★阿修羅♪ > 経世済民112 > 304.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
イーロン・マスクが東レを指名? 宇宙ビジネス「夢の素材」で大飛躍となるか 世界シェア首位の実績とノウハウ(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/16/hasan112/msg/304.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 8 月 23 日 13:04:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

イーロン・マスクが東レを指名? 宇宙ビジネス「夢の素材」で大飛躍となるか 世界シェア首位の実績とノウハウ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49512
2016年08月23日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス


■脚光を浴びる「炭素繊維」

鉄よりも強くて軽い素材「炭素繊維」の夢を大きく膨らませるニュースが飛び出した。

先週水曜日(8月17日)付の日本経済新聞が報じたもので、あのイーロン・マスク氏が率いる宇宙開発ベンチャー「スペースX」が、今後開発する大型ロケットや宇宙船の機体に炭素繊維を使う方針を決め、今秋の最終合意を目指して東レとの長期供給契約の締結交渉を進めているというのだ。

当の東レは、「我々がお話しできることは何もない」とノーコメントの姿勢を崩していない。が、実現すれば、ボーイング787など航空機の機体への本格供給に続く快挙で、素材としての炭素繊維の可能性を改めて示す動きと言える。

だが、東レの成長路線を固めるには、航空機やロケット、宇宙船といった先端分野への供給だけでは心許ない。というのは、こうした先端分野は、東レの業容に比べて市場規模が小さいからである。かねて期待されているように、大衆車クラスの自動車のフレームやボディのようなマス(大衆)市場にくさびを打ち込む戦略が、東レには求められている。

新たなアライアンス(提携)が生まれるとすれば、東レとスペースXほど対照的な企業の組み合わせも珍しい。

国内繊維メーカー首位の東レは、三井物産の出資で大正15(1926)年に「東洋レーヨン」として誕生した老舗企業だ。誕生以来、内外から積極的な技術導入を行い、様々な化学繊維を開発・製造してきた。戦後の復興期には、朝鮮戦争特需を背景に日本経済を先導したこともある。繊維不況や日米繊維摩擦、円高、石油危機、途上国の追い上げといった数々の試練に直面、1970年代には3度も最終赤字に転落して存続が危ぶまれたこともあった。

新素材として脚光を浴びている炭素繊維の開発は、この1970年代の苦境の真っ最中にスタートした。当時は、釣り竿や自転車のフレーム、ゴルフクラブなど地道に実用化の道を探り、ニーズを掘り起こして事業化に繋げてきたという。こうした経緯から、炭素繊維は長年の努力が実を結んだもので、長期的な視野を持った研究開発の重要性を示す好例としてしばしばとりあげられてきた。

2014年11月には、米ボーイング社との供給契約を見直して、炭素繊維の供給対象を現在の主力旅客機787だけでなく、2020年の1号機納入を目標に開発中の次世代機(777X)向けにも拡大すること、それによって「受注額が1兆円を超す」ことなどを発表、経済界を驚かせた。

■なぜ東レなのか

そんな東レの企業風土・経営哲学が潜在競争力の低下に苦しむ日本経済の立て直しに役立つとの期待もあって、財界の総本山・日本経団連は2014年6月、東レ会長の榊原定征氏を第13代の日本経団連会長に招へいしたほどだ。

歴史のある東レと対照的に、もう一方の当事者であるスペースXは、米電気自動車(EV)メーカーとして有名な「テスラモーターズ」の創業者として知られるイーロン・マスク氏が立ち上げた若い企業だ。

各国が長年かけて国策で育成してきた人工衛星の打ち上げビジネスに2006年に参入したばかりのニューフェイスながら、主力ロケット「ファルコン9」の高いコスト競争力を武器に事業を急拡大している。ファルコン9は2段式のロケットだが、打ち上げコストを飛躍的に引き下げる狙いから、従来は使い捨てだった1段目の再利用技術の開発に取り組んでいることでも有名だ。

ロケットや宇宙船を使い捨てにせず再利用することでコストを削減するという発想に先鞭を付けたのは、NASA(米航空宇宙局)のスペースシャトル計画だ。が、度重なる事故で安全対策コストが高騰し、NASAは同計画を中止して、国際宇宙ステーション(ISS)への宇宙飛行士や物資の輸送を民間企業に委託する方針に転換した。その一環として、昨年11月には、スペースXに輸送を委託する契約を結んだ。

このほか、スペースXは、将来の目標として、宇宙旅行や火星有人探査を掲げており、「ファルコン9」に比べて3倍以上の積載能力を持つ「ファルコンヘビー」や火星有人探査用の宇宙船「レッドドラゴン」などの開発にも取り組んでいる。

そこに飛び出したのが、今回の日経報道だ。それによると、スぺースXは次世代ロケットのファルコンヘビーなどに、これまでのロケットの機体素材として主体だったアルミに代えて、軽くて強い炭素繊維を大量に採用する方針を固めたという。東レとの契約は「複数年契約」であり、「受注額は累計2000億〜3000億円規模」に達するなどと伝えている。

