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百貨店の“冬越え人材”、どう育てる?J.フロントリテイリングの人事施策を聞く(その1) 御社の人事“伝わって”ますか?
http://www.asyura2.com/16/hasan115/msg/425.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 11 月 08 日 00:38:00: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

日経ビジネスオンライン
百貨店の“冬越え人材”、どう育てる?

御社の人事“伝わって”ますか?

J.フロントリテイリングの人事施策を聞く(その1)
2016年11月7日(月)
小野寺 友子、平田 麻莉

 あらゆる業種、業態が変化を迫られる時代。企業の仕事が変われば、働く社員に求めるスキルや評価、育成制度も変わらねばならない。ミスマッチがあれば改革は躓き、成功すれば成長を加速できるだろう。人事制度は、企業が生き残るための大きな課題であり、ツールなのだ。

 変革期を迎えた企業がいま、人事制度をどう変えていこうとしているのか。組織開発コンサルタントとして、ブリコルールとブーケの2社を経営する小野寺友子氏、同社広報の平田麻莉氏、ふたりのワーキングマザーが、現場で奮闘する人事担当者に聞く。
人事制度は「社員へのメッセージ」

 企業の人事制度は、「社員へのメッセージ」です。

 会社は社員にこんな期待をしている、こう育ってほしい、それを伝えるツールです。その前提には会社の「目指す方向」があり、それを実現するために作られるべきですし、目指す方向に変更があれば、臨機応変に変えるべきです。ところが、実態は温泉旅館の増築のように、とりあえず事態の変化(女性活躍推進、採用環境悪化、高年齢層の増加…等)に合わせて、既存の制度に「付け足し」していくことで精一杯になってしまいがちです。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/16/110200011/110200003/zu00.png

“良い”人事制度は、方針・戦略に基づき、会社・経営のつくりたい組織状態と人事ポリシー・諸制度が一貫している。ところが経営が方針・戦略を変更した際に人事ポリシーの変更を“忘れ“、既存制度がアンマッチ(異なるメッセージを発する)を起こすことがある。
 実態に合わせた調整は重要なことです。しかし、ここではあえて、「本来の(新しい)目的からすれば、人事制度はどうあるべきか」から考える、やや青臭い理想論を前提に、現実・現場のお話を伺っていきたいと思います。そのため、組織人事が主題の本企画ですが、まずは企業が今直面している課題や目指す方向から伺っていきます。どうぞよろしくお付き合いください。(小野寺 友子)


小野寺友子(BRICOLEUR 取締役、bouquet 代表取締役)
富士銀行、バルス、リンクアンドモチベーション、プロジェクトプロデュースを経て、現職。組織開発コンサルティング企業BRICOLEUR(ブリコルール)と、ダイバーシティ&インクルージョンをテーマとした女性活躍推進コンサルティング企業bouquet(ブーケ)の2社を経営する2児の母。

平田麻莉(BRICOLEUR 広報、フリーランスPRプランナー、ライター)
ビルコム新卒一期生として、国内外50社以上のPR業務および自社の事業推進に従事。ケロッグ経営大学院への交換留学を経て、慶應義塾大学ビジネス・スクール修了。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程在籍中に出産し、退学。現在は、2児(1名は待機児童)を育てながら、リモートワーク・パラレルワーク・カンガルーワークの実験中。


インタビュー風景。写真左から、J.フロントリテイリング執行役員 業務統括部グループ人事部長 忠津剛光さん、大丸松坂屋百貨店本社業務本部人事部部長 重田和美さん、聞き手の小野寺友子、平田麻莉(カンガルーワーク実験中。今回快くご対応をいただきました)
小野寺:つい先日、J.フロントリテイリングは「GINZA SIX(ギンザシックス)」という、複合型の商業施設で松坂屋銀座店跡地の再開発を進めると発表されました(関連記事「JフロントがGINZA SIXで挑む脱・百貨店」)。一方で、三越千葉店など閉鎖される百貨店が次々と出ています。

