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リーマン危機が再来する日:新興国企業のドル建て債務は08年の4倍推定4兆ドル(約450兆円)
http://www.asyura2.com/16/hasan105/msg/612.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 2 月 17 日 05:25:56: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


『ニューズウィーク日本版』2016−2・16
P.46〜49

「リーマン危機が再来する日

世界経済 原油安が景気浮揚につながらないなか世界経済は再び大混乱に陥る恐れがある

ジョージ・ウェアフリッツ(元東京支局長)


日本銀行は先月末、マイナス金利政策の導入を発表した。
「他人のお金を預かって運用するなら、その間は預金者に料金(金利)を払わなくてはいけない」という金融の大原則を覆す過激な措置だ。

 同じ時期、FRB(米連邦準備理事会)は、大手金融機関を対象とする年次ストレステスト(健全性審査)の厳格化で採用する仮想シナリオを発表。今年は「深刻な逆境シナリオ」として、「世界的に深刻な不況」や「アメリカの失業率が5〜10%に上ること」と共に「短期米国債の利回りがマイナス圏に達すること」を加えた(審査結果は6月未に発表予定)。

 マイナス金利は既に、ECB(欧州中央銀行)やスイス、スウェーデン、デンマークの中央銀行で実施されている。それは、「金利を下げても、まともな経済成長は生み出せない」ことを露呈したと、債券運用の世界的第一人者ビル・グロスは、顧客向けニュースレターに書いている。さらにグロスは、世界の市場は08年秋のリーマン・ショック前と似た「腐ってゆがんだ」状況にあると警告した。

 世界の株式市場が不安に包まれているのは問違いない。今年に入り、東京、ロンドン、パリ、そしてニューヨークの株価は軟調だ。中国でも経済のハードランディングは確実という認識が広まりつつあり、上海株式市場の代表的な株価指数は、昨年6月のピーク時と比べて40%以上も下がった。
 世界的な株安は、原油安の長期化を受けたものだ。原油価格の暴落は、ロシアから中東の産油国、さらにはアメリカの石油業界にも打撃を与えている。これは日本とヨーロッパにとってもいい話ではない。あちこちで借金が肥大化し、新たな金融危機の可能性がささやかれている。

「08年は金融危機と弱気相場の一色だった。今も同じ条件がそろっている」と、著名投資家のジョージ・ソロスは先月末、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で警告した。

 金融アナリストのジェームズ・ビアンコも、この1年ほどアメリカのシュール革命は借金頼みの設備投資に支えられており、07年未のサブプライムローン(信用度の低い個人向け住宅融資)危機に似た、不良債権の焦げ付き問題を生じさせる恐れがあると指摘してきた。

 国際決済銀行(BIS)によると、新興国からの資本逃避は、既にサブプライムローン危機や97年のアジア金融危機のレベルをはるかに超えている。
 先月の状況を見る限り、今年は世界の経済と金融システムにとって波乱の1年になりそうだ。過去の経済危機をあらためて振り返ることで、今後の世界経済の行方を占ってみよう。

 70年代、世界経済は2度のオイルショックに見舞われた。石油というたった1つの天然資源が、世界経済に激震を及ぼす構図は、今も変わっていない。
 73年の第4次中東戦争と、79年のイラン革命をきっかけとするオイルショックは、アメリカ、西ヨーロッパ諸国、日本など石油を輸入に頼る国に大打撃を与えた。同時に、原油の生産量や価格を決定する上で、欧米の石油メジャーからOPECに大きなパワーシフトが起きた。
 アメリカでは、景気停滞(スタグネーション)と物価上昇(インフレーション)が同時に進む「スタグフレーション」という言葉が生まれた。日本経済は、戦後初めてマイナス成長となる転機を迎えた。原油価格が急騰しても、目先の石油消費量を減らす手段はほとんどなく、輸入国は急激な物価上昇に翻弄された。

