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農産物価格高騰や栄養価低下、世界の農業に異変  欧州資源大手がロスネフチに巨額投資  アマゾンの知られざる実店舗戦略  
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 12 月 15 日 01:08:12: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

農産物価格高騰や栄養価低下…世界の農業に異変

マッキンゼー・エクセレンス 

あなたが知らない日本と世界の「食と農業」の姿(上)
2016年12月15日(木)
ルッツ・ゲッデ、ヤコブ・フィッシャー、ニコラス・デニス、田中正朗、山田唯人
※上記筆者のうち、田中氏・山田氏は日本語版の監修


コメ1トンを生産するのに必要な農業原材料コスト(肥料、農薬、種子のコスト)を、国際的に比較すると、日本のコストは、米国・中国の概ね4倍にもなっている。
 「食と農業」という言葉から──身近なところではグルメ情報、少しお堅い分野なら農協改革や食料自給問題、のような話を想像なさったのなら──少し驚かれることだろう。この記事では、経営コンサルティング会社大手、マッキンゼー・アンド・カンパニーの農業グループが、グローバルな視点で仔細に食と農業の分野を点検した結果についてレポートする。そして、「食糧需要は2030年までに40〜50%も増加する」とか「野菜の栄養価が50年で20〜50%も低下した」などというように、農業の本質的なところで、とても大きな変化が起きていることをお伝えすることになる。
 マッキンゼーが最近公表したレポート「日本における農業の発展、生産性の改善に向けて」は、こうした“あなたが知らない日本と世界の「食と農業」の姿”を描くとともに、日本の農業が未来型産業として生まれ変わる方法を提案している。2回に分けて、そのレポートのエッセンスをご紹介する。第1回(上)の今回は、「日本の農業のユニークさと、グローバルに見た食と農のトレンド」について分析する。

“ユニークな産業”へと発展を遂げた日本の農業

 日本の農業は、近年、産業としてはかなりの規模に発展している。

 1970年に120億ドルであった農業GDP(名目。2005年ドル水準での実質では720億ドル)は、1985年には410億ドル(同。実質は770億ドル)に成長した。統計で確認できる直近のデータとしては、2013年には580億ドル(同。実質でも580億ドル)と、世界で第9位の規模だ(名目GDP、2013年)。

 規模もさることながら、実はその中身が、グローバルに見ると、良し悪し両面にわたってかなりユニークだ。では、日本の農業について、生産〜流通〜消費のバリューチェーン(事業価値の連鎖)をたどりながら、その特徴を明らかにしてみよう。

コメを生産する時の原材料コストは、米国・中国の約4倍

 コメ1トンを生産するのに必要な農業原材料コスト(肥料、農薬、種子のコスト)を、日本・米国・中国で比較すると、日本のコストは、米国・中国に比較して概ね4倍にもなっている。コメだけかと思いきや、大豆と小麦についても、米国・中国に比較して、大豆は概ね5倍、小麦も3倍になっている。

 この大きな価格差には、構造的要因がある。今回コストを比較した中国、米国とは別の国になるが、韓国のこれら農業原材料の購買プロセスと比較すると、差を生む要因が分かりやすい。

 韓国の肥料業界などは、既に業界内の統廃合が完了していることもあって、原材料の調達は、少数のメーカーが大ロットで海外の調達先と直接取引をしている。これによって、商社などの輸入代理業者へのマージンがまず発生しない。加えて、日本の港は他国と比較すると水深が浅いため、1隻当たりの積載量を減らさざるを得ない。韓国との比較では10%程度は少ない積載量になる。さらに日本では、商社が輸入をしているために、商社の複数の取引先に対応して複数の寄港が必要だが、韓国ではそれがないのだ。

