★阿修羅♪ > 経世済民108 > 462.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
金とビットコイン、背景にある価値の源泉とは 世界の通貨制度が揺らいでいるいま、通貨価値を考える
http://www.asyura2.com/16/hasan108/msg/462.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 11 日 00:12:30: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

           仮装通貨ビットコインの硬貨〔AFPBB News〕


金とビットコイン、背景にある価値の源泉とは 世界の通貨制度が揺らいでいるいま、通貨価値を考える
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46793
2016.5.11 伊東 乾 JBpress


最初に頭の体操を1つ。比較的よく知られた「百五算」と呼ばれるものです。

 「ある数(整数)を3で割ったら2余り、5で割ったら3余り、7で割ったら2余りました。ある数ってなぁに?」

 ご存知の方には自明の暗号数理の基礎の基礎、ここからビットコイン(Bitcoin)の話をしようという趣旨ですが、少しおつき合いください。

■「中国人の剰余問題」から

 出題文に別段難しいことは何一つ記されていません。小学生でも題意はすぐに理解できる。で、これを一目見たとき、小学生でも大人でも結構です、読者のあなたはどんなふうに考えるでしょう?

 その「筋」で、実はIT環境での適応力を判断することができるかもしれない、実は上の問題はやや微妙な性質を持っているのです。

 ここでは一番一般的な方法から物事を考えてみましょう。「ある数」と言っているから未知数をXと置くなら、L、M、Nを整数として

X = 3×L + 2  (1)
= 5×M + 3  (2)
= 7×N + 2  (3)

 となりますから、例えば(1)と(2)から

3L+2 = 5M+3  (4)
L =(5M+1)/3 (4)’

 Lは整数だから、数(5M+1)は3の倍数にならなければならないはずです。そこで試しにM=1としてみるとL=2、X=8となりますが、これだと(3)式を満たしません。つまり

8 = 7N+2 

 となるいかなる整数Nも存在しない。よってX=8はペケと知れる。同様にM=2、3・・・と(4)式に当てはめて見ると5M+1=11、16となって3の倍数ではない。これを4としてみると5M+1=21で3の倍数となり、L=7、3L+2=23となり、(3)式で検算してみると

23 =7N+2 N=3

 となって整数の値としてL、M、Nをめでたく確定することができました。ということで、

X = 23

 がひとまずの答ですが、本当は一般的な解として、3、5、7の最小公倍数、3×5×7=105と整数nを用いて、

X = 105n + 23

 と書くのが本来の正解、この最小公倍数105から「百五算」と呼ばれる古典的な問題であります。

 これは「中国人の剰余問題」としてよく知られるもので、暗号数理の教科書では一般化した「中国人の剰余定理」として「剰余類」の表現を使って記されています。上の(1)と同様の内容を

X ≡ 2(mod3)

 などと記しますが、多くの読者に分かり難い可能性を考えて、上のように表記してみました。

 ここでお話したいのは、こういう問題を与えたとき、一定の手筋があり、愚直にそれに当たっていくと、それなりの時間を経て問題が必ず解決されるということ、またこの種の問題の難しさは、出題者側でコントロールしてやることが可能、というポイントです。

 いまもし、この問題を

 「ある数(整数)を3で割ったら2余り、5で割ったら3余りました。ある数ってなぁに?」

 と出題したなら、最初のステップでL=1として得たX=8で問題は解決していたことになります。これだとちょっと簡単すぎる、と思ったら条件を増やしてやればよい。総当たり戦で解くとしたら、そこそこの時間と計算量が必要ですが、問題は必ず解ける。

 こういう「数理なぞなぞ」のシステム、実はこれがビットコインなど「暗号通貨」に価値を裏書する大事なポイントになっている。このあたりを考えてみたいと思うのです。

■価値の起源は何か?

 私たちは1万円札を1万円の価値があると信じて普通疑わないわけですが、これは原価20何円だかの紙切れに過ぎません。

 私たちが抱いている「1万円相当の価値」というのは、実はそれをやり取りする相手との間で共有している幻想。いわば共同幻想に過ぎない「信用」だというのが、お金を考えるうえでの1つの永遠のなぞになっています。

 あるいはこんなことを言う人がいるかもしれません。

 「いや、価値の基準は何と言っても金だ。金地金を持っていれば、こんなに確かなことはない。昔は兌換紙幣といって、金貨と交換していたではないか・・・」

 確かに長い人類史を通じて金貨が価値のスタンダードであった時期は短くないものがあります。

 しかし、よく考えてみて下さい。金って食べられますか? 金を身にまとって寒さを防ぐことができるだろうか? 金に価値があると思っている幻想は、紙切れに抱く幻想と比べて、どれほど確かだと言えるものなのだろうか?

