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世界的「税戦争」から取り残される日本企業 日本企業が参加しない「タックスプランニング」という名の戦い
http://www.asyura2.com/16/hasan112/msg/830.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 9 月 07 日 01:26:37: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 


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世界的「税戦争」から取り残される日本企業


日本企業が参加しない「タックスプランニング」という名の戦い(1)
2016年9月7日(水)
ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業) 大河原 健 小垨 由紀子

 欧州委員会(EU)は8月30日、アイルランド政府が最大で130億ユーロ(約1兆4800億円)の違法な税優遇を米アップルに与えたとして、過去の優遇分や利息を追徴課税で取り戻すよう同国に指示した。その後、アイルランドはEUの判断を不服として欧州司法裁判所に提訴することを決め、米政府もこの決定を「一方的」と非難した。

 多国籍企業のタックスプランニングに対する風当たりが強まりつつあり、それに伴い、各社は立地を含めたグローバル戦略で難しい対応を迫られている。一方で各国は、健全な企業活動への目配りとともに、課税を巡る過度で不適切な地域間競争を防ぐうえでの取り組みが求められている。

 以前、スターバックスコーヒーの英国法人は3年間で約1500億円の売上があったものの、英国ではほとんど法人税を納めていなかったとのロイターの報道が大きな話題になった。これを機に、グーグル、アマゾンをはじめとする、スターバックスと同様の高度なタックスプランニングを行っている一部の多国籍企業への批判が高まり、OECD、国連、G20、各国が対処に本格的に乗り出した。こうした動きのなか、今回のアップルへの追徴課税の一件もあり、国際税務への注目は極めて高まっている。

多国籍企業はどのようにして税金を抑えているのか

 一般的に日本人は税に疎いというのは、よく言われることである。その理由としては、国民の多くが会社により予め税金分を差し引かれた給与を受け取る「サラリーマン」であること(痛税意識が低い)、真面目で勤勉な国民性から「お上」に従順で、納税を絶対的な義務と捉えていること(節税意欲が低い)、などが考えられる。

 このようなお国柄の日本では、最近、世界で著しく高まっている国際税務論争への興味や理解が進まないのも道理である。後述する国際税務論争では、国家の在り方(財源確保のための方法、権利と義務)、国と国との税収の配分に関する関係、多国籍企業の権利と義務に関して深く真剣な議論がされている。

 だが、日本では、残念ながら、「脱税」と「タックスプランニング(節税、とも訳せるが、厳密なニュアンスは節税とは異なる)」の区別も曖昧な状況である。未だに勧善懲悪の時代劇よろしく、税金をあまり納めていない企業は悪者だから許せない、やっつけるべきだ、という単純な議論から脱していない。

 マスコミも”税金をあまり納めない悪い企業”を吊し上げにすることで、視聴者・読者の溜飲を下げさせる、といった報道ぶりが多い。ほとんどの人は、このような報道に触れ、「この税金をごまかす、ズルい会社がもっと税金を納めてくれれば、この国の社会福祉の財源も増えて、私の生活も良くなるだろう」と思っていることだろう。しかし、ことはそれほど単純ではなさそうである。

 世界には非常に税率の低い国があることは、最近、広く知られるようになった。国際的なタックスプランニングは通常、そういった国の制度を活用して行われる。しかし、そのような国は、どうして企業から税金をもらわないでもやっていけるのか、税金を納めてくれない企業を誘致する動機はどこにあるのか、ということに思いを巡らしたことがある人は、案外少ない。

 本稿では、そもそも、多国籍企業はどのようにして税金を抑えているのか、低税率国は何のために税率を低くして多国籍企業を誘致しているのか、現在起こっている国際税務論争では何が話し合われているのか、そしてこうした潮流の下、日本企業はどうするべきなのかについて、順を追って論じていきたい。少々、長い記事になるが、最後まで読んでいただければ、国際税務の最前線が垣間見えてこよう。

国際的なタックスプランニングとは何か

 国際的なタックスプランニングを既存の日本語に訳すとすれば、「節税」が最も近いのかも知れない。しかし、それでは正確なニュアンスは伝わらない。だから、専門家は「節税」という言葉を用いず、外来語としてそのまま「タックスプランニング」を使うのだろう。両方とも厳密な定義がある訳ではないが、「節税」は税金の対象となる所得を少なくするため経費を増やしたりするイメージがあるのに対して、国際的タックスプランニングは、所得をどこの国に帰属させるかが中心となることが多い。

