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「週150分の早歩き」で4年半寿命を延ばせる 老いと闘うことと若さを諦めること ショーシャ式 食物繊維が最高に健康にいい
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投稿者 うまき 日時 2018 年 10 月 19 日 17:13:32: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

「週150分の早歩き」で4年半寿命を延ばせる

金 2018/10/19, 15:02
【第9回】 2018年10月19日 サンジブ・チョプラ :ハーバードメディカルスクール教授,デビッド・フィッシャー ,櫻井祐子
「週150分の早歩き」で4年半寿命を延ばせる

テレビからネットに雑誌、書籍まで、世の中にはまことしやかな「健康情報」が、日々次から次に流れている。コレを食べると「やせる」「血液さらさらになる」などとテレビで放送されると、翌日にはスーパーからその食品が消えるといったことが繰り返されている。
だが、実際にはその情報の信頼度はバラバラで、何の科学的証拠もないものが「とても健康にいい」と喧伝されていることも少なくない。
では、いったい何を信じればいいのかと思ってしまう人も多いのではないだろうか。
そこで、ハーバードメディカルスクールの教授であり医師としても活躍する著者が、数十万人を何十年も追った大規模研究など、信頼性の高い膨大な研究の網羅的な分析によって明らかになったことを集め、「これだけは間違いなく『いい』と断言できる」という食物・習慣を抽出した。その内容を一冊にまとめたのが『ハーバード医学教授が教える健康の正解』だ。ここでは同書から「運動」の驚きの効果について論じた部分を特別に公開する。

「運動せよ」が医師として最良のアドバイス
 私が医師として患者に与えられる最良のアドバイスは、これだ。

「動いて、動いて、動き続けろ!」

 定期的に運動する人が元気で長生きすることは疑問の余地がない。

 売上が年間10億ドルを超える医薬品も珍しくないこのご時世に、まったくお金がかからず、それでいて超高価な処方薬に匹敵するほど効果の高いものがあるなんて、信じられないほどだ。公園を散歩するなどの簡単なことで、寿命を何年も延ばせるというのだ。

 ビタミンDを生成する日光と同じで、人生で最高のもののなかには、まったくお金をかけずに簡単に利用できるものがある。

 ニューヨーク・タイムズは、こんなふうに説明する。

「私たちの遺伝子が運動を好むように進化したことは、多くのエビデンスが示している。いいかえれば、先史時代には、体が強くなく、すばやく動けない人は生きられなかった。体力のある人だけが生き延びて子孫を残し、より『運動に適した』遺伝子を伝えた。だが現代の運動不足の生活では、そうした遺伝子がさまざまな悪影響をおよぼし、慢性疾患の原因になっているとする研究もある」

 こう考えるとわかりやすいだろう。

 もしも「運動」を丸薬や錠剤、飲み薬にして、瓶詰めにして売り出すことができたら、それはたちまち世界で最もよく処方され、最もよく売れ、最もよく効く薬になるだろう。

 しかもそれは完全に無料で、秋に落ち葉をかき集めたり、お気に入りのコーヒーを飲むために近所の喫茶店まで歩いたりするくらいの簡単なことなのだ!

運動は超強力な「クスリ」である
 ハーバードとスタンフォードのメディカルスクールが行い、2013年にイギリスの医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』に掲載された共同研究は、33万9274人を対象とした305件のランダム化比較試験を分析し、運動と薬物療法の有効性を比較し、また対照群とも比較して、死亡率への影響を検証した。

 その結果、2型糖尿病、心不全、慢性脳卒中、慢性心臓疾患という、生命を脅かす4つの疾患や症状について、運動と薬物療法のあいだに統計的に検出可能な差が認められなかった。

 研究責任者のフセイン・ナシによると、彼らが驚いたのは「運動に、重篤な慢性疾患患者に対する強力な救命効果が認められた」ことだ。「また意外にも、身体活動がほかの多くの疾患におよぼしうる効果がほとんど解明されていないことがわかった。私たちは運動の健康効果を知らないことで損をしているのかもしれない」

 定期的な運動には、早期死亡リスクを下げ、体重管理を助け、心臓疾患や2型糖尿病、脳卒中、認知低下、うつ、特定の種類のがん、骨粗鬆症と骨折、性的不能のリスクを低下させる効果があることが、研究で示されている。

 いちばんわかりやすい効果は、減量と体重維持だろう。食事制限なしの運動だけで劇的にやせることはないが、定期的な運動で数キロ減らすだけでも、健康状態を大いに改善することができる。

 アメリカは肥満の急速な増加という、大きな問題を抱えている。そして太りすぎの人はそうでない人に比べて病気やケガをしやすく寿命も短いことは、多くの研究が示す通りだ。

 私は肝臓専門医として講義をするとき、いまやアメリカでは非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)が最も一般的な肝疾患なのだと説明している。

 肥満と2型糖尿病の増加が明らかに影響をおよぼしているこの疾患をもつ人は、アメリカには約4000万人いると推定される。NAFLD患者は15?20%の確率で肝硬変になり、合併症を発症すれば肝移植が必要になることもある。

 アメリカでは今後10年以内に、肝硬変およびNAFLDに伴う合併症が、肝移植の主な適応疾患になると考えられている。

「週150分の早歩き」で4年半寿命を延ばせる
 アメリカ国立がん研究所栄養疫学部門のスティーブン・ムーア博士率いる研究チームは、ライフスタイルと疾患リスクの関連性を調べた6件の大規模研究の参加者65万人以上から収集されたデータを分析した。

