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男もつらいよ、労働市場から消える働き盛り−遠い1億総活躍 日銀次は財投機関債、ますます困る GPIF日銀ETF買いに匹敵
http://www.asyura2.com/16/hasan112/msg/507.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 8 月 29 日 13:24:45: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

男もつらいよ、労働市場から消える働き盛り−遠い1億総活躍
藤岡徹
2016年8月29日 10:00 JST更新日時 2016年8月29日 11:16 JST

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• 25〜44歳の男性就業者数は48年ぶりの低水準−長期失業者が大幅増加
• 製造業からサービス業へのシフト進まず「需給のミスマッチ」続く

安倍晋三政権が国内総生産(GDP)600兆円の達成に向けて女性や高齢者の就労を推進する「1億総活躍社会」を目指す中、働き盛りの男性就労者の減少が続いている。
  日本の失業率は3%台前半と低い水準で推移しているが、男性の長期失業者はバブルが崩壊した1990年代初めに比べて約5倍と急増している。

公園のベンチで休む男性たち
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  総務省の労働力調査(2016年6月)によると25〜44歳の就業者数は1466万人と48年ぶりの低い水準を記録した。女性就業者の増加が目立つ一方で、1億総活躍を進める安倍首相にとって働き盛りの男性就労者の減少は深刻な問題だ。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ispmG9KqU8kw/v4/-1x-1.png

  社会進出が進む女性の道のりもなお険しい。就業者数は増加傾向にあるものの、フルタイムの正規雇用に比べて比較的賃金が安く福利厚生も整っていないパートタイムの従事者が多い。同調査では男性の正規職員・従業員の割合が77.8%と高いのに比べ、女性は44.4%にとどまっている。
  日本銀行は3月に発表したリポートで、失業期間が1年以上の長期失業者は「25〜44歳の男性に大きく偏っている」と指摘。2014年時点で31万人と90年代初めの6万人に比べて5倍となった背景について、製造業からサービス業にシフトする中での「需給のミスマッチ」を挙げている。
   「労働市場から消えた25~44歳男性」と題したリポートを4月に発表した大和総研の山口茜研究員は、「研修やトレーニングなどのプログラムがなく、いったん機会を逃すと就業が難しい。日本の労働市場の悪循環だ」と指摘。その上で、「この問題はまだ認識されていない。安倍政権として改善が必要だ」との見方を示した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i09YxaffTQb4/v3/-1x-1.png

  労働力調査(同)では製造業に従事する就業者は1025万人と10年前の1170万人に比べて減少した一方で、医療や福祉などの就業者は約270万人増加した。内閣府が昨年12月に発表した資料によると製造業や建設業などの第2次産業のGDP構成比(名目)は24.9%、サービス業などを含む第3次産業は74.0%となっている。
  男性失業者の増加は少子高齢化が急速に進む日本の人口構造問題を悪化させ、経済成長にもマイナス要因となる。明治安田生活福祉研究所が今年3月に実施した調査によると、「結婚したい」と回答した20代男性は38.7%と、13年の67.1%に比べて大幅に減少。独身でいる理由について「家族を養うほどの収入がない」が一番多かった。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-29/OCIHU96K50Y101 


 

 

GPIFの日本株買い増し余力、日銀のETF買い入れ規模に匹敵
野沢茂樹、竹生悠子
2016年8月29日 00:00 JST更新日時 2016年8月29日 12:55 JST 

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• 国内株の保有額が4−6月期に約2.3兆円目減り
• 積立金全体に占める構成比は14年末以来の低さに

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が日本株を買う余地は、リーマンショック時に次ぐ規模の株運用の評価損を4−6月期に出したことで、むしろ拡大している。2014年10月に大幅な見直しをした運用構成比率に近づけるには、日本銀行が先月末の金融政策決定会合で引き上げた株価指数連動型上場投資信託(ETF)の年間買い入れ額に匹敵する規模の購入が必要となる見通しだ。
  GPIFの4−6月期の運用損失は5.2兆円余りと、前身の年金資金運用基金としては自主運用を始めた2001年度以降で3番目に悪かった。国内株の運用は、円高や世界的な市場の混乱の影響を受け2.3兆円弱の評価損。積立金全体に占める構成比は6月末に21%と14年末以来の低水準となっている。
  ブルームバーグの試算によると、国内株の保有額は6月末に約28.3兆円に減少しており、構成比を約2年前に定めた基本ポートフォリオの目標値25%に近づけるには、約5.3兆円の積み増しが必要となる。これは、日銀が7月29日の決定会合で拡大を決めたETFの年間買い入れ額6兆円近くの規模に相当する。

