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トランプ大統領で得をする日本企業は?(WEDGE)
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投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 11 月 23 日 10:50:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

トランプ大統領で得をする日本企業は?
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8277
2016年11月23日 山本隆三 (常葉大学経営学部教授) WEDGE Infinity


 企業に勤務していた時に米国に駐在し、日本と欧州向けの石炭輸出を担当していたことがある。時々、東部の炭鉱を訪問することもあった。輸出元であったケンタッキー州の石炭会社の従業員と一緒に州東部の彼の炭鉱にドライブした時のことだ、彼から「道の両側の畑の植物を知っているか?」との質問があった。見たことがなかったので、そう答えたところ、意外な答えが返ってきた。「大麻草だ」。彼によると、石炭以外に産業がない地域なので生計のため大麻草を育てているという。当然違法だが、地元の警察も見て見ぬふりなので、道路の両側が大麻草畑になってしまった。



 ペンシルバニア、ウエストバージニア、ケンタッキー、オハイオ州は、アパラチア炭田の北部地域として知られるが、貧しい地区もあり、いわゆるプアホワイト(貧しい白人)も多い。例えば、ウエストバージニア州は白人比率が94%と高いが、平均収入の中間値は全米50州中下から2番目だ。州の主要産業である石炭業の労働者は炭鉱夫を含め圧倒的に白人が多いことも、白人比率の高さに影響しているのかもしれない。炭鉱でセールス担当のマネジャーだった知人は、奥さんが博士号を持つ高校の数学の教員だったが、その年収が炭鉱夫の半分もないと嘆いていた。石炭関係以外の仕事があまりなく、低賃金になってしまうのだ。

 このアパラチア炭田のいくつかの州は、米国大統領選では接戦州と呼ばれる共和、民主両党の票が接近する選挙結果を左右する州になる。特にオハイオ州は、全米の縮図と言われここで勝たなければ、全米でも勝てないとされている。炭鉱で働く人は生産量の減少に合わせて減り、今は10万人を切ってしまったが、資材、機械を販売する企業、石炭を輸送する企業など関連する企業で働く人は多い。合わせれば100万人と言われる。炭鉱の恩恵を受ける地域のサービス業の従業員を合わせれば、相当の数の票になる。


■トランプの環境・エネルギー政策

 共和党支持者に信奉者が多い温暖化懐疑論の立場に立つトランプは、今回の選挙戦でもオバマ大統領が進めた温室効果ガスの削減を柱とする温暖化対策を全て見直すことを謳っていた。その最大のものは、国際的には温室効果ガス削減のため198カ国が合意し、11月4日に発効したパリ協定からの離脱であり、国内では石炭火力発電所の削減を狙ったクリーンパワープラン(CPP)の無効化だった。

 温室効果ガスの削減が必要ないとすれば、二酸化炭素の排出量が相対的に多い石炭の使用量を削減する必要はない。オバマ大統領は共和党が支配する議会の協力を得ることなく石炭使用量を削減することを狙い、環境保護庁の大気浄化法を利用し同庁が各州に対し二酸化炭素の排出削減を求めるCPPの体制作りに成功した。

 実行に際しては共和党知事の州からの反発に合い、訴訟が起こされたため司法の判断を仰ぐことになったが、司法の判断にかかわらずトランプはCPPの無効化を図ることになるだろう。その具体的な方法については、推測するしかないが、大気浄化法の修正、環境保護庁の体制を縮小し、実務的に対応不可能にするなどが考えられる。

 司法の場でも、政権末期にあったオバマ大統領が指名できなかったため現在空席になっている最高裁判事に保守派を指名することは確実であり、最高裁の構成を保守派5、リベラル派4とすることにより、CPPに対し否定的な立場の司法を作り出すことになる。

 トランプは米国のエネルギー自給率を100%にすると主張している。米国がサウジアラビアを抜き原油生産量世界一に、ロシアを抜き天然ガス世界一になり、図-1の通り昨年自給率が90%まで向上したのは、爆砕法を利用したシェールガス・オイルの生産増によるものだ。環境団体から批判を浴びることのある爆砕法については引き続き利用し、生産量の増加を目指す立場だ。さらに、トランプは石炭の復活を訴えていた。今回の選挙戦ではその路線が成功し、脱石炭を主張したクリントに勝ちアパラチア炭田の接戦州を制したようにも思える。