非常に小さく断片的だが、肥沃な農地

 日本は、農業経営体全体の8割を、所有耕地面積2ヘクタール以下の生産者が占めている。国土の広さなど、米国や中国よりも日本の条件に近いEU諸国の中で、ポルトガルやイタリアも似たような状況(経営体数や中山間地比率が日本と同水準)だが、2ヘクタール以下は5割にとどまっている。

 日本では3%に過ぎない10ヘクタール以上の農地を持つ生産者が、ドイツ、デンマーク、フランス、オランダでは全体の6割弱〜8割弱を占める。これらの国と比較すると、日本は農業生産効率上、不利な状況となっていることがわかる(■図表1)。

■図表1 ヨーロッパの主要国と日本の耕地面積別経営体数の内訳
日本は中山間地比率が高いなどの理由で、経営体当たりの農地面積が小さい

国名=の後の数字の単位は、千経営体。円グラフの中の数字の単位は%。円グラフの下のグレー地の楕円の中の数字は、中山間地比率(%)

資料: ユーロスタット、欧州委員会、農林水産省、マッキンゼー分析
 だが、悪いことばかりではない。農地の用途別割合を米国、オーストラリア、中国と日本を比較すると、日本の農地の80%は水田もしくは畑であり、米国、オーストラリア、中国のように、農地の60〜80%が牧草地である国とは内容が異なる。水田が農地の50%以上を占めているということは、総体として農地の水資源が豊富であることを示している。

輸出は伸び悩んで来たが、和食ブームが追い風

 日本からの農産物の輸出は、1960年代以降、年間30億ドル内外でほぼ一定だ。諸外国の中で、例えば米国、オランダ、ドイツが1970年代以降、急速に農産物の輸出を増やし、数倍から十数倍になったのと対照的だ。

 その反面、食料品の輸入を考慮した場合、日本の輸入量は1990年の360億ドルから2013年の610億ドルに増加した。年率にすると4.2%増となる。一方で、日本の農業GDPの成長率は、同じ期間で年率マイナス2%である。

 だが、「和食」(日本人の伝統的な食文化)が、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されたことが転機になる可能性がある。日本政府は、食品および農産物の輸出額を2020年までに100億ドルに増やすという高い目標を掲げた。実際、2014年には輸出額が60億ドルを超え、2015年は10月までに60億ドルを達成しており、追い風が吹いていると言える。

 では、ここで目を世界に転じて、グローバルに見たマクロトレンドを確認しておきたい。

世界の食料需要は増加の一途

 世界の人口は増加し続け、2030年には80億人を超える見込みだ。2009年と比較すれば10億人以上の増加だ。この量的なインパクトだけでも、食糧需給に与える影響は多大だが、質的な変化も加わる。生活水準の向上に伴い、1人当たりの摂取カロリーが増加するのだ。マッキンゼーは、2030年の肉の消費が2009年比で7割増になると予想する。肉と生産量トップ4品目の農産物(トウモロコシ、小麦、米、大豆)については、量的、質的変化の影響で、2010年の需要に比較して2030年は4割から5割増になると見込む(■図表2)。

■図表2 世界の人口の増加および食生活の変化により、2030年には農作物の需要が40〜50%増加

資料: 米国農務省、国際連合食糧農業機関(FAO)、エキスパートインタビュー、マッキンゼー分析
 このトレンドの一部は、中間消費者層(年収2万ドル〜7万ドル)の拡大による個人消費の増加の結果だ。全世界の中間消費者層は、経済発展と人口増の双発エンジンにより急拡大している。こうした消費者が使う食費は、拡大しこそすれ、減少することなどないはずだ(■図表3)。

■図表3 全世界的に中間消費者層は拡大している

資料: グローバルインサイト、Cityscope database、マッキンゼー分析
土地の荒廃や水資源不足で
生産性伸び率は低下し、食料価格は高騰する

 一方、主要作物の生産性の伸びは、1960年代以降、低下する一方だ。国連食糧農業機関(FAO)のデータをマッキンゼーが分析したところ、世界の主要作物の収穫量の伸び率は、1960年代は2.2%あったが、2010年代は1.2%と半分近くの水準となった。土地の荒廃や水資源の不足などにより、伸び率が改善するには厳しい状況だ。2009年のSAGEのレポートによると、世界の耕作地の20%は既に荒廃して、農業に適さなくなっていると報告されている。水資源についても2025年には27%が不足する見込みだ。

