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「人民元、SDR入り」で何が変わるのか 中国の野望 華僑は我慢しないのに「イラっとしない 産業革新機構の存在自体が矛盾だ
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 10 月 05 日 04:33:19: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

「人民元、SDR入り」で何が変わるのか

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス

「ドルに取って代わる」中国の野望の行く先は
2016年10月5日(水)
福島 香織
 中国の人民元がSDR(特別引出権)入りを無事に果たした。人民元のSDR入りは、為替市場の自由化、透明化など改革推進が交換条件だったはずだったが、実際のところその条件はまだ満たしていない。それでも加入させるとは、IMF(国際通貨基金)は中国に対しよほど寛容であるということなのか。それとも、その方が国際金融にとって“お得”なのか。

 人民元SDR入りで、いったい何が変わるのかは気になる。中国内外で報じられている分析を少し整理してみたい。

「世界金融支配」への第一歩

 IMFの加盟国に対し、出資額に比して配られ、通貨危機に陥った際には外貨に交換できる仮想通貨「SDR」。従来は米ドル、ユーロ、円、英ポンドが構成通貨であったが、ここに5番目の通貨として人民元が加わることになった。構成比率はドル、ユーロに続く10.92%で日本の8.33%を上回る。現実にはSDR入りしたからといって、各国中央銀行がすぐ外貨準備高として人民元保有を増やすようになるとか、人民元に対する信用が一気に上昇するというわけではないだろう。なぜなら、人民元は今なお、制限なく自由に外貨と兌換できる通貨ではないし、その相場は市場原理ではなく政府の介入によってなんとか安定しているからだ。

 米国はこれまでも、たびたび、中国を為替操作国と批判してきた。大統領選共和党候補のトランプ氏は、当選の暁には中国を為替操作国認定する、と言明している。SDR通貨は5年に一度見直され、その時、もし資格がないと判断されれば、SDRから外される可能性もある。今後5年の間で、人民元が市場化されるのか。本当に自由化されるのかによっても、影響力は変わってくる。

 一方、自由化市場についてあまり肯定的な姿勢ではない習近平政権にとっては、政治的な意味が大きい。人民元の国際通貨の仲間入りを政権として実現させた。ちなみに中国が長年、人民元のSDR入りに拘り続けてきたのは、米ドル基軸体制を切り崩し、人民元こそが国際基軸通貨として世界金融を支配するという遠大な野望の第一歩という位置づけだからだ。

 米国が今、世界を牛耳る権力を握っているのは、ドル基軸体制を確立し、ドルを刷り、その強弱を使ってグローバル資本市場の盛衰を主導できるだけでなく、他国の内部の富の分配から政権の交代までに影響力を持てるからだ、と中国は考えている。

 かつて金本位制だった時代は金の保有量が国家の対外購買実力、経済力を示す指標だったが、ドル基軸体制ではドルの保有量がそれとなる。一国の購買実力、経済実力はドルを通じて米国に支配されている。だからこそ、米国に世界の技術と人材が集まる。この米ドル貨幣覇権に立ち向かうものこそ、世界最大の(潜在的)市場を誇る中国の人民元であるべきだ、米ドルから貨幣覇権を奪うのは人民元だ、というのが中国の遠大すぎる野望である。

「資格に欠ける」「1兆ドル流入」「開放次第」…

 中国の野望はひとまず置いておくとして、人民元SDR入りについて、各国の論評はけっこう差がある。米財務長官ジャック・ルーは「本当の意味での国際準備通貨の地位には程遠い。中国は引き続き人民元をさらに国際水準に近づける改革が必要だ」と話した。日本財務相の麻生太郎は「すぐ通貨の価格管理などをやることになると、SDRを維持する資格に欠ける」と牽制した。

 ドイツフランクフルター・アルゲマイネ紙は「人民元がグローバル貿易、金融取引において大量に使われるようになり、今後5年以内に1兆ドルが中国市場に流入するだろう」と論評。スイス連邦銀行集団は「もし人民元が準備通貨としての潜在能力をさらに発揮するとなれば、全世界の外貨準備高の5%を占めるようになるだろう。つまり外国の中央銀行が保有する人民元資産は4250億ドル相当になる」と、各国で人民元資産を外貨準備高として保有するようになっていくという予想を示した。