■オバマとは戦略を変え敗れたクリントン

 石炭産業では、経営者は共和党支持、炭鉱夫、特に組合員、は民主党支持だった。オバマ大統領の1期目から温暖化問題への取り組みに焦点が当たり、化石燃料、なかでも二酸化炭素排出量が多い石炭への風当たりが強くなりはじめた頃から炭鉱夫にも共和党支持が増え始めた。

 しかし、2012年の2期目の大統領選では、オバマ大統領は石炭支持を打ち出す。共和党の候補者だったロムニーも同様に石炭支持を打ち出し、泥仕合の模様になった(「オバマとロムニーの石炭戦争」)。選挙前には、必ずしも石炭支持ではなかった2人の候補者が共に態度を変えたのは、接戦州の石炭関連票のためだったのだろう。その結果、オハイオ、ペンシルバニア州はオバマが制することになった。 

 今年の大統領選では、クリントンは、このオバマの戦略を引き継がなかった。地球温暖化対策のため再生可能エネルギーの導入を訴え、疲弊していく産炭地対策としては、補助金によるインフラ整備、雇用創出、退職した炭鉱夫への年金維持などを打ち出した。もはや石炭の復活はないとの宣言に等しかった。二酸化炭素の補足・地中固定化(CCS)の利用が進めば石炭消費の減少に歯止めがかかるとの見方もあったが、クリントンの政策を見る限り、コストが高いCCSへの期待もないようだった。

 オバマとは異なり、反石炭の立場を鮮明にしたクリントンは接戦州での戦いに敗れることになった。オバマが勝利したオハイオ、ペンシルバニア州を失ったが、両州においてクリントンが勝利していれば、トランプ大統領は誕生しなかった。各州の石炭生産量と8年、12年と16年の大統領選での民主党の得票率が図-2に示されている。


■トランプの再生可能エネルギー政策

 2012年には「温暖化問題は、米国の競争力を奪うため中国がでっち上げた」とツイートしたトランプも、選挙期間中のインタビューでは「温暖化が人為的な原因で発生していることも少しはあるかもしれない」と温暖化懐疑論の立場を少し後退させた。テレビ討論でツイートのことをクリントンから責められた際には、「そんなことは言ってない」と否定していた。

 パリ協定離脱を明言しているトランプが温暖化問題に取り組むことはないだろう。再エネにも否定的だが、米国で導入が進む風力、太陽光発電については、共和党議員の地元との関係も考慮することになるだろう。例えば、米国の風力発電は、テキサス州、アイオワ州など共和党が強い地区に多く、風力発電設備の80%は共和党が優勢な地域に設置されている。風力発電設備量米国2位のアイオワ州のグラスリー上院議員(共和党)は、選挙前に「もし、風力発電の税額控除をトランプが廃止しようとするならば、私の屍を乗り越えなければならない」と発言しているほどだ。

 実際に、風力発電の導入量が多い州は、今回の選挙戦でも、表-1が示す通り、トランプの得票率が高い共和党の地盤だ。現在米国では、風力、太陽光発電に対し税額控除による支援制度があり、この制度が米国での風力と太陽光導入を支え、米国を世界2位の風力発電設備、4位の太陽光発電設備導入国に押し上げた。今後徐々に支援額は減少することになっているが、2005年にブッシュ大統領が導入し、共和党が多数の議会で2015年末に延長されたばかりのこの制度をトランプがどう扱うかが、いま米国の再エネ関連事業者の最大の関心事だ。税額控除がなくなれば、再エネ設備導入が一挙に減速するとみられている。



 トランプは税額控除制度に関する発言を行っておらず、制度をどう考えるのか不透明だが、再エネを含むエネルギーに関する投資については、ビジネスマンとしてのトランプの思考法がありそうだ。