 世界的な食料需要の増大と生産の停滞から起こるのは、食料価格の高騰だ。1990年からだけを見ても、2007〜08年と2011年に食料価格がピークを迎え、食料危機とも言える状況に陥った。2002〜04年を100とした食糧価格指数で見ても、2度のピーク時は200を超えた。現在(2016年時点)では、食料価格は直近のピーク時に比べれば低下しているが、長期的には今後再び上がっていくと想定される(■図表4)。

■図表4 2007〜2008年と2011年の食料危機は、食糧価格の大きな変動期の到来を告げる警告かもしれない

資料: FAO食品価格指数、Ronald Trostle(米国農務省)、Peter Timmerワーキングペーパー163(世界開発センター)、世界銀行、マッキンゼー分析
農産物の栄養価が低下したため、質への要求が高まる

 ■図表5は、農産物43品目の栄養価を分析した結果だ。1950年以降1999年までに、ほとんどの栄養素の含有量が低下している。キュウリの鉄分は75%も減り、トマトのカルシウム、レタスのビタミンB2も半分以下になった

■図表5 より栄養価の高い食料へのニーズ: 食品の栄養価が低下
1950〜1999年における農産物43品目の栄養素含有量; mg/100g

(1)平均栄養素含有量 43品目の栄養素をDavis, Epp and Riordan 2004の手法で測定した

資料: Davis, Epp and Riordan 2004、米国農務省、マッキンゼー分析
 この結果、昨今の健康志向ブームを指摘するまでもなく、改めて農産物の質を要求するトレンドが起こるものと予想される。

 ここまで見てきたところで、グローバルに分析すると、需要の爆発的増加や、土地の荒廃や水資源不足による生産性の伸び率低下、農作物の栄養価の低下といったマクロトレンドがみられることが分かって頂けただろうか。

 翻って日本の農業を眺めると、和食などの「ユニーク」な強みはあるものの、生産コスト高といった多くの課題もありそうだ。

 次回(下)は、こういった課題解決の方向性に加え、「アグテック(農業とテクノロジーの融合)」、「デジタル農業」などと言われる新たなウェーブを紹介し、読者の皆さんの農業に対する見方を一新したいと思う。


このコラムについて

マッキンゼー・エクセレンス 
 この連載では、大手戦略コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーの現役パートナーら幹部が、グローバルに蓄積した最新の知見に基づいたビジネスアドバイスを、じっくりとお伝えしていきます。

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欧州資源大手がロスネフチに巨額投資

The Economist

ロシアへの経済制裁もさほどの抑止力にならず
2016年12月15日(木)


間近で会話を交わすプーチン大統領(左)と、ロスネフチのセチン社長(写真:ロイター/アフロ)
 スイスの大手資源商社グレンコアと同社の筆頭株主であるカタール投資庁は、ロシア最大の国営石油会社ロスネフチの株式の19.5%を102億ユーロ(約1兆2400億円)で取得する。ロシアが2014年にウクライナ東部で軍事紛争に手を染めて以来、ロスネフチは西側による経済制裁の対象となっている。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とロスネフチのイーゴリ・セチン社長は思いがけない形で勝利をつかむこととなった。これはロシアが進める野心的な民営化計画における最大規模の案件だ。ロシア政府は手にする資金を2016年度予算の赤字補てんに充てつつ、引き続きロスネフチの経営を担う。