J.フロントリテイリング執行役員 業務統括部グループ人事部長 忠津剛光さん(以下忠津):我々は今まさに、一気呵成に百貨店の新たなビジネスモデルを作ろうとしています。パルコや千趣会への出資も、新たな領域を開拓しようという考えからです。

 これまでの流れで言うと、2000年に営業改革を行い、それまで取引先ブランドに任せがちだった販売と仕入れの自社体制を整理しました。同時に、売り場の販売業務を棚卸しし、人員のスリム化も行って、劇的に売上と営業利益が改善しました。

 しかし、それはあくまで業務改善の話でした。百貨店業界の売上は、20年間ほぼ一貫して2%ずつ落ちています。無くなりはしませんが、少しずつ弱体化しているのです。

小野寺:なぜでしょうか?

目指すは顧客資産を活かす「ディベロッパー型百貨店」

忠津:だって皆さん、もう百貨店に行かないでしょう? 平田さんはどうですか。

平田:うーん、たまに大丸東京店にはお世話になっていますけど…(汗)。

忠津:高額ですよね?

平田:はい。実は、行くとしても食品売り場だけです(大汗)。

忠津:婦人服フロアは3〜4層もありますが、人生を楽しもうという時に、ファッションにお金をかける人は減っています。今は旅行とか、趣味とか、家族とか、もっと言えば健康、介護、保険など、多様なお金の使い途があります。そういう品揃えは、これまでの百貨店にはほとんどなかった。いまのお客様にとって本当に付加価値を提供できる場になっていないのです。

忠津:ではファッション好きの方はどうか。若い方で百貨店に行く人はもはやごく一部で、大多数は駅直結のファッションビルや郊外店に行く時代です。あるいはネット。

小野寺:確かにそうなってしまっていますね。

忠津:そのような時に、従来の百貨店のあり方を極める考え方もあります。ファッションを中心としたオリジナル商品の開発に注力し、最高級の設備とサービスで提供するんだ、と。しかし、それでは一部のマーケットにしか対応できず、お客様が限られてしまいます。

単純にディベロッパーになっただけでは勝てない

忠津:私たちは、新しい百貨店のビジネスモデルを考えなければダメだという考えに至りました。例えばテナント運営です。これまではメーカーと共同で売り場や商品を作っていましたが、それではお客様のニーズやトレンドに臨機応変に対応できません。

 もう一つ、規模の問題もあります。百貨店は駅前の大きな土地に建てるのが定石ですが、もうそんな土地は残ってませんから。もはや百貨店だけで面積を増やして業績を拡大していくという方向性は難しい。ただし、百貨店の周りに小店舗を出したり、ビルを一棟買ってテナントを入れたり、さらには、街全体を開発・整備していくのだ、と考えれば、まだまだ発展の余地はあります。

小野寺:具体例はありますか?

忠津:たとえば、神戸大丸は旧居留地にありますが、その周辺一体を大丸が中心となって開発してきました。昔は古いビルの並んだエリアだったのが、大丸を起点に古い街並みを生かして開発し、一流ブランドに出店していただけている、小さい周辺店舗がたくさんできているんです。歴史のある雰囲気を残しながら、トレンド感のある店が集積する場所として、人を集めています。

 そうした流れの中で、この9月に不動産事業部を新設しました。

平田:ということは、ディベロッパーそのものを目指すことになるんでしょうか。

忠津:方向としてはそうなのですが、我々が、単純にディベロッパーとして勝負しようとすると、資金力では大手の既存ディベロッパーに絶対勝てません。百貨店がやるディベロッパーの強みは何かと言うと、一つは優良な顧客です。根強く私たち百貨店を愛してくださるお客様がいるお陰で、「ぜひ出店したい」と言ってくださるブランドがたくさんあります。