 タックスプランニングの話に入る前に、まず、税金の基本的な計算方法の確認から始めたい。簡略化すると、税金は、企業の売上から費用を引いた後の「所得」に対して課される。

【ケース@:前提となる税務処理】 
売上高100億円、費用80億円、税率30% →税引き後利益 14億円

 上記のケース@だと、売上高100億円の会社において、税金の計算上、費用として認められる「損金算入費用(材料費、人件費、研究開発費、広告宣伝費等の全てのコスト。ただし、一定以上の交際費等、税金の計算上、費用と認められないものは除く)」が80億円だったとすると、100億円から80億円を引いた残りの20億円の所得に対して税金が課されることとなる。

 日本の税率は2016年現在、約30%なので、20億円×30%で、6億円の税金を納めなくてはならない。最終的に企業に残る利益(税引き後利益。サラリーマンの手取りに当たる)は、売上高100億円−費用80億円−税金6億円=14億円となる。


【ケースA:旧来の節税例】
売上高100億円、費用90億円、税率30% →税引き後利益7億円

 ここで、この会社が税金を前述の6億円より少なくするために、旧来の節税を行おうとしたとする。例えば、費用を増やして課税される所得を減らすとしよう。仮に費用を10億円増やして90億円にすると、所得も10億円減るので、税金は半額の3億円になる。


 しかし、これだと、税金は減るものの、費用を余分に10億円も使うことになる。もちろん、使ってもいないコストを費用として計上したら、脱税でお縄となってしまうし、必要もないものに使ってしまえば、税金は3億円減っても、10億円無駄なコストがかかって、かえって損をしてしまう(余談だが、よく、自営業者は会社の費用につけられるからいい、と言う人がいるが、使ったうちの一部を取り戻せるというだけで、全部タダになる訳ではない。自営業者もサラリーマンも使えばお金はなくなるのである)。

 最終的にケースAで企業に残る利益(税引き後利益)は、売上高100億円−費用90億円−税金3億円=7億円となり、ケース@よりも少なくなってしまう。

 他にも節税の方法はあるが、基本的には、売上を小さくするか、費用を大きくするかのいずれかである。

【ケースB:国際的タックスプランニングの例】
売上高100億円、費用80億円、税率15% →税引き後利益17億円

 国際的タックスプランニングは、欧米、特に米国の企業が発達させた税コストの削減手法であり、その代表的な方法は、低税率国の利用である。

 ケースAで触れたように会社が国内で節税をして最終利益を増やすことは難しいが、この会社が税率の低い国で事業をして同じ所得を得た場合は、必然的に税金が低くなる。下記の例で言えば、所得はケース@と同じく20億円だったとしても、税率が半分になれば、当然、税金も半額となる。最終的にケースBで企業に残る利益(税引き後利益)は、売上高100億円−費用80億円−税金3億円=17億円で、三つのケースの中で最大となる。

 ここでは仮に日本の税率の約半分の15%としたが、世界にはもっともっと税率の低い国もある。そこで、グローバル展開する米系多国籍企業は、なるべく所得をこういった低税率国に集めるような仕組みをつくっている。もちろんこうした方策に対しては、後述するとおり、様々な規制があるが、一つ、重要なのは、こう言った多国籍企業は一般的に、タックスプランニングをしない企業よりもコンプライアンス意識は高く、徹底して、法の認める範囲でのプランニングを研究していることだ。


依然続く税率の引き下げ合戦

 現在の法人税率に関しては、世界的に二つの傾向が見られる。一つは、世界的に税率の引き下げ競争が続いていること、もう一つは、多国籍企業の本社を多く抱えているような国(主に先進国)では税率が高く、それ以外の国では税率が低い傾向にあることだ。

 タックスプランニングに最も熱心なのは米系企業であるが、税率が約40%と世界一高いのも米国である。日本も長年、米国と並び40%程度を維持してきたが、安倍政権下でこのところ毎年、法人税率を下げ、現在30%程度でドイツと同レベルにある。フランスは早くから約33%を採用しており、過去には比較的低い方であったが、税の引き下げ競争の進んだ今となってはむしろ、高い方に分類される。

