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「英ショック、歴史的循環の始まり」 エマニュエル・トッド仏国立人口学研究所研究員:EU崩壊プロセスの始まり
http://www.asyura2.com/16/kokusai14/msg/460.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 7 月 04 日 03:39:35: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


「英ショック、歴史的循環の始まり」 エマニュエル・トッド仏国立人口学研究所研究員[日経新聞]
震える世界 英EU離脱を聞く
2016/7/3 3:30

 英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めたことは、世界に衝撃を与えた。グローバル化を逆流させかねない「英ショック」を受けて、世界の政治、経済、社会はどこへ向かうのか。エマニュエル・トッド仏国立人口学研究所研究員に聞いた。


 ――英国がEUからの離脱を決めました。

 「転換点だ。歴史的な循環の始まりだと思う。前回の循環は1980年代、サッチャー英首相やレーガン米大統領とともに新自由主義が現れたころだ。グローバル化であり、国家や社会の境がなくなるという夢があった。英国と歴史的・文化的なつながりの深いアングロアメリカの世界ではこの循環が終わった。米国では大統領選候補のトランプ氏らが保護主義を前面に出し、移民問題を普遍化している」

 ――離脱を選んだ背景をどう分析しますか。

 「英国で見られたのは、民主主義の力強さそのものだ。英離脱への賛成票は民主的であるのは疑いない。だが解釈するのは難しい。1つ目の解釈は権力をEUから取り戻そうということ。2つ目は移民だ。移民は長年にわたる問題だが、最近になって次元が変わった。『ワシントン・コンセンサス』(米政府や国際通貨基金=IMF=、世界銀行など先進国主導の国際機関による新興国への政策勧告)、新自由主義といった前時代のイデオロギーは移民流入を増やし、自国を不安定にすると判断した」

 「フランスで大きな問題にならないのは、移民だって失業率が10%に達している国には来たがらないからだ。だがドイツは違う。失業率は低く経済に活力があり、移民が押し寄せる。英国が殺到する移民を食い止め、管理しようとするのは当然だ。私は地域の安全をある程度守る権利は必要なものだと思う」

 「沈みそうなEUから英国が出ていくのは普通のことだ。離脱に投票した社会階層はブルーカラーより上で、中間層の下位グループだった。社会経済学的な意味で自然なことだ。英国は米国同様、格差が最も広がり、新自由主義が最もまん延している国だからだ。一方でエリート層に反乱を起こすのは英国の伝統ではない。グローバル化が進み、社会の苦しみが耐えがたい水準になったのだろう」

 「投票で奇妙に感じたこともある。社会階層別の結果は理解しやすいが、年齢別はそうでもなかった。(離脱という今回の結果は)年齢層の高い人々、少なくとも45歳以上によってもたらされた。だが私はとりわけ英国やフランスでグローバル化の痛みを受けているのは若者だと言っている。彼らは優しすぎ、お人よしすぎる」

 ――英離脱後のEUはどうなりますか。

 「EU崩壊のプロセスが始まったと思う。英国は反民主主義となり、破綻に向かいつつあるEUのシステムから離脱するのだ。欧州はかつて自由で平等な国々の共同体だったが、今はドイツを筆頭とするひとつのシステムになってしまった。世界経済を不況に陥れるだけでなく、ドイツがフランスとともに周縁国にダメージを与えかねない政策を進めている」

 「欧州の選択は、ロンドンをリーダーとする国家からなる欧州に緩やかに戻るか、ドイツを頂点とするシステムに所属するかだ。英国に続いて、今後はイタリアの動向を注視すべきだろう」

 「欧州について懸念するのは深刻な権威主義だ。英国は大きなバランス役で、ドイツの権威主義の防波堤になってきた。EUから離脱することで、英国はその役割を担えなくなる。そして欧州は最終的に大惨事に陥る。問題は政治エリートが歴史に無関心で、短期的に何かを決めようとすることだ。それは経済主義の影響であり、エリート層は金融市場のリズムの中にいる」

