OPEC合意、原油上昇もたらさない5つの理由
By RIVA GOLD AND GEORGI KANTCHEV
2016 年 9 月 30 日 14:45 JST

　石油輸出国機構（OPEC）が28日、減産が必要だとの認識で一致したことから、原油相場は一時急伸した。2014年に原油が弱気相場に入って以降、OPECが大きな合意に至ったのは今回が初めてだ。しかし、意外な結果にもかかわらず、ゴールドマン・サックス、ソシエテ・ジェネラル、ジェフリーズ、UBSといった多くの大手金融機関は、今後数カ月の原油相場見通しを変えていない。

　以下、原油相場の上昇が続くとの見方を疑うべき理由を5つ挙げた。

1. 正式決定前に合意が崩壊する可能性

　OPEC加盟国は11月末の次期総会を待って詳細を議論する予定だ。今のところ、生産抑制に向けた正式な案は発表されておらず、目標達成の手段に関する詳細はほとんどわかっていない。

　これは、加盟国が各国の生産割り当てで合意しなくてはならないことを意味する。減産を免除される国や、最大の減産を引き受けるべき国についても合意が必要だ。これらの点が妨げとなって減産計画が脱線したことも過去にはあった。アナリストらは既に、イラクが自国生産量に関するOPECの推計を受け入れない可能性があるとの懸念を抱いている。一方、イランは、生産が一定水準に達するまでは減産を免除してほしいと要求する見通しだ。

2. 減産実現でも、供給過剰に比べればわずか

　OPECは全体の生産量を8月の日量3320万バレルから3250万〜3300万バレルに減産することを提案した。削減幅は、08年の減産合意に比べるとごくわずかだ。

　国際エネルギー機関（IEA）の試算からすると、3300万バレルまで減産した場合でも、需給は17年下半期まで一致しないとみられる。

　しかも、一部アナリストは、実際の減産がずっと小幅にとどまる可能性は大いにあるとみている。ソシエテ・ジェネラルのストラテジストらによると、これは、ちょうど生産が回復し始めたイランとリビア、回復しかけているナイジェリアに大きく左右される。

3. 過去の割り当てはあまり順守されていない

　各国に生産割り当てを順守させる方法はまだ発表されていない。アナリストらによると、割り当てはこれまであまり守られてこなかった。特に原油需要が旺盛な時はそうだった。

　だが需要は弱く、在庫水準は高く、原油相場は依然低迷しているため、主要生産国が割り当てを守る動機は十分にあるとの声も聞かれる。

4. 正式決定前に駆け込み増産も

　正式決定は早くても11月30日までなされず、そのため現在の生産は影響を受けない。

　一方、UBSによると、原油在庫は今年10-12月期（第4四半期）に増加する見通しだ。同期には、中断していた生産分が市場に戻る可能性もある。

5. OPEC非加盟国が台無しにしかねない

　原油相場上昇で世界的に増産が促され、コストの高い生産者が予想より早く生産を再開すれば、コストの低い産油国による減産決定は逆効果になるかもしれない。

　アナリストらは、原油相場が1バレル＝50ドルを超えれば米国のシェール生産会社が掘削を再開しそうだと話した。技術の進歩を受けて生産コストは低下が続いている。

　ゴールドマン・サックスのストラテジストらは、OPECによる1987年の減産が、OPEC非加盟国の陸上リグに生産回復をもたらしたことに言及し、「今回提案された削減が厳密に実行されて相場の支援材料になれば、世界中で掘削の動きが広がり、中期的には自滅ということになるとみている」と述べた。

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ＯＰＥＣ「降伏」でも米シェール企業にとって依然課題残る
Alex Nussbaum、Joe Carroll
2016年9月30日 10:06 JST

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• 米国の原油価格とシェール企業の株価は29日に続伸
• シェール企業が支出増やすには原油価格が数カ月50ドル上回る必要
石油輸出国機構（ＯＰＥＣ）はついに２年に及ぶ米シェール企業との価格競争から身を引いた。それが米シェール業界にとって最終的な勝利なのかどうかは現時点では分からない。
　　ＯＰＥＣが８年ぶりに減産を決定した翌日の29日、原油価格と米シェール企業の株価は続伸した。Ｓ＆Ｐグローバル・プラッツやオッペンハイマーなどのアナリストらによれば、米シェール企業が支出を増やすためには、原油価格が数カ月にわたって１バレル＝50ドルを上回る水準を維持する必要がある見通しだ。
　　オクラホマ州の新規油田スクープとスタックなどの米国の油井数千カ所に投資する非上場のウォーリック・エナジー・グループのキャサリン・リチャード最高経営責任者（ＣＥＯ）は、ＯＰＥＣの予想外の発表は、米シェール企業に対する「降伏」を意味していると指摘する。これらの企業は、ＯＰＥＣが予想していた以上に駆逐するのが困難であることが分かった。
　　リチャードＣＥＯは電話インタビューで「ＯＰＥＣは『原油価格が40ドルや50ドルの水準では経済成長も財源の確保も不可能』と主張している。これは米国の状況とは正反対だ。パーミアン盆地やスクープとスタックのリターンは20％を上回っている」と述べた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i13lZetVBkLY/v2/-1x-1.png
　　ＯＰＥＣの決定を受け、原油価格は29日、１カ月ぶりの高値を付けた。ニューヨーク市場のウェスト・テキサス・インターミディエート（ＷＴＩ）原油は前日比1.7％高の１バレル＝47.83ドル。28日には5.3％上げた。ブルームバーグ・インテリジェンス独立系探査生産・基本事業指数によれば、米シェール企業の株価は、アプローチ・リソーシズやサンドリッジ・エナジーがけん引し29日に２％上昇。28日には8.3％値上がりした。
原題：OPEC ‘Capitulation’ Still Leaves Hurdles for U.S. Shale Drillers（抜粋）
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-09-30/OEAJ4Q6KLVRI01

