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トランプ大統領になれば、地に落ちるドルの信用 米国とEUの衰退が顕著ないま、通貨について改めて考える
http://www.asyura2.com/16/hasan108/msg/298.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 06 日 00:28:20: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

          米初代財務長官アレクサンダー・ハミルトンの肖像が印刷された10ドル紙幣〔AFPBB News〕


トランプ大統領になれば、地に落ちるドルの信用 米国とEUの衰退が顕著ないま、通貨について改めて考える
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46754
2016.5.6 伊東 乾 JBpress


 お金の価値って、いったい何で決まってくるのでしょう?

 「近代経済学」という言葉があります。正確には「ありました」というべきかもしれません。私がティーンの頃、つまり冷戦期の日本では、経済学は大きく「近代経済学」と「マルクス経済学」に二分されていました。

 早くに亡くなった父が果たせなかった学問への憧憬として「経済学」のファンであった中学高校時代の私にとって「経済学」とは「マル経」と「近経」を指すもので、両者をバランスよく学びたいと子供なりの頭で思ったりしていました。

 しかし、欧州に留学して冷戦期東側の実情を見て「マル経」に幻滅した経緯があります。

 果たして冷戦体制の崩壊後、急速に「マル経」という分野そのものが消滅するとともに、対概念に近かった「近経」という表現も下火になり、経済学はデリケートに分類されるようになっていきました。

 が、かつて「近代経済学」と言われた分野の本質はケインズ以降の経済学、より明確に特定するならケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」(1936)以降の「ケインジアン」のエコノミクスで「古典派経済学」クラシックスに対して「モダン」なケインズ経済学として「近経」が位置づけられていたように思います。

 ケインズの経済学は、時期的に見ても、また米国でフランクリン・ルーズベルト大統領が推進した「ニューディール」政策の強力な後ろ盾になったことからしても「世界恐慌(1929-)」という眼前の自体と切り離しては考えられません。

 端的に言えば、1930年代以降のあらゆる経済学は、当該時期のマルクス経済学を含め、「恐慌再発」をいかにして防止するかという究極の目標を持っているといっても過言ではないのです。

 こうした観点はあまりに大上段、かつ大時代がかって見え、精緻な分析を旨とするプロのエコノミストが言及されることは少ないかもしれません。

 しかし、いまデジタルマネーや暗号通貨、ビットコインやブロックチェーンの技術などを考えるとき、あえて改めてこうした大本の観点に立ち返って見ることにも、一定の意味があると思うのです。

 いま改めて「お金」とはいったい何なのか。また「お金のクライシス」通貨危機とはいかにして起こり得るものなのか。金融に端を発する経済恐慌は、どのような政策によって回避できるのだろうか?

 こうしたナイーブな疑問は「経済学の本質的課題」の1つとして、広く問われてよいと思うのです。

■お金の価値とは何なのか?

 さて、改めて、お金の価値、その源泉はどこから来るのでしょうか?

 貨幣というものの歴史を振り返ると、古典的には2つの考え方が長く対立してきました。

 第1は「貨幣価値説」と呼ばれるもので「お金そのものに価値がある」という考え方です。例えば金貨はその「金」という物質そのものに価値があるから「お金」なのである・・・。

 仮にそうだとすれば、金地金は立派に「お金」として通用するはずです。が、翻って、現在私たちが使っている日本国の通貨はどうでしょうか?

 調べて見ると「10円玉の原価は約10円」という興味深い事実が分かります。なぜ興味深いかと言えば、非常に珍しく額面と原価が一致しているから。

 と言うのも、「100円玉の原価は約25円」で、決して10円玉の10倍ではありません。それどころか「50円玉は約20円」、「500円玉に至っては約30円」で、およそ額面に比例していない。

 もっと問題なのは「1円玉の原価は約3円」で原価の3分の1の額面価値しか持っていない。これは5円玉が約7円というのと同様、作れば作るだけ赤字ということにもなりかねない。ところが逆もあるわけで、

 1万円札の原価は約22円、つまり50円玉と大して原価が変わらないのに、額面としては50円玉の200倍、原価からすれば約500倍という「割りのいい通貨」になっている。

 つまるところ「貨幣価値説」は、少なくとも21世紀の日本ではまったく成立していない。お金の価値はそれを担う「通貨」の価値と無関係であることが知れます。

■国や中央銀行が決めれば「価値」なのか?

 この「貨幣価値説」と並んで長らく唱えられてきたのが「貨幣法制説」つまり法律などルールによって決められているから、お金には価値があるのだ、という考え方です。

 なるほど、1円は1円、1万円は1万円と定められているから、そのように流通しているので、貨幣法制説の方がもっともらしいと思われるかもしれません。

 が、これもよく考えるとすぐに成立しない現実の局面が見えてきます。例えば「国」を跨げばどうなるか?

