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タックスヘイブンに群がる企業、税務当局の終わりなき戦い(読売新聞)
http://www.asyura2.com/16/hasan108/msg/498.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 11 日 22:04:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

タックスヘイブンに群がる企業、税務当局の終わりなき戦い
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160510-OYT8T50048.html
2016年05月10日 14時50分 慶応大学教授 高久隆太 読売新聞


 中米パナマの法律事務所から流出した「パナマ文書」が世界を揺さぶっている。1150万点にも上る膨大な文書は、世界各国の指導者や有名人、企業がタックスヘイブン(租税回避地)に群がっていることを暴露。10日には新たに、日本の企業・個人を含む約21万4000社の企業名や役員名などの情報が公開された。税金を安くしたい企業・個人と税金逃れを許したくない税務当局との攻防は、「パナマ文書」が公になるずっと前から続いていた。日本の国税当局はどんな取り組みをしてきたのだろうか。国税庁国際業務室で勤務した経験を持つ慶応大学商学部の高久隆太教授に解説してもらった。


■高い秘匿性の壁、調査はリーク頼み



パナマ文書を巡っては、英国のキャメロン首相の父親が、タックスヘイブンに設立した投資信託から利益を得ていたことが明らかになるなど、世界各国の指導者とタックスヘイブンとの関連が取り沙汰されている


 2011年度315億円、12年度64億円、13年度49億円、14年度70億円。これは日本の税務当局がタックスヘイブンに関する大企業の法人税調査により把握した課税漏れ所得の金額である(データは国税庁HPによる)。11年度が突出して多いのは大口事案があったためだが、それ以降はほぼ横ばいで推移している。


 国家主権の壁があり、日本の国税当局の調査官は国外で直接、税務調査をすることができない。いわばブラックボックスになっており、実態解明に大きな困難が伴う。


 昨年2月、イギリスの金融大手「HSBC」のスイス部門が富裕層の預金者に脱税を指南していたことを示す機密文書や預金者リストなどがリークされるという出来事があったが、タックスヘイブンを舞台とする租税回避は、関係者のリークが発端となって発覚することが多い。


 高い秘匿性の壁に阻まれながらも、日本の国税当局はこれまであらゆる手を尽くして租税回避を阻止しようとしてきた。


 ここでタックスヘイブンについて、簡単に説明しておこう。タックスヘイブン(Tax haven) とは租税回避地のことであり、税金天国(Tax heaven)のことではない。


 一般的には、外国資本や外貨を獲得するために、進出した外国企業などに対して、意図的に所得などへの課税を免除するか、著しく低い税率を適用することで、それらの資産を集めている国・地域のことをいう。ケイマン諸島をはじめとするカリブ海諸国、香港、ルクセンブルクなど面積が小さく、資源に恵まれない国・地域が多い。


 「租税回避イコール脱税」と考える人もいるようだが、脱税は違法行為であり、租税回避行為自体は違法ではない。ただし、合法的な節税とは違って、本来納めるべき税金を納めないという点でグレーゾーンにある。


■米国では大手企業がこぞって利用


 タックスヘイブンが最初に注目されたのは、1960年代から70年代にかけてのことだった。米国の多国籍企業がカリブ海諸国を中心としたタックスヘイブンに子会社を設立し、本来、米国で課税されるはずの所得をそこに移転していた。米国の税収は減少し、米国議会で問題となったのである。


 タックスヘイブンに設立される子会社の主な形態としては、(1)持ち株会社、(2)投資会社、(3)特許や商標権などの無形資産を保有する会社――などが挙げられる。


米国生まれの多国籍企業は今もタックスヘイブンを積極的に利用している。数年前にアップルが、EUの中でもタックスヘイブンとなっているオランダやアイルランドを利用して租税回避を行ったほか、スターバックス、グーグルといった有名企業も租税回避を行っていたことが報道された。


 最近では、製薬大手のファイザーが節税目的でアイルランド企業アラガンを買収しようとしたが、米国の節税規制により断念したことが記憶に新しい。もっとも、米国内も州によって州税率に差があり、デラウェア州など実質的にはタックスヘイブンの州もある。


■日本企業もタックスヘイブンに子会社


 タックスヘイブンに子会社などを設立している日本企業は多い。業種で言うと、銀行、保険会社といった金融機関、商社、メーカー、海運会社などである。日本企業の場合、子会社をタックスヘイブンに設立する理由は様々だ。


 例えば、金融機関が投資家や富裕層からお金を集めてファンドを作るとしよう。日本でファンドを作るには、事前に書類などを当局へ提出し、当局による慎重な審査が行われるなど、認可を得るまでに通常数か月以上を要することもあり、とても機動的なファンド運営はできない。


 これに対しケイマン諸島は、ファンド法制や監督機関が整っている上に、規制は最小限だ。金融機関は当局による事前の審査が不要で、短ければ数週間から1か月ほどでファンドが組成できる。


 また、ケイマン諸島ではファンドに投資した人が得た利益に所得税は課されない。もし、その投資家が日本で申告しなければ、どこにも納税しないことになる。金融機関と顧客の双方にうまみがあるため、ファンドをタックスヘイブンに作ることが多くなるのだ。


 保険会社の中には、タックスヘイブンに再保険のための子会社を設立しているところがある。保険会社は予測を超える支払いが生じた時に備えて、「保険の保険」である再保険をかけている。海外の保険会社など第三者に再保険をかけて再保険料を支払うより、タックスヘイブンの子会社に再保険料を支払った方が、グループ内に利益を留保できるというメリットがある。