 ――強すぎるドイツの危うさは何でしょうか。

 「リスクはドイツ人の精神的な不安定さにある。ドイツ人は歴史的に合理的なバランスを重視するビスマルク的な態度と、ヴィルヘルム2世のような傲慢な態度の間で揺れ動いている。問題は現在の大国ドイツの感情だ。メルケル首相はビスマルクのような態度でドイツの経済政策を進めてきたが、最近になって冒険主義の兆候を出してきたようにみえる。とりわけ難民危機の際、ドイツは大陸欧州の不安定の要因になった」
 ――英国は今後、どうなるでしょうか。

 「英国が孤立しているという考え方はおかしい。英国の影響が及ぶ米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは、人口では欧州よりも大きい。私は英国が非常に早く本当のリーダーとして頭角を現すのではないかと思う。それはオランド仏大統領やレンツィ伊首相を不安にさせる」

 「私は皆とは違って、英国についてはまったく心配していない。スコットランドが英国を離れるといわれている。スコットランドから自治論者や独立主義者が生まれたのは、英国がEUへ参加したからだ。スコットランドを独立に駆り立てるのは、欧州であり、連合王国内での権力の低下だ。英国がEUから離れる意志を示した今、スコットランド人はロンドンか(欧州を支配する)ベルリンの選択を迫られる。私は彼らがベルリンを選ぶとは想像できない」

 ――EUと英国の関係をどう展望しますか。

 「欧州は関税をなくし、自由貿易圏になった。大陸欧州と英国の貿易の問題がやっかいなのは事実だ。(EU側から)英国の銀行に対する報復措置を予測する声もあるが、ロンドンは欧州の金融の首都であり、その破壊はお互いにとって脅威だ」

 ――米大統領選では排他的な発言が目立つ不動産王のドナルド・トランプ氏が支持を集めています。

 「グローバル化は米国の中間層に強い痛みをもたらした。白人の中間層の下位グループは米国の民主主義の柱といえるが、平均寿命が短くなるなど、痛みが広がっている。私が驚いたのはトランプ現象ではなく、米支配層が状況を把握できていないことだ。米国ではここ数年、平均収入が低下し、若者は学業のために借金を余儀なくされている。自由貿易など支配層が合理的とした考え方は、米社会の中心となる層の不満を爆発させた。トランプ氏は大衆層の怒りの道具でしかない。トランプ氏が問題なのは外国人嫌いという点だ」

 「仏米の支配層の本を読むとき、大衆の現実を考えていない言葉が多く並ぶ。私が買ったトランプ氏の本のタイトルは『クリップルド・アメリカ』(不自由なアメリカ)だ」

 「本当の謎はなぜ支配層の目に現実が映らなくなったかだ。おそらくそれはエリートの孤立によるものだろう。米国ではマイノリティー人口の増加で問題が複雑になっている。民主党にマイノリティーの支持が集まり、白人は徐々に共和党に投票するようになる。私はどちらが良いかという立場は取らない。だがその流れは当然といえる。有権者がトランプ氏を選ぶのは合理的だと思う。クリントン氏を知的で経験のある女性として選ぶ方が非合理的だ」

 ――欧州では反EUを掲げる政党が勢いを増しています。2017年の仏大統領選で、極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン氏は当選しそうですか。

 「次の選挙では難しいだろう。仏中間層はグローバル化の影響をそれほど受けていないからだ。収入の水準は変わっておらず、富の分配は最も裕福な1%を除いてほぼ平等だ」

 「フランスで重要なのは教育の分野で国家を利用できることだ。中間層に属していれば、2歳から大学までの子どもの教育費用は国によって支払われる。米英の中間層と違うのは、仏中間層は子どもをつくることによる経済的な不安を感じないことだ。全体的に人生は心地よい。だからFNを普通の政治の外部にとどめ置くことが可能なのだ」