 例外的なのはイギリスである。サッチャーの税制改革以降、一貫して税率を下げ、多国籍企業の誘致に励み、場所は提供してもプレーヤーは外国人ばかりというウィンブルドン現象が見られるのは周知のとおりである。イギリスの税率は現在20%だが、EU離脱により現在、英国に多数ある多国籍企業の欧州統括本部が他国に移転してしまうことを懸念して更なる引き下げを予定している模様である。

 一方、多国籍企業を誘致する側の国としては、アジアならシンガポールが代表的な国の一つである。シンガポールの税率は17%だが、実際には多くの企業に優遇税率を適用しており、5%あるいはそれ以下の税率が適用されている企業もある。ヨーロッパでは、今回アップルへの追徴課税をEUから指示されたアイルランドが低税率で知られ、12.5%を採用している。また、オランダやルクセンブルグも様々な税制上の優遇制度を設けて多国籍企業を誘致している。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/082900053/graph4.png

持てる国と持たざる国の戦い

 では、これら低税率国の狙いはどこにあり、どのような仕組みで税率を低くできるのだろうか。答えは、低税率国は、法人税以外の収入などを期待できるからである。

 多国籍企業がその国で事業を行ってくれれば、その国に雇用が生まれる。もちろん、ペーパーカンパニーでは雇用は生まれないが、現在の各国の税制では、事業実態のないペーパーカンバニーに利益を合法的に移転することは難しいので、多国籍企業が、低税率を享受するためには、事業実態も移転し、その国で設備投資や研究開発をしたり、ヒトを移したり、現地で雇ったりするのである。

 低税率国側とすれば、法人税は納めてくれなくても、ヒトを雇ってくれれば従業員から所得税をとれるし、失業保険受給者が減れば財政負担が減る。また、設備投資をしてくれれば、景気対策にもなるし、収入源となる無形資産を移転してくれたり、研究開発を現地で行ってくれればやがてその国の産業力の向上につながる。

 もちろん、国家財政にとって最も望ましいのは、高い法人税を課しても企業が多くの人を雇ってくれて、従業員からは所得税をとれることだ。実際、こういった自国の産業をあまりもたない小国が税率を下げ、優遇措置を導入して多国籍企業を積極的に誘致しだす以前は、日本やアメリカといった多国籍企業本社を持つ国は、企業に高い法人税率を課して高い税収を得ていた。日米は長い間、約40%という世界最高レベルの高い法人税率を維持していたのである。

 しかし、多国籍企業を誘致する国が増えた昨今、日米も安穏とはしていられなくなっている。後述する「移転価格税制」を整備したり、OECDで多国間での国際税務に関するルール作りをしたりして、本来、国内で課税できるはずの所得が国外に流出しないように(すなわち、自国の税収が他の国に取られないように)努力せざるを得なくなってきた。

 先進国政府は本音では、自国の企業がグローバル市場で稼いできてその利益に対する税金は自国で納めて欲しいと思っている。対して、消費マーケットとなる新興国は、現地で商売をするなら現地のヒトを雇って、現地で税金を納めて欲しいと願っている。

 国際税務論争は、課税所得(法人税)と雇用(所得税、及び、社会福祉コストの軽減)を目的とした多国籍企業の誘致合戦に係る論争でもあり、多国籍企業本社を有する経済力の強い「持てる国」と、産業力・経済力に乏しい「持たざる国」との税の取り合い論争でもある。

国際税務論争の現状

 ここで、現在、国際税務に関してどのようなルールがあるのかを確認してみたい。

(1)移転価格税制

 まず、各国が定める「税法」がある。これは、国内法であり、原則として、その国で収入を得た会社は、どの国の会社でも対象となる。なかでも、国際税務にとって重要な税法は、「移転価格税制」だ。

 移転価格税制とは、タイの工場で作ったクルマをアメリカの親会社に売るといったように、多国籍企業がグループ内で国際的な取引を行う場合に、その取引価格を、取引相手が第三者であったならつけたであろう価格(独立企業間価格)にしなくてはならないという規則だ。タイの工場の例で考えると、タイからの輸出価格を高くすればタイ工場が儲かって、逆に安くすれば、アメリカの親会社が儲かることとなる。