 現在は当時の反対で、原油価格は極めて安い。だが、石油の需要に価格弾力性がないことは変わっていない。もちろん原油が安ければ、ガソリンなど石油製品の消費量は増える。だが、原油価格下落に歯止めをかけたり、石油業界の業績悪化を覆すほどの大幅な需要増加ではない。
 それなのに産油国は、減産に踏み切ろうとしない。だから供給のだぶつきも、価格の下落も止まらない。英エコノミスト誌は、「原油安が減産にも、景気浮揚にもつながらない」現状を「石油の謎」と表現している。


逆オイルショックの危険

 70年代、原油価格の上昇は石油の輸入国に打撃を与えたが、現在の原油安は産油国に大打撃を与えている。これらの国の不況が手に負えなくなれば、その余波は今年、世界の金融市場に及ぶ恐れがある。

 既にロシアは、原油安への対応に苦慮している。カーネギー国際平和財団モスクワセンターによると、ロシアはGDPの約70%を石油・天然ガス産業に依存している。通貨ルーブルの対ドル相場は、13年初めは29ルーブルの高値を付けて以来、今や80ルーブル前後と半分以下にある。このためロシアの物価は急上昇しており、経済不振が政情不安につながる恐れも指摘されている。

 ナイジェリアやブラジルなどの産油国も、原油安により財政収支が悪化している。リッチな産油国の代表格ともいえるサウジアラビアでは、財政赤字がGDP比15%に達した。サウジアラビアは最近、国内のガソリン価格を大幅に引き上げたほか、国営石油会社サウジ・アラムコの株式を一部売却することを検討中だ。

 原油安による世界経済の不振は、国際的な資本逃避の一因となってきた。この1年、新興国から莫大な資金が円、ユーロ、米ドルといった「安全」な通貨建ての資産に流出してきた。昨年の新興国からの細流出額は7350億ドル。その4分の3は中国から洗出したとみられている。「この流れは勢いを増しているようだ」と、英フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのジリアンニアットは語る。

 現在の資金シフトは、08年金融危機の際に起きた「質への逃避」よりはるかに規模が大きい。それも当然だ。新興国企業のドル建て債務は推定4兆ドル。08年当時の約4倍に上る。
 なぜそうなったか。近年の事実上のゼロ金利を活用して、多くの新興国企業がドルやユーロや円で資金を安く借り、成長率が高い自国市場に投資したからだ。その流れが今や、逆向きになっている。

 これは97年に発生したアジア経済危機と同じ構図だが、当時とは違う点もある。
 アジア金融危機も、高成長によって外国から投資を引き付けていた地域の経済が急速に停滞する形で始まった。外国人投資家が資金を引き揚げ、現地通貨は下落し、ドル建て債務が膨らんだ政府は返済が不可能になった。タイや韓国は大きな打撃を受け、最終的にIMFに救済された。

 08年の危機は、国内投資のために外貨を借り入れる「通貨のミスマッチ」の危険性を露呈させた。教訓を得た各国政府は国外での資金調達をやめ、将来の危機に備えて巨額のドルを保有するようになった。

 問題は、多くの企業が当時の教訓を学ばなかったこと。各国の当局も企業の外貨調達に対する規制を厳格化しなかった。実際、この8年間の新興市場の経済成長はドルの借り入れに支えられた面が大きい。

 その結果、今また新興国企業は巨額のドル債務を抱えている。一方で、現地通貨で手にする収益は(通貨下落が原因で)ドルに対する価値が下がっている。世界銀行やBISは数年前から警鐘を鳴らしてきたが、アメリカの利上げによって、危機が現実化しかねない様相だ。


中国経済を襲う資本逃避

 企業にとっては大きなジレンマだ。債務返済を見据えて資金をシフトしたら、現地通貨はさらなる下落圧力にさらされる。だからといって、自社の資産がドル換算で減り続ける状態を放置するわけにもいかない。
 フィナンシャル・タイムズのテットいわく、最近の株価下落は為替相場の乱高下と結び付いている。「金融の流れは本質的に方向転換するものであり、多くの資産価格に予想外の連鎖反応を引き起こしている」

