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英EU離脱で「英連邦」が超巨大経済圏として出現する(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/16/hasan110/msg/160.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 6 月 21 日 08:30:10: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

英国のEU離脱問題は、キャメロン首相(右)に対してボリス・ジョンソン前ロンドン市長が仕掛けた「権力闘争」の側面もある Photo:Guy Bell/Camera Press/Aflo


英EU離脱で「英連邦」が超巨大経済圏として出現する
http://diamond.jp/articles/-/93364
2016年6月21日 上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長] ダイヤモンド・オンライン


 英国の「EU離脱」の是非を決める「国民投票」が23日に実施される。当初、「EU残留派(以下「残留派」)」が有利と見られていたが、予想に反して「EU離脱派(以下「離脱派」」への支持が大幅に伸びた。各種世論調査では、離脱支持が残留支持をわずかに上回るようになった。残留派・離脱派の対立は過熱し、遂に残留派である労働党の女性下院議員ジョー・コックス氏が、「ブリテン・ファースト!」と叫ぶ、離脱派とみられる男に銃で撃たれ、死亡する事件が起こってしまった。

■前ロンドン市長がキャメロン首相に挑んだ
 「権力闘争」としてのEU離脱

 離脱派への支持が大幅に伸びた要因は、保守党下院議員で、前ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏がEU離脱への支持を表明し、離脱派のキャンペーンの中心となったからだろう。ジョンソン氏は、ボサボザのブロンドのヘア・スタイルと聴衆の心を掴む巧みな演説で英国屈指の人気政治家であり、デイビッド・キャメロン首相のライバルとして、次期首相候補とも呼ばれてきた。

 最近までロンドン市長を務めてきたジョンソン氏は、世界中の企業をロンドンに誘致することに取り組んできた(本連載第71回・P.5http://diamond.jp/articles/-/44356?page=5)。規制緩和や構造改革に熱心とみられたジョンソン氏が突如離脱派への支持を表明したことは、英国内に強烈なインパクトを与えた。与党保守党内からは、閣僚からも離脱派が多数出て、残留派のキャメロン首相・オズボーン財務相らと対立し、分裂状態となった。現在では、330人の保守党下院議員のうち、100人余りが離脱支持者だと言われている。

 英国のEU離脱は、日本では世界経済への影響という観点から論じられることがほとんどだ。だが、これには英国首相の座を巡る権力闘争という側面がある。キャメロン首相は、2015年5月の総選挙で勝利を収め、さらに2020年まで5年間の首相任期を手に入れた。2014年にスコットランド独立の是非を問う住民投票を勝ち抜いた(第90回http://diamond.jp/articles/-/59479)。財政再建・構造改革を軌道に乗せた経済財政政策へも高い評価を得た(第131回http://diamond.jp/articles/-/90484)。そして、イングランド独立党などナショナリズムの台頭をも抑えたことで、キャメロン首相の権力は盤石となったように思えた(第106回http://diamond.jp/articles/-/71470)。

 また、キャメロン首相の相棒として、財政再建を軌道に乗せたジョージ・オズボーン財務相の評価も高まった。オズボーン財務相は中国との経済関係強化も主導し、「事実上の外務相」とも呼ばれるようになり、首相の後継者として一番手と認識されるようになった。

■ジョンソン氏はただのポピュリストではなく
 優れた実務家であり現実主義者

 一方、ロンドン市長としてオリンピックを成功させたジョンソン氏は、2015年5月の総選挙までは、有力な首相の後継者と見られてきた。総選挙の直前まで、キャメロン政権の支持率が低迷したこともあり、ジョンソン氏がロンドン市長退任後、保守党党首・首相となることは、近い将来のことと考えられていた。しかし、総選挙の勝利でキャメロン首相・オズボーン財務相が権力基盤を盤石にしていくことになり、ジョンソン氏は次第に存在感を失い始めた。

 勢いに乗ったキャメロン首相・オズボーン財務相は、今年2月のEU首脳会議で移民急増に対応して緊急措置をとったり、各国がEU法案の撤回を求めたりすることができるといった、EU改革案を引き出した。キャメロン首相は「英国はEUのなかで特別な地位を勝ち取った」と自信満々で6月23日の国民投票に臨むつもりであった。

 この状況を、ジョンソン氏がおもしろくないと感じたことは、想像に難くない。そもそも、英国政治では世代交代が頻繁に起こり、若手の指導者が登場する(前連載第55回http://diamond.jp/articles/-/9026)。5年も待っていたら、キャメロン・オズボーンどころか、さらに若い世代の政治家から突き上げられて、首相候補の座から追い出されてしまう懸念がある。そこで、ジョンソン氏は動いた。突如、EU離脱派の先頭に立ったのである。

 ジョンソン氏の豹変は、国民投票における離脱派の勝利が、盤石な権力基盤を持つキャメロン首相・オズボーン財務相を引きずり降ろし、首相の座をつかみ取る唯一のチャンスだったからだろう。