 逆に仏パリ銀行は「将来、国際投資家たちが人民元資産を持つようになるのかどうか、結局中国経済がどうなるかによる。SDRに入ったかどうかではなく、中国資本取引の開放がある程度進み、米MSCI指数などに、中国A株が組み入れられるかどうかの方が重要なのだ」と論評した。

 新華社など中国公式メディアの反応はもちろん「人民元がついに国際通貨の天井を破った」「中国が世界経済の舞台の中心に近づいた」「これは中国と世界のウィンウィンだ」と大喜びだ。しかし中国人民銀行側はSDR入り後も引き続き人民元を管理していくべきだという姿勢を強調しているので、人民元が、自由な取引や市場原理で相場が動く透明性を備えた国際通貨にすぐなるわけではない。

 人民日報の「人民元SDR入りがどのような影響を与えるか」という論評を見てみると、「人民元は対米ドルに対し下落速度が加速し、米ドルが今後利上げの方向に行けば、中国の相当の資金が米国に流れ込む」(中国欧州陸家嘴国際金融研究院院長・曹遠征)というのが喫緊の影響として、予想されているようだ。

投機筋と政府の攻防で不安定化

 SDR入りすれば、やはり多少は人民元介入を減らしていこうと考えているのだろうか。そうなると、それまで実質の中国経済に比して人民元高に誘導されていた分、人民元安は急速に進む。だが、こうした人民元の下落によって、中国経済が強烈な影響を受けるとまでは言えない、という。

 「論理上は、人民元がSDR入りしたことで、国際通貨としてのお墨付きを得たのだから、各国中央銀行が人民元を外貨準備として保有することができるようになる。そのことで人民元の信用が上がり、中国は人民元による対外貿易決済、対外投資を行えるようになっていく。そうなれば中国企業にとっては為替損益を減少させ、対外経済の効率改善を図る上でプラスの影響がある」(中欧国際工商学院金融学教授・張逸民)という見方もある。この期待どおりになれば中長期的には人民元は上がっていくことになる。

 中国にとって予想されるリスクはなにか。政府の介入が減っていく一方で、外国投資家が投資できるような人民元商品が増える。外国の投機筋も人民元市場に参入していく。そうすると、人民元価格が下落するにしろ、上昇するにしろ、中国経済・金融実力に応じた水準に安定するまで、外国の投機筋とそれに対する政府の対策の攻防の間で不安定化する。外国のヘッジファンドにとっては、久しくなかった大博打場となる。これまで安定した人民元にしか慣れていない中国企業は阿鼻叫喚の目にあうかもしれない。

 株式市場や不動産市場にはどういう影響があるだろうか。

資金を引き上げるのが難しい

 「日本円がSDR入りした時、日本の株式市場は大高騰し、日経指数で7倍に膨れ上がった。ならば中国A株市場は? 今週の上海総合指数でいえば、0.96%の下落だ。牛市(全面高)とはいえない。当時の日本の市場にはいろいろからくりがあり、指数が低く処理されていた一方で、プラザ合意で円高が引き起こされた。30年前の日本のようにはいかない。世界経済の成長が減速し、米ドルの利上げ予測が人民元の下げ圧を増強しているので、いったんは中国からの資本流失現象が起きて、A株市場は悪化すると予想される」

 「不動産市場は、人民元の兌換が開放されていくに従い、国内投資家たちは手持ちの不動産を投げ売りして、海外の不動産を購入するようになる。外国の不動産の中には、永久の所有権を保障されているところもあるからだ(中国は所有権に期限がある)」(南方財富)

 いわゆる資金流出の加速によって、株式、不動産とも大幅な下げ圧にさらされる。特に不動産市場はバブルがこれでもかというほど膨れ上がっているので、SDR入りがバブル崩壊のきかっけをつくるかもしれない。長期的にみれば、外国の投資家が中国の不動産購入に参入できるという期待もあるようだが。

 債券市場についていえば、「3、4年後には外国投資家が保持する中国国債は新興国政府債券よりも多くなっているはず。2020年までに累計投資は4兆元になる」(チャータード銀行)という予想もある。外国投資家が所持するオフショア人民元建て債券総額は今年3月から6月までに1000億元増加しており、この傾向が加速するというのだ。だが、中国の債券市場は外国投資家が投資するのは簡単だが、金を引き上げるのは難しい。この予測通り順調に増えるとは、私には思えないのだが。

