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衰退するたばこ産業で、乾坤一擲の大勝負 本業に懸けたフィリップモリス、IQOSが爆発的ヒット(JBpress)
http://www.asyura2.com/16/hasan113/msg/599.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 9 月 26 日 00:34:10: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

受動喫煙はペットにも悪影響との研究もある。写真はロシアの首都モスクワで、マスクを着けて散歩する小型犬〔AFPBB News〕


衰退するたばこ産業で、乾坤一擲の大勝負 本業に懸けたフィリップモリス、IQOSが爆発的ヒット
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47936
2016.9.26 大島 七々三 JBpress


■登場以来、急激にユーザーを増やしているIQOS

 今年7月、都内のたばこ店で「30日、IQOS入荷!」と赤字で書かれた紙が張り出される光景が目についた。生産が追いつかず店頭から姿を消しているIQOSの入荷日を、愛煙家たちに広く知らせているのだ。

 2年ほど前から、斜陽産業と言われて久しいたばこ業界がにわかに活気づいている。

 2014年11月、フィリップ モリス インターナショナル(PMI)が、20年の歳月と20億ドル(約2000億円)という巨費を投じて開発した「IQOS」を、世界に先駆けて日本の名古屋で試験的に販売した。

 以来、愛煙家の注目を集め、9980円という高額な商品であるにもかかわらず飛ぶように売れているのである。

 名古屋での好調ぶりにフィリップ モリス ジャパン (PMJ)は、2015年9月1日、全国12都道府県での販売を開始。そして今年の4月18日から全国47都道府県で販売を始めたのだ。

 販売促進のために発行した4600円オフクーポン(2016年9月現在は3000円オフ)の効果もあり、販売スタート直後からPMJが想定していた以上のペースの売れ行きが続き、瞬く間に店頭から姿を消してしまった。それからは生産が間に合わない状態が数か月も続いている。

     
      PMJが世界に先駆けて日本で発売した「IQOS」

 かつての人気ゲームソフトや新型「iPhone」の発売時のように、ユーザーが次の出荷日を待ち望んでいるのだ。

 それもそのはず、PMJによれば、東京地域でのIQOSユーザーは、発売後1年を待たずに、全喫煙者の5%に達している。1万円弱という価格を考えれば、PMJもこれほどのハイペースで売れるとは想定していなかったのだ。うれしい悲鳴を超え、せっかくの好機に商品を打ち出せないジレンマの中にいる。

 こうした状況をPMJはどのように感じているのだろうか。PMJのポール・ライリー社長は「フィリップモリスに入社して今日までの28年のキャリアの中で、これほどうれしく、エキサイティングな日々はなかった」と喜びを素直に語る。

 というのも、IQOSが東京で発売された昨年9月から今年6月までに、全たばこ銘柄のうち約5%のシェアを獲得しているからだ。これまで新銘柄を投入して年間で0.4%のシェアを獲得できたら、お祝いのパーティーをしていたというから、5%という数字は桁違いである。

 しかも、世界中で規制される対象であり、数十年にわたって生産本数を減少させてきたたばこ産業にとって、これほどの成長は奇跡と言っていい状況なのだ。

 IQOSとは、いかなる製品なのか。ここで簡単に解説しよう。

 IQOSは、従来のたばこの長さの2分の1程度の「ヒートスティック」を、細長い「ホルダー」に差し込み、スイッチを入れて加熱したものを吸い込む“喫煙”用具のことだ。と言っても、煙も匂いも発生しないので、正確には喫煙という表現は当てはまらない。強いて言うなら“吸引用具”と呼んだ方がいい。

 形状だけを見ると、IQOSは電子たばこに似ているのだが、根本的に違うものだ。既存の「電子たばこ」は、香りを含んだ液体をスティック状の本体に注入し、それを電子装置で熱して蒸気を発生させるものである。

 欧米では、そのリキッドにニコチンを含ませたものが販売されているのだが、日本では医薬品医療機器等法(旧薬事法)の規制によって販売できない。したがって日本で販売されている電子たばこにはニコチンが全く含まれていない。たばこを吸う動作は同じでも、喫煙者にとっては、いわば「気休め」でしかない。