 この件は、業界に古くから存在する羨望心を煽ることにもつながる。ある関係者が言うように石油業界は、世界第2の原油生産量を誇るロスネフチと張り合う競争状態にある。

 グレンコアは昨年、コモディティ価格の低迷を受けて、配当の停止と資産の売却を余儀なくされた。さらに25億ドル(約2900億円)の新株を発行せざるを得なかった。同社のアイバン・グラゼンバーグCEO(最高経営責任者)がその後、これほどの包括的戦略を間髪入れずに進めるとは誰も予想しなかった。

 グレンコアの発表によると、今回の株式購入で同社が負担するのは3億ユーロ(約365億円)分のみ。残りはカタール投資庁からの資金とノンリコース型の銀行融資で賄う(セチン社長によると「欧州で最大級の銀行」を通じて取り付けた融資とのこと)。

制裁下でもロシアを再評価?

 グレンコアは、ロシアに科されている経済制裁については言及しなかった。同社を創設したのはトレーダーとして成功し巨万の富を手に入れた故マーク・リッチ氏。1980年代に米国がイランに科していた経済制裁に違反したことで悪名高い人物だ。だがグレンコアの弁護団は今回の投資について、制裁破りとしてペナルティを受けるリスクがないことを確認済みだとみられる。英国の石油会社BPは2013年からロスネフチ株の19.75%を保有している。

 ロシア向けの制裁には曖昧な部分があるため、西側の投資家たちは、対象となっている企業や個人との取引に慎重な姿勢を取ってきた。このためロスネフチは中国やインドで出資者を募るだろうと見られていた。今年、ロシアが国債を発行したとき、米国とEU(欧州連合)は米国および欧州の銀行に対して関わらないよう勧告した。

 グレンコアがロスネフチへの出資を進めた事実は、米国のトランプ次期大統領がロシアとの和解を主導するという見通しの中、投資家がロシアに対する評価を見直している可能性を示している。米当局の中にはこの知らせに不意打ちをくらった者もいた。当局関係者の一人は「我々はこの事態についての判断を急ピッチで進めているところだ」と語った。

得点続けるセチン社長

 今回の契約でグレンコアは、追加で日量22万バレルの原油を5年にわたって取得できる。これにより同社の事業は躍進するだろう。だがグレンコアは同時に、ロシアとOPEC(石油輸出国機構)が交わした「ロシアは日量30万バレルを一時的に減産する」という合意についても考慮する必要がある。

 グレンコアがロスネフチに投資したことで、トラフィギュラは憤るだろう。トラフィギュラはロスネフチにとって最大のライバルだ。ロスネフチの創業者であるリッチ氏が運営していた企業グループの元従業員が創業し、スイスのジュネーブに本社を構える。トラフィギュラは近年、どこよりも親密な関係をロスネフチと築いてきた。今年はロスネフチと共同でインドの製油大手エッサール・オイルを買収している。

 ロスネフチのセチン社長は中堅石油会社バシネフチをロシア政府から買収するなど、このところ立て続けに成功を収めている。今回の株式売却もその一つに加えることができる。

 当局は、ロスネフチが親会社のロスネフチェガスから自社株を買い戻す措置を取る可能性を示唆していた。今回の出資案件を期限内に成立させ、それによって調達する資金を年度末までに政府の予算に組み入れられるようにするためだ。

 「ロスネフチがこれを実現したことに、皆が一様に驚いている」。モスクワで勤務する、オーストリア・ライフアイゼン銀行のアンドレイ・ポリシャック氏はこう語った。

© 2016 The Economist Newspaper Limited.
Dec 10th 2016 | MOSCOW
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。


このコラムについて

The Economist
Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。
世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。
記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。
このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/121400113/


 