 中国の経済政策、とくにシーノミクス(習近平経済学)の柱であった一帯一路戦略(陸のシルクロードと海のシルクロード経済一体化構想)と、それを支える目的もかねて創設されたAIIBは、これを機に息を吹き返すのだろうか。

 一帯一路戦略とは、中国と中央アジア、ヨーロッパを結ぶ地域、また東南アジアから海を通ってインド、アフリカにいたる海岸線に、中国の主導する投資と企業力によって交通インフラや産業パークなどを建設、そこでは人民元決済を中心にして、人民元経済圏を確立するという構想である。中国国内の生産過剰な建設資材を消費でき、中国企業の対外進出の足掛かりとなる。将来の夢である米ドルに対抗できる人民元基軸体制の経済圏を打ち立てる中国の壮大な野望に向けての実験みたいなものでもある。

覚悟なしで好転なし

 人民元のSDR入りで、人民元の国際認知度と信用が高まり、人民元決済がやりやすくなれば当然、一帯一路戦略に弾みがつくし、中国産業と国際企業の協力や中国企業の対外進出もやりやすくなる。AIIBも人民元建て債券をどんどん発行して、うまく回る…のか? 一帯一路構想が事実上、停滞しているのは、資金ショートに陥っていること、どだい経済的利益度外視のプロジェクトを政治的目的優先で行っているので、現場でサボタージュも起きているという話だ。

 人民元がSDR入りすれば、どんどん人民元を刷って、人民元で支払うので資金不足は解消、といいたいところだが、人民元を好きなだけ刷れば大暴落、信用も落ちてハイパーインフレ、国内が大変なことになってしまうだろう。リターンの見込めないプロジェクトそのものに無理があるのだから、人民元がSDRに入ろうがは入るまいが、あまり関係ないかもしれない。

 人民元がSDR入りするほど成熟していないのに、SDR入りしたら成熟するんじゃないか、という期待が先行してSDRに入れてもらったが、実力不足の選手がメジャーリーグに入れば、強くなるというものではない。ちょうど国慶節連休に入ってからの発表で、マーケットの反応があまりないので、休みが明けてからの市場を見ないと何ともいえないのだが、意外に、あっさりと期待も懸念も流れてしまうのではないだろうか。SDR入りがどうのというより、習近平政権が、どのような痛みを伴っても人民元改革を進めるのだというような覚悟を、今のところこれっぽっちも見せていない以上、中国経済の何かが好転するという期待は持ちにくい。

新刊!東アジアの若者デモ、その深層に迫る
『SEALDsと東アジア若者デモってなんだ! 』

日本が安保法制の是非に揺れた2015年秋、注目を集めた学生デモ団体「SEALDs」。巨大な中国共産党権力と闘い、成果をあげた台湾の「ひまわり革命」。“植民地化”に異議を唱える香港の「雨傘革命」――。東アジアの若者たちが繰り広げたデモを現地取材、その深層に迫り、構造問題を浮き彫りにする。イースト新書/2016年2月10日発売。

このコラムについて

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/100300066/


 
華僑は我慢しないのに「イラっと」しない

華僑直伝ずるゆる処世術

2016年10月5日(水)
大城 太

 ビジネスにおいてもプライベートにおいても、時間を有意義に使い、豊かな人生を送りたい。誰しもが願うことです。すべて思い通りにはいかないのが人生の面白いところ、などと余裕を持って構えていられる人は珍しい部類に入るのではないでしょうか?

 余裕を持てない大きな要因の1つが「イラっと」するから、ということに気づいていない人が多く見受けられます。「イラっと」するとまず瞬時の反応が遅れます。いわゆる自動思考というものが遅れるわけです。自動思考が遅れると、一般的な思考も一時的な混乱を起こし、通常の動作が鈍くなります。それの連鎖によって、自分が思っているよりもタイムスケジュールが遅くなっていくのですね。また、「イラっと」して感情的になるのは、自分の弱点をさらけ出すに等しいことです。それに気づいていないのも、余裕をなくす原因かもしれません。

 いち早く成り上がりたい、と考えている華僑たちは「イラっと」することのデメリットを知っているので、激しい気性で知られる漢民族や満州族も、一呼吸置くように訓練されています。「イラっと」しない、たとえ「イラっと」しても表に出さない彼らは「怒る」ということもめったにありません。