 ジョンソン氏は、移民の増大によって、英国人の生活に数々の不安がもたらされると煽り、離脱のデメリットを強調する政府や経済界のやり方を「プロジェクトフィアー(恐怖作戦)」だと猛批判した。その過激な発言によって、ジョンソン氏は、「髪型がまだましなドナルド・トランプ」と、残留派のメディアから揶揄されるようになった。

 だが、ジョンソン氏は、ただのポピュリストではない。筆者はかつて学生とともに、ジョンソン氏がロンドン市長として実施していたアプレンティスシップ・プログラム(徒弟制度をモデルにした職人養成制度)などの雇用・職業訓練政策を視察に行ったことがある(第43回http://diamond.jp/articles/-/24618)。

 前述の通り、規制緩和・構造改革への理解もあり、優れた実務家の側面を持っている。また、「結果良ければすべてよし」という現実主義者でもある(JBpress「髪の毛ボサボサの人気者が書いたチャーチル論」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47073)。EU離脱への支持は、ただ首相になりたいだけの後先考えない行動ではないだろう。ジョンソン氏なりの勝算があるはずと考えるべきだ。

■「EU加盟」だけではない
 英国の投資先としての魅力

 残留派は、英国のEU離脱が英国経済に甚大な損失を与え、世界経済にも大きな打撃を与えると繰り返し主張している。英国にとって最大の輸出相手国・地域はEUで、そのシェアは40%を超えている。英国がEUから離脱すれば、高い関税障壁に直面することになり、EUと新たな貿易協定を結ぶのに多大な時間がかかるため、貿易量は激減し、雇用の減少など悪影響があると考えられている。

 また、英国は直接投資の受け入れ額も大きい。日本の大企業も英国に拠点を置き、欧州で売り上げを稼いでいるところが多い。EUとの貿易が縮小すれば、海外企業を呼び込むことも難しくなる懸念がある。さらに、金融市場の大混乱も予想されている。英国ポンドが大暴落するだけでなく、欧州の統一通貨ユーロも下落するという。

 英国財務省は、ショックシナリオとして失業者が182万人増加しGDPが2年で6%減少するとの試算結果を公表している。離脱の悪影響は、EU域内にとどまらず、世界経済、金融市場に及ぶと主張する。

 一方で、ジョンソン氏など離脱派は、離脱による経済的な悪影響は、短期的にはあるとしても、長期的にみれば、残留派が主張するほど劇的なものにはならないと反論する。まず、国民投票で離脱が決まっても、即座に離脱のプロセスが進むわけではなく、2年間はEUのルールが英国に適用される。現実主義者のジョンソン氏は、その間にEUと新たな貿易協定を結び直すことを考えているかもしれない。

 EU側からすれば、英国離脱後、ドミノ倒しにさまざまな加盟国が離脱に走るような事態を避けるため、英国に制裁的な対応をすることはできないとの見方がある(JBpress「ブレグジットが決まれば、英国を穏便に離脱させろ」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47108)。ジョンソン氏はEUに対して有利な交渉が可能と考えているかもしれない。また、EUは現時点で米国や中国などの巨大市場と貿易協定を結んでいない。その意味では、離脱しても米中という二大市場との貿易の条件が悪化するわけではない。

 また、この連載で指摘してきたように、英国の優位性とは、「政治的リスクの低さ」「地理的条件の良さ(欧州、北米、中東、アフリカ、アジアをすべてカバーできる)」「知識・情報の集積」「高い技術力」「質の高い労働力」「ブランド」「英語」「参入規制の低さ」と、多岐に渡る(第52回・P.6http://diamond.jp/articles/-/31233?page=6)。単純に、EUに加盟しているということだけが、英国の魅力ではないことを忘れてはならない。

 さらにいえば、英国の製造業は、軍事大国のベースを生かし、民間航空企業や空軍、陸軍、海軍の装備を製造しているBAEシステムズ、航空宇宙エンジン、発電システムを製造するVTグループ、GKN、ロールス・ロイスなどのハイテク企業が世界的に高い競争力を誇っている。英国は、単純に「安売り競争」をやっているわけではない(第43回http://diamond.jp/articles/-/24618)。

■EU離脱で中長期的には
 むしろ英国に資金が集まるようになる

 金融については、前述の通り、短期的にはポンドが暴落するような事態が想定される。それはその通りだろう。しかし、中長期的にみれば、EUから離脱することによって、むしろロシアや中東、そして、EU圏内の富裕層からの資金は、これまで以上にシティに集中し、結局ポンド高になるのではないだろうか。

 なぜなら、シティは規制が少ない上に、英国は世界中にタックスヘイブンを持っているからだ。筆者が英国にいた頃から、中東・ロシア、そしてEU圏から規制が多いユーロを避けて、ロンドンに資金が集まっているという実感があった。