 この研究の結果は、論文審査のあるオンライン医療専門誌『PLOSメディシン』に2013年に掲載され、1日10分早歩きをする人は、運動習慣のない人に比べて寿命が1.8年長かったこと、また世界保健機関の推奨する週150分の早歩きによって4年半も寿命を延ばせることを示した。

 20年以上前に公衆衛生局長官によって発表された、最初の身体活動と健康に関する報告書は、運動の効果を次のようにまとめている。

「(身体活動には)早期死亡リスクと心臓疾患、高血圧、結腸がん、糖尿病のリスクを低減させるなどの効果がある。また定期的な運動参加は、うつや不安を減らし、気分を改善し、生涯にわたって日常生活動作の能力を高めるようだ」

 報告書は続けて断定する。

「高齢者か若年者かにかかわらず、日常的な身体活動レベルが高い人ほど死亡率が低く、日常的な身体活動レベルが中程度の人でさえ、レベルが最も低い人に比べて死亡率が低かった」

 それ以降、この結論は多くの研究によって確認、補強されている。

 たとえば2008年にアメリカ保健福祉省は、長期的研究のメタアナリシスに基づく、健康的な生活を送るための新しいガイドラインを発表した。13人の識者が10年ぶりに科学的研究の包括的レビューを行い、こう結論づけている。「定期的な身体活動には、心臓発作と脳卒中のリスクを20%以上低減させ、早死にするリスクを下げ、高血圧、2型糖尿病、結腸がん、乳がん、加齢による骨折、うつ病を予防する効果がある」

(本原稿は書籍『ハーバード医学教授が教える健康の正解』からの抜粋です)

サンジブ・チョプラ(Sanjiv Chopra)
ハーバードメディカルスクール(ハーバード大学医学部)教授。医師。米国内科学会最高栄誉会員(MACP)。ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(ハーバードメディカルスクール附属病院)肝臓科上級医長。毎年150ヵ国8万人の医師を教える、世界で最も学術的に優れた医師生涯教育プログラムである、ハーバードメディカルスクール生涯教育部門の部長を12年間務める。医療現場での臨床判断のツールとして世界60万人以上の医師によって利用されているインターネット上の電子教科書「UpToDate」の肝臓病セクションの編集責任者も務める。ハーバードメディカルスクール優秀教育者賞、ロバート・S・ストーン賞(ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターで医師、スタッフ、学生により選出)、米国消化器病学会優秀教育者賞、エリス島名誉勲章など多数の賞を受賞している。

デビッド・フィッシャー(David Fisher)
著述家。15冊以上のニューヨークタイムズベストセラーの著書を持つ。

櫻井祐子(さくらい・ゆうこ):訳者
翻訳家。京都大学経済学部卒、オックスフォード大学大学院で経営学修士号を取得。訳書に『CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見』『選択の科学』(ともに文藝春秋)、『OPTION B 逆境、レジリエンス、そして喜び』(日本経済新聞出版社)、『イノベーション・オブ・ライフ』(翔泳社)、『第五の権力』『0ベース思考』『SPRINT最速仕事術』(いずれもダイヤモンド社)など。


 

老いと闘うことと若さを諦めること
人生の未来予想図を描いてみた


和田秀樹 サバイバルのための思考法
2018年10月19日(金)
和田 秀樹

 私は老年精神医学のかたわら、自分の老化予防をかねてアンチエイジングのクリニックを開いている。

 この分野で著名なフランスのクロード・ショーシャ医師と2004年に知り合ったことが発端だ。彼は英国の故ダイアナ妃の主治医や、クリントン米元大統領のアンチエイジングのコンサルタントを務め、今でも人気俳優ジャッキー・チェンやコン・リーのアンチエイジングの主治医をしている。私は彼の著書の日本語版に解説を寄せ、その優れた理論を知ったことをきっかけに、ショーシャ方式の施術を手掛ける自費診療のクリニック「和田秀樹こころと体のクリニック」を開いた。開業以来、香港にあるショーシャ方式のクリニックで指導を受けている。


アンチエイジングでいつまで若さを保てるか(写真:PIXTA)
 世界に20カ所あるショーシャ方式の提携クリニックの中で、私のところだけが流行っていないという現状だ。日本で自費診療というと、美容外科や痩身治療のような即効性のあるものがウケるようだ。ただ私個人についていえば、ショーシャ方式のアンチエイジング治療を開始して10年になり、効果を実感している。あまり年を取ったようには見えず、肌も若いと言われるし、しわもほとんどない。あと、2年で還暦と考えるとありがたかったと思っている。

 そこで今回はサバイバルのために老いと闘うことと、若さをいつ諦めるのかについて考えてみたい。

コレステロールの気にしすぎは危険
 私の周りの文化人や有名人の方を見ていると、年を取るほどダイエットに気を使う方が多い。あるいは、中高年以降は血糖値や血中のコレステロール値を気にする人も多い。

 もっとも東京都小金井市の70歳を対象とした10年間の追跡調査ではコレステロールがやや高めの人が最も死亡率が低かった。標準とされている体重よりやや太めの人の方が長生きしていることを示す、いくつもの調査結果もある。

 血糖値にしても、厳格にコントロールをし過ぎるとかえって死亡率が高まるという大規模調査のデータがいくつか出ているし、高齢者の臨床をしていると、血糖値を正常にしようとすると低血糖の時間帯ができて、ぼんやりしたり、失禁したりする患者を時々見かける。

ダイエットすると老けて見える
 それ以上にアンチエイジングの立場からみると、血糖値やコレステロール値を下げるために食事量を制限すると、栄養不足となって老けて見えることが多いし、臓器へのダメージも大きい。