怒って相手を負かしても後悔が残る


 「イラっと」しても怒らない。これはビジネスのみならず、家庭においても、友人関係においても非常に有効なのです。昔から言われていることに、「本当に強い人は喧嘩をしない」というものがあります。喧嘩というものは大抵、突発的に起こるものですが、強い人は自分が勝つのがわかっているので喧嘩をしません。

 その理由を説明しましょう。喧嘩は突発的に起こるものということで、事故と捉えることができます。事故は加害者にとっても被害者にとっても何一ついいことがありません。交通事故で考えてみましょう。人身事故です。人をはねてしまった加害者の人にとっては、自責の念で苦しんでいる時に、警察や保険会社の人、場合によっては検察からの取り調べなど、次から次へと尋問が続きます。一方、被害者の人にとっても、「なぜ自分が」という思いは拭い去れませんし、賠償してもらうための状況説明を警察に、通院履歴を保険会社の人に、などと、これまたたくさんのことをしなければなりません。

 喧嘩も同じです。勝っても負けても、お互い気持ちよく終わる、ということはありえません。部下や子供を叱るときも同じです。相手は部下や子供ですから勝って当然です。「しっかりしろよっ」ですとか「ちゃんと勉強しなさい」と勝つことは容易ですが、その後の気分はどうでしょうか? 大抵の場合、スッキリしないのではないでしょうか? もっとマイルドな言い方があったのではないか、もっと別の言い方があったのではないか、と反省してしまうことが多くあると思います。

 言われた方も同じようになんだかスッキリしない気持ちになります。「しっかりやろうと思っているけれど、それができないから困っているんだよ」「勉強しなくちゃいけないのは自分が一番わかってるよ」と嫌な気分になるだけで改善には至らない場合が多いでしょう。

「怒るギリギリライン」を探って交渉上手に


 逆を言えば、相手が怒るところを発見できれば、対人関係において優位に立てる、ということです。交渉ごとにおいて、相手が何を考えているのかがわかれば、半分以上の確率で勝つ可能性がでてきます。対策を打つことができるからですね。

 ですから、相手の人がどのようなところで怒るのか、そのラインを知ることは非常に重要になってきます。冒頭にも書きましたが、人は怒ると思考が鈍ったり、停止してしまいがちだからです。そこをつくのが絶妙にうまいのも華僑が交渉上手と言われるゆえんです。

 まず、交渉相手がどのようなことで怒るのかの「アタリ」をつけることがとても大切です。「アタリ」をつけたら軽くタッチしてみて、怒るギリギリのところを見極めます。中国人社会で一番重要視されるのは言わずと知れた「メンツ」ですが、日本人同士であっても相手のメンツを潰すような怒らせ方をしてはいけません。あくまで、どの辺りで「イラっと」するのかを探っていきます。

 例えば、ドアを強めに閉めてみる、書類を渡すときや書類を受け取るときに荒っぽくやってみるなど。これで相手が「イラっと」したら、丁寧な対応を大切にする人であり、それを守っていれば、第一関門はクリアできる人だとわかります。

 「イラっと」したかどうかは、口を見れば一番わかりやすいです。大抵イラっとしたときは顎を突きだすか、前歯の上下の歯を合わせるような動きをします。ポーカーフェースを意識している人は、奥歯を噛みしめるような動きを示します。口を左右に引っ張るようにする人もいます。

 「イラっと」するラインがわかれば、そのギリギリをついて相手の集中力を下げていきます。先ほどの例で見てみると、ドアを強く閉めるもののノブには両手を添えて丁寧さを演出することによって、相手は「イラっと」しそうなのを飲み込みます。書類の受け渡しでは、雑に鞄から取り出したものの渡すときはゆっくりと渡す。すると、相手は「イラっと」しそうになりつつ、平常心を保とうと意識が散漫になります。このようにギリギリをついていくことによって、相手の感情を揺さぶることができますので、色々とミックスして小出しにすることによってこちらのペースに持ち込んでいくのですね。

