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原油安は長期化へ、サウジは持ちこたえられるのか 財政は火の車、どんな手を打っても焼け石に水(JBpress)
http://www.asyura2.com/16/hasan112/msg/199.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 8 月 19 日 00:25:50: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

サウジアラビアでドリフト走行などの危険走行行為に高額の罰金が科せられるようになった(資料写真、出所:Tahseen Ali、YouTubeより)


原油安は長期化へ、サウジは持ちこたえられるのか 財政は火の車、どんな手を打っても焼け石に水
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47643
2016.8.19 藤 和彦 JBpress


 8月15日の米WTI原油先物価格は1バレル=45ドルを突破し、7月21日以来の最高値となった。8月18日現在で同46ドル台で推移している。

 8月に入ってから一部の産油国が原油価格下支えに向けた動きが出ていたが、ここにきて相場を動かしたのは、サウジアラビア政府高官の発言である。8月11日、サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は、「必要があれば、OPEC加盟国および非加盟の産油国と協力し、原油市場の再調整を促す手立てを講じる」と述べた。「OPECが9月にアルジェリアで予定している非公式会合では、原油市場の現況や市場安定のために必要となる可能性がある措置について協議する」と言う。

 これを受ける形でロシアのノバク・エネルギー相は8月15日、「石油市場の安定に向けてサウジアラビアや他の産油国と協議を続けている」と述べ、必要な場合に生産量を据え置く「増産凍結」について議論する用意があるとの姿勢を示した。

■アルジェリア会合はドーハ会合の二の舞に?

 だが、果たしてアルジェリア会合で増産凍結が合意されるだろうか。

 4月のドーハでの会合は、増産を継続したいイランが欠席し、増産凍結の合意に至らなかった。そのイランは「原油生産量を制裁前の水準に回復する」という目標が達成できる目処が立っているので、増産凍結を受け入れやすいはずだ。しかし、内戦の沈静化により原油生産量を元に戻そうとしているリビアや、野心的な増産目標を掲げるイラクが増産凍結に応じないのではないかとの懸念が生じている。

 また、ロシアは協議に前向きな姿勢を示しているものの、原油生産量は過去最高水準を保ったままである。

 柔軟な姿勢を見せ始めたとされるサウジアラビアも、7月の原油生産量は前月比12万バレル増の日量1067万バレルと昨年7月の過去最高(日量1056万バレル)を更新した。OPEC非加盟国の関係筋によれば、8月の生産量はさらに増加し、日量1080〜1090万バレルになっているという。サウジアラビア政府は「エアコン利用など夏季の高い原油需要が高いため、原油生産量を増加させた」としている。

 このように9月のアルジェリア会合も、4月のドーハ会合の「二の舞」を演じるとの見方が支配的だ。足下の市場では生産調整を材料に押し押しムードとなっているが、先週前半までの展開で膨れあがったファンドなどの売り玉の整理が一巡すれば、他に新材料がないため上昇は一服するだろう。

■米国でシェールオイル生産が再び活発化

 OPECは8月10日に公表した月報で、「原油需要が季節的に伸び悩み、石油製品の在庫が高水準を維持するため、世界的な原油安は長期化する可能性がある」との見通しを示した。

 筆者はかねてより「世界市場で石油製品がだぶついている状況で、米国のガソリンシーズン終了によるガソリン市場の供給過多が、原油価格の下押し要因となる」と指摘してきた。OPECも同様の懸念を抱き始めているようである。

 翌11日に発表された国際エネルギー機関(IEA)の月報でも、「原油市場は下期に需給がタイト化に向かうが、リバランスまでには時間がかかる」との見方を示した。その主な要因は在庫の積み上がりである。OECD諸国の原油在庫は6月に過去最高の30億9300万バレルになり、石油製品在庫がこの時期の平均の4倍強に拡大している。

 米国で石油リグ稼働数が微増傾向が続いているのも気になるところである。米油田サービス会社ベーカーヒューズが発表した8月12日までの週の米石油リグ稼働数は前週比15基増の396基となり、7週連続の増加となった。

 米国の原油生産量の約5割を占めるシェールオイル企業は原油価格が30ドル台に下落した昨年末以降、掘削活動をほぼ停止し、今年2月には倒産が相次いだ。しかし米エネルギー省は8月9日、「シェールオイルの生産が再び活発化する」として今年の原油生産見通しを日量873万バレルと7月から同12万バレル引き上げた。

■減速する中国の原油需要

 IEAは世界的な原油需要の伸びが鈍化していることに懸念を表明している。中でも中国の状況は一段と不透明さを増している。

 7月の中国の原油輸入量は日量約735万バレルと1月以来の低水準となった。国内在庫が高水準で石油製品需要も低迷しているため、7月の国内需給バランスは6カ月連続で供給過剰となっているからだ。原油輸入の単価が5カ月連続で上昇していることもマイナスに作用した。今年前半は中国の旺盛な原油需要が世界の原油価格を押し上げたが、その下支えの効果は弱まりつつある