 一方、IQOSは、従来の紙巻きたばこと同等にニコチンを摂取することができる。紙巻きたばこ同等にニコチンを体内に吸収した際の「感覚」を得られるところが、電子たばことIQOSが根本的に違うところである。

     
      PMJのポール・ライリー社長

 しかもIQOSは煙が出ない。匂いも従来の紙巻きたばこと比較すればほとんどない。そのうえ紙巻きたばこに含まれる有害物質のおよそ9割がカットされる。こうした点にIQOSの革新性がある。

 なぜIQOSではニコチンが摂取できるのか。その理由は、ホルダーに差し込む「ヒートスティック」に本物のたばこの葉が使用されているからだ。それをホルダーで一定の温度に加熱する構造になっている。

 煙が発生しないのは、ホルダー内でヒートスティックを燃焼させるのではなく、加熱するだけだからである。燃やさないから煙は発生しない。

 しかしそこから発生する蒸気を吸引すればしっかりとニコチンが摂取できる。それが紙巻きたばこと同じ感覚でニコチンが得られる仕組みなのである。

 吐き出した時にかすかに白い煙状のものが出るが、その成分のほとんどは蒸気で、わずかにニコチンが含まれる程度。それも、たばこを吸う感覚に近づけるために、あえてグリセリンを含ませて息を白くしているという。もちろん加熱するだけだから、灰も出ない。

 これまで喫煙者が周囲の非喫煙者から嫌がられてきた「煙」「匂い」「灰」「火」という4つの要素を消し去り、ニコチンを体内に摂取した時のあの独特の陶酔感をそのまま味わえるという画期的な製品なのである。


■「背水の陣」から生まれた画期的技術

 たばこが人体に悪影響を及ぼすと同時に、またその煙が非喫煙者の健康にも悪影響を及ぼすことが医学的にも明らかになってからというもの、社会からたばこを締め出す風潮が世界的に広まっている。

 オフィスや飲食店、公共施設では当初、分煙化が進んだが、やがて完全禁煙へと切り替わる中で、街中でたばこを吸える場所は極端に減っている。同時に、喫煙率は急速に低下していった。こうした社会背景の中で、かつて昭和40(1965)年には成人男性の喫煙率は80%を超えていたが、50年後の現在では30%ほどに低下している。

 こうした社会の動きによって窮地に立たされたのが、たばこメーカー各社である。それまでたばこは大人の「嗜好品」として確固たる地位と文化を築いてきたが、健康志向の高まりによって社会から締め出される立場になってしまった。

 産業の存在する意味まで問われるようになり、後は衰退そして消滅のプロセスをたどるだけという事態に追い込まれていたのだ。

 そうした中で最も危機感を抱いていたのが、「マールボロ」「ラーク」「バージニア・エス」などのブランド銘柄で知られる世界最大のたばこメーカー、フィリップ モリス インターナショナル(PMI)である。

 PMIがIQOSを含むRRP(Reduced Risk Products:リスクを低減する可能性のある製品)の開発に着手したのは、今から20年も前に遡る。世界的な規制強化の波を受け、既存商品がやがて世界の市場から締め出される日は確実に来る、というとてつもなく大きな危機感のもと、「背水の陣」で臨んだ開発プロジェクトだった。

     
      「ヒートスティック」はレギュラー、バランスド レギュラー、メンソール、ミントと4種類のフレーバーが販売されている

 「当時の経営陣が数十年後の未来のために、たばこの歴史を塗り替えようと難しい決断をし、それを実行に移したことを誇りに思います」(ポール・ライリー社長)

 PMIはこの自社存亡をかけた開発に2000億円という巨額の費用を投入。10年前にはスイスの西部にあるヌーシャテルという工業都市の一角に開発拠点を建設し、ここでたばこ産業にイノベーションを起こすRRPの開発に取り組んできた。

 同じ頃、日本のJTは新しい経営基盤を模索するためにバイオ関連事業など、異業種参入に積極的に乗り出したが、PMIは真正面からたばこの健康リスク解消に全社を挙げて挑んでいった。

