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トヨタとソフトバンク、どちらの投資リスクが大きいのか? 資本コストとは(Business Journal)
http://www.asyura2.com/16/hasan108/msg/436.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 10 日 00:40:50: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

                 トヨタ自動車本社(「Wikipedia」より/Koh-etsu)


トヨタとソフトバンク、どちらの投資リスクが大きいのか? 資本コストとは
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15025.html
2016.05.10 文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授 Business Journal


 これまで3回の本連載ではROE(自己資本利益率)を中心に議論をしてきましたが、今回は株主資本コストについて紹介をしたいと思います。前回、ROEと株主資本コストの差であるエクイティ・スプレッドに関して説明をしましたので、株主資本コストを上回るROEを生み出すことによって企業は価値を創造することができるということはご理解いただいているかと思います。

 簡単にいえば、ROEとは株主へのリターンであり、株主資本コストとは株主が投資先に要求するリターンですので、ROE>株主資本コストであれば、企業は株主が要求するリターンを上回るリターンを生み出しており、企業価値を創造していることになります。

 しかし、問題となるのは、株主資本コストがいくらなのかということです。ROEは当期純利益を自己資本で割ることにより容易に算出できますが、株主資本コストはそうはいきません。決算資料を探しても見つからないのです。資本コストを意識する企業が日本にも増えてきているため、一部の企業が株主資本コストを開示してはいますが、これは自主的な対応であり、貸借対照表や損益計算書のように開示が義務付けられていないのです。

 それはなぜかというと、正確に株主資本コストを計算することが不可能だからです。後述するCAPM(資本資産価格モデル)のような広く利用される計算方法はあるものの、CAPMのパラメーターに利用される数値の選択は自由度が高く、人によって株主資本コストの計算結果が異なってしまいかねないのです。ですので、企業も積極的には開示しにくいですし、会計士も監査のしようもありません。

■株式投資のリスクを定量化するのは困難

 株主資本コストの算出が難しい大きな理由は、投資家がある企業に投資する際にリスクに合わせて、どの程度のリターンを要求するのかという主観的なものを定量化しようとするからです。

 たとえば、ソフトバンクかトヨタ自動車のどちらかに投資をしようと考えているとします。なんとなくソフトバンクのほうがトヨタ自動車よりもリスクが高いような気がするわけですが(だからこそ高いリターンも期待できる)、「なんとなくそう感じる」という程度のことしか言いようがありません。ソフトバンクのリターンはトヨタのリターンよりも10%高くなければいけないという人もいれば、5%高ければ十分という人もいるでしょう。

 このようにリスクへの感度は人によって異なるため、要求するリターンも異なるのです。にもかかわらず、モデルを活用して株主資本コストの算出を標準化しようとすることに無理があるのです。

 しかし、無理だと言ってあきらめてしまうと不都合なことが多くなります。株主資本コストがなければ、ROEと比較することにより企業価値が創造されているのかが判断できませんし、また企業価値評価に利用する割引率をどうすればよいのか、ということになります。そこで、この不都合を解決すべく考え出されたのがCAPMというモデルなのです。

■CAPMとはどのようなモデルなのか

 以下の公式が示すように、CAPMには3つのパラメーターがあります。

・株主資本コスト = β×(マーケットリスクプレミアム)+リスクフリーレート

 詳細に説明する前に簡単に紹介すると、トヨタやソフトバンクなどの個別銘柄がTOPIXや日経平均などの市場インデックスと比較した場合にどの程度リスクが高(低)いか、ということで株主資本コストは決定されます。もちろん、このようなアプローチでは個人のリスク感度は無視されますが(個人のリスク感度と市場インデックスに関連があるとは思えません)、株主資本コストの算出プロセスを標準化することが可能となります。

 では、CAPMのそれぞれのパラメーターを見ていきましょう。

(1)β
 個別銘柄の株価リターンの変動とTOPIXや日経平均などの市場インデックスの変動の連動性を示す指標であり、市場感応度とも呼ばれます。個別銘柄の株価リターンと市場インデックスのリターンを回帰分析して算出します。算出に利用する株価データは、5年間の月次リターンが選択されることが一般的ですが、もちろんこれも厳密なルールではなく、たとえば2年間の週次リターンを利用するケースもあります。

 具体的な算出方法としては、エクセル上でX軸に市場リターン、Y軸に個別銘柄の株価リターンを並べて散布図を作成し、近似曲線を描きます。その近似曲線の傾きがβとなります(SLOPEというエクセルの関数を利用すれば散布図は不要になります)。βが1以上(以下)であれば、市場インデックスよりも高(低)リスクということになります。当然ですが、βが高いほど株主資本コストは高くなります。「Yahoo!ファイナンス」を活用すれば、株価データが取得できますので、興味のある企業のβを計算してみてください。