 特に高齢者は食事量を減らしてのダイエットはすべきでないという臨床感覚を抱くようになった。ショーシャ先生も食べる量を減らすより、食べても太らなかった若い頃の代謝をサプリメントを使って取り戻すことや、食べる順番や時間帯を工夫してダイエットする方法を推奨している。これが気に入って、彼に弟子入りしたくらいだ。

 ショーシャ先生が食べてはいけないと考えるのは、特定の食品ではなく、アレルギーを引き起こすような、個人の体質に合わないものだ。アレルギーというと、じんましんやショック症状のような急性型のものだけでなく、体の酸化を何日間か引き起こす慢性型のアレルギーがある。

 それを血液検査で知って、食べるのを避けるよう指導するが、基本的にそれ以外のものは十分に食べ必要な栄養を取るのがショーシャ方式のダイエットだ。

 そのほか私自身、しわを消すためにボツリヌス毒素を使っているし、髪も染めている。

 見た目が若い方が気持ちも若返るからだ。

 男性ホルモンも重要だ。これが足りないと意欲や性欲が低下する。異性に関心がなくなるだけでなく人に関心がなくなるようで、人付き合いがおっくうになってくる。そのほか、記憶力や判断力の低下にもつながることがわかってきた。

 男性ホルモンのレベルを保つためには、その材料であるコレステロールはむしろ高めがいい。また世間でタブー視されがちだが、性的な興奮も重要だ。世界中の先進国の中で、唯一日本だけ一般的なハードコアポルノの流通が合法とされていないが、セックスレスの多さや中高年層の活力のなさにつながっているのではないかと心配してしまう。

 老いとの闘い方は徐々にわかってきている。

 薬やサプリメントを使うことが反則のように思う人が多いが、平均寿命が延びた以上、若々しくいられる時期を延ばさないと老け込んだ「老後」があまりに長くなってしまう。

いずれ老いを受け入れねばならぬ
 ただ、いつまでも老いと闘い続けることは、生物学的に困難になるのも事実だ。

 吉永小百合さんのような見た目が若い70代の人が、いつまでその若さを保てるかは医者として興味があるが、さすがに90歳近くなると限界がある。

 脳を使うことで認知症の発症は遅らせることができるのは、私の臨床からも実感する。発症後も、脳を使う人の方が進行が遅いというのは、経験上は言えることだ。

 ただ一方で、私が高齢者専門の総合病院である浴風会病院で解剖所見をずっと見てきた限り(年に100例にはなる)、85歳歳を過ぎて、アルツハイマー型の脳の変性が全く起こっていない人はほぼいなかった。

 我が国で発表されている様々な認知症有病率の統計によれば、85歳を過ぎると40?50%が、90歳以上で約60%が認知症の診断基準に当てはまってしまう。

 認知症を遅らせたり、寝たきりや要介護になる時期を遅らせたりすることは可能だろうし、そうした方がいいが、やはり長生きをすればいつかは罹患するという事実も受け入れないといけない。

 日本でもっとも汎用される認知症の診断スケールである長谷川式簡易知能評価スケールを開発した長谷川和夫医師が、昨年自らの認知症を公表して、いくつかの新聞のインタビューに応えている。「年を取ったんだからしょうがない」と認知症を受け入れ、世間が思っている以上に、発症前と自分の主観的な世界に連続性があるということを伝えるために講演活動に勤しんでいる。

 「認知症になったら安楽死したい」というように、老いや衰えを否認したり、あるいは認知症になることを必要以上に恐れるより、誰もが発症する可能性があると開き直って、そうなった際に受け入れる方が(主観的には)幸せなように思えてならない。

 老いや衰えに直面した際に、「年を取ったから仕方ない」と受け入れる時期が必要だということだ。

 だとすると、いたずらに不安になったり、老いを遅らせることばかり考えるより、どんな衰えが現れるのかをきちんと知っておく方がいいだろうし、そうなったときにどうすればいいか、どんな医療制度が使えるのかも知っておいていい。

 実際、会社に勤める40歳以上の人は給料から、年金生活者は年金から、介護保険料を天引きされているのに、保険の使い方を知らない人もものすごく多いというのが高齢者専門の医師としての実感だ。

 老いを受け入れる覚悟と、そうなったときの準備が大切だというのが、長生きの時代に長生きの人を多く診てきた私がたどりついた結論だ。

世代別に見る老化対策、60代は受難
 ということで、いつからどのようなかたちで衰えが現れるのか示した人生の未来予測図のようなものが必要だと私は考えるようになった。何歳までどのように老いと闘い、いつから覚悟を決めて介護などの準備に入った方がいいかを判断できる指針となる。

 実際、老いとの闘いの重要ポイントは年代によって違っている。

 40代であれば、最大の敵は意欲低下(このために体や脳を使わなくなると老化が速くなる)であり、その元凶となるのが脳の前頭葉と言われる部分の萎縮と、男性の場合は男性ホルモンの減少だ。

 普段のルーティンとは異なる行動をとることが、前頭葉の老化予防に役立つ。なるべく毎日違う道を通るとか、違う店で食事をするとか、あるいは右寄りの思想を持つ人は左翼系の雑誌などを読み、逆に、左寄りの人は保守論壇の本を読むなどといったことだ。いつも同じような本を読んだり、同じような数学の問題に取り組んだりしている人は、いくら内容が難しくても、側頭葉や頭頂葉の働きはよくなるが、前頭葉にはあまり影響しない。

 ホルモンの分泌量を保つ方法は前述の通りで、コレステロールを目の敵にすべきでない。

 50代になると健康診断で異常値が出ることが増え、それに一喜一憂する人が増えるが、それが死亡率の増加につながるエビデンス(科学的根拠)を示す国内の大規模調査はほとんどない。がんは日本人の死因順位のトップではあるが、がん死亡率は1000人に3人程度だ。