 もう一つは、同じ理由になりますが外商部門です。我々のお取引先には、売上の2割をお得意様で上げているブランドもあります。「百貨店のテナントに入れば、お得意様の販路もセットでついてくる」となると、従来の商業ディベロッパーにはない強みになる。お得意様の中には、私たち一般人が想像し得ないような資産家で、宝飾品や絵画などはもうお持ちで「単に贅沢なものは、これ以上要らない」という方もいらっしゃいます。そうした方には、私たちももっと新しいアライアンス先と組んで、旅行や介護用品、お孫さんに残すものなど、多様な提案をしていけたらと思っています。

 こうした顧客資産をどれだけ活かせるのかというのが、私たちがもし業態を転換したとしても、生き残るためのポイントになると思っています。


優良な顧客資産と外商部門を活かして消費者ニーズに合ったテナントを集め、百貨店を起点に街づくりを進めていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/16/110200011/110200003/zu01.png

これから求められる人材は「カウンセラー」

小野寺:中核がテナント事業へ移行していくと、社員にとっても、新しいスキルセットやマインドセットが必要になりますよね。そのあたりは、いま、社員の皆さんに対してどのような言葉で語られていますか?

忠津:これまでは「とにかく接客や販売が好き!」で、積極的に前に出て行くことが重要でした。これからも百貨店である以上、お客様視点での接客サービスが肝であることに変わりはないですが、自社で販売をしない売り場では、テナントのカウンセラー的役割が求められます。

平田:カウンセラー。

忠津:ええ。たとえば売上を伸ばすための施策でも、販売員の能力開発や、商品の品揃え、店頭のビジュアルマーチャンダイジングなどができるようになってほしい。もちろん、自ら店頭で経験を積んだ上での話です。その経験を踏まえ、カウンセリング視点を持って、テナントへの指導や援助をしていきます。また、経営的視点も必要です。売上に対する経費や人件費のコスト管理や、テナント契約の交渉をするための法律の知識などですね。

小野寺:これは、社員数は減ることになりますね。

忠津:はい。これまでは1店舗あたり500〜800人の社員で運営していましたが、テナント型に移行すると100人前後で運営することになります。

大丸松坂屋百貨店本社業務本部人事部部長 重田和美さん(以下重田):補足しますと、大丸松坂屋セールスアソシエイツという子会社を2012年に作り、自社売り場の販売はそこに販売委託しています。大丸松坂屋百貨店には、外商担当以外の販売員は基本的におらず、マネジャー、サブマネジャーやフロアスタッフ、販促担当スタッフなどの業務を担う少数の社員が売り場を支えています。

 最近は、大丸松坂屋に新卒入社すると、まずは子会社に出向して販売経験を積み、また大丸松坂屋に戻ってくる形になっています。

忠津:ですから、採用政策もこれまでは「一緒に販売を頑張ろう」と言っていましたが、今は「一緒に街づくりをしよう」と。そういうことを目指す人に来てくださいねという風に言っています。

 最近ご入社いただけている人材は、美術大学出身者や建築、都市工学、化学、バイオなど多様なバックグラウンドを持っています。

小野寺:販売人材からテナント運営人材へのシフト、求められるものがかなり変わりますね。率直にお聞きしますが、かなり難しいのではないですか。特に経験が長い方は。

販売か運営型かがせめぎ合っているのが現状

忠津:これまでははっきり「ビジネスモデルは販売ですよ」と言っていたので、それがものすごく今、せめぎ合っているのが現状です。仰るとおり、「最近の新入社員は、すぐに街づくりがどうこうと言うねえ」という人たちもいます。逆に若い子たちは「もっと新しい価値を生み出すために、もっと新しいことをしたい」と言います。

 これは、聞きようによっては「販売に対してあまり熱心じゃないね」となってしまうし、若い子たちからの「もうそういう時代じゃないんじゃないですか」という反論としても伝わる。大きな転換点になっているのだと感じます。

平田:冒頭で仰っていた営業改革の時代の人たちは、「販売は重要だよ。バイイングも自前でやるんだよ」ということで、販売重視で採用されたり育てられたりしたわけですよね。ここ15年くらいで大きな世代ギャップが生まれている感じですか。

忠津:さらに言うと、もっと上の世代は、「古き佳き百貨店」の時代を経験して、成功体験もありますから、「百貨店は永遠だ! ちゃんと、自分たちで商品を作って売ってこそ価値があるんや」という人も、厳然としているわけです。「うちにはトロージャンがあるじゃないか!」と。

平田:トロージャン??