背景には、東レが炭素繊維市場で世界シェア首位を誇り、航空機の分野で大量の受注をこなしてきた実績から、炭素繊維のネックだった高いコストの削減と難しい成形の能力向上のノウハウを蓄積してきたことがあるという。

当の東レ広報部は、筆者が日経記事の事実確認を求めたところ、「記事は米国サイドでの取材に基づくものとみている。現時点で、当社からお話しできることは何もない」とノーコメントの姿勢を崩さなかった。とはいえ、会社として明確に否定しない以上、両社の間で、なんらかの交渉が進展していることは事実と思われる。

東レが今なお、すぐ収益に繋がる技術だけを追い求めるのではなく、基礎研究に重心を置き、今回の報道のようにじっくりと新たな市場を育てていこうとする姿勢は高く評価できる。

先週の本コラム(『リーマンショック以来の悪い数字も…日本企業の「不振」はここまで深刻になっていた! まだまだ悪くなる…かも』)でも触れたが、東レとは対照的に、多くの上場企業はリーマンショック以降の数年間にわたって、潤沢な資金を持ちながら、溜め込むばかりで、給与として労働分配率を向上させることも、十分な成長投資に回すこともなかった。

その結果として、手元流動性、つまり保有する現預金を一貫して拡大させており、今年3月末の手元流動性は1年前に比べて2%増えて109兆円と史上最高を更新したという。

■東レにとってはここからが勝負

そんな中、不況期にも将来を見据えて研究開発に取り組んできた東レだが、今後も同社が安定高成長を目指す場合、ロケットや宇宙船を含む「航空宇宙」分野だけで安泰というわけにはいかない。

そのことは、東レのセグメント会計を見れば一目瞭然だ。2016年4〜6月期の連結売上高(4781億円)のうち、トップは全体の41.4%にあたる1977億円を誇る「繊維」、2位が同25.1%にあたる1199億円をあげた「プラスティク・ケミカル」。3位が同13.8%の658億円の「情報通信材料・機器」となっており、「炭素繊維複合材料」は4番手の同9.2%の438億円に過ぎないからだ。

炭素繊維複合材料はその注目度の高さに反して、今なお、伝統的な稼ぎ頭である「繊維」と「プラスティク・ケミカル」だけでなく、近年、スマホ向けの素材などで脚光を浴びるようになった「情報通信材料・機器」の後塵まで拝している状況なのだ。

ちなみに、「炭素繊維複合材料」の内訳は、釣り竿・自転車など「スポーツ」向けの34億円(炭素繊維複合材料の8%)や風力発電の風車用を柱とする「一般産業向け」の197億円(同45%)に比べれば、航空宇宙の206億円(同47%)は大きな比重を占めているが、東レの牽引役としてみた場合、ボリュームが小さ過ぎる。

仮に来年度以降、スペースX向けの売上高が上積みされたとしても、複数年計画で累計2000億〜3000億円規模の契約では、せいぜい年間1000億円か1500億円に過ぎない。今年度の通期の売上高で2兆2300億円を見込んでいる東レの牽引役としては力不足だ。

そこで、早くから東レに開拓を期待されてきたのが、温暖化ガスの排出削減のため軽量化して燃費効率を大幅に引き上げる必要性が高まっている自動車分野のニーズの掘り起こしだ。

それも、高級EV車など想定販売台数が少ない車種ではなく、ボリュームが期待できる大衆車のフレームやボディの素材として、鉄やアルミニウムを原材料にした素材に取って代わることが期待されているのだ。

経済産業省の『2014年版ものづくり白書』を見ても、炭素素材の需要ポテンシャルは航空宇宙分野用が2020年に2011年の2.5倍になるのに対して、自動車分野用は同13倍になるとの試算が示されている。

一方で、自動車のフレームやボディの素材について、潜在的なライバルの鉄鋼会社は、「今後も、『鉄のライバルは鉄』というのが我々の認識だ。実際、鉄を使ったハイテン鋼の強度を過去10年間で2倍にするなど様々なニーズに対応できるよう研究開発を進めている」(大手鉄鋼会社の広報担当者)と、真っ向から炭素繊維と競争していく構えを見せている。

東レは研鑽を重ねており、一昨年も、水素を燃料にモーターで走行するトヨタ自動車の燃料電池車(FCV)『MIRAI(ミライ)』のスタックフレームや高圧水素タンクに炭素繊維を採用させる成果をあげている。

だが、ここでも、『MIRAI(ミライ)』は車両本体価格が700万円を超す超高級車であり、予想外の人気にもかかわらず、輸出分も含めた生産計画台数が年間3000台(2017年)という限定的な車種であることが大きなネックとなっている。これでは需要が大きく伸びることがないからだ。

東レには、同じトヨタで言えば、月間平均で毎月2万台以上売れているプリウスや同1万台以上売れているアクアのような量販車の素材として炭素繊維を大量供給することが期待されているのだ。迎撃態勢を固める鉄鋼会社の牙城を崩せるか、東レは正念場に直面している。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民112掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民112掲示板  
次へ