 うつ病が増えるのは40代からだが、50代でも自殺も死因順位の3位くらいに入っているし、そのために長年続けてきた仕事が継続できなくなる人が多い。メンタルヘルスに気を使うとともに、前頭葉が衰えないうちに、定年後の対策をしておいた方がいい。

 60代は長寿社会の受難の時期だ。定年などで会社にいられなくなるし、子供も自立していなくなる時期だ。さらにいうと80代後半から要介護や認知症が急激に増えることを考えると親の介護ものしかかる。メンタルヘルスの維持とアンチエイジングに努めないと、その後の人生がかなりつらいものになる。

 70代は個人差がものすごく出る時期だ。前述の吉永小百合さんや現役の政治家、財界人のように大成功者もいる半面、60代までにうつや脳血管障害、あるいはアンチエイジングに取り組んでこなかったために、要介護状態になったり、すっかり老け込んだ感じになる人も多い。親は亡くなり介護が必要なくなる代わりに、周囲で頼りにできる人も少なくなる。実は70代前半までは認知症よりうつ病の方が多い。記憶力が衰えたり、着替えをしなくなっても認知症でなくうつ病を疑う姿勢も重要だ。

 80代は要介護や認知症が急激に増える。老いを受け入れるとか、よほどの幸運がないとそれがいずれは来るという覚悟や、介護保険の利用、高齢者住宅・施設への転居などの準備がないと本人や子供世帯に大きな負担となりかねない。

 90代は、ラッキーでない人以外は認知症や要介護が前提になるので、それを嘆くより受け入れることが必要だ。

 と、概略的ではあるが、傾向と対策を並べてみた。知っているようで知らないことが多いというのが普段、高齢者に接してみての印象だ。興味を持たれた方は、拙著『年代別 医学的に正しい生き方 人生の未来予測図』に目を通していただければ幸いだ。


このコラムについて
和田秀樹 サバイバルのための思考法
国際化、高齢化が進み、ストレスフルな社会であなたはサバイバルできますか? 厳しい時代を生き抜くアイデアや仕事術、思考法などを幅広く伝授します。

カラダの中から美しく痩せる-ショーシャ式-体内リズムダイエット

neko
5つ星のうち4.0肌がキレイになりました。
2013年3月19日
形式: 単行本Amazonで購入
主な内容は、良質の植物オイルを摂る、タンパク質をメインにする、炭水化物は控える、
生の食べ物を摂る、抗酸化サプリメントを摂る、などです。
エリカ・アンギャルさんやペリコーン博士の本にも同様のことが書かれています。

加えて、内臓のリズムについて書かれています。
それぞれの臓器の活動している時間に合わせて
“1日3食+間食”という内蔵に負担をかけない食べ方をすすめています。

私にはこの方法が合っているようで、肌の状態が驚くほど良くなりました。
1ヶ月程度しか続けていないので、体重はそれほど減少していませんが、
今後も続けていきたいと思っています。

抗老齢化医学の世界的権威であり、アンチエイジングの名医として活躍しているクロード・ショーシャ博士が提唱する、ダイエット成功のための「食ルール」を解説。内臓に負担をかけない食べ方(1日3食+間食のリズム食べ)、食材選び(体の内側から若返る食材)、調理法(生に近い状態がベストで、高温加熱はNG!)など、カラダの中から美しく痩せるための実践的なダイエットメソッドを多数紹介しています。
<例>
・ 「体重が減らない!」のは老化現象のひとつであることに気付きましょう
・ ダイエットの最大の敵は細胞膜が傷つき細胞に炎症が起こることです
・ 食事を4回に分けて正しく摂るだけで自然にダイエットできます
・ タンパク質から食べると血糖値の急激な上昇を防ぐので内臓に負担がかかりません
・ 飽和脂肪酸とトランス脂肪酸はダイエットの大敵
・ 天然のサーモンはオメガ3がたっぷり摂れる良質脂肪の宝庫
・ ブルーベリーとカシスは脳のアンチエイジングにもダイエットにも最適なフルーツ
・ こげた肉はたばこ10本吸うのと同じ毒性があります

著者について
クロード・ショーシャ博士(Dr.Claude Chauchard)
抗老齢化医学・予防医学博士。「ラ・クリニーク・ドゥ・パリス・インターナショナル」会長。1945年フランス・ローデ生まれ。フランス・モンペリエ大学医学部卒業後、同大学助教授に。免疫学、生物学、スポーツ医学分野で医学博士号を取得。1980年国際予防抗加齢医学研究所、ならびに、「ラ・クリニーク・ドゥ・パリ」を設立。予防医学の第一線で活躍。35年にわたる細胞研究より、体の内側から美しく若返るには、内臓の代謝リズムに合わせて食事を摂る「タイムリー・ニュートリション」のコンセプトが重要であることを導く。この究極の食事療法は、医学界、栄養学界、美容界など、健康と美を追求する世界中のスペシャリストに支持され、患者には王侯貴族やハリウッドスター、スポーツ選手などの著名人も多い。また、世界中にメソッドを普及させたいという使命から、世界17ヵ国11医院の提携クリニックを持ち、イタリア、スペイン、ポルトガル、ロシアなどのヨーロッパ諸国、日本、韓国、台湾、フィリピン、タイなどのアジア諸国、アメリカ、中東諸国……と1か月のうちに約4万キロを飛行機で移動して患者の診療を続けている。加齢プロセスに関する著書の発行累計は140万部を超える。世界各国で翻訳版が出版されており、日本での著書に『30日間で10歳若返る!』(日経BP社)がある。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122600095/101700039/

【第7回】 2018年10月19日 ロバート・H・ラスティグ , 中里京子
「食物繊維」が最高に健康にいい5つの理由 血糖値とコレステロールを低く抑える!すぐ満腹になる!