忠津:うちの自社ブランドです。残念ですがご存知ない方もいらっしゃると思います(苦笑)。

小野寺:(平田、コラッ)すみません…私は知ってます。

忠津:トロージャンも、かつての売上の3分の1くらいになっています。でも、「私たちはかつてそういうブランドを作ってきたじゃないか! そういうのをやるべきなんだ!」という考え方もあります。いずれにせよ、「今後どこへ向かっていくのか」を示すことが求められているのです。

平等主義から、人材プール化へ

小野寺:仰るとおり、今はまさに転換期ですね。この9月から不動産事業部が立ち上がったばかりだとすると、新たに求められるスキルセットの方を育てるのはこれからだと思います。

重田:そうですね。

小野寺:経営戦略のゴールと人材の育成方針を、どのようにリンクしようとしているのか、伺ってよろしいですか。「新しい部署」で求められる「新しい経験」を、どのように積ませるおつもりなのでしょうか。

忠津:はい、これまでの当社の方針は「全員平等」でした。伝統的に大丸松坂屋というのは、ものすごく人材育成に力を入れていて、お金もかけるし、経営陣も非常に熱心です。

重田:店頭で働く一人ひとりの従業員たちがしっかり接客スキルを身につけ、サービスを向上させるのが最も大切ということで、「店学校」や「部学校」という販売技術やCRMなどの研修が現場で開かれ、やる気のある人は誰でも参加できるようになっています。また、キャリアサポートカレッジという、自己啓発の通信教育や社内外の集合研修などを受講できる制度もあります。

忠津:そうした全社員の底上げのための、画一的で手厚い教育機会の提供は、決して間違っていません。一方で、今後は横並びの教育だけではなく、特に優秀な人材を「全社人材」として早期選抜して育てていく方針を持っています。

小野寺:人材のプールを作るわけですね。

忠津:語弊がないといいのですが、人材育成を平等第一でやっていると、よく言われる「2:6:2の法則(※)」でいう、下の2割にどうしてもエネルギーが取られてしまいがちです。宿題をちゃんと出さないとか、結果がうまく出せずに「先が見えないから辞めたいです」とか。そういうフォローに猛烈にエネルギーを注いできたんですけれども、本当はむしろ上位2割の人材をしっかりとケアしないと、ふと気がついたらここが結構、辞めてしまうんです。

(※ 経験的に言われる、組織・集団における社員の状態の構成比率。働き蟻の法則ともいう)

できる人に「全社人材」として投資する

小野寺:全社的に平等主義だと、優秀な人からすると物足りないんですよね。

忠津:そうなんです。「なんだよ、一生懸命やったって、評価もほんのちょびっとしか変われへん」って、知らないうちに辞めてしまったり。ふと見渡してみたら、将来経営を担うような期待をされていた人材がいなくなっている、なんてこともあります。

 新たな育成方針では、もちろん全員に手厚い教育はやるんだけれども、エネルギーをどちらかというと上の2割に使いましょう、と。階層毎に全社人材の枠を決め、その人たちのキャリアパスやスキルセットをきちっと追っていきます。これは差別ではありません。手厚く投資した分は、ちゃんとリターンを求めるからです。普通よりも早く育ってくださいね、と。ダメだったら選抜枠から外れていきますし、その判断もきちっと基準を作って評価していく仕組みがスタートしました。

小野寺:投資する対象に優先順位をつけるのは、タレントマネジメントの基本的な考え方ですね。

忠津:早期選抜の仕組みにした理由はもう一つあります。優秀な人材は全社人材の枠の中に入れておかないと、店舗に「こびりついて」しまうんです。

平田:こびりつくとは?