 こんなふうに問うと、どんどん怪しげであることが分かってきます。お金の価値基準というのは、みんながそれが通じると思っているから成立するもので「共同幻想」がなくなてしまえば通用しなくなってしまう。

 21世紀日本に生きる私たちは古代ローマ金貨や天正大判を使ってマクドナルドのハンバーガーや吉野家の牛丼をあがなうことができません。

 では大判やローマ金貨に価値がないかと問われれば、古銭屋さんなどに持ち込めば、同重量の金地金よりはるかに高価な値がつくでしょう。

 しかしこれも、古銭市場という相場があって、その信用を背景にして取引されるのであって、チンパンジーやゴリラにローマ金貨を与えてもバナナを寄越してはくれません。まさに「猫に小判」という状態になります。

 紙に「暗号鍵」が印刷されたビットコイン紙幣というものがあります。そこに記されているのは本質的に数字で、いわばプリペイドカードを購入したとき、ライセンスキーとして印字されている番号と同様と思って大きくはずれないでしょう。

 その「ビットコイン紙幣」にどれだけの「価値」があるか、を考えて見ましょう。

■「二度漬け禁止」の情報通貨

 この原稿を私は米国のフィラデルフィアで書いています。ニューヨークやボストンとやり取りするのに不便なので携帯電話を昨日購入しました。

 最初はいつもドイツで使っているTモバイルの携帯でSIMカードだけ入れ替えたら使えるかと思ったのですがダメ、仕方なく「BLUAdvance4.0」という安いスマートホンを購入したのですが、これだけでは通話ができません。

 通話料金相当のプリペイドカード35ドル分を購入、これでチャージして初めて通話の権利を得るわけです。「プリペイドカード」の実態は10桁の数字で、

835 933 91*2(一応1桁分情報をつぶしておきます)

 という数字を打ち込むことで35ドル分の米国内での通話の権利を私は得ることができた。この数字が何か? と考えれば「カード」とか「チャージ」とかいろいろ呼び方はあっても、つまるところ「この携帯電話で35ドル分通話することができる権利」と交換できるものとして数字を利用しているわけです。

 これはドルで決済した「通話権」に過ぎませんが、そうではなく「数字」自体がお金として通用するもの、つまり「通話権」以外の別の商品購入に使うことができる<通貨>というのがバーチャルコイン類のポイントになります。

 いま上に記した「835 933 91*2」という数字は、私がカードを購入し、硬貨で銀色の被覆をこそぎ落として下から出てきた印字をスマホに打ち込んでアクティベートしたわけですが、もしこの数字を何度も使えたら混乱しますよね?

 私が買ったプリペイドカードで、1回私がアクティベートしたら、ほかのユーザがゴミ箱に捨てられているこの「打ち込み済みのカード」を拾って、それを勝手に打ち込みなおしても決して使えない、情報の二番煎じができないことが、プリペイドのシステムでは非常に重要になり、この場合はテレコムの中央システムで制御しているわけです。

 大阪で串かつを食べると「ソース二度漬け禁止」と書いてありますが、手元にある情報貨幣を1回行使したら、2度同じものが使えない、帳簿の厳密な管理が決定的に重要になる。

 この事情はビットコインなどデジタル通貨でも成立するのは言うまでもないでしょう。「二重支払いの防止」がなければ通貨にはなり得ない。それを確実にしようというのが「Blockchain」と呼ばれるシステムであり、そこで用いられるのが「暗号数理」の問題解決競争になります。

 ビットコインのシステムには(たぶんテレコムが採用しているであろう)中央コンピューターは存在しません。すべての取引履歴はブロックチェーンと呼ばれる台帳に記録されますが、この情報はネットワーク上に分散して存在し、過去のあらゆる履歴が参照できるので取引の整合性を誰でも常に確認することができます。

 以下、すでによく知られていると思いますがビットコインを使用する送金者は、金額や受取人などの情報をネットワーク上に分散する「採掘者」と呼ばれるノードに同時に送り、取引履歴は10分ごとにまとめて「ブロック」と呼ばれる確定台帳にまとめられます。

 これを確定するために、冒頭に記したような「数理暗号なぞなぞ」の問題を解かねばならないのです。

 各地に分散する「採掘者(miner)」、マイナーとも呼ばれます、たちは競ってこの問題を人より早く解こうとする。で、結果的に一番になってブロックを確定した人にビットコインが発行され、このようなブロックが延々と鎖状につながっていくので「ブロックチェーン」と呼ばれる、といった話はご存知の方も多いと思います。