 それは「健康リスクをなくす喫煙」という夢物語への挑戦であり、同時に彼らの誇りだった「マールボロ」「ラーク」などの主力製品の寿命を自ら絶つ取り組みでもあった。


■20年、2000億円を投じて開発された熱制御技術

 スイス・ヌーシャテルの開発施設は、サイコロのような建物の形状から「Cube」と呼ばれている。このCubeには、生命科学分野の科学者から電化製品の技術者まで、世界各国から集められた幅広い分野の専門家、研究者が300人以上集められた。

 ここでの最大の研究課題の1つは、たばこ葉を燃焼させることなく熱する技術の開発だった。もう1つは、製薬会社と同レベルの人体への影響を調べる試験、データ収集、分析方法の構築である。

 なぜ、燃やさず熱する技術の開発が必要だったのか。PMIの独自の調査・分析によって、たばこに含まれる有害物質の大半が、たばこ葉を燃焼させた時に発生するタールに含まれることがわかっていたからだ。

 たばこは燃焼させなければ、ほとんどの有害物質をなくすことができるということが分かっていたのである。Cubeにおける開発プロジェクトの成否は、この1点にかかっていたと言っても過言ではない。

 IQOSは、電気で加熱するヒーターが内蔵されたホルダーと、たばこ葉が詰まったヒートスティックに分かれている。使用する際には、ヒートスティックをホルダーの「加熱ブレード」に差し込み、後はスイッチを入れるだけだ。

 「加熱ブレード」はプラチナと金でできており、そこにセンサーの役割を果たすマイクロチップが組み込まれている。それにより外部の環境に合わせて摂氏300〜350度に温度が維持される。

 たばこ葉を加熱して香りを出すには、葉の温度を250度まで上げる必要があるが、熱し過ぎれば燃焼してしまう。

 燃焼させず本来のたばこの味を出すギリギリの高温を維持するために、センサーがたばこ葉の温度を感知し、外部の温度や吸引の強さなどに合わせて、常に300〜350度の最適な温度に制御する必要があった。PMIはその技術の開発に成功し、ホルダー内部に搭載している。

 一方、ヒートスティックにも工夫が施されている。常に同じ味わいを出すためには、たばこ葉を均一に温める必要がある。だが、たばこ葉を刻んだ状態では均一に温まらない。

 そこでヒートスティックは、たばこ葉を粉にしたものをペースト状にし、さらにそれをシート加工して、渦巻き状に巻いた状態になっている。これで均一に熱が行き渡るようになった。

 さらに、これらの機構を備えた装置を小型化するために、ホルダーに組み込むリチウムイオン電池を大手家電メーカーと組んで独自に開発する必要もあった。

 これらの技術を20年の歳月をかけて開発、紙巻きたばことほとんど変わらない味と、ニコチンの取り込みを実現するとともに、紙巻きたばこを吸うときと同じ動作とスタイルで使用できるものにした。


■IQOSが示した予想以上のデータ

 PMIの非臨床試験評価では、IQOSで加熱した「マールボロ ヒートスティック」から発生する物質(たばこベイパー)に含まれる有害および有害性成分の量は、紙巻きたばこの煙に含まれる量に比べて9割が削減されていることが分かっている(有害物質54種類の平均削減率が9割を超える)。

 厚生労働省の外郭団体も調査中だが、PMIの数値と近い結果が得られており、客観的な裏づけが得られるのも時間の問題のようだ。

 またPMIでは、体内での一酸化炭素やベンゼン、ブタジエンなど有害物質の低減を調べる臨床試験も実施している。

 その結果、紙巻きたばこからIQOSに切り替えた被験者の体内有害物質量は、禁煙を始めた被験者がたどる経過とほぼ同じ削減傾向を示す結果が出ている。病院での5日間の実験と、自宅での85日間の実験が行われているが、いずれも同様の結果が出ているのだ。

 つまり、IQOSを使用すれば、ニコチンを摂取していても、禁煙しているのと同じ効果が表れるわけだ。

 これほどの結果が出ることを、開発を始めた当初からPMIでは予想していたのだろうか。

 「もし燃焼に至るギリギリのところまで温度を上げても燃えない装置を開発できたら、この結果は出ると予想していました。たばこの有害物質のほとんどは、たばこを燃やすことから発生すると分かっていたからです。測定数値には満足しています」(ポール・ライリー社長)