4−6月期の運用状況を説明するGPIFの高橋則広理事長

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  一方、日本株や外貨建て資産を積み増す元手となる国内債券の残高圧縮は足踏み状態。日本銀行の異次元緩和を背景にした保有債券価格の上昇で、構成比は39.16%と5四半期ぶりの高水準に逆戻りした。保有額は約52.7兆円とほぼ横ばいのままだ。
  
  国内株は前例のない資産構成見直し直前の保有実勢から目標値までの変更幅の45%しか進んでいない水準に後退。国内債削減の進捗(しんちょく)率も69%に後戻りした。TOPIXが年初から約17%下落するなど、日本の株式市場が先進国で2番目に悪い相場環境となっていることや、国内債相場が日銀による異次元緩和で高止まり状態となっていることが背景だ。
  SBI証券の鈴木英之投資調査部長は、GPIFは「国内株の構成比が目標値より低いので依然として積み増す余地がある。21%ならあと4%買える」と指摘。「時価が目減りして構成比が下がる株安時に買ってくるタイプの投資家だ」と述べた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/idDiEsPG7xuU/v2/-1x-1.png 
  GPIFの国内株の積立金全体に占める構成比は、第2次安倍晋三内閣の発足直前に当たる12年9月末に11%程度にすぎなかった。一方、国内債は63%を占めていた。その後の運用方針の見直しで、国内株はほぼ一貫して増加し、国内債は減少。昨年6月末には円安の追い風もあって、運用する国内株の構成比は23%、国内債は3月末に38%と14年10月に設定した基本ポートフォリオの目標値に近づいたかにみえた。
詳細な資産構成見直しに関する記事は、こちらをご覧ください
  ただ、GPIFの昨年7−9月期の運用は、自主運用の開始以降で最大の損失を計上。世界的な市場混乱に対するリスク回避の動きが円高進行を招き、これまで積極的に増やしてきた内外株式と外債の運用が裏目に出た。年末にかけて相場は持ち直したが、今年に入ると円高・株安基調が再び顕著となり、資産構成の見直し後に稼いだ収益を全て失った格好となっている。
  14年10月から今年6月末までの運用額は累計で1兆962億円の損失。昨年6月末までの3四半期で12兆円余り稼いだが、その後は1年間で13兆円を超える運用損を被った。安倍内閣の発足以降では運用資産がなお約22兆円増えているが、大幅に増やした外貨建て資産には円高による為替差損のリスクがくすぶっている。
  三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、GPIFは「運用資産が巨額なので、どうしても注目されやすい」と指摘。円安・株高が進んだ「アベノミクス相場の局面では収益を上げていた。長期間の成果に焦点を絞るべきだ。まだ2年程度しかたっていないので、評価を下すのは時期尚早だ」と言う。
  GPIFは名目賃金上昇率を1.7ポイント上回る運用利回りを長期的に確保する責務を負う。賃金が2.7%上がる経済シナリオの名目期待収益率は国内債が2.3%、国内株は5.9%。価格変動を示す標準偏差は国内債の4.2%に対し、国内株は6倍の25.2%に上る。資産全体では12.4%と全額を国内債で運用する場合の3倍近く振れやすい。
  GPIFは5月末、運用残高が年金財政が必要とする積立金水準を下回るリスクが策定時より低下したとし、基本ポートフォリオ変更の必要はないとの検証結果を公表。広報責任者の森新一郎氏は先週末の記者説明で、歴史的な低金利下で国内債に偏重すると運用目標を達成できないと指摘し、分散投資で優良資産を長期保有する方針を示した。資産構成を14年に変えなかった場合の収益は試算していないと述べた。
政治的な争点に
  安全な運用が望まれる公的年金を国内債から価格変動が大きい日本株などのリスク資産増に駆り立てる超低金利は、日本銀行の黒田東彦総裁が推進する異次元緩和とマイナス金利政策によるものだ。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは、7月にマイナス0.30%と過去最低を更新。超長期債も年金や生命保険会社の資金が集中し、低水準にとどまっている。
  モルガン・スタンレーMUFG証券の株式統括本部でエグゼクティブ・ディレクターを務める岩尾洋平氏らはGPIFの公表内容と直近の相場水準に基づき、国内株の構成比は足元で21.90%と6月末からやや回復し、国内債は38.34%に低下したと推計。外株は21.56%に持ち直し、外債は12.73%と小幅に下がったとみる。目標値に到達するには国内株が約4.2兆円、外株は約4.7兆円、外債は3.1兆円を積み増し、国内債は約4.5兆円減らす余地があると試算した。
  公的年金の給付金は約9割が現役世代の年金保険料と国庫負担で賄われ、GPIFからの拠出金は1割程度にすぎない。高橋則広理事長は公表資料で「短期的に市場価格が上下しても、年金受給に支障を与えることはない。年金財政に必要な積立金を残すためにしっかりと受託者責任を果たしていく」と説明した。
  GPIFと昨年10月から運用を一元化した国家公務員共済組合連合会(KKR)と地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団も26日に4−6月期の運用状況を公表。一元化部分と自主運用だが資産構成の目標値がGPIFと同水準の部分は、3共済の合計で約1.5兆円の運用損失を計上した。
  民進党の岡田克也代表はGPIFの4−6月期の運用損失を受け、「われわれが懸念していたことが起こっている」と述べた。内外株式の構成比を倍増するなどの運用改革は「安倍総理主導でやった話」だが、「国民に大きな不安を抱かせている」と指摘。秋の臨時国会で「大きな争点の一つ」になるとの考えを示した。
  三井住友信託の瀬良氏は、GPIFの運用について「委託者で受給者でもある国民とのコミュニケーションや説明責任が非常に重要だが、うまくできていない」とみる。国民の代表である国会議員にも「どのようにわれわれの生活に影響してくるか、基礎的な理解を深めていくしかない」と指摘。こうした基礎知識を「義務教育でやるべきだ。国民の知る権利、生活にリテラシーとして関わってくるからだ」と話した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-28/OCJ6KK6TTDS001

