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不動産バブルを煽る習近平が突如「マンション購入制限」を強いた理由 ダイナミックで「理不尽」な中国政治(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/16/hasan114/msg/269.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 10 月 11 日 10:30:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


不動産バブルを煽る習近平が突如「マンション購入制限」を強いた理由 ダイナミックで「理不尽」な中国政治
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49910
2016.10.11 近藤 大介 『週刊現代』編集次長 現代ビジネス


■予告なしに発表された「通知」

「金九銀十」(黄金の9月と銀色の10月)――。

この言葉は、中国の不動産業界の用語だ。9月の中秋節(旧盆)の3連休から10月の国慶節(建国記念日)の7連休にかけて、マンションの販売量が一年のピークを迎えるという意味である。田畑と同様、マンション販売も「実りの秋」を迎えたのだ。

中国では、全国の市町村を、重要性や人口などを鑑みて、一線都市から四線都市までに分けている。一線都市は、北京、上海、広州、深圳、天津の5都市。二線都市が南京、武漢、重慶など41都市。三線都市が紹興、珠海、吉林など110都市。残りすべてが四線都市である。

中国には、人口が100万人を超す都市が303もあるので(日本は12)、不動産規模も世界一である。今年も、一線都市から四線都市まで各都市の不動産業者たちは、「金九銀十」のこの季節に合わせて、大量の新築マンションの販売に踏み切った。

ところが、である。10月1日の国慶節を5日後に控えた9月25日の日曜日、二線都市の筆頭である人口820万人の南京市で、突如として異変が起こった。市政府(市役所)のホームページに、「南京市の不動産市場のさらなるコントロールのための主要地区の不動産購入制限措置に関する通知」と題した「2016年第140号通知」が、何の予告もなくアップされたのだ。

その全文は以下の通りである。

〈 各区人民政府、市府各委員会弁公局、市各直属単位へ

「市政府が供給側構造性改革を推進し、不動産市場の平穏かつ健全な発展の促進を実施するための意見」(2016年第75号通知)をさらに一歩定着させるため、そして不動産市場を安定させ、「不動産価格と地価をコントロールする」ことを基本として、高淳、溧水、六合を除く主要地区で、住宅購入制限措置を実施する。

1.すでに一軒の住宅を所有している南京市の戸籍を持っていない住民家庭の不動産購入(新築及び中古物件)を、当分の間禁止する。
2.すでに二軒以上所有している南京市の戸籍保有者家庭の新築不動産購入を、当分の間禁止する。

新築物件は売買契約書にサインした日を基準とし、中古物件はネット上で署名した日を基準とする。

不動産開発企業と不動産登記機構は、不動産購入条件に合致しない購買希望者に住宅商品を販売してはならない。不動産取引及び不動産登記部門は、上記規定に違反して処理や手続きを行ってはならない。

本通知は、2016年9月26日より執行される。

南京市人民政府弁公庁
2016年9月25日 〉

まさに、いまからマンションを買おうとしていた南京市民、及び売ろうとしていた不動産業者にとって、青天の霹靂の「マンション購入制限令」だった。市民も業者も、南京市政府のホームページを見て、唖然となった。

このため、マンション購入を考えていた南京市民たちは、「それならば今日のうちに契約してしまえ」と、市内のマンション販売センターに殺到。おかげで9月25日だけで、計1604軒ものマンションが南京市で売れた。本当はこの何倍も売れるところだったのだが、マンション販売スタッフの人員が足りなかったのである。

だが、南京の混乱はこれにとどまらなかった。南京市政府は、やはり何の予告もなく、大型連休5日目の10月5日になって、「第143号通知」を発令した。これはさらに詳細な「マンション購入制限令第二弾」で、主な内容は次の通りだ。

・明日10月6日より(以下同)、南京市戸籍以外の者に、マンション購入の際、過去2年以内の1年以上の所得税納税証明書と社会保険納税証明書の提出を義務づける。
・南京市戸籍の独身者(離婚や死別を含む)は一軒しか購入を認めない。
・住宅ローンの差別化をさらに進める(購入者をふるいにかける銀行の高金利を許可する)。
・一軒目の普通住宅の購入は頭金3割以上、二軒目は4割以上、商業用不動産は5割以上、住宅ローンを完済していない者は8割以上とする。