 一方、石油製品の輸出は引き続き増加している。7月の輸出量は457万トンとなり、1〜7月の輸出量は前年比46.3%増となった。しかし同時期の輸出額は3%しか増加しておらず、ガソリンをはじめとする石油製品のダンピング輸出の傾向が鮮明になっている。

 原油需要を生み出す中国経済自体にも赤信号が点灯しつつある。

 8月3日付けブルームバーグによれば、中国企業の現金保有は第2四半期に18%増加し、6年ぶりの大きな伸びとなった。銀行と証券会社を除く中国企業の現金保有は1.2兆ドルに上り、日米欧の企業より速いペースで増えている。一方で、今年上期の民間固定資産投資の伸びは2.8%増と過去最低である。企業は新規プロジェクトに資金を投じる意欲を失っているのだ。当局は、金融システムに流動性を供給して成長を押し上げようとしてきたが、その試みは全く機能していない。

 さらに問題は、金融リスクの増大が顕在化しつつあることである。国際通貨基金(IMF)は「中国のシャドーバンキング関連の19兆元(約290兆円)に上る信用商品はハイリスクであり、デフォルトに陥れば流動性ショックにつながる可能性がある」との見方を示した。金融危機の懸念が高まる中で中国企業の活動がますます消極的になることは間違いない。

 バークレイズは8日、「中央銀行による追加金融緩和策が、世界の商品需要を下支えする可能性は低い。財政刺激策の方がその可能性が高い」と主張した。2014年までの10年間に及ぶ中国経済の「爆食」に匹敵するような「ニューディール政策」が今後実施される可能性はほぼゼロである。

■どの政策も「焼け石に水」のサウジアラビア

 以上のようなOPEC、米国、中国の状況から、筆者は今年の原油価格も昨年と同様の展開になるのではないかと見ている。昨年の原油価格は6月にピークをつけた(1バレル=約60ドル)後に8月に一時上昇したが、再び年末にかけて1バレル=30ドル台に下落した。

 原油価格が再び同30ドル台になったら、湾岸産油国の財政は果たして持ちこたえられるのだろうか。クウェート政府が9月からガソリン価格を80%値上げすることを決定したように、湾岸産油国の財政は軒並み「火の車」である。

 中でもIMFが最も心配しているのはサウジアラビアだ。

 サウジアラビア政府は8月10日、石油以外の収入拡大に向けた改革措置の一環として外国人が期間6カ月のビザを取得する際の手数料を現在の6倍となる800ドルに引き上げることを決定した。

 また政府はドリフト走行や曲乗りなど自動車の危険走行行為に高額の罰金を科す(初犯者に対する罰金は2万リヤル=約54万円)と発表した。娯楽の少ないサウジアラビアで、ドリフト走行は男性の遊びとして人気があるため、失業などで政府に不満を持つ若者たちの怒りはさらに高まる可能性がある。

 サウジアラビアは海外の投資家も積極的に呼び込もうとしている。サウジアラビア株式市場はこれまで外国人に対して最も閉ざされた市場の1つだったが、サウジアラビア資本市場庁(CMA)は11日、「2017年6月末までに外国人投資家がサウジ市場に直接投資するのに必要な運用資産の下限を、これまでの187.5億リヤルから37.5億リヤル(約1010億円)に引き下げ、海外の個人投資家が保有できるサウジ企業の株式比率の上限を5%から10%に引き上げる」ことを決定した。

 しかし、これらの措置は「焼け石に水」のようである。サウジアラビア第1位のゼネコン企業であるサウジ・ビン・ラディン・グループは、今年4月に全従業員の4分の1に当たる5万人の従業員をレイオフした。また、8月に入り現地メディアは「同国第2位のゼネコン企業であるSaudi Ogerが8カ月間にわたる従業員2万人分の給与未払いなどを抱えて近々破綻する」と報じた。

 政府からの受注金額が今年第2四半期に前年比65%減少し、銀行からの融資もままならない悪環境下で、建設業界では「非人道的な蛮行」が横行している。8月9日付ブルームバーグによると、1万6000人にも及ぶ外国人労働者が食料も与えられずに同国の砂漠に投げ捨てられているのだという。外国人労働者の出身国はインドとパキスタンがメインだが、賃金が長期間未払いで出国ビザも取得できないため、砂漠の「労働キャンプ」にとどまらざるを得ない。昼間の気温が50度を超える状況にもかかわらずエアコンが利用できない状況にあり、外国人労働者たちの怒りは頂点に達している。

 政府のゼネコン企業への未払いは昨年10月から続いている。だが、事実上の国王であるサルマン副皇太子は「大手ゼネコン企業は苦境でも、サウジアラビア経済全体は良好である」と主張するばかりである。

 サウジアラビア政府は8月9日、11.5億ドル相当の米国製の武器を購入することを決定したが、昨年3月からのイエメンへの軍事介入も終わりが見えない。

 原油市場への“口先介入”で、原油生産量を増加させながら原油価格を上昇させるという錬金術の効力は長続きしない。「短期的な原油収入は犠牲にしながら、中長期的に原油価格を安定させる」というこれまでの国家戦略に回帰しない限り、サウジアラビアの将来はないのではないか。


 

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