 グローバル経済は昨年、成長が減速したものの、景気後退に直面しているわけではないと、
多くのエコノミストはみている。だが08〜09年の世界的金融危機が示すように、「連鎖反応」が持つ意味は極めて大きい。

 株価の激しい変動は企業による投資の遅れを招き、生産高や雇用、GDPに悪影響を与えかねない。金融不安のわずかな兆しが見えただけで、金融システムが麻痺することもある。

 いい例が鮨年のロシア財政危機と、米ヘッジファンド大手ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の破綻劇だ。同社はロシアの財政状況を読み違えて危機に陥り、大手金融各社が救済融資を行う事態に発展した。その10年後に発生したサブプライムローン問題の際には、米証券会社リーマン・ブラザーズが倒産に追い込まれ、金融危機の引き金になった。

 金融システムの悲惨な状態があらわになったのはそのときだ。アメリカの株価が下落を始めてから1年後のことだった。歴史に学べば分かる。昨年半ばに始まったエネルギー市場や株式市場の大変動は、投資家が将来に抱く不安の表れにほかならない。

 過去の危機は次の危機を乗り切る手引きにならないが、待ち構える危機の形を教えてくれる。世界経済にとって今年、最大の懸念材料は中国の減速だ。

 オックスフォード大学中国センターのジョージ・マグナス研究員によれば、世界は中国経済に関して「事実に基づかないストーリーを売り込まれてきた」。中国の債務は持続不可能な域に達し、経済指標は信頼できず、改革は「行き詰まって」いるのが実態だという。

 中国政府は人民元の安定を誓っているが、ほとんどの専門家はその言葉を信じていない。人民元は今年中に10〜15%値下がりするというのが、大方の予想だ。
 昨年12月、中国の外貨準備高は1080億j減少した。資本逃避が加速している証しだ。


需要不足解消のために

 日本銀行の黒田東彦総裁は先月のダボス会議で、個人的見解と断った上で、中国は資本規制をすべきではないかと示唆した。この事実は、中国には政策転換が必要だとの考えが中央銀行レベルで存在することを示す。
 中国人民銀行(中央銀行)も同様の考えらしい。最近、同行から洗出した資料は政策転換をうかがわせる内容だった。

 とはいえ中国が金融緩和による国内成長の促進と、低金利による資本逃避の阻止という矛盾する目標をどう両立させるのか。答えははっきりしない。IMFは昨年、人民元の主要通貨入りを決定したばかり。そんな状況で、人民元相場にあからさまに介入すれば中国は大恥をかく。

 中国の政策転換が、世界的な市場不安を引き起こすのは間違いない。昨年6月の株価暴落による「中国ショック」がいい証拠だ。米シェールオイル業界の債務まみれの現状が、倒産や銀行破綻の前兆であることも明らか。富裕な産油国も税収減や原油価格下落に伴う財政赤字で、厳しい財政運営を強いられることになりそうだ。

 危機のときには、国際協調が欠かせない。08〜09年の金融危機後の大不況の際は、各国の中央銀行の判断がダメージを緩和した。世界経済の病の正体は需要不足だ。株価や金融の動きは、それを示しているが、手軽な治療薬は存在しない。今こそ、世界が一致団結して解決に知恵を絞るときだ。」


 

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コメント
 
1. 2016年2月17日 07:41:41 : Z4GXjF8Wos : iTKtgWO9XfQ[8]
中央銀行の腐った頭は何とかしなければならないということだ。

詳細はこちら
http://www.asyura2.com/16/hasan105/msg/533.html#c1


2. 2016年2月17日 11:43:49 : nLrZHLpfq6 : OFKwzGrOiYI[10]
アメリカの借金漬けが全ての元凶だよWW。
勝手なこと抜かすなこのボケ!
アメリカの金利をドンドン上げろや。
中国はアメリカにお付き合いして景気対策なんてやらない。
やればこの手の屑に「中国の財政は危機的だ」とやられる。
「うちは国内債務の処理で手一杯でございます。景気対策ご辞退申し上げます」
の一言で十分。これ以上国債を増やすのは愚の骨頂。

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