「低炭水化物ダイエットは正解か?」
「脳が砂糖をやたら欲しがるのはなぜか?」
「食べた分だけ動けば確実にやせるのか?」
「カロリーを減らせば体重は減るのか?」

これらの「食事の疑問」に答えつつ、「人が太るメカニズム」を医学的に徹底解明したNYタイムズベストセラー『果糖中毒』が9/13に発売された。

アメリカの一流メディカルスクール教授が229の医学論文から「食事の正解」を導き出し、「健康な脳と体」に戻るための処方せんをあざやかに提示したとして、原書はアメリカで12万部を超え、アマゾンレビュー987件、平均4.6と高評価をたたき出した。

最新のWHO統計によると、現在世界で約19億人が「体重過多」、約6億5000万人が「肥満」だという。これは世界中の人々が運動を怠けて、食べ過ぎた結果なのか? 『果糖中毒』では、「肥満は自己責任論」を全面否定し、現在の「肥満の世界的大流行」は糖分、特に「果糖」が主な原因だと結論づけている。

ここで『果糖中毒』の一部を特別に無料で公開する。

肥満に立ち向かう
最強の武器

 砂糖に含まれるブドウ糖はインスリンの量を上昇させ、果糖はおびただしい量のエネルギーを肝臓に直接送って、ただちに処理させようとする。そして両方とも、肥満とメタボ症候群を押し進める。

 食物繊維は、インスリンレベルを低く保ち、エネルギーが肝臓に押し寄せるのを抑えることによって、肥満とメタボ症候群との闘いを助ける。その特性は次の5つだ。

特性1 血糖値の上昇をゆるやかにする
 食物繊維(水溶性と不溶性)を食事でとると、食物と腸壁のあいだにゼラチン質のバリアができ、腸がブドウ糖、果糖、脂肪を吸収する速さが緩やかになる。ブドウ糖の吸収が緩やかになると、血糖値の上昇も緩やかになり、ピークの値も下がる。

 これを受けて、血糖値の上昇が緩やかで、かつ低くなったことを察知した膵臓は反応を弱め、放出するインスリンの量を減らす。インスリンの量が減ると、脂肪に変わるエネルギーの量も減る。2型糖尿病の患者が高食物繊維食をとると、血糖値が3分の1低くなるため、体内の総インスリン負荷も下がる[1]。

 果糖の吸収についても同じことが起きる[2]。食物繊維は果糖の吸収量を下げるだけでなく、「流速」、つまり吸収された果糖が肝臓細胞に押し寄せるスピードも下げる。

 こうして肝臓は処理に「追いつく」ことができるようになり、新たな果糖がやってくるペースに合わせて、果糖分子をアセチルCoAに変換できるようになる。これにより、アセチルCoAは、ミトコンドリアのクエン酸回路で燃やされるようになる。

 もはや、果糖がミトコンドリアに押し寄せたあと、それを処理しきれなくなったミトコンドリアに追い出されて脂肪に変えられ、インスリン抵抗性を引き起こす、という状況はなくなる。

 そのため、果糖を含んでいるフルーツを食べても、果糖の影響の大部分が食物繊維の存在によって緩和されるため、さほどたいした問題にはならないのだ。

特性2 悪玉コレステロールのレベルを下げる
 大きな母数集団では、血中コレステロール濃度が低いと、心臓病の発生率も低いという関連性が見出されている。コレステロールの目的の1つは、胆汁酸(腸にある脂肪の吸収を助ける)の生成を促すことで、胆汁酸の一部は大便に排出される。

 そのため、胆汁酸をなくすことができれば、コレステロールのレベルも下げられる。水溶性食物繊維は胆汁酸に結び付くので、LDL(悪玉コレステロール)を下げることができる。不溶性食物繊維もまた、コレステロールのレベルを下げ、血糖値を低く抑えるのに役立つ。

特性3 早く満腹感を感じさせる
 あなたはマカロニ・アンド・チーズ〔チーズソースがかかったマカロニ料理〕を一皿食べたのに、まだ空腹だ。なぜだろう? 胃のなかに食べ物があると「グレリン」のレベルが低下するので、視床下部に、もう空腹ではないと知らせるはずなのに、あなたはまだ食べ足りない。

 その理由はこうだ。「空腹感がない」という現象は「満腹感を抱く」という現象とは違うのである。食べ物が小腸を通り抜けるときには、ペプチドYY(3-36)(PYYとも表記される)と呼ばれるホルモンが血中に放出され、視床下部にある受容体に結合して満腹であることを知らせる。

 PYYは満腹シグナルだ[3]。問題は、PYYシグナルを生成するには、食べ物が腸のなかを7メートル近く進んでいなければならないことである。それには時間がかかる。そのため、腸のなかで食べ物を速く動かせるものならなんでも満腹シグナルを早く生成させることになる。

 不溶性食物繊維は、まさにこの役目にぴったりだ。食べ物が腸内を移動するスピードを加速して、PYYシグナルを早く生成させる。水溶性食物繊維は粘性のゲル状物質になって、胃から食物が出るのを遅らせることにより、早く満腹感を感じさせる。どちらのタイプの食物繊維も、おかわりの必要性を減らし、さらなる体重増加を防いでくれる[4]。