 私たちは日常的に為替レートの情報を目にします。円安は製造業にとっては歓迎すべき影響をもたらすことが多いですが、円を持って海外に出る人にとっては財布を直撃してなかなか厳しいことになる。

 私たちは「円が高い」「円が安い」という相場の変動を当たり前のものとして認識しています。同じ製品を日本で円建てで購入するのと、欧州でユーロ建てで購入するのと、原価から流通コストまで様々な違いがあり乱暴なことは言えませんが、少なくとも「特定の国家が法で定めたから、その通貨にそれだけの価値がある」などと言えないことだけは間違いない。

 さらに、一国内での出来事で考えるなら「ハイパーインフレーション」のような事態を考えれば物事は如実に知れるはずです。

 かつて「ジンバブエ・ドルZWD」という通貨がありました。1980年に導入された当初は1USドル=約0.68ZWD、米ドルと同じ桁で通用する通貨としてのスタートだったはずが、2000年に始まった土地接収行政など政策的な失敗によって人類史上最悪のハイパーインフレ記録を塗り替え続けることとなります。

 2008年のジンバブエのインフレ率は5000億%だったそうです。こう言われても正直ピンと来ませんよね?

 これはつまり、正月に1円で買えたものが、暮れには50億するという話で、リヤカー一杯お札を持っていっても、「こんなもの何の信用も置けない!」と受け取りを拒否されるレベルの代物になっている。

 「貨幣法制説」をこれほど明確に否定する現象はないでしょう。昨年つまり2015年、ジンバブエ準備銀行(中央銀行)は最終的にこの通貨を廃止、3.5京ジンバブエドルつまり、

 35,000,000,000,000,000ZWD=1米ドル

 として残高を精算、通貨としての35年の命を閉じました。

 こんな状況になってしまえば財政政策も金融政策もへったくれもあったものではありません。市場が貨幣を信用しなくなってしまえば、国家がどのような法を定め、どんな財政出動をしようとも、あるいは中央銀行が金利を多少操作しようとも、まさに焼け石に水です。

 近代経済学の諸パラダイムが成立するのは、通貨(政体を含めるべきかもしれません)への信用が大前提、「信用なきところに通貨成立せず」あるいは「信用なき貨幣」に法制説は無用と言うべきかもしれません。

 どんなに政治権力が力で抑え込もうとしても、いったん信用を失った通貨は元来の価値を市場で通用させることができません。

■「マルボロ本位制」と暗号通貨

 日に日に通貨価値が下落し、「ジンバブエ・ドル」に何の信用も置けなくなっても、現地で暮らす人々は日々の取引をせねばなりません。そこで彼らは何を用いたか?

 一部では「旧ソ連でルーブルが暴落したときと同様」の対処がなされたと言われます。いわば「マルボロ本位制」、つまり、封の切っていない米国フィリップ・モリス社製のタバコ「マルボロ」が通貨代わりに用いられていたらしい。

 これについては旧ソ連末期、ルーブルが紙くずとなり使い物にならなかったとき、日用品その他の売買にマルボロが使われていた現場に居合わせた佐藤優さんから「金でも銀でもルーブルでもない、マルボロ本位制」として体験談を伺ったことがあります。

 赤いマルボロ何個かが金のマルボロ1個に相当、といった、実際の価格とは独立した「マルボロ信用経済」がローカルに成立して、日用品や食物などが取引されていたという。

 国家の信用が崩れたとき、外国のタバコが信用を代替したという、笑うに笑えない現実です。

 さて、2016年の今日、私たちは1989〜91年のモスクワやレニングラード=ペテルスブルクのように米ドルを信用することができるでしょうか?

 国際政治的に「世界の警察官」であることをやめ「米国の平和」はとうに終わってしまった超大国米国の通貨「ドル」。

 第2次世界大戦欧州全土が壊滅的打撃を受け、その復興時に米ドルが果たした役割、あるいは1960年代のスタグフレーションを切り抜け変動相場制に移行した時期に機軸通貨ドルが果たした役割・・・。

 いずれも2010年代後半、すでにパックス・アメリカーナが完全に終結し、ドナルド・トランプのようなキワモノ大統領候補が一定の風評を得てしまうところまで来てしまった米国通貨に、今後のグローバル経済が仮託できるものではないでしょう?

 「米ドルこけたら皆こけた」

 こういう状況を回避するために、私たちはどのような命綱を張ることができるのか。

 ここで欧州や日本、そしてなにより自国通貨としてのドルの先行きを案じる米国先覚層が期待を寄せるのが「暗号通貨」ビットコインなどのデジタル・マネーにほかならない。

 そう言っても大げさではないのでは、と思うわけです。

(つづく)
 

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