こうして南京で始まった「マンション購入制限令」は、その後、燎原の火のごとく、全国各地に拡散していった。同様に「マンション購入制限令」を発令したのは、北京、上海、広州、深圳、天津の一線都市を始め、10月4日までで計15都市に上った。具体的には、南京、アモイ、杭州、蘇州、鄭州、成都、済南、無錫、合肥、武漢である。

今後はおそらく、三線都市までの多くの都市で、同様の通知が出されるものと見られる。内容は大同小異で、頭金アップ、非戸籍保有者の締め出しなどである。


■「頭金7割なんて、払えるわけない!」

首都・北京では10月6日、地元テレビ局の北京衛視が、9月30日に北京市政府が発令した「北京市の不動産市場の平穏かつ健全な発展を促進するための若干の措置について」(マンション購入制限令)に関する特集ニュースを組んだ。それは、次のような内容だった。

北京市豊台区のある新築マンション販売センター。国慶節の大型連休中の午前10時。このマンションは9月25日に発売を開始し、販売開始から5日間で計150の部屋に約300人が予約するなど、販売は上々だった。

だが、9月30日を境に、一夜にして頭金が7割にハネ上がってしまった。そのため、「棄購」(購入放棄)が続出している。

「頭金7割なんて、払えるわけないじゃないの!」

数日前に新築マンションの購入を決めたばかりの女性が、マンションの販売員に噛みついている。

このマンションは、1uが約7万元(1元≒15.4円)。一般的な3LDK105uの部屋の場合、約700万元だ。中国の不動産は室内面積でなく建築面積で換算するので、7掛けするとだいたい日本の不動産表示面積となる。つまり、70uで1億円の物件だ。ちなみに、北京の不動産価格はとっくの昔に、東京の価格を追い抜いている。

北京市政府が9月30日に発令した通達(北京市民は「京八条」と呼んでいる)によれば、第5環状線以内のマンションの場合、1uあたり3万9600元以上、もしくは総額が468万元以上のマンションは、非普通住宅(高級マンション)とみなされる。

最近売り出している第5環状線以内のマンションの場合、不動産業者が買った時は1uあたり約3万元が相場だったという。そのため、マンション建造費用などを加えると、最低でも5.5万元以上で売らないと元が取れない。不動産会社の社員は、「これではすべてのマンションが、非普通住宅となってしまう」と、テレビに向かって嘆いていた。

今回の北京の「マンション購入制限令」を簡略化して説明すると、初めてマンションを購入する人が普通住宅を買えば頭金は35%以上、非普通住宅を買えば40%以上。二軒目の普通住宅は50%以上、二軒目の非普通住宅は70%以上となった。これに、北京市の戸籍保有者か非保有者かという区別によって、細かい条件が変わる。

北京衛視はそもそも北京市政府傘下のテレビ局なので、激しい市政府批判などできるはずもなかった。最後は社会科学院の都市建設の専門家が登場し、「今回の措置は、マンション投資の金融化とレバレッジ化を抑制するのに必要な措置なのです」というコメントでまとめていた。

思えば今年の年初には、中国政府が不動産購入奨励策を取ったため、事実上、頭金ゼロでマンションが買えたのだ。それが秋になったら一夜にして、頭金7割以上に変わった。中国は何とダイナミックな、そして理不尽な国であることか。

          


■中国の特色ある経済状態

今回の「マンション購入制限令」は、現在の中国が抱える様々な問題を浮き彫りにした格好となった。

最大の問題は、そもそもなぜ突然、このような措置が中国全土で発令されたのかということだ。

中国は周知のように、ここ数年、景気が急減速している。昨年までは「V字回復させる」と意気込んでいた中国政府だったが、今年に入ると「L字型」(長期低迷)と言われ始め、今年春からは「h字型」(さらにドン底に落ちていく)と囁かれ始めた。

最近、こうした中国発の危機的な状況が日本に伝わってこないのは、中国の景気が回復したからではなくて、中国共産党中央宣伝部が、「経済のマイナス報道」を強く規制し始めたからだ。これまでは共産党や政府批判の政治記事が御法度だったが、今年春ごろからは、中国経済に対する批判やマイナス報道も検閲の対象となっている。

この4年近い習近平政権を評価すると、政治分野と軍事分野に関しては、習近平主席が強い指導力を発揮している。外交分野に関しても、発足当初は冷や冷やしたものだが、いまではだいぶ慣れてきて、及第点だ。