イラクがOPEC統計に疑義、減産合意に影
By SUMMER SAID, BENOIT FAUCON AND SELINA WILLIAMS
2016 年 9 月 30 日 13:25 JST

　石油輸出国機構（OPEC）が28日に原油生産量の削減で暫定合意に達した直後、減産計画の詳細を詰める上での大きな課題が浮き彫りになった。減産に消極的だったイラクが、OPECが普段から利用している産油量データの信頼性に疑義を唱えたのだ。

　28日の合意は原油相場を押し上げたが、そこでは減産計画の概要が示されたにすぎなかった。OPECは8月時点で日量3320万バレルあった産油量を同3250万?3300万バレルに削減する計画だ。

　計画では国別の減産規模は明示されていない。しかも、詳細が決まるのは11月以降のため、それまでに計画が頓挫する余地は十分にある。

　この数カ月は、OPECが減産で合意するにはイランとリビアの生産回復が最大のハードルになると思われていた。だが事情に詳しい関係者によると、OPECが国別の生産量を決める際にいつも参考にしている産油量データに異議を唱え、28日の合意実現を阻みかけたのは、イラクだった。このデータはイラクの実際の生産量を過小に報告している、というのがイラクの主張だ。同データは独立系アナリストが収集している。

　イラクのルアイビ石油相は、このデータに基づくと（OPEC全体の生産量に占めるイラクの生産量の割合が小さくなり）OPEC全体の生産枠からイラクに割り当てられる量が減ると指摘。関係者によれば、OPECの事務局長が国別の生産量を評価する委員会の設置を提案すると、ルアイビ石油相はようやく減産に同意したが、イラクの生産量が期待通りの数字にならなければ11月の次回総会での途中退席も辞さない考えを示した。

　ルアイビ石油相は29日のインタビューで、「国益に配慮する必要がある」とし、同データと実際の生産量の差は「大きい」と指摘した。

　イラクという障害は、減産合意に向けたこれまでの取り組みに水を差すものとなっている。28日の減産合意は、長年対立しているサウジアラビアとイランが、イランを減産対象から外すことで合意したためようやく実現したものだ。

　OPEC関係者らは28日、リビアとナイジェリアも特例扱いとなりそうだと述べたが、それが具体的に何を指すかは明らかにしなかった。

　イラン、リビア、ナイジェリアの3カ国が日量で150万バレルもの増産を試みているため、他のOPEC加盟国にとって減産はさらに重い負担となっている。

　イラクには、数十年にわたり生産が停滞している状況から脱したいという思惑もある。

　OPEC内で何年も地味な存在だったイラクは、数十年に及ぶ経済制裁、怠慢、戦争が同国の原油産業に及ぼした打撃が考慮され、減産が免除されていた。ところがこの数年は新規投資によってイラクの生産が拡大し、米国でのシェール原油生産拡大に伴う世界的な原油供給過剰に拍車を掛けた。

　OPEC加盟国は今後、イラクの減産免除要請を認めないとみられる。イラクは現在、同国が独自にまとめた生産データを基準に減産に関する決定を下すようOPECに働き掛けている。イラクは今年に入り、同国の生産量は2次情報源（複数の報道機関など）から提供されたデータよりも多いと一貫して報告してきた。OPECのデータによると、その差は日量17万9000バレル?40万バレル近くに及ぶ。

　スイスのコンサルタント会社ペトロマトリックスのマネジングディレクター、オリビエ・ジェイコブ氏は、イラクの主張が通れば他の加盟国も自国の生産データに異議を唱える公算が大きいとし、そうなればOPECは約束に反して減産を実現できないかもしれないと述べた。

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ＯＰＥＣ減産合意で露ルーブル上昇、大統領の警戒水準に−チャート
Ksenia Galouchko
2016年9月30日 11:01 JST

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i3vNhD_nuOkE/v2/-1x-1.png

　　石油輸出国機構（ＯＰＥＣ）による28日の予想外の減産合意を受け、世界最大のエネルギー輸出国ロシアの通貨ルーブルは1.3％上昇し、１ドル＝63ルーブルとなった。前回ルーブルがこの水準となった際は、ロシアのプーチン大統領が首相に対し、通貨高を注視する必要があると警告した。この発言をきっかけとして、その後２週間でルーブルは６％下落した。
原題：OPEC Nudges Ruble to Level That Sparked Putin Warning: Chart（抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-09-30/OEALWS6KLVRB01

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