■トランプの投資の判断基準は期間回収法

 トランプのエネルギー問題に関する発言をみていると、思考方法を垣間見ることができる。それは収益性重視だ。エネルギー関連の投資に関する政策決定を行う際には、当然収益性を検討することになるだろう。収益性をみる指標としては、日本でも米国でもキャッシュフローを基にし、時間の概念を入れたDCF(Discounted Cash Flow)法に基づき、内部収益率、IRR(Internal Rate of Return)あるいは純現在価値、NPV(Net Present Value)を計算するのが普通だ。

 トランプは、もっと単純な方法で投資を考え、費用に対する効果を常に求めている。例えば、米国が反カダフィ派支援を2011年に行なったことについては、次のようにコメントしている「反カダフィ派から助けを求められ時に、応じることは了解だが、見返りに今後25年間の石油生産の半分を寄越せと要求すべきだった」。

 エネルギー問題に関しトランプが判断基準として用いる収益率は、期間回収(Pay Back Period)法だ。投資額を何年で回収可能か計算し、意思決定に用いる。簡単な方法だ。2008年の著書では、建設中のビルを環境に対応した省エネビルにするように州政府に要請されたが、巨額の資金の回収に40年掛かり投資が成立しないとの話を披瀝している。2012年には、太陽光発電への投資の回収には32年必要だが、誰もそんな事業には投資しないと発言し、さらに2015年の著書では、投資の回収に20年必要な太陽光発電を良い投資とは呼ばないとしている。 

 投資を何年で回収できるかが、トランプにとっては重要な判断基準のようだ。補助制度により支えられている再エネについては、収益面からトランプの評価は低いようだが、税額控除制度の延長を認めた議会との関係などから、直ちに再エネの税額控除を見直す可能性は低いように思われる。


■日本企業のメリットは?

 さて、トランプの環境・エネルギー政策は日本企業に影響を与えるのだろうか。まず、今後化石燃料の開発には優遇策が講じられることになるだろう。例えば、連邦政府所有地での開発を容易にする、あるいは、税額、ロイヤルティーを減額するなどの施策が考えられる。米国でのエネルギー資源開発の権益を保有している日本企業にはメリットがある。

 最も重要な点は、米国のエネルギーコストが引き続き世界の中で圧倒的競争力を持ち続ける可能性が高いことだ。トランプは、炭素税、あるいは二酸化炭素の排出量取引はエネルギーコストの上昇を招くとして、反対の立場を鮮明にしている。共和党の政策綱領にも明記された。炭素に価格がかからず、国内の化石燃料の採掘を容易にする政策が採用されれば、米国のエネルギーコストは圧倒的競争力を維持することになる。

 図-3は、日米独の電炉向けの電気料金を示している。固定価格買い取り制度の賦課金を免除されているドイツよりも、米国の電気料金が競争力を持っている。シェール革命により天然ガスが価格競争力を持ち、米国の電気料金は図-4の通り家庭用において多少の上昇はあるものの、他先進国との比較では圧倒的に競争力を維持している。米国に進出している日本企業はこのメリットを受けている。さらに、シェールガスを原料として使用するため米国に進出を考えている化学関連メーカーにもトランプの政策は朗報だろう。




 再エネ支援策の見直しと同様に不透明なのが、自動車の排ガス規制と電気自動車(EV)への連邦政府の支援策の先行きだ。欧米メーカーがEVに力を入れる中(「次世代自動車競争、欧米に続き韓国も、大丈夫か? 日本車」)最近日本メーカーもEVに舵を切ったように思えるが、米国の政策が変われば、日本を含め世界のメーカーに影響がでてくる。その中でも11月17日に太陽光パネル業者のソーラーシティを2200億円で以て買収する決定をしたばかりのテスラは、大きな影響を受ける可能性がある。

 もう一つ見逃せないのが、石炭支援のトランプは、オバマが決定した米国輸銀の途上国の石炭火力発電設備への融資禁止を見直す可能性が高いことだ。石炭火力発電設備を得意とする日本の重工メーカーには間接的な支援になる。ただし、CCSの将来は全く不透明となった。米国でCCSに関与する日本企業は苦しい立場になる可能性がある。

 トランプが大統領に就任し、具体策を打ち出すまで分からないが、現時点での予想に基づけば、日本企業もエネルギー・環境政策のメリットを享受できる可能性がかなりありそうだ。 



 

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