ところがこと経済分野に関しては、4年前から現在に至るまで、メチャクチャなのである。たとえてみれば、今日大雨が降ったから慌てて傘を用意し、今度は台風が吹き荒れ出したから戸や窓を補強するといった具合だ。万事が後手後手で、かつ出たとこ勝負のため、長期的な見通しや整合性がまるでない。

これに、「八項規定」(贅沢禁止令)で旨み(賄賂その他)がなくなったことによる官僚の不作為(ヤル気喪失)が加わって、いまの中国経済は、中国語で言うところの「雪上加霜」(雪の上に霜が加わる)状態だ。

それでも中国経済が崩壊しないのは、ひとえに過去30数年間の高度経済成長の「貯金」があるからだ。そのあたりは、「失われた10年」「失われた20年」などと揶揄されながらも、リーマン・ショックのようにならなかった日本と似ている。

習近平政権のこの4年間の景気浮揚策を振り返ると、ごく単純に言えば、株価上昇政策と不動産価格上昇政策の繰り返しである。

習近平総書記は、共産党総書記(党トップ)に就いた翌月の2012年12月に「八項規定」を発令したため、経済はいきなり悪化した。胡錦濤政権時代まで「全体の3割」と言われた地下経済(賄賂経済)が急速にしぼんでいったからである。

例えば幹部たちが、それまで一人で何十軒も賄賂としてもらっていた高級マンションを一斉に売りに走ったため、北京や上海の高級マンション価格が急落した。また、ほとんど贈答用だった高級ブランド製品の売り上げもガタ落ちした。

これに慌てた習近平政権は、不動産バブルを煽る政策を始めた。それが2014年秋頃まで続いたが、不動産価格が下げ止まらなくなると、今度は不動産バブルを鎮静化する手を打ち始めた。

代わって、株バブルを煽った。それによって2014年秋から株価は急上昇を始め、2015年前半には、本格的な株式バブルとなった。

だが、昨年6月15日(習近平主席の62歳の誕生日!)に株式バブルが崩壊。それが引き金となって、「1100兆円破綻」と言われる谷底に落ちていったのである(そのことは、拙著『中国経済「1100兆円破綻」の衝撃』で詳述した)。

            

そこで習近平政権は、景気をテコ入れするため、昨年秋から再び、「消費拡大の最大の牽引車」である不動産のバブルを煽り始めたというわけだ。

例えば、新築マンションの購入時には、頭金2割以上、3割以上といった規定があるにもかかわらず、それらを銀行が肩代わりして住宅ローンに組み込んだりということを黙認した。つまり、頭金ゼロでマンションが買えるようにしたわけで、まさに約10年前のアメリカのサブプライム・ローンと同じパターンである。

これによって、不動産価格は上昇を続けた。そして、景気が低迷しているのに不動産バブルが進むという「中国の特色ある経済状態」が生まれていった。


■「中国発のリーマン・ショック」を回避?

今年9月19日に国家統計局が発表した8月の70都市住宅価格調査では、新築マンション価格が、9割以上にあたる64都市で前月より上がった。

鄭州5.6%、上海5.2%、無錫4.9%、合肥4.8%、福州4.3%、南京4.1%、アモイ3.9%、北京3.8%、石家庄3.7%、天津3.6%、杭州3.3%、済南3.2%、武漢3.2%、広州2.4%、深圳2.1%、青島2.1%と、前月比で2%以上も上がった都市が、16都市にも上ったのだ。一部の二線都市、三線都市の上昇率が、一線都市の上昇率を上回るという新現象も起こっている。

また、中国指数研究院の「100都市価格指数」によれば、今年9月の全国100都市のマンションの平均価格は1uあたり1万2617元で、前年同期比で16.64%も上がっている。特に一線、二線都市では、新築マンション、中古マンションともに急速に値上がりしていることが明らかになった。まさに、全国的な不動産バブルである。

中国政府にしてみれば、本来なら「金九銀十」のこの季節に、不動産を大量販売することで、低迷している景気を上向かせ、かつ税収も増やしたかったところだ。ところがこれ以上放置しておくと、不動産バブルが崩壊するリスクが高いと見たのである。すなわち、「中国発のリーマン・ショック」が、いよいよ現実味を帯びてきたと判断したのだ。