ある言葉を口癖にすれば、「イラっと」しなくなる


 逆もしかりで、こちらも「イラっと」したり怒ったりしてはいけません。少々のことで感情が動く人だと軽く見られたり、軸がぶれる人、最悪の場合は情緒不安定な人という烙印をおされたりしかねません。そこまで極端な評価にならなくても、すべてがコモディティ化している現代社会において、自身や自分の扱う商品を差別化するのに不利になるのはここまでお読みいただいた方には想像に難くないでしょう。

 「イラっと」したり、怒らないようにしたりするための方法があります。まずは訓練から始めて、だんだん慣れてください。するとそれが当たり前になってきますので、交渉ごとや的確な状況判断がどんどん得意になっていきます。

 その方法とは、「ありがとうございます」です。皆さんもよくご存知の「謝謝(シェエシェエ)」です。中国人や華僑たちは口癖のようにこの「謝謝」を連発します。日本語的な直訳でいくと「ありがとう」「ありがとう」と連呼しているようなイメージです。 

 華僑たちは異国の地で言葉がままならない状態で生活をしますので、何をやってもらってもまずは「謝謝」と感謝の言葉を口にします。たくさんの国に華僑たちが進出していますので、「謝謝」の意味を多くの人が理解しています。日本においても「謝謝」と言われれば、ありがとうと言われたというのは多くの人がわかるのではないでしょうか? 日本語で言うところの「ありがとう」を連呼連発する訓練をすることによって、怒らないようになっていくのです。ここにまさに“ずるゆる”の奥義の1つが隠されています。

痛い目にあっても「ありがとう」が正解の場合


 筆者は華僑たちと過ごすようになって、この「ありがとう」が自然に身についていることに気づき、それによって大きく得をしていることを発見しました。あまりいい話ではありませんが、つい先日、私の知人が駐車違反のきっぷをきられたときの話を事例としてご紹介します。

 モノを届けるだけの用事だったので、すぐに戻れば大丈夫だろうと考えた彼は、車を駐車場に止めずに路上駐車して友人宅を訪ねました。その間10分くらいだったでしょうか? 友人が見送ってくれるということで一緒に車まで戻ると、今まさに警察官が彼の車のフロントガラスに黄色い張り紙を貼っているところでした。

 条件反射のように友人が「ちょっとちょっと、僕はここの住人でみんな停めてるよ、違反きっぷなんて聞いたことがない」と言って、警察官に詰め寄ろうとしたので、彼は知人を止めました。「ありがとうございます」。険しい顔をしている警察官の顔が一瞬だけ柔らかくなるのを彼は見逃しませんでした。

 「いや〜。お巡りさんご苦労様です。私はちょっとした用事なら路上駐車をするくせがあり、これはよくないと自分でわかっていました。路上駐車は通る車や歩行者の人の視界不良になり、事故を招く原因になります。ゴールド免許が密かな私の自慢でしたが、残念です。ですが、お巡りさんが今回違反きっぷを切ってくれたおかげで、これからは絶対に路上駐車はしない、と今心に誓いました。本当にありがとうございます」

 ここまで一気に話すと、二人いた警察官は笑顔で「みんながそう思ってくれると、飛び出し事故などが減って助かります。私たちも憎くてやっているわけではないんでね。気をつけて運転してお出かけくださいね」と、彼のその後の運転まで気遣ってくれました。

 駐車違反やスピード違反は、多くの人がやっているのに自分が見つかるなんて不運だ、と考え、警察官に怒りをぶつける人も少なからずいると聞きます。ですが、そこで「イラっと」することに何のメリットもありません。ましてや口論をふっかけるようなことをすれば、警察官の本来の仕事の邪魔にもなりかねません。

 「一事が万事」とはよくいったもので、このように痛い目にあったような場合でも、それに気づかせてくれた相手に「ありがとう」と伝えることによって、交渉が上達していくのです。

賢い人は相手の非にも「ありがとう」で対応する


 それではずるゆるマスターの事例をみてみましょう。

 制作会社に勤めるQさんは、なぜかここのところスランプ気味です。1年前まではこのままいけば順調に大過なく会社人生を過ごせるという自信があったのですが、最近はその自信が揺らいでいます。

 特にこれだ、という理由は思い当たらないのですが、何が起きても何となくイライラする、ということには気づいています。ため息もよくつくようになりました。「あ〜、まだ水曜日か、まだ半分も今週が残っているじゃないか」。今朝も出勤して自分の席に着くなりQさんはそう心の中でつぶやきました。

