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ベルギー連続テロの衝撃(下)「イスラム国」排除後の姿描け 中東諸国へ権限移譲 
http://www.asyura2.com/16/kokusai13/msg/326.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 4 月 11 日 04:04:18: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 

(回答先: ベルギー連続テロの衝撃(上)過剰反応・軍事報復避けよ 一般市民の自制カギ  投稿者 あっしら 日時 2016 年 4 月 11 日 04:02:24)

ベルギー連続テロの衝撃

(下)「イスラム国」排除後の姿描け


中東諸国へ権限移譲 

福富満久 一橋大学教授

 パリを襲った同時テロに続き、欧州政治の中心であるベルギーのブリュッセルが過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロに見舞われた。欧州委員会をはじめ、欧州連合(EU)の組織が多く集まる「中心」が狙われたことに世界は大きく揺れている。

 ISがブリュッセルを狙ったのは、米国や欧州諸国の「横暴」を暴くために最小限で最大の効果を得られる場所であったということ、そのうえで空爆に屈しないという姿勢を示せる場所だからだ。しかし現実にはISは一層の弱体化を知らしめているといえる。ISの唱えるグローバルジハード(国際聖戦)は、メッセージのない空虚で残虐なテロ行為にほかならない。

 第2次大戦後、欧州諸国のリーダーたちは、第1次大戦に続き欧州が戦争の起点となったことから、長い時間をかけてEUを創設した。EUとは不戦条約締結国の集合体でもあり、加盟国は互いに戦争をしたことがない。すなわち不戦を誓った場がEUであり、宗教・人種・出自に関係なく人権が保障される場がEUだった。中でも、言語が異なる領域が連邦制を構成する小国ベルギーはその理念を表すシンボル的存在だった。

 だが、難民を保護し、人権や民主主義を声高に叫ぶ一方で、欧州が中東地域でしてきたことは何か。周知の通り、パレスチナ問題は英国の二枚舌外交が招いた問題だ。

 ISの牙城となっているシリアは過半をフランスが委任統治していた。もともとイスラム教スンニ派が多数派を占める同国で、約13%を構成するにすぎなかった貧しいアラウィ派を、フランスが治安維持を担わせるために軍事教育したことが混乱の発端だ。

 アサド大統領家はアラウィ派に属し、力を蓄えると、独立後バース党、政府機関、軍、国営企業の要職を実効支配し、多数派のスンニ派を排除して強権的に同国を統治してきた。中東の民主化運動「アラブの春」後、長年弾圧されてきたスンニ派の一部が国際テロ組織アルカイダ系「ヌスラ戦線」やISへ姿を変えた。

 イラクでのIS台頭にも欧州が関係している。湾岸戦争終結後、米仏英主導で国連安保理下に設立された国連賠償委員会(UNCC)はクウェートとの協議の結果、イラクによる侵攻に伴う損害賠償額524億ドルを認定。イラクはこれまで478億ドルの戦後賠償をしてきた。ちなみに米国によるベトナム戦争や03年のイラク戦争、フランスによるアルジェリア戦争でも、一切戦後賠償はなされていない。

 国家再興時に巨額の賠償を求められたイラクは最終的に経済運営がままならず、ISが政治に幻滅したスンニ派住民の支持を集め急拡大した。

 欧州諸国の偽善を暴くにはその中心であるブリュッセルは最良の舞台だった。多くの権限が連邦政府から地方自治体に移譲され、警察機構が6地域に分割されていることもテロリストに好都合だった。またISの過激思想はアイデンティティー(主体性)形成に失敗した移民2世のくすぶる気持ちに入り込んでいた。

 歴史に根を張った問題と、社会からの隔離や拒絶・失業問題など、現代社会特有の問題の2つが複雑に絡み合うため、解決は容易ではない。

 シリアやイラクから帰還した工作員が、数百人規模で欧州に潜伏している現在、ISのテロをすべて未然に防ぐことは不可能に近い。欧州主要国の中で大規模テロが唯一起きていないドイツが、次の標的になることが懸念される。