 解くべき問題は先ほど冒頭で見たように、計算量の多寡が知れるので、コンピューターをたくさん並べてガリガリ演算すればほどなく必ず解くことができる。

 しかし「妙手」のようなものは存在しないことが数学的に示されているので、無骨な計算を延々続けなければならない。資本を投下し、コンピューターをずらりと並べれば、それに比例した程度にビットコインを「採掘」することができる。

 そういう意味で彼らは「マイナー」と呼ばれます。

 しかし10分ごとにブロックを確定していくうえでは、あまりコンピューターが強力になりすぎ、1分で答えが出てしまっては困ることになる。

 そこで「マイナー」たちの採掘能力を見ながら、出題する問題の難しさをコントロールして、いい具合の時間と計算量で答えが出るように工夫してやる必要がある・・・。

 例えばさっきの「X=23」ではま だ問題が簡単すぎる、と判断されたなら、

 105+23=128を答えとして準備しておいて、3、5、7とは別の素数、例えば11で割ったとき、余りが7になりますから、問題に条件をもう1つ付け加えて

 「ある数(整数)を3で割ったら2余り、5で割ったら3余り、7で割ったら2余り、11で割ったら7余りました。ある数ってなぁに?」

 とすればよい。さらにこれが簡単になりすぎたら、素数13を用いて・・・いくらでも問題の難易度を手加減してやることができますね。ハッシュ関数は実用の都合上、もっと手の込み入ったものになっているけれど、「素因数分解」がこうした数理の骨格になっている点にここでは注目しておきましょう。

 つまり素数を用いた演算の性質を利用して「暗号解読の難易度をコントロールできる」ことが、この「暗号通貨」をうまく回転させるもう1つのカギになっている。。

 「暗号通貨」という言葉には様々な意味がこめられていると思いますが、1つ重要なポイントとして、この「大量にコンピューターを導入し、それらをフル稼働させて単純な暗号数理的問題の解決速度を競い合う」という本質があります。

 晴れて競争に打ち勝ち、10分内外でビットコインを得た「採掘者」は、この競争に打ち勝つためにインフラ投資に加えて相応の電気代を支払っている。その結果得られるビットコインは、ほぼその電気代に見合うだけの価値を(少なくとも)持つように設計される。

 これは実は金と変わらないというのがここでのシナリオの1つのポイントになります。つまり金というのは自然界に存在する物質ですが、私たち人間は元の金鉱石から様々な手間、採掘とか精錬とか純度上昇とか、いろいろなコストをかけて金地金なり金貨なりを作っている。

 金の価値の源泉とはそうした「採掘行動」にかけられた労働を含む全コストが保証している・・・。

 ややマルクス的な観点も内包している気がしますが、つまり金の価値とは鉱物を金貨にまで精錬する価値にほかならない。

 そういう考え方を流用して、暗号数理の問題を出題されたとき、それを解くのに必要な電気代の総量に見合う程度の価値を結晶させて「暗号通貨の価値」として承認しようではないか・・・という、つまり電気代ベースの「演算資本制」というのが、ビットコインなど暗号通貨の「価値の根源」を保障している、というわけです。

 実際に用いられるのは先ほど冒頭に記したのよりははるかに複雑なハッシュ関数計算と呼ばれるものですが、物事の本質はあまり変わりません。

 先ほど冒頭に記した問題を「業務」として与えられ、ねじり鉢巻で解いた人がいれば、その計算という労働の対価として給与を与えられることになるでしょう。

 また問題解決に計算機を使用すればその電気代はコストとして跳ね返ってきますから「問題解決の価値」を電気代や初期投資、人件費などで評価することも可能です。

 「理屈はそうかもしれないけど、どうも釈然としない」という人がいるかもしれません。いや、いて当然ですが、このゲームは先にこの新しい「価値」を承認した人から勝つようになっている面があり。まずは「暗号通貨の価値」「その起源」といったものをよく考え、直視するところから始めてみるのがよいように思います。

 実はこうした技術の背景にはフェルマーの大定理とかヴェイユ予想とか、現代数学の花形的問題とその解決に用いられた様々なアイデアがフルに利用されています。

 私がこれらの価値を積極的に認めようと思うようになった大きなきっかけは、従来は純然たる抽象数学の極みのように思っていたヴェイユ、グロタンディーク、ドリーニュ、あるいはフライ、ワイルス、テイラーといった人の仕事が、煮詰まった国際社会に新しい価値を作り出す大きな契機を与えていると知ったことが決定的でした。

 貨幣価値を含め、価値というのは人類が自ら作り出していくものにほかなりません。暗号通貨をめぐる問題を、平易な切り口でもう少し続けて考えてみたいと思います。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民108掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民108掲示板  
次へ