 嫌だなと思っても、今日やるべきこと、クライアント先を回って制作物の納期やデザイン、コピーについて打ち合わせるなど、諸々の仕事が目白押しです。外回りの準備をしているその時、ガチャンと大きな音を立てて同僚が部屋に入ってきました。そこで「イラっと」したQさん。「もうちょっと、静かにドアを閉められないのか、チェッ」。

 ですがビジネス歴15年のQさん。ここは平常心を保つために「まあ、彼はああいったところが雑だから、仕事も雑なところがでるんだよな」と自分に言い聞かせつつ、得意先へ向かうために地下鉄へ。

 「なんだよ、この人、さっきから僕に鞄が当たっているのに気づかないのかな、チェッ。周りのことに気が回らない人が多いんだよね、最近」。地下鉄の中でも「イラっと」しながら、それを堪えて1件目のクライアント先であるD社に到着。

 「えっ? Qさん、今日、例のポスターの見本持ってきてないの?」そう言われてミスに気づいたQさん。「イラっと」しながら準備をしたせいか、ポスターの件が頭から抜け落ちていたのです。「申し訳ございません、急いで社に戻って取ってまいります」。幸いなことにクライアント先の担当者は今日の午前中は他のアポイントが入っていないとのこと。ポスター見本を確認してもらい、すぐに印刷所に発注すれば事なきを得るとQさんは考えていました。しかし…。

 「え〜、Qさん、ここの色は赤だと言ったのに、緑になってるじゃない、困るよ」。戻って取ってきたポスター見本を見て担当者はこう言います。Qさんは驚きました。なぜならクライアントからの指示が緑だったことは間違いないからです。

 「いえ、ここに先日の打ち合わせノートがありますが、確かに緑と書いてありますし、お電話でも緑でご確認させていただいたはずですが」

 「覚えてないなあ、赤のつもりだったんだけど」

 トボケる相手に「イラっと」しながらもポーカーフェースを保ったQさん。「左様でございますか。ですが、ここに緑と書いてありますので、今から修正に出すと早くても3日後になってしまいます」。

 「それじゃ、困るよ。3日後に使うんだから」

 「かしこまりました。今、弊社のデザイナーに電話をしてすぐに色を変えるように頼んでみますので、少し席を外させていただきます」

 「かくかくしかじかということで、今すぐに赤に変更してくれないかな?」。当然対応してくれるものと考えていたのに、デザイナーの返事は「Qさん、それは無理ですよ。いくらなんでも今日っていうのは」。「えっ、でもいつもZ君やRさんのときはその日に変更しているじゃないか、それくらいの情報は知っているよ」「無理なものは無理です」。

 今回のこのポスターは大口顧客であるD社にとっても、とても重要なキャンペーンで使うというのは聞いていました。Qさん大ピンチです。「落ち着け、落ち着け。まだ時間は2時間ある。そうだ、K課長に相談してみよう」。Qさんは社内で大人気の“ずるゆるマスター” Kさんになんとかしてもらおうと考えました。


 ラッキーでした。“ずるゆるマスター” Kさんは今日は社内にいる日だったので、D社まで来てくれることになりました。クライアント先の担当者の前に登場するなり、土下座せんばかりにKさんは頭を下げました。

 「誠に申し訳ございませんでした。D社様のご指示が赤だったのに、弊社の担当が間違って緑にしておりました。納期は必ず守りますので、お許しいただけますでしょうか? それと彼の間違いをご指摘賜わりまして、誠にありがとうございます」

 「いえいえKさん。もしかして、私の発注ミスだったかもしれません。Qさんは普段よくしてくれています。ですが今回は我が社としましても大々的なキャンペーンなので、なんとかして欲しいのですが、できますか?」

 「勿論ですとも。ではQ君は次のお約束のお客様のところへ行ってくれるかい? 私がD社様のお話の続きを伺うから」

 D社のことがずっと気がかりのままQさんは1日を過ごし、夕方自分のデスクに戻ると、なんと指摘された箇所が赤に変更されたD社用のポスターが置いてありました。席にもつかず、QさんはD社に行き、OKをもらい印刷所への発注もギリギリ間に合いました。