特性4 食事性脂肪の吸収を遅くする
 食物繊維があると、一部の食事性脂肪は小腸で吸収される速度が遅くなる。食物繊維のおかげで速度が遅くなった食事性脂肪は結腸まで進む。そこでは吸収は起きないので、インスリンのレベルを低く抑えることができる[5]。

 いまだに議論の余地はあるものの、肥満とインスリン抵抗性に対する効果は、水溶性食物繊維より不溶性食物繊維のほうが大きいと考えられている。

 このプロセスの欠点は、この過程で食物繊維は、大量の窒素、二酸化炭素、メタン、そして少量の硫化水素を生成することだ。言わば、脂肪(ファット)をとるか、それともおなら(ファート)をとるか、なのである。

特性5 腸の善玉細菌を増やし、「太らせ因子」を食い止める
 人間の体には、約10兆個の細胞がある〔60兆個あるいは37兆個とする説もある〕。だがあなたの腸に住んでいる細菌は、なんと約100兆個だ。彼らはヒトを10倍もの数で圧倒しているのだ! 

 長年にわたり腸内細菌は、無賃乗車して不適切なときにガスを放ち、ときどき「旅行者下痢」に乗っかって出ていくだけのものと考えられていた。

 だが実のところ腸内細菌は、私たちのエネルギー代謝の大きな部分を担っている。腸内細菌の大部分は大腸に住み、嫌気性だ。つまり、酸素抜きに代謝を行うので、酸素を使って燃焼を行うものより、多くのエネルギーをムダにする。

 でも、もしすべての栄養素(脂肪、ブドウ糖、果糖を含む)が小腸で吸収されるのなら、大腸に住む細菌が食べるものなど残っているのか、と思われるだろう。

 実は、彼らが食べるのは、体が吸収できないもの、すなわち食物繊維、それも特に水溶性食物繊維なのだ。これこそ、オオバコなどに由来する食物繊維のサプリメントが、あれほどのガスを発生させる理由である。

 腸内細菌は数千種類もあるが、科学界では、これまで3種類に的を絞って研究してきた。つまり、バクテロイデス門、フィルミクテス門、古細菌だ。腸内の細菌構成が、ある種の人々の体重増加を促す一因になっていることは、ほぼ確実である。そして食生活の食物繊維構成は、腸内細菌のプロファイルを決定する一因になっている[6]。

 というのも、食物繊維はより多くの栄養素を腸の奥深くにもたらし、そこにいる腸内細菌が、それらをエネルギーに利用するからだ[7]。

 すべてを総合すると、食生活の食物繊維内容を変えることは、腸内細菌の内容を変えることになり、「善玉」細菌を増やして、「太らせ因子」となる細菌を食い止めることができる[8]。

[1] R. E. Post et al. (2012) “Dietary Fiber for the Treatment of Type 2 Diabetes Mellitus: A Meta-Analysis,” Journal of the American Board of Family Medicine, 25 (1): 16-23.
[2] R. Levine (1986) “Monosaccharides in Health and Disease,” Annual Review of Nutrition, 6: 211-4.
[3] C. J. Small et al. (2004) “Gut Hormones and the Control of Appetite,” Trends in Endocrinology and Metabolism, 15 (6): 259-63.
[4] P. D. Cani et al. (2009) “Gut Microbiota Fermentation of Prebiotics Increases Satietogenic and Incretin Gut Peptide Production with Consequences for Appetite Sensation and Glucose Response after a Meal,” The American Journal of Clinical Nutrition, 90 (5): 1236-43.
[5] D. Lairon et al. (2007) “Digestible and Indigestible Carbohydrates: Interactions with Postprandial Lipid Metabolism,” The Journal of Nutritional Biochemistry, 18 (4): 217-27.
[6] G. D. Brinkworth et al. (2009) “Comparative Effects of Very Low-Carbohydrate, High-Fat and High-Carbohydrate, Low-Fat Weight-Loss Diets on Bowel Habit and Faecal Short-Chain Fatty Acids and Bacterial Populations,” The British Journal of Nutrition, 101 (10): 1493-502.
[7] R. Krajmalnik-Brown et al. (2012) “Effects of Gut Microbes on Nutrient Absorption and Energy Regulation,” Nutrition in Clinical Practice, 27 (2): 201-14.
[8] G. D. Wu et al. (2011) “Linking Long-Term Dietary Patterns with Gut Microbial Enterotypes,” Science, 334 (6052): 105-8.
(本原稿は書籍『果糖中毒』からの抜粋です。訳者による要約はこちらからご覧になれます)

著者について
ロバート・H・ラスティグ(Robert H. Lustig)
1957年ニューヨーク生まれ。カリフォルニア大学サンフランシスコ校小児科教授。マサチューセッツ工科大学卒業後、コーネル大学医学部で医学士号を取得。2013年にはカリフォルニア大学ヘイスティングス・ロースクールで法律学修士号(MSL)も取得。小児内分泌学会肥満対策委員会議長や内分泌学会肥満対策委員会委員などを歴任。「果糖はアルコールに匹敵する毒性がある」と指摘した講義のYouTube動画「Sugar: The Bitter Truth(砂糖の苦い真実)」は777万回以上視聴されるほど大きな話題になった。
中里京子(なかざと・きょうこ、訳者)
翻訳家。訳書に『依存症ビジネス』(ダイヤモンド社)、『ハチはなぜ大量死したのか』(文藝春秋)、『不死細胞ヒーラ』(講談社)、『ファルマゲドン』(みすず書房)、『チャップリン自伝』(新潮社)ほか。
https://diamond.jp/articles/-/182634  