 すなわち、取引価格を上下させることで、利益がタイからアメリカに(あるいはその逆に)移るのだ。そこで、タイとアメリカに税率の差があれば、企業としては、税率の低い方に利益を寄せたいという動機が生まれる。グループ企業であることを生かして、そのような利益移転をすることを規制するのが移転価格税制だ。

 この税制により、グループ内の会社がそれぞれ、どのような役割(機能)を果たし、どのようなリスクをとっているかが詳細に分析され、各会社のあるべき所得の取り分(課税所得)が計算される。あるべき所得(独立企業間利益)よりも申告した所得が少ないと、移転価格税制により、あるべき所得との差額分を課税されてしまうのだ。この法律は、多少の違いはあっても現在ではほとんどの国で導入されている。

(2)タックスヘイブン対策税制

 国際税務のもう一つの要となる法律として通称、「タックスヘイブン対策税制」がある。これも多くの国で国内法として導入されており、税率が低い国に子会社があった場合、その課税所得を親会社で合算して課税する、というものだ。例えば、日本の会社が税率12.5%のアイルランドに子会社を持っていた場合、アイルランドの利益も日本の親会社で課税されるという仕組みだ。


 なんだ、それなら、低税率国に会社を作っても税金が減らないじゃないか、と思ったかもしれない。しかし、これには適用除外規定があり、低税率国の子会社にしっかりとした事業実態がある場合には課税はされない。

 移転価格税制とタックスヘイブン対策税制に共通する考えは、低税率国で実際にそれだけの利益が上がる合理的理由(事業実態)がなければ、そういった国に利益を付け替えることは認めないというものである。逆に言えば、低税率国にそれだけの事業実態があれば、税金の支払いが少なくてもどこの国も文句は言えないのである。

(3)租税条約
 続いて、国際税務のルールには「租税条約」がある。これは、国と国との条約で、両国に関係する税の問題をどのように対処するかを決めるものだ。「租税条約」は国内法である「税法」よりも通常、優先適用される。

 例えば、日本の税法では、技術使用料などのロイヤルティを支払う際には、支払う側が先にそのロイヤルティの額から税金分を差し引いて(源泉徴収)支払い、それを税金として納めることになっている。しかし、日米租税条約の下では、日米間でロイヤルティの支払いをする際は、源泉徴収額はゼロとなる。

 国際税務に関して明確な強制力のあるルールは、上記の「税法」と「租税条約」だけである。しかし、その他に、日本などいわゆる、先進諸国を中心に構成されるOECDは、国際税務に関する指針(ガイドライン)を出している。OECD加盟国は、国内の税法を決める際にこのガイドラインを尊重しているし、非加盟国も参考にしているので、OECDガイドラインは国際税務ルールづくりに対して大きな影響力を持っている。

*9月8日公開予定の「海外企業に比べ多額の税を払う日本企業のなぜ?」へ続く。

【著者プロフィール】


大河原 健(おおがわら・けん)
ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)移転価格・経済分析グループ代表
国際税務・移転価格の黎明期である1990年代初頭より、数々の日系・外資系企業にアドバイスを提供。国内外の著書、寄稿及び講演多数。日本における本分野の第一人者として国内外の多国籍企業からの信任が厚い。学習院大学非常勤講師。博士。


小垨 由紀子(こもり・ゆきこ)
ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)移転価格・経済分析グループ シニア・ディレクター
20年以上の経験をもつコンサルタントとして、多国籍企業における様々な移転価格問題に従事。サービスやロイヤルティといった無形資産取引や、グローバルな組織再編に伴うタックスプランニングを多く手掛ける。

このコラムについて

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急速に変化を遂げる経済や社会、そして世界。目に見えるところ、また見えないところでどんな変化が起きているのでしょうか。そうした変化を敏感につかみ、日経ビジネス編集部のメンバーや専門家がスピーディーに情報を発信していきます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/082900053  

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コメント
 
1. 2016年9月07日 12:15:24 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[2601]

日本の企業というより国民の意識が低すぎるということだろうな

まだ共産主義レベルの低知能が多い

そして、世界も似たようなものだから

種としてのヒトの限界ということだろう


生態系の持続にとって非常に有害だし、

いずれ淘汰されるのも必然ということだな


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