 

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1. 2016年8月29日 13:28:49 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[591]

経済構造分析レポート – No.43 –
労働市場から消えた 25〜44 歳男性
地域間で広がる格差、抱える問題はそれぞれ異なる
経済調査部 研究員
山口 茜
[要約]
 25〜44 歳女性就業率は、この 30 年間で上昇傾向が続いており、結婚や出産・育児期に
女性の就業率が落ち込むM字カーブも大きく改善している。一方で、同年代の男性就業
率は低下傾向にある。25〜44 歳男性就業率の都道府県別データを見てみると、この 20
年間で就業率が全国的に低下するとともに、地域格差が拡大していることが確認された。
 この 20 年間で起きた就業率に関する変化は、前半 10 年と後半 10 年で異なる特徴を持
っている。1992 年〜2002 年は、25〜44 歳男性就業率が大幅に低下し、地域格差も拡大
した 10 年間であった。その原因としては、バブル崩壊後の景気変動によって、仕事に
就きたくても就けない人が増加したことが挙げられるだろう。一方、2002〜2012 年は、
就業率の低下は小幅にとどまったものの、地域格差が拡大し続けた 10 年であった。地
域格差が拡大した原因は、就業希望非求職者や、非就業希望者といった、いわゆる非労
働力人口が大幅に増加した地域が存在したことにある。ゆえに、2002〜2012 年の 10 年
間で拡大した地域格差は、非労働力人口を考慮に入れない完全失業率などの尺度では確
認できない。
 25〜44 歳男性就業率に関して、地域ごとに抱える問題は異なる。従って、25〜44 歳男
性の就業率を上昇させるためには、全国で画一的な施策をとるよりも、地域ごとの実情
に合わせた施策をとることが必要であろう。例えば、単に労働需要を増やすだけでは就
業率を上昇させるのが難しい地域も存在する。そのような地域では、病気・けがを患っ
ている人の多さ、就業未経験者の多さ、明確な阻害要因はないが就業を希望しない人の
多さ、求職意欲喪失者の多さ、など様々な観点から現状を分析し、それぞれの地域が抱
えている問題をしっかりと把握した上で、その問題に対処していくことが必要だ。
 本稿では、25〜44 歳男性就業率が過去の水準まで上昇した時の試算も行った。1992 年
水準では 80 万人の就業者増、1.94 兆〜3.82 兆円の所得増が見込まれる。また、2002
年水準では 22 万人の就業者増、0.54 兆〜1.06 兆円の所得増が見込まれる。
http://www.dir.co.jp/research/report/japan/mlothers/20160408_010810.pdf