 翌朝Qさんはいつもよりも30分早く出社しました。K課長に昨日のお礼を伝えるためです。間もなくしてK課長が出社してきました。「おはよう、Q君。昨日は大変だったね、間に合ってよかったね」「ありがとうございます。課長のおかげです」「ところでQ君ちょっとだけ時間いいかな?」「はい、もちろんです」。

「暴君」にイラっとしない扱い方のコツとは


 会議室に入るなり、Kさんはすぐに話し始めました。

 「荀子の言葉に『暴君に事うる者は補削(ほさく)ありて撟拂(きょうふつ)なし』」という言葉があるんだ。この言葉は、暴君に仕えるときは、その間違いをフォローするのはいいけれども、訂正矯正してはいけない、という意味で使われるんだ。

 昨日のD社さんの担当者は明らかに自分が間違っていることに自分で気づいていた。でもそれを指摘されたら気分が悪くなるし、そのせいでキャンペーンに間に合わなくなったら、彼の今後がどうなるかがわからなくなってしまう。明らかに間違っているのに、白を黒と君に言わせようとした暴君だよね。暴君はそれのフォローをしてあげるととても喜ぶ。指摘すると怒って更に無理難題を押し付けてくる。これを覚えておいて欲しいんだ」

 「はい。やっぱりそうか、打ち合わせノートにもそう書いてありましたし、電話でも確認しておりましたので」

 「もうひとつ、Q君に覚えておいて欲しいことがあるんだけど、さっき僕が言った荀子の言葉の『暴君に事うる者は補削ありて撟拂なし』の前に、『聖君(せいくん)に事うる者は聴従(ちょうじゅう)ありて諫争(かんそう)なく』」という言葉があるんだ。その意味は、聖君、今回の場合は社内の仲間のことを指すけれども、仲間との間ではただ聞いているだけでよくて、何か不具合があってもそれを指摘する必要はない、という感じかな。他のメンバーがデザイナーに即対応してもらえているのに、今回Q君が即対応してもらえなかったのは、何か理由があるんじゃないかな?」

 「そうですね…。思い当たることがあるとすれば、デザイン部はお客さんに怒られないからいいね、と言ってしまったことがあります」

 「なるほど、そんなことがあったんだね。正直に話してくれてありがとう」

 「いえ、こちらこそありがとうございます」

 「Q君、最後に。お礼をいう相手を間違っているよ。今からデザイン部に行ってお礼を言ってきたら、今後仕事がしやすくなるはずだよ」

 「はい、すぐにいってきます。ありがとうございました」

 「Q君、とにかく何かを気づかせてくれた相手には、ありがとう、と言うようにしてごらん。嫌な思いをした時も、ありがとう、と言えば、それだけで気分が楽になるよ」

 「ありがとう」を口癖にするようになったQさんのスランプはいつの間にかなくなり、今まで通り自信をもって仕事に集中できるようになっていました。

 Qさんは自分でも不思議な気持ちになることが今でもあります。「ありがとう」を口癖にするようになってから、今までちょっとしたことで「イラっと」していたのが全くなくなったのです。電車通勤中も誰かがもたれかかってきても、「ああ、疲れているんだな、僕も疲れているけど、それはお互い様だよね」と下車するまで肩を貸す余裕もでてきました。

 “ずるゆるマスター”のKさんの素晴らしいところは、Qさんに実地で指導したところです。「ありがとう」を口癖にしろ、と言ってもなんとなく意味が伝わらないことを知っていたKさんは、Qさんがピンチになるのを待ち構えていました、そして、そのピンチのタイミングでQさん自らが気づけるように仕向けたのですね。

 あなたの周りにいる、なぜかみんなにいつも協力してもらえるあの人は、“ずるゆる”を学んで、人知れず、「ありがとう」を連呼しているかもしれません。

このコラムについて

華僑直伝ずるゆる処世術
 世界各地に移住し、そしてその土地土地で商売を成功に導いている華僑。華僑は日本人ではなかなかマネができない“生き方のコツ”を持っている。“生き方のコツ”と一口に言ってもビジネス、家庭生活、対人関係、子育てなど多岐に渡る。本コラムでは、華僑の師から学び実践して結果を出してきた筆者が、生真面目な日本のビジネスパーソンにぜひ取り入れてほしい成功術を紹介する。華僑のずる賢くもゆるく合理的な処世術(世渡り術)はきっと仕事にも人生にも役立つはずだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/022500005/100300016/