 実際、この連載ではウクライナ問題での西側諸国のロシアへの経済制裁に関連して、プーチン大統領や政府高官には、ロンドンに巨額の不正蓄財の巨額の蓄えがあるとの「噂」があることを取り上げた(第77回http://diamond.jp/articles/-/49808)。

 また、中国共産党幹部が、香港にペーパーカンパニーを設立し、巨額の貯蓄をしているという「噂」や、英領ヴァージン諸島に資金を移して、マネーロンダリングをしているという「噂」も取り上げた(第91回・P.7http://diamond.jp/articles/-/60154?page=7)。これは、「パナマ文書」が公開されたことで、単なる「噂」ではないことが明らかになったといえる。

「パナマ文書」によって、タックスヘイブンに対する規制が厳しくなるというかもしれないが、文書が明らかにしたのは、世界中のタックスヘイブンのごく一部でしかない。世界中に点在する英国領のタックスヘイブンはいまだブラックボックスのままで、規制しようとしてもできるものではない。従来から、金融規制が緩い英国領には、世界から資金が集中する傾向があったといえるが、EUの金融規制から解放されることによって、増々資金が集まりやすくなる可能性があるのではないだろうか。

■「英連邦」が凄まじく巨大な
 経済圏として出現する

 そして、英国が持っている「英連邦」という巨大な「緩やかな国家連合体」の存在を軽視してはならないだろう。英連邦には54ヵ国が加盟している。国連に次ぐ規模を持つ国家連合だ。世界のほとんどの宗教、人種、政治的思想をカバーしている。

 英連邦は、大英帝国の残骸を残しているに過ぎないというのが日本での一般的なイメージだが、実態は全く違っている。特筆すべきは、今でも加盟国が増加していることだ。2009年にはルワンダが加盟した。先日、国連に加盟申請したパレスチナ自治区も加盟を希望している。旧英国植民地ではなかった南スーダンまでもが加盟に前向きである。

 英連邦の利点は、独裁政権を倒して民主化を果たした小国(主にアフリカ諸国)や、新しく誕生した国家でも加盟しやすいことだ。そして国連よりも、国際社会で発言する機会を得やすいので、加盟を希望する国が多いのだという。もちろん、英系グローバル企業とのネットワークによる、経済成長を期待する国もある(第20回・P.5)。

 そして、英連邦は小国だけではなく、資源大国であるカナダ、オーストラリア、南アフリカ、世界で2番目に人口が多く、ハイテク国家としても知られるインドや、マレーシア、シンガポールなど東南アジアの多くの国も含まれる。そして、今後、「世界の工場」となることが期待されるアフリカ諸国の多くも英連邦だ。EU離脱となれば、当然英国は、英連邦との関係を固めることになるだろう。英国は、単体では人口6000万人の小さな島でしかないかもしれないが、英連邦を1つの経済圏と考えれば、その規模は凄まじく巨大なものとなるのではないだろうか。

■英国のEU離脱を嫌がるのは
 単独で「生存圏」を確立できない国・地域

 このように考えると、英国のEU離脱は、おそらく中長期的にみれば、英国にとって不利益ではない。むしろ、英国に抜けられるEUの不利益となるのではないだろうか。換言すれば、ギリシャなど財政悪化に苦しみ、経済の弱い国を抱えるEUこそ、英国にとって「お荷物」な存在なのだと考えることもできる。

 英国はEU離脱で、確かに短期的に損失があるかもしれないが、「木を見て、森を見ない」話ではないだろうか。ジョンソン氏は大衆政治家であると同時に、国王ジョージ2世の末裔でもある。歴史的に積み上げてきた英国の底力を現実的に見抜いていないわけがないだろう。

 ジョンソン氏とトランプ氏は似ているのかもしれない。トランプ氏が主張する「米国の孤立主義」も、突き詰めると困るのは米国ではなく、米国に依存し切ってきた国々だと思われるからだ。

 国際関係論的にいえば、これまで世界は国家間の「相互依存」の深化に努めてきた。だが、これからは、それぞれの国が「生存圏」をどう確立するかを考える時代に変わっていくのかもしれない。英国のEU離脱問題は、米国の孤立主義とともに、ジョンソン氏やトランプ氏というポピュリストが騒いでいるだけと考えるべきではなく、大きな時代の転換点を象徴しているのだと考えるべきなのかもしれない。
 

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コメント
 
1. 2016年6月21日 10:26:43 : DJF0GJdwqI : EvBN3Y1tvag[3]
なるほど、英連邦ね、これは勉強になった。

EUといっても、実体は独仏、しかもECB上層部は、米国金融界に牛耳られてるからね。

このまま米・EUの金融危機に巻き込まれるよりも、多少なりとも遮断した方がマシと考えても不思議ではない。

英国の、それも奥の院が独自路線を取ろうとすることも、十分ありそうだ。


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