 ISは主権、領土、国民を有する国家の3要件を満たしておらず、国際社会からも認知されていないステート(国家)を名乗るテロリスト集団だ。命令系統も明確でない。国レベルならば停戦など話し合いをすることが可能だが、テロリスト集団と交渉すること自体、相手の存在を認めることになるため不可能だ。身代金交渉が公にならないのもこうした理由からである。

 では、今後も悲観的な展開が続くのであろうか。

 欧州内ではパリでのテロ以降、各国政府はイスラム教徒の特別警察要員や憲兵隊員など国家エージェント(代理人)をイスラムコミュニティーにもぐり込ませて内偵し、構成員のリストを入手するなど捜査を進めている。一方、国際ハッカー集団「アノニマス」によるハッキングでテロ計画が明らかになるなど、官民挙げてのIS包囲網は狭まっている。パリのテロ首謀者の捕獲にも成功しており、今後の捜査次第ではISは劣勢に立たされることになるだろう。

 また、ISが凄惨なテロを実行すればするほど、内部からの崩壊を免れない。かつての被抑圧者が圧政者による不正義を糾弾するために行ったハイジャックなどのテロは、その政治的なメッセージを推し量れた。ところがISは、シリアやイラクでも子供を含め自国の無垢(むく)の民を目的なく殺傷している。IS構成員からも幻滅し離反する者が出始め、ISと戦う有志連合に加わっていたエジプトやサウジアラビアなど中東の主要国も空爆支持に回った。

 ISをさらに追い詰めるには、テロリストの監視リストを各国で共有し、顔認証システムなど最新の技術を取り入れテロリストを追跡していくことも重要だろう。他方で、欧州のイスラム教徒はコミュニティーをより外に開き、責任を果たして社会を支えてきたこと、そして今後も社会を積極的に支えていくという姿勢をみせていく必要もある。

 政治・行政レベルでは、機会均等を保障するアファーマティブアクション(積極的優遇政策)導入を含め、イスラム市民の包摂を広く深く議論していくことを期待したい。ISの本質を世界は理解しつつある。EU諸国民もそのことを知り、むやみにイスラム教徒に対して恐怖心を抱かないようにすることが肝要だ。

 ISへの空爆では、アルカイダと異なり支配領域や「国家機関」を特定できることから、成果が上がっている。イラクとシリアにまたがるISは昨年1年間で14%の支配地域を失った(表参照)。さらに金融資産の凍結、石油資源や麻薬取引の管理強化で、構成員に報酬を払う資金源が絶たれた。日本人ジャーナリストの殺害に関わったとされるリーダー格の構成員も無人爆撃機などの空爆で死亡した。

 とはいえ、欧米諸国は今後、国際法にのっとり中東諸国に権限を順次移譲していく、ということを考えるべきだ。

 仮にシリアに欧米主導で本格的な軍事介入をするのであれば、その後の戦後復興まで視野に入れて国際社会全体で進める必要がある。カダフィ政権崩壊後のリビアでは、武装解除に失敗し、部族間・地域間抗争が激化した。これは欧米諸国が介入のみに注力して、戦後復興に腰を据えて手を差し伸べなかったからだ。

 シリアを連邦国家として分割し、関係国が委任統治する案が協議されている。単一国家の形をとりながら、広範囲の自治権を付与する手法ならば治安回復に効果があろう。

 ISはイスラムにとっても悪である。アルカイダの力がそがれていったように、長期的視点に立てばISはこれ以上の勢力拡大は見込めない。実際、中東でもイスラム過激主義に共感を寄せる国は皆無だ。ポストアサド体制を含め、地域の問題は地域の問題として責任の所在と応答できる範囲を中東諸国側と話し合うことが地域の安定の鍵を握る。

ポイント
○かつての欧州の中東介入が混乱の発端に
○金融資産凍結や資金源喪失でIS劣勢に
○シリア軍事介入なら戦後復興も見据えよ

 ふくとみ・みつひさ 72年生まれ。早大博士(政治学)、パリ政治学院博士(国際関係学)。専門は国際政治・安全保障

[日経新聞4月5日朝刊P.26]

 

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