 

「産業革新機構の存在自体が矛盾だ」

ニュースを斬る

JEITA長尾尚人専務理事インタビュー(後半)
2016年10月5日(水)
齊藤 美保
(前編から読む)

 10月4日から開催した「CEATEC(シーテック)JAPAN2016」は出展社・団体数が前年比22%増の648社・団体と4年ぶりのプラスとなった。大手を中心に苦境が続く日本の電機業界が、再び世界に存在感を高められるかに注目が集まる。経済産業省、日本政策投資銀行などを経て電子情報技術産業協会(JEITA)専務理事に就任した長尾尚人氏に、電機業界の課題や政府ファンドのあり方などについて聞いた。
電機業界全体についてうかがいます。シャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収され、東芝が白物家電事業を中国の美的集団に譲渡しました。日本の電機メーカー、特に大手を中心にその競争力低下が顕著です。日本の電機業界の課題をどう見ていますか。

長尾:日本は企業経営が全く現代化できていないと思います。高値で売れるものは早めに売ってしまおうという考え方がなく、じり貧になった状態で買い叩かれてしまうケースが増えています。

 会社経営の財務においては、収益をどこで生み出すのか、キャッシュフローをどう回していくか、そしてその中でどう投資回収するか。この3つを考えなくてはなりません。キャッシュフローをたくさん持ちながら投資に回す会社もあるし、ニッチでも利幅が大きい世界に特化していく会社もある。


JEITAの長尾尚人専務理事。経済産業省や日本政策投資銀行など経て、2014年から現職。
長尾:米ゼネラル・エレクトリック(GE)との比較が分かりやすいですね。彼らは資産規模で約4兆円にものぼる金融部門の一部を高値の段階で売りました。現時点では、キャッシュフローを猛烈に生んでいた部門にもかかわらずです。その金融部門を売っぱらって得たお金で、ハード同士を繋げるソフトウエアの技術に次々と投資しています。IoTの時代では、ある程度収益がありキャッシュフローを生む金融部門より、ソフト事業の方が会社の成長に必要だと早期に判断したからです。

 日本は過去の栄光にすがりついてしまう傾向が強いので、どうしてもそうした思い切った判断ができない。また、世界で通用する最高財務責任者(CFO)がほとんどいないと感じます。海外から本当の企業経営ができる財務の人間をスカウトし、日本の企業経営を現代化させないと、どんどん遅れを取っていくことになります。

日の丸連合には全く固執しない


日本最大のIT(情報技術)家電見本市「CEATEC(シーテック)JAPAN 2016」。10月4日〜7日まで幕張メッセで開催されている
経済産業省の幹部が外資系メディアの取材で、ジャパンディスプレイ(JDI)株を外資に売却することに対して否定的ではない考え方を示しました。シャープとJDI連合構想の動きから「日の丸連合」に固執している印象の強かった経産省ですが、風向きは変わっているのでしょうか。

長尾:私は既に経産省を離れている人間なので現在の動きは分かりませんが、私自身も日の丸連合には全く固執しない考えです。日本の底力はそれなりに立派ですし、維持しないとダメだとは思いますが、日の丸企業に頼ってずっとやっていけばいいかと言うと、決してそうではない。既に申し上げた通り、海外企業と積極的に組んでいくことが重要だと思います(関連記事:新生シーテック「最終製品見せても意味がない」)。

官民共同出資の投資ファンド、産業革新機構の役割についてはどう見ていますか。

長尾:私は、そもそも政府は産業革新機構のような投資ファンドをやってはいけないと思っています。救済ファンドならギリギリいいとしても、投資ファンドと言うのなら勝つために徹底的に(お金を)つぎ込まなきゃいけない。相手を負かすまで投資し続ける必要があるのです。

 一方、産業革新機構は税金を元手にしている限り、こうした判断はなかなかできないんですよ。シャープの一連の動きでそれが露呈しました。例えばソフトバンクの孫正義社長が英アームを3兆円で買収しましたが、ああした判断は税金を使う限り絶対にできません。産業革新機構と言う存在自体、もともと矛盾なんだと思っています。さらに「日の丸連合」に固執していれば、本来の経済的合理性からどんどん離れていってしまう気がしますね。


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