わが国の長期失業者の現状
永沼早央梨、宇野洋輔(日本銀行)
Research LAB No.16-J-2, 2016年3月1日

キーワード:長期失業、ミスマッチ、賃金変動
Contact:yousuke.uno@boj.or.jp(宇野洋輔)

要旨

わが国の失業率は、歴史的にみても低い水準まで低下しているものの、長期失業者の減少テンポは緩やかである。わが国の長期失業者は、米国と違い、「若年層」(20〜40歳代)の「男性」に偏っている。これは、90年代以降、バブル経済の崩壊やリーマン・ショックなど負のショックが生じるなかで労働需要が産業間や就業形態間でシフトしたことを背景に、製造業で失職した若年男性が同じ製造業での就業機会を得られず、長期失業者となったことが一因と考えられる。さらに、2000年代半ばにかけての「就職氷河期」に正規雇用での就業が難しかった世代を中心に、同居家族からの援助もあって、職探しが長期化している可能性もある。こうした長期失業者がマクロの賃金変動に与える影響は限定的であると考えられるものの、所得水準が先行きも長期にわたって低位に止まる可能性や、人的資本が蓄積しないことによる成長率への影響については留意する必要がある。

はじめに

わが国の失業率は3%程度と、歴史的にみても低い水準にあり、企業の人手不足感もかなり高まっている(図1)。もっとも、失業者の中身をみると、失業期間が1年未満の短期失業者が大幅に減少していることに比べると、失業期間が1年以上の長期失業者の減少ペースは、非常に緩慢である(図2)。この結果、長期失業者が失業者全体に占める割合は、90年代以降、上昇傾向を辿っており、最近では米国や英国を上回っている(図3)。加えて、失業期間が2年を超える失業者の割合が2014年には2割を超えており、平均的な失業期間が長期化している。

図1:失業率と雇用人員判断DI

図1:失業率と雇用人員判断DI
図2:短期と長期の失業者数

図2:短期と長期の失業者数
図3:各国における長期失業者の割合

図3:各国における長期失業者の割合
米国や英国でも、2008年のリーマン・ショックを契機に長期失業者の割合が急激に高まったことから(前掲図3)、失業期間の長期化が就業や賃金・物価にどのような影響を及ぼすか、中央銀行関係者を中心に高い関心が寄せられている1。たとえば、Krueger et al.(2014)は、米国の場合について、長期失業者は短期失業者に比べて就業確率が低く、景気感応的でないとし、リーマン・ショック後の長期失業率の高まりは構造的な要因によるものと指摘している。また、Kumar and Orrenius(2015)は、米国の州別データに基づいて、長期失業率は短期失業率ほどには実質賃金の変動に影響を与えていないとしているほか、Linder et al.(2014)も、長期失業率に比べて短期失業率の方が名目賃金の予測力が高いと主張している。これらはいずれも、長期失業率の変動が短期的な労働市場の需給に大きく影響しないことを示唆している。他方、Dent et al.(2014)は、長・短失業者の基本的な属性(年齢分布など)に大きな違いがないことを示し、長期失業者の変動は、短期失業者と同様に、景気循環の影響を強く受けると主張している。こうした見方と整合的に、Kiley(2014)は、物価に対する圧力は長期失業率と短期失業率で大きく異ならないと主張している。

本稿では、これら米国での先行研究を踏まえつつ、わが国の失業者の約4割を占めるに至った長期失業者について、その特徴や増加の背景、そして、マクロの賃金変動に及ぼす影響を整理する。

1 米国では、リーマン・ショック後の失業期間の長期化を巡って、一時的に行われた失業保険の給付期間延長がその一因となった可能性についても、定量的な評価には幅があるものの、活発な議論が行われている(Fujita(2011)、Farber and Valletta(2013)など)。
わが国の長期失業者の特徴

まず、わが国における長期失業者の基本的な特徴を、短期失業者と比較するかたちで確認しておく。2014年時点の失業者の属性をみると、短期失業者がいずれの性別・年齢階層別にも偏りなく分布しているのに対し、長期失業者は、「25〜44歳」の「男性」に大きく偏っている(図4)。こうした姿は、長期失業者が性別・年齢階層別に概ね偏りなく分布している米国と大きく異なっている。