 ――ロシアや中国などが世界を不安定にしているように見えます。

 「私は中国とロシアを同じカテゴリーに分類しない。最近の西側諸国のロシアへの敵対は、ロシアを中国に接近させ、同盟をつくらせた。しかしこの2つの国のモデルはかなり違う。まずロシアは権威主義的な民主国家だ。プーチン大統領が権威主義だからではなく、権威主義がロシアの伝統だ。ロシアはすでに国土に対して十分な人口を持たない。だからロシアの最も重要な計画は国として生き残り、国土や天然資源を守ることだ。ロシアがウクライナを管理下に置くのは、安全保障上の安定を求めるためだ」

 「中国は民主国家ではない。安定もしていない。ロシアは防御的な姿勢で中国は攻撃的な姿勢と感じる。世界の安定に寄与するのはロシアであり、アングロアメリカであり、日本だ。不安定にするのはドイツと中国だ」

 ――英のEU離脱から日本は何を学べますか。

 「日本は今起きていることを評価するための時間をとり、視界が開けるまで待つのがいい。大陸欧州は常に危機にあり、この危機は悪化し続けている。英国によって危機が深刻化したとは考えるべきではない」

 「地政学的な動きを先取りすることを始めなければならない。EUの断裂は西側世界の断裂だ。米国が英国に欧州にとどまってほしかったのは、英国が文化的にも政治的にも米国に近いからで、米国が大陸欧州を掌握するための手段だったからだ。英国のEU離脱は米国が欧州、つまりドイツをコントロールするすべを完全に失うことを意味する」

 「大胆な言い方だが、ブレグジットは冷戦の本当の終わりだと思う。我々は西側世界の内部で対立が激しくなるのを目の当たりにしている。そしてロシアとの対立は徐々に二次的なものになるからだ」

(聞き手はパリ=竹内康雄)

 Emmanuel Todd 歴史人口学者。1976年に出版した「最後の転落」でソ連の崩壊を予言。米国が衰退期に入ったと指摘した「帝国以後」(2002年)は世界的なベストセラーになった。65歳。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO04272500Q6A630C1I00000/

 

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コメント
 
1. 2016年7月04日 12:48:45 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[1786]

>世界の安定に寄与するのはロシアであり、アングロアメリカであり、日本だ。不安定にするのはドイツと中国

ロシアやアメリカを買いかぶり過ぎているな

基本的に衰退国は保守的な方が自己利益に適うが

本当に世界秩序が崩壊に向かい、大衆が危機や貧困を意識すると、恐ろしく身勝手で非合理的な選択を行うことも多い

当然、日本も例外ではない


2. 2016年7月05日 12:55:29 : iWzb5YyIeY : _CEc7C67SXo[1]
トッドは衰退=穏健化とは言ってませんしブッシュ時代のアメリカは衰退しているが狂暴化しているとみなしていましたよ
しかし今では世界の警察官をやめ、イランやキューバとも和解したのだから狂暴化しているとは言えないでしょう
そしてロシアはバランサーとして必要、というのがトッドの見方です

3. 2016年7月05日 18:35:02 : GtKiigYRrE : J1zVX1W3Wag[26]
ドットの「ドイツ問題」という言説を聞き始めて久しいが、
「ドイツによる世界的カタストロフ」ということまで考えているようなので、
ドットのこのドイツ嫌いというのは、この人がどちらかと言えば左派(ポール・ニザンの孫ということではなく、一時期共産党員だったはず)で、極めて優秀な人だけに、気になるところです。
ユダヤ系という出自によるバイアスなのか、冷静な分析の結果なのか・・・?

4. 2016年7月06日 00:24:14 : iWzb5YyIeY : _CEc7C67SXo[2]
世界的カタストロフは言ってませんが
あれは文春社のタイトルが煽りすぎなだけです

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