忠津:全社的な配置異動をさせようとしても、現場から「出さない」と言われると動かさないのがこれまでの当社の体質でした。新卒で配属した瞬間から、「うちの店の子」になってしまうわけです。

小野寺:店長がそのような権限をお持ちなんですか?

重田:人事権が店長にあるわけではないんですけれど、店も業績の確保に必死ですからいい人は残したい。各店の中に人事もありますので。

忠津:「非常に優秀な人材だから、違う経験をさせますよ」と言っても、たった1人を異動させるために膨大なエネルギーを費す場合もある。極端にいうと「40歳にもなってずっとそこにおったんか…」という例も少なからず現実に起こっているわけです。そうすると逆に、本人たちは「なんで私たちはずっとこの店なんですか」と不満を抱えます。

小野寺:それは…会社にもご本人にも勿体ないですね。

忠津:だから、もっと全社的な視点でプールに入れて、「この人は全社人材ですよ」と。その代わり、異動配置で空きが出たら、ちゃんと他の人材を補充する。

平田:早期選抜して投資するというだけでなく、配置換えをスムーズに行うための仕組みでもあるんですね。

忠津:そして、そういうことをやらないと、新たなビジネスモデルで求められるスキルセットは身につかないんですよ。新たな事業を勉強させようと思ったら、百貨店の売り場から放して、本部の不動産事業部や会社の外へ出さないといけないですから。

 そういう目的で、9月1日にはJ.フロントリテイリングにグループ人事部を作りました。今後は大丸松坂屋百貨店だけではなく、グループ全体で人を採用し、育てて、強い組織を目指します。これだけ厳しい時代ですから、個社がそれぞれ頑張って強くなるということだけでは生き残れないなと。

 キャリアパスも、グループ全体で異動配置していくルートを描きます。基本は、「仕事そのものが人を育てる」というのが当社の考え方ですので。販売だけでも一定の人材育成はできてきましたが、やはりBtoCよりもBtoBの方が厳しく鍛えられるんですよね。テナント運営もBtoBですし。

 人材の適性を見極める上で、やってみないと分からないことも多いので、グループ全体で商社や飲食など百貨店以外の様々な道も含めてぐるぐる回り、それらのキャリアを持って売り場に戻ってマネジャーになった時に、テナント運営のスキルセットが身についている、それが、人事と企業目的とが重なるイメージです。


J.フロントリテイリング 業務統括部グループ人事部長 忠津剛光さん
最初のプールは経営層から

小野寺:よく分かりました。それでは、全社人材の評価基準の作成や選抜は、まずはどの階層から始めるんですか?

忠津:まず手始めに一番上の経営層のプールを作りました。これからミドルや若手も作っていきます。それをきちっと作れれば、劇的に変わると思います。

平田:え、経営層から?

小野寺:それは驚きです。こういう時は一般的にミドルから着手する会社が多いのですが、トップから着手できるのはすごいことです。ある意味、自分たちを縛っていくことでもあるので。そういう人たちが率いている組織というのは、希望を感じますね。

忠津:実を言いますと、私が人事面の改革に限らず、変革期に最も大切だと思っているのは、経営層がどう対応するか、なんですよ。こう言っては申し訳ないですけれど、企業が変わらなければならないという時でも、ミドル変革とか言って下にばかり変革を求め、実は上が変わらないために個別の努力が報われないというケースが、ほとんどだと思います。

平田:たしかに…。

忠津:まずは隗より始めよで、経営層のマインドを変えるとか、それができなければそれこそ経営層を入れ替えるくらいのことをやらないと。やっぱりトップの意思が強くないと動かないんです。