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コメント
1. 2018年10月19日 17:16:03 : ZzavsvoOaU : Pa801KbHuOM[48] 報告
2018年10月19日 木原洋美 :医療ジャーナリスト
腰痛治療で「手術」を安易に選んではいけない理由
安易な手術は少なくない
安易に行われている手術も少なくない(写真はイメージです) Photo:PIXTA
腰痛はつらいものだ。とにかく、この長く続く痛みから解放されたいと思い、治療手段として手術を安易に選択する人も少なくない。しかし、その「手術」という選択は正しいのだろうか。「痛み」の治療の専門家である横浜市立大学付属市民総合医療センターの北原雅樹医師に取材した。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

手術の効果は1ヵ月で消え
薬物療法で体調悪化
「この痛みと体調の悪さは、生涯治らないのでしょうか。だとしたら、私はもう、苦しむためだけに生きているようなものです」

 痛み治療で名高い、横浜市立大学付属市民総合医療センターの北原雅樹医師に対して、男性(90代)は涙ながらに訴えた。

 腰痛に苦しみ、複数の病院を渡り歩いてきた男性がカバンから取り出して見せてくれたのは、がんの緩和ケアなどで処方される強力な痛み止めと、うつ病や統合性失調症患者によく処方される不安や緊張を和らげる薬だった。腰痛への投与は認められているが、高齢者への投与は、重い副作用がある場合が多いため、慎重に行う必要がある。

「この薬を飲むと、頭はボーッっとするし、だるくて動けないし、食欲もなくなるし、何もできなくなってしまうのです。かといって飲まないと痛くて、トイレに行くのも大変です」

 およそ1年前、男性は、“奇跡のように腰痛を治療する”ことで知られる、有名整形外科医のもとを受診した。

 診断は「脊椎管狭窄症(せきついかんきょうさくしょう)」。身体への負担が小さく、日帰りで行える内視鏡手術を受けた。

「局所麻酔で、意識があるまま、先生と会話しながらの手術でした。途中『ちょっと押される感じがしますけどね、大丈夫ですよ』とか声をかけていただきましたが、正直、ちょっとどころじゃなく痛かったです。それに恐怖心もありました。でも、術後、ちょっと休んだだけで痛みがうそのように消えて、歩けるようになったんですよ。あの時はうれしかった」

北原医師
痛み治療で名高い、横浜市立大学付属市民総合医療センターの北原正樹医師

 しかし、治療効果は長続きしなかった。1ヵ月ほどで腰痛再発。次に訪れたのは、都心にある大学病院の整形外科だった。診断名は「椎間板ヘルニア」。

 やはり、内視鏡での手術を勧められたが、前回の手術後、すぐに痛みが再発したことを考えると、とても受ける気にはなれなかった。

「それで、『もう手術は勘弁してください』と断ったら、神経ブロック注射を進められました。でも神経ブロックは、以前受けたことがあるんですよ。効かなかったんです。それで断ったら、薬をたんまり処方されました」

 枯れ枝のように痩せ細った手足を震わせながら話す男性は、診察室の椅子に座っているのさえつらそうだった。

 1時間以上にも及ぶ診察の後、北原医師が下した診断は、意外なものだった。

「その腰痛は、手術後のリハビリ不足と栄養失調が原因です。そもそも高齢者に、手術のような侵襲性の高い(患者の体に負担の多い)治療を行うのはどうかと思いますし、手術自体、本当に必要だったのか疑問です。術後に年齢や日常生活に見合ったリハビリをさせないのもいけない。アメリカでは承認すらされていない身体に悪影響のある薬を処方しているのも言語道断。今後は、痛みをコントロールしながら、専門的なリハビリテーションと食事療法を組み合わせて受けていただきます。頑張って、動ける身体を取り戻しましょう」

日本の慢性痛医療は
世界より20年遅れている

「あの男性の場合、ほぼ『医原病』と言っていい。不適切な治療が原因の腰痛です。腰痛に限らず、日本の慢性痛医療は世界より、20年遅れています」

 北原医師は無念そうに語る。

「最も大きな問題は、慢性痛に関する社会的な認知度の低さです。医療者は慢性痛を把握しておらず、一般市民にも認知されていません。現在、日本には約2000万人の慢性痛患者さんがいるといわれ、慢性痛による経済的損失は数兆円に上ると推計されているのに、です」

 とりわけ、国民皆保険制度が整っているヨーロッパ先進諸国(特にアルプス以北の北・西ヨーロッパ諸国)およびオーストラリアとの格差は大きいらしい。

 これらの国々の腰痛治療の良い点をざっくりとまとめると、次のようになる。

◎保険が出来高払いではなく、定額払い制度である

 余分な治療をして支出が増えると、逆に医療機関の収入が減ってしまう(ゆえに、余分な治療はしない)。

◎手術適応を決める際に、現在の症状・所見だけでなく、心理社会的要因も考慮に入れて行う

 日本のある病院の脊椎外科では、カンファレンス(治療方針等の話し合い)の際に、各患者の名前(姓のみ)と画像だけを見て、手術が必要かどうかを決定している。年齢、社会的状態(手術後誰がどこで面倒を見るのか、など)、困っている症状、心理的な状態などは一切討議しない。これは極端な例ではあるが、日本の病院ではまれなことではない。

 一方、痛み治療の先進諸国では長期的な見地から、手術を行った場合、行わなかった場合、患者の生活にそれぞれどのようなメリット・デメリットがあるかを様々な角度から検討する(多くの場合、脊椎外科医だけでなく、MSW〈医療ソーシャルワーカー〉、PT/OT〈理学療法士/作業療法士〉、臨床心理士などが参加し、対等の立場で議論する)。