 商社やメーカー、海運会社などがタックスヘイブンに持ち株会社(子会社)を設立する場合を考えてみよう。グローバルに展開するこれらの会社は、本国とタックスヘイブン以外の第三国に、子会社の子会社、つまり孫会社を作る。


 孫会社は第三国の事業であげた利益を子会社に配当する。しかし、子会社はそれを内部で留保し、以前は親会社には配当していなかった。つまり、利益を親会社に還流せず、子会社にためこんでいた。


 株主の力が強い米国の場合、利益を出した企業には株主から配当を求める強い圧力がかかる。日本企業は利益が出ても配当せず企業内に留保する傾向が強い。タックスヘイブンに利益をためこんでいても、株主から配当を求める声が強まるわけではないことから、こうした行為が横行する。


■税務当局は税制面で対策講じる


 こうした実態に対し、日本では、企業がタックスヘイブンに所得を移転することを防ぐため、税制面で対策を講じている。親会社が保有する子会社の発行済み株式の割合、またはその子会社への出資金の割合に応じて、留保所得(配当せず内部にとどめておいた所得)を日本の所得に合算し、日本における課税対象に含めることにしている。ただし、一定の基準を満たす場合は適用対象外となる。


 多くの企業は、確定申告に際して子会社の留保所得を正しく親会社の課税所得に含めている。しかし中には、「国税当局はタックスヘイブンなど海外に保有する資産を正確に把握していないだろう」といった甘い期待を抱き、過少に申告する企業も、業種を問わず存在する。



タックスヘイブンは、違法に得た資金を還流させ、正当な資金に見せかけるマネーロンダリング(資金洗浄)に利用されるケースも(写真はイメージです)


 タックスヘイブンに群がるのは企業だけではない。個人の資産家が租税逃れに利用しているケースもある。富裕層ほどその傾向が強いが、バブル期のころは、日本から距離的に近い香港に預金口座を持つ中小企業のオーナーが多数いたようだ。


 個人の場合は、業務の必要上といった理由はなく、高率な相続税・贈与税の負担を減らすため、また、海外財産の運用から生じる利子、配当などの所得を秘匿するためにタックスヘイブンを利用していると見られる。


 なお、タックスヘイブンは違法に得た資金を還流させ、正当な資金(例えば借入金)であるかのように見せかけるマネーロンダリング(資金洗浄)に利用されることもあり、国税当局だけでなく司法当局も目を光らせている。


■深まる国際協調、一国での対応には限界も


 かつては、タックスヘイブンに対して各国が個別に対応していた。米国は「外国口座税務コンプライアンス法(FATCA:Foreign Account Tax Compliance Act)」を制定しており、外国金融機関に対して米国人の預金情報を報告する義務を課すなど、情報収集に努めている。


 しかし、一国による対応では限界があり、近年は各国が協調して対応するようになってきている。経済協力開発機構(OECD)では、タックスヘイブンを舞台とする租税回避への対策を打ち出した。主要20か国・地域(G20)の会合でも議論されるようになり、政治的にも重要な課題となっている。


 日本はバミューダ、香港、バハマ、マン島、ケイマン諸島など、タックスヘイブンとの間で情報交換に関する二国間租税条約を締結し、情報収集を図っている。


例えば、日本の税務当局は、利子・配当についての支払い調書を相手国に自動的に提供する制度を利用して、14年度に13万2000件の情報を受け取った。これによって個人が海外のある国で受け取った利子・配当が把握できる。その人が日本で申告した内容と照合すれば、申告漏れの有無がわかる。



パナマ文書を公開した「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)のホームページ


 したがって、海外資産から生じる所得について、国税当局に把握されないと思って申告しないでいると、申告漏れ(意図的に秘匿した場合は脱税)の指摘を受けることが実際にある。マイナンバー制度の導入により、今後は名寄せがより容易となる。


 個人については、数年前、海外を利用した相続税・贈与税の租税回避が散見されたことから、これを防止するための税制改正が実施された。海外にある財産についても申告を求めるなど、穴をふさぐ努力は続いている。


 「パナマ文書」の分析を行っている「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ、本部・米ワシントン)は5月9日(日本時間10日)、米国ネバダ州、香港、英領バージン諸島などのタックスヘイブンに設立された約21万4000の会社などの情報をホームページ上で公開した。日本国内に住所があるとされた個人・法人は約800件あり、東京を中心に全国に散らばっている。住所が特定されるものが多いが、なかには「日本国東京」だけの表示もあり、特定できないものもある。いずれにせよ、日本の企業・個人が幅広くタックスヘイブンを利用している実態があらためて裏付けられた形だ。


 4月28日付の読売新聞朝刊によれば、日本の星野次彦・国税庁次長は衆院財務金融委員会で、「(パナマ文書について)関心を持って見ている。課税上の問題が認められれば税務調査を行うことになる」との見解を示し、実態解明に意欲を示した。


 「パナマ文書」の公開で租税回避の実態が明らかになれば、国税当局は対策を講じるはずだ。だが、企業や富裕層は必ず抜け穴を見つけてくる。納税を巡る戦いに終わりはない。


プロフィル
高久隆太( たかく・りゅうた )
 慶応義塾大学商学部教授。1980年早稲田大学商学部卒。同年4月東京国税局総務部。86年国税庁国際業務室。同室係長、課長補佐を経て、2004年7月国税庁税務大学校研究部教授。06年より慶應義塾大学商学部で教鞭を執る。グローバル社会における国際的租税回避を主なテーマに研究を続けている。


 

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