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アップルやグーグルなど欧米優良企業が、脱「短期利益&株主至上」志向鮮明…日本企業と逆(Business Journal)
http://www.asyura2.com/16/hasan111/msg/516.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 8 月 03 日 01:06:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

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アップルやグーグルなど欧米優良企業が、脱「短期利益&株主至上」志向鮮明…日本企業と逆
http://biz-journal.jp/2016/08/post_16145.html
2016.08.03 文=名和高司/一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 Business Journal


 例年、6月後半は株主総会の季節だ。私が社外取締役をしている4社中3社(デンソー、味の素、NECキャピタルソリューション)も、この時期に株主総会が集中するため、襟を正す思いが続いた(なおもう1社のファーストリテイリングの株主総会は11月)。特に日本版コーポレートガバナンス導入の2年目にあたる今年は、「社外取締役からみて、当社のガバナンスは正しく機能しているか」といった質問があるのではないかと壇上で身構えていたが、幸か不幸か空振りに終わってしまった。

 それにしても、社外取締役への注目度は、ここのところうなぎ上りだ。特に社外取締役が実力経営者のやや強引な意思決定に待ったをかけたり、逆に立派な社外取締役がいながら企業ぐるみの不正事件を防げなかった事案などが、社外取締役への期待と不満を煽り立てている。このような事態にこそ、社外取締役が監督機能を発揮することが望まれているのは確かだ。
 しかし、ブレーキを踏むことだけが社外取締役の本来の役割ではない。そもそも日本企業の多くは、この「失われた30年間」に、リスクを避けて縮小均衡の負のスパイラルに陥ってしまったのではなかったのか。この「不作為のリスク」に目を光らせ、「計算されたリスク」を取るように経営陣の背中を押すことも必要になる。なぜなら、企業価値を高める意思決定を促すことこそが、社外取締役の究極の役割だからである。

 残念ながら日本の社外取締役には、そのような意味で企業価値を向上させる知恵をもった人材は、数少ないのが実情である。そもそも学者に、そういった高度な経営センスは期待できない。また企業のトップ経験者には、実務センスはあっても、先を読んだり、新しい事業モデルを構想できる人材はまれだ。そのような力があれば、日本企業がここまで低迷することはなかっただろう。日本の実情を見る限り、社外取締役に救世主としての期待を寄せるのは、はなはだ筋違いといわざるを得ない。

■誤ったROE信奉

 企業価値そのものについても、大きな勘違いがまかり通っている。その代表例がROE(自己資本利益率)信奉だ。企業は株主のものだから、株主に対してのリターンを最大化することが企業経営者の最大の責務だという理屈である。2014年に経済産業省が出したいわゆる「伊藤レポート」が、グローバルな投資家と対話する際の最低ラインとしてROE8%を目指すべきだと提唱したことは、よく知られている。

 しかし、数字合わせが目的化してしまうと、きわめて危険だ。分子のリターンを大きく見せるためには、現業からできるだけ利益を絞り出すことが手っ取り早い。また、分母を小さくしようとして、自己株買いに走りやすい。その結果、将来に向けた必要な投資に金が回らず、負のスパイラルをますます加速させてしまうことになる。

「グローバルな投資家」のなかには、それを望んでいる勢力も少なからず存在する。低迷している株価を一時的に高めることで、売却益を得ようとする投資家である。アクティビストに代表されるこのような短期投資家は、企業の持続的成長になど、関心はない。

 株主資本主義のメッカであるアメリカですら、このような投資家に翻弄されて企業経営者がショートターミズム(短期利益志向)に陥ることに警鐘が鳴らされている。事実、アップル、グーグル、スターバックスなどのアメリカの超優良企業は、ROEを経営の目標指数にはしていない。ROEをグローバルスタンダードであるかのごとく振りかざすことは、短期投資家の思うつぼであり、日本企業の持続的な競争力をますます弱める陰謀とすら思えてならない。

 企業価値を本質的に高めるためには、現在生んでいるキャッシュを再投資することで、将来より高いキャッシュフローを生むことを目指す必要がある。もちろん投資にはリスクがつきものだ。このリスクとリターンのバランスを読み切る力が、経営トップにも社外取締役にも求められているのだ。

