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愚かな英国と賢いドイツ、この差はどこで生じたか ブレグジット以降の成長戦略〜日本型フィンテックのカギはものづくりにあり
http://www.asyura2.com/16/kokusai14/msg/427.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 7 月 01 日 00:28:40: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

仏北東部のドゥオモン納骨堂の外で行われた、第1次世界大戦中の「ベルダンの戦い」から100年を記念した式典に出席したアンゲラ・メルケル独首相(左)とフランソワ・オランド仏大統領(2016年5月29日撮影)〔AFPBB News〕


愚かな英国と賢いドイツ、この差はどこで生じたか ブレグジット以降の成長戦略〜日本型フィンテックのカギはものづくりにあり
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47231
2016.7.1 伊東 乾 JBpress


 英国のEU離脱という国民投票結果は現在進行形で大きな影響を各方面に及ぼし始めたところですが、その現象面に目を向けて、対症療法的な振る舞いだけに終始するのは愚かしいことです。

 日本の官邸も(またしても「リーマン」という言葉を使い、知己の欧州人大半が顔をしかめていました。何とかならんのでしょうか、この音痴ぶり)金融を中心にリスクに対処云々と言っています。

 確かに英国が揺れれば金融に影響が出る。でもその金融そのものが今回の出来事の根と深く関わっている可能性、国をどのように舵取りし、あるいは新しい世代の国民をどのように育てていく必要があるか、英国の事態は全く他人事でなく、人のふり見て日本のふりを直す賢慮が必須不可欠と思います。

 そもそも「国家の成り立ち」と「国民の構成」の間に生まれていた大きな歪みが、AIでは絶対に考えられない「非合理な主体」としての今回の投票や投票結果を生み出してしまった。

 その原点から振り返る必要があると思います。

■ポスト産業社会? 英国の金融立国

 いまさら申すまでもなく、ロンドンはニューヨークと並んで世界最大の金融の中心、と言うより金融市場発生の地にほかなりません。

 同時に英国は産業革命の旗手でもあり、近代的な工業生産発祥の地でもあった。しかし現在の英国では両者の古典的なバランスは著しく失われていたと言わざるを得ません。

 1960年代以降、英国経済での製造業の比重は低下の一途をたどり、21世紀に入ってこの方、GDP(国内総生産)に占める製造業の割合は10%台にとどまっています。

 製造業に従事する人口もまた同様で10%台前半、逆に金融業は著しい伸びを見せてGDPに占める割合は10%を超えています。特にこの指標はリーマンショック前後で米国を抜いており、英国は世界1位の金融国家となっている。

 この値は、ドイツやフランスの金融業がGDPに占める割合、5%程度や日本の6%程度と比較してもほぼ2倍の規模という圧倒的な差で、派生商品などに寛容な英国はリーマン以降の金融の覇者であったと言うこともできるでしょう。

 さて、ここで突然ですが少し観点を変えてみましょう。

 AIの社会普及やIoT(もののインターネット)の展開で現在存在する職種の5割とも6割とも言われる割合が向こう10〜20年で消えていくといった試算がいくつもなされています。

 それでは具体的に失われる職種、合理化され消えていく仕事にはどのようなものがあるでしょうか?

■そして誰もいなくなった、就労人口の歪みに気をつけろ!

 もちろん工場労働者の数も変化し、その職掌は変化するでしょう。しかし端的に言って、オートメーション化の推進は20世紀の出来事であってAIやIoTの主戦場ではない。

 これらが大きく伸びていくのは、現状では人手に頼らざるを得なかった第3次産業、特に一定知的な専門性を問われる業種で、就労人口に大きな変化が出るでしょう。

 例えば、行政書士とか司法書士の仕事は大きく変質、と言うか減少せざるを得ないでしょう。典型的な容易に合理化が進むエリアと言えます。同様に合理化ないし「無人化」が進む可能性が考えられる領域に証券や金融が挙げられます。

 そこそこ経験のあるアナリスト程度のことができるエキスパートシステムは今でもすでに存在する。しかし生きた状況に対応していくのはやはり人間、という時代が終わりつつある。

 それが「AI化」の現実、つまりディープラーニングなどに代表される「学習するコンピューター」が人間の知性を超える速度と正確さをもって莫大なデータ(端的にはビッグデータ)ベースを超短時間でスキャンしつつ、最良手を打っていく時代に入る。

 AIばかりではありません。従来は人手に頼っていた様々な情報の入手、データ化も生きた人間では不可能な形で様々センサーが直接、ネットワークに自動的に入力していくようになります。

 「IoT=Internet of Things」とはそういう雇用危機の状況も示しているわけですが、あまり焦点のあった議論を市中では目にしません。

 誰も人間のいないインターネットの世界が勝手に自転して大半のGDPが揺動していく――。別段SFでも夢物語でもなく、今現在、現実に進みつつあるのは、そのような状況であることを、直視する必要があります。

 露骨に書くなら、「産業はお荷物にすらされかねない時代である」。これは1970年代以降の日本で、高度成長を支えた重厚長大産業がどのような経路を辿ったか、公害その他負の局面も含め想起すれば明らかでしょう。