◎家庭医制度がしっかりしており、ゲートキーパーの役を果たしている

 国民皆保険制度が整っているのにもかかわらず、家庭医制度が確立していない国は、日本くらいしかない。

 痛み治療の先進諸国では、手術を行う専門医に患者を紹介するのは家庭医であり、手術ができるか、あるいは手術の『有用性』(その手術をして患者さんのQOL/ADLが改善するのか)を、専門医と連絡を取りながら患者・家族とともに決めるのも家庭医だ。彼(女)らは慢性痛についてある程度教育を受けているので、非特異的腰痛症(※注1)などの元々手術適応が低い患者は紹介しない(手に余る慢性痛患者は痛みの専門医に紹介する)。

 また、脊椎専門医も、成功の可能性が低い手術を無理やり行ってうまくいかなかった場合、紹介してきた家庭医の信頼をなくし、紹介患者が減ってしまうので、十分に検討する。

※注1 非特異的腰痛症とは
医師の診察および画像の検査(エックス線やMRIなど)で腰痛の原因が特定できるものを特異的腰痛症、厳密な原因が特定できないものを非特異的腰痛症という。例えばギックリ腰は、椎間板を代表とする腰を構成する組織のケガであり、医療機関では腰椎捻挫(ようついねんざ)または腰部挫傷(ようぶざしょう)と診断される。しかし、厳密にどの組織のケガかは医師が診察してもエックス線検査をしても断定できないため、非特異的腰痛症と呼ばれる。腰痛の約85%はこの非特異的腰痛症に分類され、通常、腰痛症といえば非特異的腰痛症のことを指す。

◎患者も慢性痛についての知識がある程度以上あるため、不要な医療は避ける傾向がある

 一般市民への健康情報提供をメインとしたWEBサイトが多くあり、質の高い情報に容易にアクセスできる。また、オーストラリアでは行政が、慢性痛(腰痛)について一般市民への啓発活動を積極的に行っている。

◎集学的痛みセンターシステムがある

 集学的とは、患者の病状に応じて、領域横断的に様々な治療法を組み合わせること。オーストラリアは国策として、慢性痛対策の中心となる集学的痛みセンターが、人口150万〜200万人あたりに1ヵ所配置されている。手術適応がない(原因がよくわからない)慢性痛は痛みセンターに集約され、集学的な治療が行われる。また、痛みセンターは、医療者や一般市民への啓発・教育・広報活動も担っており、地域の慢性痛診療のリテラシーの向上に寄与している。

 ちなみに、日本では集学的痛みセンターは、横浜市立大学付属市民総合医療センター、愛知医科大学など、全国に数箇所しかない。

◎心理社会的要因についての卒前(卒後)教育が医療者に行われている

 ほとんどの国では、健康と疾患に関連した生物・行動・心理・社会学の知識を統合した学問領域である行動科学(behavioral science)が卒前に必須であり、疾患や症状に心理社会的要因が関与しうる、ということを医療者が知っている。また、卒前・卒後教育の中で慢性痛について教えている国もある。

 日本でも、外圧により(医学教育の国際認証で行動科学が必須のため)ようやく行動科学が医師の卒前教育に取り入れられることになったが、日本国内に、教えられる人はどれだけいるのかは不明。

「痛み治療が進んでいる国々なら、冒頭の男性のように、安易な手術が行われるようなことはありえない」

 北原医師は断言する。

 さて、腰痛で整形外科を受診した際、心理社会的な要因について、医師から質問された人はどれくらいいるだろう。大概は、簡単な問診・触診、血液検査とレントゲン検査程度しかされないのではないだろうか。

 痛み治療の先進諸国と日本の違いは、あまりにも大きい。

 今年8月、北原医師が率いる横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニックは、「神奈川県における慢性痛対策としての啓発活動の実施」と題する事業を企画し、「神奈川県大学発・政策提案制度」に応募。採択され、パイロット的に横須賀・三浦2次医療圏(人口約70万人)を対象として、医療者/一般に対する慢性痛の啓発活動を行うことが決まった。

 今後は県の助成金を受け、医療者(医師だけでなく訪問看護師や薬剤師など多職種)、患者とその家族、一般市民に向けた、「慢性痛に関するリテラシーの向上」を目指し、

・医療者向け講演会
・NPO法人ワークショップ
・市民公開講座

 などを開催する予定だという。

 日本の慢性痛患者2000万人に、希望の光が差す日は近いかもしれない。

◎北原雅樹(きたはら・まさき)
横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニック診療教授。1987年、東京大学医学部卒業。医学博士。専門は難治性慢性疼痛。帝京大学医学部付属市原病院麻酔科、帝京大学医学部付属溝口病院麻酔科勤務後、米国ワシントン州立ワシントン大学集学的痛み治療センターに臨床留学。帰国後、筋肉内刺激法(IMS)を日本に紹介する。2006年より東京慈恵会医科大学ペインクリニック診療部長、2017年より横浜市立大学付属市民総合医療センターに移籍。IMS治療の第一人者としてテレビ、新聞、雑誌などでも幅広く活躍中。
https://diamond.jp/articles/-/182659

2. 2018年12月02日 11:42:21 : KwThCeoYoo : 8bFUdx30v1s[15] 報告
>老いや衰えに直面した際に、「年を取ったから仕方ない」と受け入れる時期が必要だということだ。

受け入れて何をするかが、大事ではないか。体に合わせて、終活でなく身近な生活を縮小し、自力でできる範囲で再構築に努め、そのための支援ツール・技術を拡充することが必要なのではなかろうか。

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