小野寺:つまり、社長がそういう目的を社内に向かって仰っているということでしょうか。

忠津:ええ。当社が今、いろんな変革を行える背景として、ちょうど去年あたりにうちの社長(J.フロント リテイリング山本 良一社長)が、コーポレートガバナンスの強化を掲げました。そして、経営層のレベルアップに注力するぞ、と。実はそれまで、経営層の人事には不透明な部分が多くありました。どこでも同じかもしれませんが。

平田:ブラックボックスだったんですね。

忠津:そこで、人事報酬委員会を作り、「なぜこの人を昇格させるのか」という評価理由をきちんと説明するようになりました。その議論を通して、誰もが認める資質や考え方を持っている人を選ぶので、経営陣のレベルも今後ますます上がっていくと思います。人事報酬委員会には、社外取締役の方にも入っていただいていますが、厳しいお言葉も含め、すごく色々なことを言ってもらって、本当に有り難い限りです。

小野寺:みなさん、そこで苦しんでますか?

忠津:それはもう、これまで言葉にする必要がなかったことを、ロジカルに説明し、理解してもらわねばなりませんから。甘えていた分、苦しいですよー、辛いですよー。

小野寺、平田:(笑)

インバウンドで“遅れた”改革を再加速

忠津:今回新たにビジョンも作りますが、掲げるだけではスローガンに過ぎないので、いかに真剣に浸透させるかというと、我々がどこまでできるかにかかっています。

小野寺:どれだけ口で言ったって、上が自ら示さないと、みんな信用しないし、徹底できないですものね。

忠津:それでも、うちは派手なスローガンを掲げているわけではないけれど、真面目に変わろうとしている会社ではあると思いますね。たまたま幸運なことに、そういう人間がトップに付いたということで。

 そして、社員たちはそれを見ていますよね。これまではなんかちょっと言っているだけで現実には起こらなかったような変化も、今はちゃんと少しずつ見えてきているなと。「世の中は変わってきているよね」と感じてもらえていたらいいなと思います。

平田:なんだか、一気に大きな組織変革に向かっている雰囲気が伝わりますね。

忠津:思い切って開き直って言えば、業績の停滞も変革にとって追い風です。悪くないと変えられないですから。

 今年に入ってからの様々な取り組みも、本当はもっと早く着手したかったものもあります。しかし、去年はインバウンドが好調で、百貨店の業績が少し浮上しました。インバウンドを除いた売上は落ちていましたが、「このままインバウンドはあと10年続く、景気はゆるやかに回復する」、そんな気分が、世の中にも当社にも漂っていました。

小野寺:そういう時は、いくら変革を叫んでも伝わらない。

忠津:まさしく。それがガラッと変わったお陰で、本気で変革しなければという危機感を持ちやすくなりました。人間は、逆風が吹かないと、なかなか変わらないんです。これからおそらく日本全体がすごく変わっていくでしょう。あとは、経営のマインドによって個々の企業の差が出てくるんじゃないかなという気がしています。

(後編に続きます)


このコラムについて

御社の人事“伝わって”ますか?
 あらゆる業種、業態が変化を迫られる時代。企業の仕事が変われば、働く社員に求めるスキルや評価、育成制度も変わらねばならない。ミスマッチがあれば改革は躓き、成功すれば成長を加速できるだろう。
 そして企業の人事制度は、「社員へのメッセージ」。
 会社はあなたたちをこう思っている、こう育って欲しいと思っている、それを具体的に伝える人事制度は、企業が生き残るための大きな課題であり、ツールなのだ。その巧拙は、社員が生き生きと成長しているか否か=メッセージが伝わっているかどうかで測られる。、
 変革期を迎えた企業がいま、人事制度をどう変えていこうとしているのか。組織開発コンサルタントとして、ブリコルールとブーケの2社を経営する小野寺友子氏、同社広報の平田麻莉氏、ふたりのワーキングマザーが、現場で奮闘する人事担当者に聞く。
日経BP社
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