゆる「官僚批判」を非常に気にするようになったように思う。官僚批判の代表的なものは、「縦割り行政」「国益より省益」「省益より局益」と呼ばれるセクショナリズムへの批判や、過度の「前例踏襲主義」などだろう。だが、これらは見方を変えると、選挙の洗礼を受けない官僚が、決められたルールに基づいて大衆迎合に陥りがちな政治家の行動を厳しくチェックしてきた側面もあったのだ。

?ところが近年、官僚が批判を恐れて、ルールに基づいた「縦割り」「省益」「局益」の枠を守ろうとせず、「物わかり」がよすぎるようになった。これだと、政治家が大衆迎合的に流れても、誰も止められなくなる。もちろん、最終的に政治家が高い見識に基づいて枠を破るのなら構わない。しかし、官僚が政治家に迎合して枠が破られるのでは、その意味合いが全然違ったものになってしまう。誰も政治家を批判せず、誰も政策の問題点を指摘しなくなれば、政治家の暴走は止められなくなってしまうのではないか。

?たとえ政治家の支持を得られなくても、他省庁や業界に疎まれようとも、マスコミや国民にボロクソに叩かれようとも、財務官僚は財政再建の意義を説き続けるべきではないか。財務省は「物わかり」がよくなってはいけない。「憎らしいほど強い悪役」に徹してこそ、財務省なのである。
http://diamond.jp/articles/-/83641


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