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3千円で多彩な日本酒を時間無制限飲み放題の店、なぜ儲かる?店の客もトクするカラクリ(Business Journal)
http://www.asyura2.com/16/hasan112/msg/229.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 8 月 20 日 00:48:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

3千円で多彩な日本酒を時間無制限飲み放題の店、なぜ儲かる?店の客もトクするカラクリ
http://biz-journal.jp/2016/08/post_16377.html
2016.08.20 文=江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部代表 Business Journal


 最近いろいろな街で見かけるようになった、セルフ式時間無制限の日本酒飲み放題のお店。分析するにあたって、まずは同形態店舗の初期の特徴やシステムを整理してみると次のようになる。

・時間無制限
・入場料3000円を支払って入店
・店内に業務用冷蔵庫(酒用ショーケース)が配置され、中に100〜200種類くらいの日本酒が並ぶ
・お客さんは冷蔵庫内の日本酒の中から、自分の好きなものを好きなだけセルフで飲み放題
・フードはなし、持込みOK・歓迎
・店内は会議室のような雰囲気、自由に動き回り、自由に居場所を確保もしくは立ち飲み
・スタッフは入口受付に1名、もしくはさらに1名

 お客さんのメリットは、とにかく「気になる日本酒、好きな日本酒を、好きなだけいろいろ飲めること」となります。3000円の入場料を払えば時間無制限で飲むことができますので、お得感を感じる方も多いことでしょう。

 では、分析していきましょう。このお店は、儲かるのでしょうか?

■費用配分からアプローチ

 本連載でお馴染みの飲食店費用配分からアプローチしてみます。

・材料費率30%
・人件費率30%
・家賃管理費率10%
・光熱消耗雑費率10%
・償却・借入返済比率10%
・利益10%
 以上がざっくりとした配分ですが、要因を個別に見てみます。
・材料費率

 フードがないので日本酒の仕入が材料費となりますが、入場料が3000円ですから、目安の30%(3000円×30%=900円)に落ち着くか否かがポイントです。

 店舗に置いてある日本酒は1升瓶が多いです。インターネットで1升瓶の日本酒がいくらくらいで売っているかをみてみましょう。これらのお店は日本酒がウリですから、品ぞろえに力を入れなくてはなりません。あまり安いものでまとめるとお客さんがお得感を感じないので、品ぞろえは大事です。そうなると、1升瓶で2500円〜3000円強が仕入の中心ラインとなります。計算しやすく(高めに見積もって)1升瓶の平均仕入コストを3000円としてみましょう。

・お客さんはどれくらい飲むのか?

 私が主催する1人1本持込日本酒会や14年間経営していたダイニングバーの飲み放題のデータから、平均としては飲んだとしても4合/人だと思われます。日本酒好きの人たちが集まる1人1本持込日本酒会は3時間飲み放題ですが、この会でも4合/人弱が飲む量です。

 時間無制限だからといって飲む量がかならずしも比例して増えるわけではないことは、みなさんも経験済みでしょう、平均的な人なら、ある一定量でストップします。ちなみにこの日本酒持込会に参加している人たちの多くは、セルフ式日本酒飲み放題店の客層でもあります。なお、飲み放題でお客が飲む量についての詳細は、本連載記事「飲み放題、なぜ店も客も得?一杯の原価はたった150円?店は損しない数字のカラクリ」(http://biz-journal.jp/2016/07/post_15817.html)をご参照ください。

 では、計算します。1升=10合で3000円の日本酒の4合分ですから、3000円×40%=1200円が仕入原価となります。入場料が3000円ですから、材料費率は1200円÷3000円=40%となります。目安の30%を超えていますので、個別要因だけで考えると儲からない部分となります。目安の30%に設定している通常の飲食店より、お客さんはラッキーです。

・人件費率

 ここはどう考えてもお店が儲かる部分です。理由は、フードがないので料理人が要りません。飲食店の人材は厨房(料理人)とホールスタッフで構成されています。その厨房部分の人件費がかからないことになります。ホールについてもお客さんは入店後セルフですから、最少人数の受付1名でも可能といえば可能です。

 お客さんが少ないうちは、オーナーが自ら受付をすれば外部流出する人件費がないケースもあり得ます。電話対応や洗い物、お客さんへの各種フォロー等を考え、プラス1名配置しても通常の飲食店よりも人件費を抑えることは可能です。どこまで人件費をかけるかは、お店の方針や広さ・混み方しだいです。

・家賃管理費率

 フードがない分、客単価が下がり気味=トータルの売上も下がり気味ですので、売上に占める割合は上がり気味です。半面、光熱消耗雑費比率は厨房設備がない分、下がり気味となりますので、トータルでニュートラルな部分と推測します。

・償却・借入返済比率

 お店は儲かります。初期投資の回収=償却ですが、初期投資の中で一番お金がかかるのが「内装・設備」の部分です。会議室であったところや、もともとの飲食店をそのまま居抜きで利用すれば、内装・設備はほとんどかからないか、大きくはかかりません。

・まとめ

 以上をまとめると、主力商品の材料費(日本酒の仕入)は通常の飲食店よりもかけなくてはなりませんが、そのほかでは圧倒的にお金がかからないので、「儲かる商売」と推測されます。そのため、日本酒ブームにも乗ってこのスタイルのお店が最近増えてきているのでしょう。

<セルフ式日本酒飲み放題のお店>
・材料費率40%:高め
・人件費率15%(10〜20%):低め。かなり下げられる部分
・家賃管理費率10%強
・光熱消耗雑費率10%弱
・償却・借入返済比率5%前後:低め。かなり下げられる部分
・利益20%

■お客もトク

 では、お客さんは損をしているのでしょうか? 

 もちろんそんなことはありません。セルフによってお店の人件費を抑えている分や初期投資を抑えた分が材料費に回ってきますので、お得な部分もあります。がんばれば何十種類もの日本酒をちょっとずつ飲めます。家飲みや他の飲食店では、これほど多くの種類を一度に楽しめることはないでしょう。

 また、お店は品ぞろえを意識しますから、自分では入手できないようなお酒も用意してくれたりします。お客さんがちゃんと来てくれればお店は儲かるビジネスモデルですから、儲かればそれを維持するためにさらにお客さんに還元するでしょう。いい循環でお客さんにもメリットはありますから、ウィンウィンの関係であるといえるでしょう。

 しかし、このタイプのお店が多くなってくると競争が始まります。価格競争、品ぞろえ競争、フードの充実、お洒落な内装等々。後発組のお店は、よりお客さんがお得に感じるよう入場料の価格を下げたり(客単価の低下)、よりレア度が高い日本酒を入手したり(コスト上昇)、利便性を上げるためにフードを提供したり(人件費増加)、内装費をかけてお洒落な内装にしたり(償却増加)して差別化を図ります。これが進むと、本来の儲かるビジネスモデルが崩壊するタイミングがやってくることになり、淘汰が始まります。

 お店側はたいへんですが、お客さんからすると、おいしい日本酒を飲める機会はこの先も増えてゆくことでしょう。せっかくですので、このタイプのお店も活用して楽しんでいただけたらと思います。お店が儲かればお酒の充実となってお客さんに還元されるはずですから、いいスパイラルになることを願います。

(文=江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部代表)
 

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