北京に住む旧知の経済問題の専門家に聞くと、こう述べた。

「10月14日から、SEC(米証券取引委員会)がMMF(マネー・マーケット・ファンド)に新たな規制をかける。これによって多額のホットマネーが、中国からアメリカに流出することが見込まれる。これは中国の不動産業界を直撃し、不動産バブルが一挙に崩壊するリスクを孕んでいるのだ。

実際、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)はこのところ上昇を続け、9月26日には0.85294と、7年ぶりの高水準に達した。中国企業が発行するドル建て社債の多くは、LIBORを基準にしているので、債務が膨らむことになって経営者たちは蒼くなっている。もちろん、不動産業界も同様だ。

こうしたことから、いくら『金九銀十』の季節とはいえ、背に腹は代えられなくなったのだ。いま不動産バブルを覚まさないと、10月にリーマン・ショック型の危機が中国を襲うリスクがあったのだ」


■習近平がすべてを頼る男

今回の「マンション購入制限令」を見ていて、不思議なことがある。それは、通達を発令したのは、あくまでも各地方自治体であって、国務院(中央官庁)ではないということだ。国務院には、住房和城郷建設部(住宅及び都市農村建設省)という専門官庁があるにもかかわらず、この官庁は何の通達も出していないのである。

10月5日になって、この中央官庁は、「権威専家(権威的な専門家)が9都市の不動産コントロール新政策を評価する」と題した国営新華社通信の記事を、ホームページ上に転載した。記事の中で、新華社記者の取材に応じたという「権威専家」は、次のように述べている。

「多くの都市で行った不動産市場のコントロール政策に共通する特色は、投資と投機の需要を抑制する目的だったということだ。住宅価格があまりに急激に上昇するのを抑止し、不動産市場を安定化させようとしたのだ。日々刻々状況が変わる不動産市場に対して、市場を安定化させコントロールしていくことに対して、引き続き細かな指導をし、都市政策に結びつけていく」

この記事は長文で、劉洪玉・清華大学不動産研究所長や廖俊平・中山大学南方学院不動産学部長なども続いてコメントしているが、大事なのは、「権威専家」が述べたコメントである。

中国の官製メディアが「権威人士」「権威専家」などと表記する時は、劉鶴・中央財経小グループ弁公室主任兼発展改革委員会副主任を指す。劉主任は習近平主席の「北京101中学校」の同級生で、経済オンチの習近平主席が「経済政策のすべてを頼る男」である。

こうしたことから透けて見えるのは、今回の措置は、李克強国務院総理(首相)が統括する国務院の主導ではなく、習近平主席サイドが主導したということだ。おそらく、9月に李克強首相が、ニューヨークの国連総会、カナダ、キューバと11日間も外遊に出ている間(9月18日〜28日)に、習近平主席と劉鶴主任主導で進めてしまったのである。

今年の中国では、この二人が主導して、「供給側構造性改革」と呼ばれる5項目の経済改革を推進中である。その5項目の2番目が、「過剰在庫の解消」だ。

特に、「鬼城」(ゴーストタウン)と呼ばれるマンションの在庫解消が、喫緊の課題となっていた。そこで戸籍改革を断行し、農村戸籍の人も都市戸籍の人と同様に、マンションが買えるようにすることで、在庫を解消しようとしていた。

だが、今回の「マンション購入制限令」は、明らかにこの政策と矛盾している。前述のように、農村戸籍者を一層差別し、「現代版アパルトヘイト」を助長する政策だからである。

だが、都市戸籍保有者の庶民にしても、今年の年初には事実上、頭金ゼロでマンションが買えたのに、秋になったら一夜にして、頭金7割以上に変わってしまったのだから、やはり犠牲者である。割を喰わないのは、頭金問題など関係ない富裕層だけだ。このため、今回の措置によって、社会格差はますます開くことになるだろう。

それにしても、中国は何とダイナミックな、そして理不尽な国であることか。残ったのは、庶民のため息と、「棄購」(チーゴウ)という流行語だった。


           
南沙諸島や尖閣諸島を巡る強硬な外交で、周辺国やアメリカと軋轢を生んでいる習近平政権。「海の万里の長城」を築き、大海洋国家を目指す習近平の野望ははたして実現するのか!?



 

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