■トリプルボトムライン

 東レは今でこそドル箱となった炭素繊維が採算に乗るまで、50年間投資をし続けた。競合する米デュポンやダウ・ケミカルのトップは、アメリカ型株主資本主義のもとではまず不可能だと羨ましがったという。「おもしろおかしく」を社是に掲げ、研究者が自分の研究に思い切り没頭できる堀場製作所には、欧米の研究重視型企業からぜひ自社を買収してほしいという話がもちかけられるという。

 長期的・持続的な視点に立った日本型ガバナンスのもとでこそ、破壊的なイノベーションが生み出される可能性が高いのだ。非連続なイノベーションが求められる時代に、4半期ごとの1株当たり利益や毎年のROEの数字に一喜一憂するような欧米型ガバナンスをもちこむことは、自殺行為に等しいといえよう。

 しかも、単に株主にとってのリターンだけに目を奪われていては、真の企業価値を高めることはできない。企業は顧客、従業員、サプライヤー、コミュニティ、そして社会全体にとって価値を創造することなくして、存在し、成長することはできない。株主への価値還元は、それら多様なステークホールダーに対する価値創造の結果でしかないのだ。

 ユニリーバやノボノルディスクファーマなどの欧州の超優良企業は、この20年近く「トリプルボトムライン」を経営の主軸に据えている。企業は経済価値のみならず、環境価値、社会価値の向上に配慮すべきとする理念である。また、最近アメリカでも、米ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授が提唱する「CSV経営」(Creating Shared Value:共通価値の創造)が注目されている。企業が競争に勝ち抜き、成長し続けるためには、経済価値と社会価値の双方を高めることが必要だというのである。

 日本が「欧米型株主至上主義ガバナンス」の導入に躍起になっている間に、当の欧米の先進企業は、あらゆるステークホールダーを見据えた21世紀型のガバナンスの確立に踏み出している。このままだと、日本企業はまたしても世界の潮流から取り残されかねない。

■日本型CSV

 しかし、思い返せば日本は300年以上前から、近江商人の「三方よし」という心得を継承してきた。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」という理念である。また、日本資本主義の父・渋澤栄一は、「論語と算盤」の両立を説き続けていた。

 日本企業は伝統的に、幅広く社会全体に配慮した経営を心掛けていたはずである。ここにきて、周回遅れのガバナンスモデルに翻弄されるのではなく、この日本の伝統的な企業理念こそ、世界に誇り、世界をリードできる経営モデルであることに、日本の経営者は早く気づき、自信と使命感を取り戻すべきである。

 もちろん、「社会に貢献しているから、低利益、低成長でもいいではないか」ということにはならない。利益が出なければ、再投資して、より大きな社会価値を生むという好循環は生まれない。また成長しない企業は、株主のみならず、従業員やサプライヤー、コミュニティなどのステークホールダーにも成長機会が提供できない。

 日本企業は、社会価値を高めつつ、経済価値も飛躍的に増大させることに、もっと知恵を絞るべきである。そうすることによって、昨今の株主至上主義型ガバナンス論を超え、さらに欧米型のCSV経営をも凌駕する最先端の経営モデルを、確立することができるはずだ。

 筆者はそれをJ-CSV(日本型CSV)と呼び、日本発グローバルな経営モデルとして世界に発信していくことを提唱している。ご興味のある方は、拙著『CSV経営戦略』(東洋経済新報社/2015年)をぜひお読みいただきたい。

 本連載では、日本企業が元気を取り戻し、世界をふたたびリードするためには、何が必要かを論じていきたい。20年間にわたるマッキンゼー・アンド・カンパニーでの経験からも、欧米型のベストプラクティスの導入が、日本企業の救済につながるとは思えない。むしろ、日本企業の本質的な強みを磨き抜き、世界で勝負していくことが、日本企業の真の勝ちパターンだと信じている。答えは実は足元にある。読者の皆さんには、本連載を通じて、ぜひそこに確信をもっていただければ幸いである。

(文=名和高司/一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)
 

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