アマゾンの知られざる実店舗戦略
シリコンバレーNext
食品スーパー「Amazon Go」だけじゃない
2016年12月15日(木)
中田 敦
 米Amazon.comが米国で「実店舗」に関する戦略を加速している。2016年12月5日(米国時間)に発表した食品スーパー「Amazon Go」だけではない。同社は書店「Amazon Books」の多店舗化を進めているほか、2016年5月からは提携食品スーパーの商品を2時間以内に配達するサービスをカリフォルニア州などで開始済み。日本では知られていないAmazonの実店舗戦略を解説する。
 Amazonが2017年初めに米シアトルに開店する予定の食品スーパーAmazon Go(写真1)は、同社のAI(人工知能)技術のショールームになりそうだ。この店舗には商品の精算レジが無く、店舗や商品棚に据え付けたカメラやセンサーが買い物客の行動を捉え、買い物客がどんな商品を購入したかをAIが判断して、精算を済ましてしまうからだ。

写真1●米Amazon.com本社ビルにできた食品スーパー「Amazon Go」
出典:米Amazon.com
 買い物客はスマートフォン用のAmazon Goアプリケーションを改札にかざして入店する。後は棚にある商品を自分の買い物袋に入れるだけ。画像認識AIがどの買い物客がどの商品を買い物袋に入れたかを判断し、その買い物客の仮想的な「ショッピングカート」に商品を入れていく(写真2)。

写真2●Amazon Goで商品を選択するイメージ
出典:米Amazon.com
 一度手に取った商品でも後から商品を棚に戻せば、仮想ショッピングカートからは削除される。画像認識エンジンは買い物客が商品を棚から取り出した動作だけでなく、棚に戻した動作も識別するためだ。買い物客は商品の入った買い物袋を持ってそのまま店を出れば買い物が完了し、買い物客の「Amazonアカウント」に課金される。
商品は食品が中心、荷物の詰め替えは不要
 Amazon Goの面積は1800平方フィート(約170平方メートル)で、日本のコンビニエンスストアよりやや大きい程度。店内で調理したサンドイッチや総菜のほか、パンや牛乳、卵、チーズといった食料品、チョコレートやスナック類、30分で夕食を用意できる2人分の食材セット「Amazon Meal Kits」などを販売する。
 Amazon Goの利点はレジでの行列や精算の時間を短縮できること。スーパーのレジでは店員に代金を支払う時間だけでなく、ショッピングカートから商品を取り出してバーコードをスキャンし、商品をショッピングバッグに詰め替える作業時間も発生している。むしろかかる時間としては、後者の詰め替え作業の方が長いぐらいだろう。商品棚にある商品をそのまま買い物袋に詰め込めるAmazon Goは、詰め替え作業の時間を完全に取り除ける。
 食品スーパーであるAmazon Goは、書店の「Amazon Books」に続く同社の実店舗となる。Amazon Booksの1号店は2015年11月にシアトルに開店(写真3)。これまでにカリフォルニア州サンディエゴ、オレゴン州ポートランドに出店したほか、ニューヨークやイリノイ州シカゴへの出店計画も公表している。