 これらの臨床、非臨床実験に関して、PMIでは製薬会社が新薬を開発する際に行われるのと同程度の精密さでデータ分析を行うため、ノバルティスファーマなど、実際に製薬会社で開発に携わっている技師や研究者を採用して、より有効な実験と正確なデータ分析を行う体制を整えた。

 もう1つ気になるのは、副流煙による周囲への健康リスクだが、IQOSは葉を燃やさないので、ヒートスティックを温めている状態でも全く煙を発生しない。さらに、IQOSを使用している人が吐き出す息も、「その成分のほとんどが蒸気で若干のニコチンが含まれる程度。実験の結果、有害物質はほとんど検知されなかった」(PMJ広報室)という。

 実を言うと、筆者も喫煙者で、この取材時にIQOSを体験した。「マールボロ ヒートスティック・メンソール」を1本吸ってみたところ、若干、香ばしさが匂うものの、メンソールの味わいが口の中に広がる感覚は、通常のメンソールたばこと同じだ。

 肝心の、ニコチンを摂取した時に感じる、頭がくらっとするような、独特の感覚はどうか。肺に届くように吸ってみたところ、これまで吸っていた紙巻きたばことほとんど同じ感覚を得ることができた。

 息を吐き出すと、薄く白い煙状のものが出てくる。ただし、その煙状のものはやがて霧のように拡散し、空中に消えてなくなった。匂いは、ほのかにポップコーンに似た香ばしい匂いが漂うが、紙巻きたばこを吸った時のような、鼻をつく匂いがいつまでも部屋中にこもり続けるようなことはない。

 IQOSが温度を制御しながらヒートスティックを温め続ける時間は、ホルダーのランプが教えてくれる。ホルダーに「ヒートスティック」を差し込んだ後、ボタンを押すとランプが緑色の点滅を始める。

 10秒ほどで点滅から点灯に変わり温め完了。吸引オーケーの合図だ。もし吸引をしなくても6分間そのままの状態が保たれる。吸う場合は14服ほどできる設定になっている。

 バッテリーが残り少なくなると、緑のランプがオレンジ色に変わる。あと30秒か、2服で切れるサインだ。オレンジのランプが消えると、そこで1回分が終了。もう1本吸いたい場合は、チャージャーでバッテリーを充電する必要がある。1回分の充電時間は、2〜3分だ。

 1本分吸ってみた感想として、紙巻きたばこを吸った時に比べて多少の物足りなさを感じるのは確かだ。だからと言って全く吸い足りないかと言えば、そうでもない。十分なニコチン体験はできる。

 おそらく物足りなさの原因は、煙に含まれる有害物質の雑味がなくなり、味にパンチがなくなったからだろう。だが、それなりの満足感は味わえる。

 「今の紙巻きたばこの喫煙者が、この製品に切り替えるには、今までと同じ仕草で、同じような味と満足感をもたらすものにするところが最も重要な課題であり、実現に時間を要したところです。様々な分野の専門家が知恵と技術を持ち寄って工夫した結果、実現することができました」(ポール・ライリー社長)

 実際に本当に健康リスクが軽減されるのか。現在のところPMIとしてはニコチンは有害ではないという前提に立ってはいるが、本当にニコチンが健康リスクにならないのか、副作用はないのか、といったことは、新薬開発と同じで、今後少なくとも20年くらいの臨床実験の結果を待たなければならない。そういう意味では、息の長い開発だ。

 だが、PMIは未来がないと言われたたばこ産業が存続する道筋をつけたことは確かだ。「背水の陣」で生き残りをかけた開発に成功し、喫煙で有害物質を大幅にカットするという「夢物語」を実現してしまったのだ。

 PMIでは今後、すべての紙巻きたばこ製品をIQOSを含むRRPに切り替えていく方針を打ち出している。当然ながら、その中には「マールボロ」「ラーク」といった世界中の愛煙家に長く愛されてきたブランドも含まれている。

 PMIは、IQOSを開発するときに、自社の主力ブランドの歴史に自ら終止符を打ち、新しい歴史を作る選択をしていたのだ。


(つづく)



 

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