図4:長期失業者の性別・年齢階層別の特徴

図4:長期失業者の性別・年齢階層別の特徴
また、こうした属性の偏りは、90年代以降の長期的なトレンドとして観察することができる。すなわち、長期失業者に占める男性の割合は、90年代以降一貫して7割程度で推移しており、短期失業者の男性割合(5割程度)を大きく上回るほか、男性の長期失業者に占める25〜44歳の割合も長期失業者全体の3割程度と、90年代以降一貫して高い。これと整合的に、わが国男性の就業確率(失業者が翌月に職を得る確率)は、90年代以降、趨勢的に低下してきた(図5)。なお、男性で25〜44歳の長期失業者は、90年代初めには6万人程度であったが、90年代および2000年代を通じて増加を続け、ピークの2010年には43万人、2014年時点でも31万人存在している。

図5:失業者の就業確率

図5:失業者の就業確率
長期失業者に男性が多い背景

なぜ長期失業者に男性が多くなるのだろうか。背景のひとつとして、労働市場における需給のミスマッチが挙げられる。わが国の労働需要は、製造業で低迷する一方、医療福祉業をはじめとするサービス業で増加傾向にあり、経済全体では、産業間での需要シフトが生じてきた(図6)。失業者が前職に近い職種を希望する傾向があることを踏まえると、かつて製造業に従事していた失業者が再び製造業で職を見つけることは、年々難しくなったと考えられる。実際、2014年時点では長期失業者の25%が製造業出身者となっている。製造業で男性労働者の比率が高いことを踏まえると、こうした需給のミスマッチは、女性に比べて男性の失業期間を長期化させた可能性がある。求人数と求職者数の産業別シェアの差から作成した産業間ミスマッチ指標をみても、長期失業者は、失業者全体に比べてミスマッチの程度がより深刻である様子がうかがえる(図7)。

図6:産業別の新規求人

図6:産業別の新規求人
図7:産業別の雇用ミスマッチ

図7:産業別の雇用ミスマッチ
また、製造業に比べてサービス業の非正規雇用比率が高い点を踏まえると、製造業からサービス業への労働需要のシフトは、正規雇用から非正規雇用への需要シフトも伴っていると考えられる。男性は、女性に比べて正規雇用を希望する割合が高いため2、正規雇用から非正規雇用への労働需要のシフトも男性の長期失業につながっている可能性がある。このように、長期失業者に占める男性割合の高さは、産業間あるいは就業形態間のミスマッチを映じたものである可能性が高い。

2 総務省「就業構造基本調査」(2012年)によると、求職者のうち正規の職員での就業を希望する割合は、女性26%に対して、男性は54%である。
長期失業者に若年層が多い背景

わが国の長期失業者は男性に偏ると同時に、20〜40歳代の比較的若年層が多い。この背景のひとつには、多くの若年失業者は同居している親から経済援助を受けており、比較的長い時間をかけて職を探すことが可能である点が挙げられる。実際、失業者に占める「世帯主の子」の割合をみると、2014年時点では短期失業者が40%程度にとどまる一方、長期失業者は50%を上回っている。また、独立行政法人労働政策研究・研修機構が2013年に行った長期失業者を対象としたアンケート調査によれば、39歳以下の長期失業者のおよそ半数が同居家族から生活費の援助を得ている。こうした同居者からの経済援助は、失業者の留保賃金(=これ以上になれば働いても良いと失業者が考える賃金の水準)を高め、失業期間の長期化に作用している可能性がある。

こうした若年層は、いわゆる「就職氷河期」(1993年から2005年までを指すことが多い)と呼ばれる時期に新卒として労働市場に参入した者が多い。太田・玄田・近藤(2007)によれば、この世代は、新卒で正規雇用として就業できなかった者が多く、オン・ザ・ジョブトレーニングによって人的資本が蓄積されなかったほか、新卒での就業経験の無いことが負のシグナルとして企業に認識されるなど、就業の障害となるような負の影響(履歴効果)を今なお受け続けている可能性がある。この点、長期失業者の年齢別割合をみると、90年代半ばに「25〜34歳」の割合が上昇し始めたあと、2000年代に入ってから「35〜44歳」の割合が上昇し始めている。こうしたラグは、この世代に固有の失業長期化要因が存在している可能性を示唆している。

