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金融緩和長期化で浮上した「日銀総裁機関説」 上野泰也のエコノミック・ソナー 誰が総裁でも「金融政策の継続性」は保たれる?
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 10 月 25 日 01:33:15: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

金融緩和長期化で浮上した「日銀総裁機関説」
上野泰也のエコノミック・ソナー
誰が総裁でも「金融政策の継続性」は保たれる?
2016年10月25日(火)
上野 泰也

日銀総裁はテクノクラートにすぎず、与えられた課題(2%の物価上昇)を解くことに専念すべきだという考え──「日銀総裁機関説」が、黒田東彦総裁の周囲の幹部の間で流行しているという。(写真:ロイター/アフロ)
すべての日本国債を日銀が保有する日
 日銀は今年4月の経済・物価情勢の展望(展望レポート)で、消費者物価の前年比が「物価安定の目標」である2%程度に達する時期の見通しを、「2017年度中」に後ずれさせた。
 次の7月の展望レポートでは「2017年度中になるとみられるが、先行きの海外経済に関する不透明感などから不確実性が大きい」と記述して、さらなる後ずれの可能性が高いことを匂わせた。
 そして、10月8日の外資系メディアのインタビューで黒田東彦日銀総裁は、物価目標達成は2018年度にずれ込む可能性があることを示唆し、「2%の物価上昇を達成するため、今後何か月も何年にもわたってわれわれの金融政策を続け、あるいは強化さえするつもりがある」と述べた。年間約80兆円の国債買い入れは「10年以上は続けられる」と黒田総裁が同じ日の講演で強調した、という報道もあった。本当に10年も買い続けたら、「日本国債は日銀が全部保有しています」といったことになりかねないのだが…。
物価目標2%達成時期は、徐々に後ろ倒し
 9月21日に行われた「総括的な検証」と「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入で、「長期戦・持久戦」対応へと日銀は金融緩和の枠組みを切り替えた。これには、任期が満了する2018年4月に黒田総裁が再任されるか否かにかかわらず異次元緩和は続けられていくということを内外に示す狙いもあったと考えられる。
 さらに言えば、まず「長期戦・持久戦」に対応できる態勢に切り替えた後で、物価目標2%達成時期の2018年度へのずれ込みをアナウンスするという順番にした方が、市場から即時あるいは早期の追加緩和を求められる可能性が小さくなり、政策運営が楽になるという判断もあったと考えられる。そうしたシナリオが総裁・副総裁や企画ライン幹部の頭の中にあったがゆえに、7月の時点では「不確実性が大きい」と付加したグレーな記述にとどめておいたのだろう。
 そうしたことに足元の物価状況を考え合わせると、11月1日に基本的見解が公表される最新の展望レポートでは、2%到達時期の見通しが「2018年前半頃」あるいは「2018年度中」へ、さらに後ずれする可能性が高い。その場合、黒田日銀総裁の任期満了(2018年4月8日)よりも後という話になる。
「日銀総裁機関説」が言わんとすること
 この関連で注目されるのが、日本経済新聞が9月29日の記事に盛り込んだ、黒田総裁に近い幹部の間ではやっているという言葉、「日銀総裁機関説」である。以下の記述があった。
 「日銀総裁はテクノクラート(専門知識のある高級官僚)にすぎず、与えられた課題(物価2%)を解くことに専念すべきだという総裁の考え方を指したものだ」
 「日銀総裁であるという気負いが、政策を曲げてはいなかったか。任期を意識して焦ったり、逆に遠慮したりせず、最善の判断を心がけるべきだと総裁は考えている」
(日本経済新聞 2016年9月29日付 「真相深層」から)
 この「日銀総裁機関説」という言い回しが、歴史上有名な「天皇機関説」からとられていることは明らかだろう。美濃部達吉・東京帝国大学教授(のちに貴族院議員)が主張した学説で、統治権の主体は国家であり、天皇はその一機関にすぎないと、明治憲法を解釈した。だが、軍部が台頭して天皇を絶対視する風潮が強まると、この考え方は排撃された。
 日銀総裁は国の一機関にすぎないのだから、短期決戦に失敗して長期戦になり、誰がそのトップの任にあっても、金融政策の運営は継続性が保たれる。それが「日銀総裁機関説」の言わんとすることなのだろう。
内閣総理大臣もまた、国の一機関にすぎない
 だが、日銀「レジームチェンジ」を主導して金融政策の基本線を規定したのは安倍晋三首相である。そして、内閣総理大臣もまた国の一機関にすぎない(いずれ交代する時が来る)ことを忘れてはならない。
 天皇が退位すると上皇になり、出家すると法皇になる。戦争直後の混乱期に日銀総裁として約8年半という長い間活躍した一萬田尚登(第18代)は、インフレを抑制しながら同時に資金を流して産業の復興を支えることに成功して、「法王(法皇)」と呼ばれた。
 一方、第31代である黒田総裁に与えられている最優先課題は、デフレからの脱却と2%の物価目標達成である。人々から「天皇」と呼ばれるほどの実績を、黒田総裁はこの先、挙げられるだろうか。
 仮に2018年4月に再任されて日銀総裁をさらに1期務めるなら、2013年3月20日の就任から2023年4月8日まで通算で10年超の「長期政権」となる(黒田総裁の再任問題については当コラム2016年5月10日配信「『手詰まり』日銀の黒田総裁は再任されるか?」ご参照)。