(2)マーケットリスクプレミアム
 投資家が、無リスクの資産に要求するリターンと市場インデックスに要求するリターンの差です。もちろん、市場インデックスにはリスクがあるため、無リスク資産よりも高いリターン(つまり、プレミアム)が要求されることになります。マーケットリスクプレミアムに関してはβと異なり、自分で計算する必要はありません。一般的に4〜6%が利用されます。もちろん、4%を使うのか、6%を使うのかで株主資本コストは大きく異なりますので注意が必要です。

(3)リスクフリーレート
 10年物などの長期国債の利回りが利用されます。最近はマイナス金利となっているので、リスクフリーレートは株主資本コストを引き下げる要因となります。ですから、理論的にはマイナス金利は株価にプラスの要因となるのです。

 以上、CAPMのパラメーターを見てきましたが、自分で計算する必要があるのはβだけとなります。つまり、βを正確に算出できれば、株主資本コストの質も高まることになります。そこで、次にβの質を高めるための工夫を紹介します。

■βの質を高めるための2つのアプローチ

 2つのアプローチとは、修正βと業界βです。まずはシンプルな修正βから紹介します。なぜ修正βと呼ばれるのかというと、前述のプロセスから算出されるβ(未修正β)に以下の公式に示すように修正を加えるからです。

・修正β=0.33+0.67×未修正β

 この公式の前提は、βは長期的には1(市場インデックスと同等のリスク水準)に近づくというものです。βが1と異なる場合、この公式を利用することにより、βが1に近づきます。未修正βに2や0.5を代入してみるとβが1に近づくことがおわかりになると思います。

 では次に業界βを紹介しましょう。業界βは名前が示すとおり、個別銘柄ではなく業界全体のβということになります。個別銘柄のβ算出は、最近の東芝やシャープの例を見ればわかるとおり、利用される株価データサンプルによっては、過大評価されたり過小評価されたりする可能性があります。

 そこで、同業であればリスクは同じであるという前提に立ち、他社のデータも考慮して業界のリスクを算出します。大雑把にいうと、同業の個別銘柄のβの平均値を業界βと定義することになります。ただし実際はそれほど単純ではなく、個別銘柄の財務レバレッジ水準の差異を調整するという手順が必要となります。

 なぜならば、βには事業からのリスクだけではなく財務レバレッジによるリスクも含まれているからです。同一業界であれば、事業リスクが同一と考えることにはさほど問題はありませんが、個別銘柄の資本構成には差があるため、財務レバレッジによるリスクは異なるのです。そこで以下のようなプロセスに沿ってβを算出することになります。

(1)個別銘柄のβ(未修正β)を算出
(2)βから財務レバレッジによるリスクを取り除く(アンレバレッジ)
(3)(2)で算出されたアンレバードβの業界平均を算出する
(4)個別銘柄の財務レバレッジに合わせてアンレバードβの業界平均に再度レバレッジを掛ける(リレバレッジ)

 (2)と(4)において財務レバレッジを調整するアンレバレッジやリレバレッジというプロセスが出てきましたが、以下の公式を利用して対応することになります。

βe=βu×(1+D/E)
βe:株式β(未修正β)
βu:アンレバードβ(事業β)
D/E:時価ベースの負債資本比率

 たとえば、伊藤忠商事のβを算出したい場合、丸紅、三井物産、住友商事、三菱商事のβも算出し、財務レバレッジの影響をなくした(アンレバレッジした)βのの平均値を業界βとし、業界βに伊藤忠商事の財務レバレッジを反映させて(再レバレッジ)、業界βに基づく伊藤忠商事のβを算出することになります。

 以上、2つのアプローチを紹介しましたが、注意していただきたいことがあります。それは、修正βも業界βも未修正βの質を高める工夫をしているのですが、必ずしも未修正βよりも正しいとは限らないということです。結局、3つのうちどのβを選択するのかに関しては分析担当者の判断が求められることになり、腕の見せ所となるのです。また、世界一の投資家であるウォーレン・バフェットはβという概念をまったく信用していません。バフェットは、βという概念を利用せずに世界一の投資家となっているわけですから、βの質を改善するという努力自体が無駄なことである可能性も否定できないのです。

 以上、株主資本コストについて述べてきました。これまで4回にわたりファイナンス理論の話が中心でしたが、次回はテーマを替えて2016年2月末に公開された「バフェットからの手紙」について紹介したいと思います。

(文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授)
 

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