長期失業が賃金変動に及ぼす影響

長期失業者の増加は、賃金に対してどのような影響を及ぼすだろうか。ここでは、賃金変動と長短失業率との関係(フィリップス曲線)を推計する。推計に際しては、短期失業率と長期失業率との間の強い共線性に対処するため(前掲図2)、性別・年齢階層別のパネルデータを用いることで変数間のバリエーションをある程度確保している3。

推計結果をみると、短期失業率にかかる係数が有意に負となる一方、長期失業率については負の係数が推計されるものの、統計的には有意にゼロと異ならない(表1)。こうした結果は、前節までの議論と整合的である。すなわち、わが国の長期失業者は、労働市場の需給ミスマッチや「就職氷河期」からの履歴効果などによって就業が困難になっていることから、労働需要の循環的な回復に伴う就業機会の拡大が見込みにくい。これにより、長期失業率は、短期失業率に比べて、賃金変動に及ぼす影響が限定的となっているとの解釈が考えられる。

3 Kiley(2014)やKumar and Orrenius(2015)も、長短失業率の共線性に対処するために、パネルデータ(地域別)を用いてフィリップス曲線を推計している。
表1:フィリップス曲線の推計結果

表1:フィリップス曲線の推計結果
ただし、マクロの賃金変動に及ぼす影響が限定的であったとしても、長期失業者の所得水準が先行きも長期にわたって低位に止まる可能性4や、人的資本が蓄積しないことによる成長率への影響については留意する必要がある。

4 たとえば、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行ったアンケート調査では、長期失業者の平均年収は、離職前には360万円程度だが、再就職後には240万円程度に減少するとの結果もみられている。
おわりに

本稿では、わが国の長期失業者の現状を整理したうえで、賃金変動に及ぼす影響について分析した。本稿の事実整理に基づくと、わが国の長期失業者は、若年男性に大きく偏っており、この傾向は、90年代以降一貫してみられている。こうした長期失業者の属性の偏りは、(1)産業間や就業形態間の構造的な需給ミスマッチ、(2)同居する親からの経済援助による留保賃金の高止まり、(3)「就職氷河期」から続く履歴効果などによって生じているとみられる。これらを踏まえると、わが国の長期失業者は、労働需要が循環的に回復したとしても、短期失業者と同程度に就業機会が拡大するとは考えにくい。このことは、長期失業者が短期失業者に比べて、労働市場の循環的な需給変化を反映しにくいことを示唆しており、実際、単純なフィリップス曲線の推計結果をみても、長期失業率は、短期失業率に比べて、賃金変動に及ぼす影響が限定的であった。ただし、賃金変動に及ぼす影響が限定的であったとしても、長期失業者の所得水準が先行きも長期にわたって低位に止まる可能性や、人的資本が蓄積しないことによる成長率への影響については留意する必要がある。

参考文献

太田聰一・玄田有史・近藤絢子(2007)「溶けない氷河―世代効果の展望」 [PDF 420KB]、『日本労働研究雑誌』、No.569.
独立行政法人労働政策研究・研修機構(2015)「長期失業者の求職活動と再就職状況」 [PDF 1.26MB]、JILPT調査シリーズ、No.133.
Dent, Rob, Samuel Kapon, Faith Karahan, Benjamin W. Pugsley, and Aysegul Sahin (2014) "Measuring Labor Market Slack: Are the Long-Term Unemployed Different?," Liberty Street Economics, Federal Reserve Bank of New York.
Farber, Henry S. and Robert G. Valletta (2013) "Do Extended Unemployment Benefits Lengthen Unemployment Spells? Evidence from Recent Cycles in the U. S. Labor Market," [PDF 583KB] Working Paper Series, Federal Reserve Bank of San Francisco.
Fujita, Shigeru (2011) "Effects of Extended Unemployment Insurance Benefits: Evidence from the Monthly CPS," [PDF 211KB] Working Papers, Federal Reserve Bank of Philadelphia.
Kiley, Michael T. (2014) "An Evaluation of the Inflationary Pressure Associated with Short- and Long-term Unemployment," [PDF 149KB] Finance and Economics Discussion Series, 2014-28, Federal Reserve Board.
Krueger, Alan B., Judd Cramer, and David Cho (2014) "Are the Long-Term Unemployed on the Margins of the Labor Market?," [PDF 927KB] Brookings Papers on Economic Activity, Spring 2014, pp.229-299.
Kumar, Anil and Pia M. Orrenius (2015) "A Closer Look at the Phillips Curve Using State-level Data," Journal of Macroeconomics, pp.1-19.
Linder, M. Henry, Richard Peach, and Robert Rich (2014) "The Long and Short of It: The Impact of Unemployment Duration on Compensation Growth," Liberty Street Economics, Federal Reserve Bank of New York.
日本銀行から