黒田日銀に対する「反乱」は起きないのか?
 そうなる場合、金融市場で黒田日銀に対する「反乱」は起きないのだろうか。
 結論から言うと、債券市場と株式市場ではそうしたことが起こりそうにない。波乱が起きるとすれば為替市場だろう。
 異次元緩和で日銀が大規模な長期国債の買い入れを続ける中、債券は「日銀主導の需給相場」を続けてきた。だが、9月の決定会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に日銀が金融緩和の枠組みを切り替えて「イールドカーブ・コントロール」に乗り出したことにより、相場形成における自主性(=市場としての健全な機能の根本)は一層失われ、「日銀依存(ないし日銀次第)の需給相場」に変質してしまったと、筆者はとらえている(当コラム2016年10月11日配信「『値上げ−値下げ』指数が示す、日銀の作成失敗」ご参照)。
 9月29日の日本経済新聞「経済教室」に掲載された日銀の内田真一企画局長の寄稿には、次のくだりがあった。
 「今回の会合では、おおむね現状程度の長短金利をイメージして、@短期政策金利はマイナス0.1%を維持しA10年金利の操作目標はおおむね現状程度(ゼロ%程度)とする方針を決定した。『程度』で許容される長期金利の変動幅については、あまり広いと政策目的を実現できないし、あまり狭いと市場機能への影響が大きいので、実際の市場調節を通じて適切な『相場観』を作っていければと思っている」
(日本経済新聞 2016年9月29日付 「経済教室」から)
空虚な相場の上下動が展開されているだけ
 上記にある「あまり広いと政策目的を実現できないし、あまり狭いと市場機能への影響が大きい」というのは、考え方としては確かにその通りだろう。だが、この文章に出てくる「市場機能」というのは、日銀がイールドカーブ(利回り曲線)の形成に多大な影響力を行使する中で残存している(あるいは許容されている)きわめて範囲の狭い市場機能にすぎない。将来の景気・物価動向を先読みしてシグナルを発したり、財政規律が弛緩した場合に警告シグナルを発信したりする、債券市場に本来備わっているはずの健全な機能は、ほとんど消滅しており、あとは「日銀にらみ」で空虚な相場の上下動が展開されているだけである。
 また、株式市場においては、日銀が7月の金融政策決定会合でETF(上場投資信託)の買い入れ額をほぼ倍増したことにより、公的なマネーによって株価が人為的に下支えされるという構図が一層鮮明になった。為替相場の水準や企業収益見通しの下方修正動向と対比して、日経平均株価やTOPIXの水準は不自然に高くなっている印象がある。
 だが、為替市場は、政府や中央銀行が意のままに動かそうとしてもできない市場である。いまのところは米国・欧州・中国などにリスク要因がたくさんあるため、政治や金融システムが安定している日本の円は「逃避通貨」という位置付けになっている。市場でリスク回避志向が強まる「リスクオフ」のムードが強まると、マネーが円に逃避して円高が進むという構図である。
日本人自身が、日銀や円を信用しなくなるリスク
 けれども、将来は話が変わり得る。人口減・少子高齢化という深刻な課題に対して日本政府が本格的な対策を講じておらず、しかも政府債務残高はGDP(国内総生産)の約250%まで膨張しているという重い事実に海外の市場参加者があらためて目を向けるようになり、同時に米国・欧州・中国などのリスクがある程度減退している場合、円が「逃避通貨」の座から降ろされて売りを浴びる可能性が潜在している。
 また、日本人自身が日銀および日本円という通貨を信用しなくなり、海外へのキャピタルフライト(資本逃避)が活発化するリスクも意識される。
 日銀が実施主体の世論調査である「生活意識に関するアンケート調査」は年4回のうち、現在は半分の2回で「日本銀行への信頼度」をたずねている。最新データである今年4月の調査では、日銀を「信頼している」が前回(2015年12月)の42.4%から40.4%に減少した<図1>。
■図1:生活意識に関するアンケート調査 日本銀行への信頼度

注1:2006年6月の郵送方式による予備調査および同年9月以降の郵送方式による本調査の結果を表示
注2:2009年6月までは年4回実施で、その後は年2回実施。2011年6月は実施せず。調査のない部分は線形補間した
注3:「信頼している」は「信頼している」と「どちらかと言えば、信頼している」の合計。「信頼していない」も同様
(出所)日銀
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/102000065/pho01.jpg

 一方、「信頼していない」は8.2%から10.8%に増加した(2008年6月以来の水準)。その理由(2つまでの複数回答)を見ると、「中立の立場で政策が行われていると思わないから」が54.9%で最も多く、前回に続いての50%超え。次に多かったのは「日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思わないから」で、42.6%に急増した。マイナス金利政策への不信感も反映されているとみられる。
 「信頼していない」という回答が過去最高の16.4%(郵送方式による本調査が開始された2006年9月に記録)を超えてくるようだと、注意する必要が増すだろう。


このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/102000065/
 

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