写真2●シアトルの「Amazon books」
撮影:平尾 敦
 米国のメディアは、Amazonが実店舗を大量に出店する計画だと報じている。米Business Insiderは2016年10月に、Amazonが今後10年間に最大2000店の食品スーパーを出店する予定であり、今後2年間でまずは20店を出すと報じた。米Wall Street Journalは2016年2月に、同社がAmazon Booksを最大400店出展する計画だと報じている。
実店舗からの即時配達はこれからどうなる?
 Amazonの実店舗展開で気になるのは、同社がこれらの実店舗をeコマースの拠点として活用するか否かである。実はAmazonは米カリフォルニア州の一部地域で2015年11月から、商品を注文から1〜2時間で配達する「即時配達」のサービス「Amazon Prime Now」の一環として、提携する食品スーパーの「Sprouts Farmers Market」や「Bristol Farms」などの実店舗にある商品を配達し始めているのだ。
 顧客は「Amazon Prime Now」スマホアプリやWebサイトを使って、近所にある食品スーパーの商品を注文する。そうするとAmazonの配達員が2時間以内にそのスーパーの商品を配達してくれる。配達料金は1回当たり7.99ドルで、営業時間は午前8時から午後10時までである。
 もしAmazonの実店舗からも即時配達するようになれば、即時配達の商品の種類や拠点を増やせる。現在のAmazon Prime Nowは、Amazonの倉庫や提携スーパーの店頭にある商品、提携するレストランの料理を即時配達しているが、実はこの分野でAmazonは既存の小売りチェーンに遅れをとっているのだ。
 米国では既に、Amazonの大手小売りチェーンがシリコンバレーの「配達スタートアップ」と提携し、「店舗にある商品を即時や即日で配達する」というサービスを提供している。
 例えば、ドラッグストア大手の「Walgreens」や米Appleの直営店「Apple Store」、衣料チェーンの「American Apparel」は、サンフランシスコを拠点する米Postmatesと提携して、店舗の商品を1〜2時間以内に配達するサービスを提供している。
 ディスカウントストアの「Costco」や「Target」、高級食品スーパーの「Whole Foods Market」は、サンフランシスコの配達スタートアップ米Instacartと提携して即時配達をしている。家電量販店の「Best Buy」やペット用品店の「PetSmart」は、メンローパークに本社を置く米Delivと提携して、その日のうちに商品を届ける「即日配達」を提供する。
 いずれも顧客がスマホのアプリを使って店舗にある商品を注文すると、スタートアップの配達員が商品を顧客へ届けるという仕組みだ。PostmatesのHolger Luedorf上級副社長は「注文から配達までの平均時間は34分だ」と語る(写真4)。Luedorf氏によればPostmatesは既に、月間150万個の荷物を運んでいるという。

写真3●米PostmatesのHolger Luedorf上級副社長
撮影:中田 敦
 こうした即時配達は一見、日本でイトーヨーカ堂などが展開する「ネットスーパー」に似ているが、仕組みは大きく異なる。
「Uber X」と同じ一般人活用モデルで商品配達
 まず、こうした即時配達の担い手はシリコンバレーのスタートアップであり、小売チェーンはスタートアップが提供する即時配達の「プラットフォーム」を利用しているだけだ。消費者からの注文を受け付けるシステムや商品をピックアップするシステム、商品を配達する配達員などはスタートアップが用意しており、小売りチェーンは自前でシステムを構築する必要は無い。
 配達の仕組みも日本と異なる。スタートアップの配達員は、配達1件ごとに手数料を受け取る「独立契約者(事業者)」、つまりは一般人だ。一般人が自家用車や自転車を使って商品を配達する(写真5)。スタートアップと配達人の間に雇用関係はなく、事業の契約の関係だ。米Uber Technologiesの白タクサービス「Uber X」と同じ「オンデマンドエコノミー」や「ギグエコノミー」と呼ばれるスキームで商品を配達しているのだ。

写真4●Instacartの配達員
撮影:中田 敦
 Amazonも2015年10月に、一般人が商品を配達する「Amazon Flex」という仕組みを開始済み。Amazonと既存の大手小売りチェーンがシリコンバレーのスタートアップを巻き込みながら、「実店舗」と「オンデマンドエコノミーによる即時配達」を巡って競うことになるのか。Amazonの次の一手は、ここが焦点になりそうだ。


このコラムについて
シリコンバレーNext
「シリコンバレーがやってくる(Silicon Valley is coming.)」――。シリコンバレー企業の活動領域が、ITやメディア、eコマースといった従来の領域から、金融業、製造業、サービス業などへと急速に広がり始めている。冒頭の「シリコンバレーがやってくる」という言葉は、米国の大手金融機関、JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEO(最高経営責任者)が述べたもの。ウォール街もシリコンバレー企業の“領域侵犯”に警戒感を隠さない。全ての産業をテクノロジーによって変革しようと企むシリコンバレーの今を、その中心地であるパロアルトからレポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/061700004/120800169/
 

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