 あるいはBRICSをはじめとする冷戦後新興国がどのような役割を世界経済に果たしたかを考えても見えてくるものがある。

 金融立国にシフトした英国は、端的に言って余剰の産業労働人口を受け入れる糊代が少ない。と言うより残っていない。

 すでにやや割を食ったところに追い込まれている英国の労働層が、単純労働に就くしかないシリアや中東からの移民に激しくアレルギー的に反応したのには、それだけ余裕がない、実は極めて切羽詰まった状況を、立国レベルからデザインされていた窮地の背景があることに、日本人はよく注意しておく必要があると思います。

 と言うのも、ここであまりに鮮やかな好対照を見せているのがドイツの立国戦略だからです。

 EUはドイツの一人勝ちと言われますが、それには理由のあることで、十分賢明な指導者が先手を打って準備した政策・、例えばインダストリー(Industry)4.0に代表される「2010年代の立国戦略」に日本は注目する必要があるでしょう。

■Industry4.0が担保するもの

 英国が「すでに産業ではない」と金融立国で大きく国際展開を見せていた(ように見えていた)時期、ドイツはいまさらながら「産業」というわけです。

 金儲けだけで言えば、リスクにしかならないインフラなど手放して資産経済で悠々自適の方がいい、なんて話になるかもしれないのに、ドイツはそうではなく「ものづくり」が立国の基である、とした。

 第1次産業は農業を中心と言っていいでしょう、第2次産業は重工業、第3次はサービスから金融まで多様な職種を含むわけですが、それらを超えて「第4次の産業」を「4.0」とネットワーク情報化以降前提で国として取り組む礎に据えたこと。

 このことの意味を考えてみましょう。

 先に結論を言うなら、やはりドイツは1933年から1945年に至る経緯をきちんと学んで生かしていると言えます。英国が学ばなかったものかもしれません。日本は全く学習できておらず、好対照をなしている、雇用創出としての経世済民の全体像をドイツは常に念頭に置いています。

 1980年代末、東西ドイツ統一という悲願が達成されたことは、国土が約2倍になるとともに旧東側から大量のドイツ語労働人口が豊かで進んだ西に流入して来ることも意味したわけです。

 身近な例で考えるなら、仮に南北朝鮮が統一されたと思って見てください。餓死も出るといった北の寒村に住む人は、群れをなしてソウルや釜山を目指すでしょう。

 そこまでひどくはなかったけれど、東ドイツの人々、優秀な人も普通の人たちも新しい社会と新しい経済を建設しようとした。アンゲラ・メルケル首相が旧東ドイツ出身の物理学者であったことを思い出して下さい。

 メルケル首相は1954年に西ドイツ、ハンブルクで生まれましたが、牧師であった父親に従って、生後間もなく、当時はまだつながっていた東ドイツに移住、ライプツィヒ大学で学んで1986年に博士号を取得しました。

 ベルリンの壁崩壊時には東ベルリンの科学アカデミーに在籍する30代前半の優秀な女性理論物理学者であって、政治の道に転じるのはそれ以降のことになります。

 彼女は決して「極めて優秀な金融ウーマン」ではなかった。もしそうであったら、英国の二の舞を踏むことになった可能性も高いでしょう。

 ドイツは、米国に大きく後れを取ったITやネットワークと、すでに時代遅れ扱いされておいてけぼりにされた「産業」とをしっかり結びつけ、決して下層労働者ゲットーなどを作り出すことなく、Industry4.0という形で産業就労人口を確保しようとしました。

 そうしたものが1920年代の光と影の中から33年のナチス党政権奪取という衆愚選挙結果を生み出したことを、ドイツ人はよく理解しており、二度と繰り返さないことを明確に意識しつつ議論しています。

 各産業の就労人口比を念頭に、それら全体を「経世済民」するという観点を常に失いません。

 「ものづくり」があるから国が立つ。それに人々が従事して、社会の血液、つまり情報であり、財貨=所得でもあり、あるいは生き甲斐といったものが循環する。その全体をきちんと成り立たせるのが政府であり、国家の役割である――。

 この原点、本質から絶対にぶれないから、ドイツでは不満が(相当)あっても、今回のようなことにはなっていない。

 端的に言うなら、ドイツでは産業就労人口を受け入れる余裕がある。そのような国の舵取りがなされている。

 中東からの移民を受け入れる余地も、英国とは比べものにならないほどきちんと考えながら、難民受け入れの外交政策と両輪を回している。

 このように記すと、短慮な日本読者から「移民を受け入れろと言っているように見えるが・・・」などとネットにコメントされたりしますので、不要ながら補えば、別段移民でなくても同じことなのです。

 棄民政策で一部富裕層だけ潤うような愚かなモボクラシー=「馬鹿政治」に終始するなら、別段中東移民などの問題がなくとも、おかしな政治的打算で足りない国民投票などした日には、国を壊してしまう高いリスクがある。

 国家は世間を知らずに育った子供頭脳のおもちゃではないし、まして一部の利害のために全体を回す茶番の道具でもない。

 民主主義の体制下、その成員たる様々な配分、所得はもとより、教育の機会などまで奪われた人々が層をなすような状態を作り出したりはしていないか?

 英国が金融で勝つ、結構なことです。しかし英国が産業を置き去りにしたツケとして、今日これほどまでにしんどい代償を払わされている事実を見ずして、何のブレグジット以降の日本でしょうか?

 日本型フィンテックはものづくりの上に真の成功を収めるでしょう。少なくともIndustry4.0とブレグジットのあまりに明らかな対照を前に、これに学ぶことがなければどうかしている。この一点は、日本社会に広く共有されるべきだと思います。 

 

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