本稿の内容と意見は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab16j02.htm/


2. 2016年8月29日 13:34:03 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[592]

日銀次の標的は財投機関債か、経済対策支えるも「ますます困る」の声
呉太淳
2016年8月29日 00:00 JST更新日時 2016年8月29日 11:25 JST 

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財投機関債や地方債購入も議論の俎上にのぼる可能性−三菱モルガン
• すでに低下している利回りがマイナス圏に突入の可能性

日本銀行が、9月20−21日の金融政策決定会合で追加緩和策として財投機関債や地方債の買い入れに踏み切る可能性があるとの見方が市場関係者の間で出ている。日銀による財投機関債の購入は、政府の大規模な経済対策を進めるための資金調達を下支えする効果もある。
  野村BPIの地方債指数によると、日銀黒田東彦総裁が1月にマイナス金利導入を発表する前から、利回りは26日までに19ベーシスポイント(bp)下落し、0.09%となった。国債利回りがマイナス圏に沈む中、投資マネーの数少ない行き場となってきたのが背景だ。償還まで残存10年の高速道路機構の財投機関債の利回りは同期間に0.4%から約3分の1の0.13%となった。

黒田日銀総裁

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  日銀は9月の会合にて金融緩和政策の「総括的な検証」を行うとしており、多数の市場関係者が追加緩和を行うと予想している。日銀は国債に加え、企業の資金調達支援につながる普通社債や指数連動型上場投資信託(ETF)などをすでに購入しているが、財投機関債や地方債は買い入れ対象にはなっていない。日銀が財投機関債の購入に踏み切れば、安倍晋三首相が2日に発表した総額28兆円の経済対策を支えることにもつながる。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iR9SMYplWa9M/v2/-1x-1.png

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の宮嵜浩シニアエコノミストは電話取材で、9月の日銀会合で「財投機関債や地方債の購入開始も、議論の俎上(そじょう)にのぼる可能性が高い」と語った。さらに政府がリニア中央新幹線の開業前倒しなどにインフラ整備に力を入れる中で、財投機関債は「インフラ投資へのファイナンスを円滑にするという意味で、買い入れの対象にすることは、日銀としても合理的な判断だ」との見方を示した。
  日銀の広報担当者は、次回会合で財投機関債や地方債の買い入れを決定する可能性について、ブルームバーグの取材に対しコメントを控えた。
やがてマイナス利回りへ
  合計残高93兆円と、国債の約10分の1の規模にとどまる財投機関債や地方債の買い入れには、副作用を指摘する声もある。SMBC日興証券の伴豊チーフクレジットアナリストは、これらの債券の主要投資家である銀行は、マイナス金利政策の影響で国債や日銀当座預金の積み増しが難しくなる中で、「仕方なく地方債や財投機関債を買っているが、それが買えなくなったらますます困る」と語った。伴氏は同債券の利回りがマイナスになるとみている。
  大和証券の大橋俊安チーフクレジットアナリストも、地方債や財投機関債が購入対象になる可能性があるとみている。ただ「購入が始まれば日銀に高く売ることができるが、その影響で市場にはマイナス利回りの債券が増え、結果的に運用難となる投資家が増える」と述べた。
  財投機関債は、日本政策投資銀行、高速道路機構といった政府系機関が発行する政府保証が付かない債券で、地方債は地方公共団体による債券。
  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、日銀が「国債を買って、財投機関債は買わないという理屈はあまりない」と指摘。財投機関債と地方債はともに需要超過の状況が続いているが、「あまり発行されない物よりは、今後発行が増える物の方が買える余地がある」として、インフラ整備などで発行増の可能性がある財投機関債の購入がより合理的との見方を示した。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-28/OCJM1Z6JIJUX01 


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