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ブレグジットについて現実から逃避する英国 この先の長く困難な道のりを直視せよ(Financial Times)
http://www.asyura2.com/16/kokusai15/msg/272.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 9 月 13 日 00:51:35: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

英ロンドンの首相官邸前で演説するテリーザ・メイ新首相(2016年7月13日撮影)。(c)AFP/Adrian DENNIS〔AFPBB News〕


ブレグジットについて現実から逃避する英国 この先の長く困難な道のりを直視せよ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47867
2016.9.13 Financial Times 


(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年9月9日付)

 あの大騒ぎはいったい何だったのか。太陽はまだ燦々と輝いているし、経済は成長している。スコットランドだってまだ連合王国を離脱していない。大惨事になるという心配ばかりしていた親欧州派には、ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)は英国にとって良いことだったと認めてもらおう。世界は今、英国が真の「主権」国家として戻ってくるのを待っている。あとは、ブリュッセルと早めに袂を分かつために、テリーザ・メイ新首相の率いる政府が離脱交渉のペースを上げるだけだ――。

 英国のEU離脱を決めた国民投票から3カ月近く経った今、世間にはこんなムードが漂っている。確かに、細かい点をあげつらうことはできる。いわく、一部の経済指標が最近改善しているのは、これから始まる好景気の兆しではなく、投票後の急落の反発にすぎない。いわく、企業が投資を手控えているという話は少なくない。いわく、財政が悪化しそうだ。

 英ポンドの下落については、確かに輸出製品の価格は安くなったが、国民は生活水準の低下という犠牲を払っている。かつて労働党のハロルド・ウィルソンが首相を務めたとき、英ポンドの切り下げは有権者の財布の中身には影響しないと主張して野次られたではないか、といった具合だ。

 とはいえ、横柄な態度で現実を否認するのが最近の風潮だ。いずれにしても、国民投票直後の影響についての議論は的外れだ。明るい独立した未来が開けると快哉を叫んでいる離脱派は、EUから離れることを1つの出来事だと思っている。だが実際にはブレグジットは長くて曲がりくねった道のりになる。こう言ってよければ、ゆっくりこみ上げる怒りのように、経済と政治の面で費用のかかる、何十年もじわじわ続くプロセスなのだ。

 こんな分かりきったことを強調するのは、大声を出して英国人を黙らせたいからではない。今のところうまくいっているようだという事実は、これから目にする結果についてほとんど何も語っていないということを言いたいのだ。

 メイ氏はこのことを、中国の杭州で開催された20カ国・地域(G20)首脳会議で思い出させられた。同氏は会議で、いささか寂しそうな姿を見せた。なるほど、米国が今後の貿易協定について英国を交渉の列の先頭に置くことはない。もし英国がEU単一市場から抜け出せば、日本企業は英国への投資を控えるようになる。同盟国や貿易相手の国々は皆、ブレグジットによって英国の重要性は低下すると考えている。オーストラリア政府がかけてくれた多少の優しい言葉は、大した慰めにはならない。

 公正を期するために言えば、英国政府内のうわさでは、メイ氏はこの困難の規模と複雑さを理解している。議会の下院で、交渉の手札を早々に見せるつもりはないと語ったとき、この言葉の真意は、そんな手札はまだないというものだった。

 また、英国首相の別邸「チェッカーズ」でブレグジットをめぐる長い閣議が行われた際のメディアの大騒ぎからは、戦略的な目標について本質的な意見の収斂がなかったことがうかがえる。その場に居合わせた人々の話によれば、この問題についての理解が深まるような話し合いではなかった。

 先送りされた決断の中には、1)リスボン条約第50条を発動して正式な交渉を始めるのはいつにすべきか、2)単一市場へのアクセス維持とEU市民の移動に関する英国の権限回復との均衡点をどこに見いだすべきか、3)EU関税同盟を離脱して英仏海峡間の貿易のつながりをばっさり断ち切るべきか、という3点が含まれていた。

 第1の決断については、メイ氏が選挙日程を考えて来年第1四半期にするのではないかと筆者は見ている。英国の次の総選挙は2020年の半ばになる。経済が混乱する場合に備えて、政府はブレグジットと次の選挙の投票日との間隔をあけたいと考えるだろう。となれば、2年に及ぶ交渉を2019年の夏に入る前に終えることになる。折しもそのころには欧州議会の次の選挙が行われる。

 第2と第3の決断――単一市場と関税同盟――は第1の決断よりも数段難しい。閣内の離脱派は、古い貿易観を頑固に持ち続けている。EUの英国への輸出額は英国のEUへの輸出額より多いのだから、メイ氏は間違いなく有利な条件で合意できる、と見ているのだ。

 しかし今日の世界では、製品は1つの国だけで作られてほかの国に運ばれるから問題になるのは関税だけ、というわけにはいかない。今日のビジネスは国境をまたぐ複雑なサプライチェーンであり、最終製品には複数の原産地があることが多い。問題は、ブレグジットの影響を見事に査定した日本政府が説明してくれたように、こうしたサプライチェーンは、関税はもとより製造基準や規制の面でも摩擦を生じないものになっている、ということなのだ。

 もし単一市場にとどまるなら、英国はEU労働者の移動の自由を認めなければならない。これは英国政府にとって、越えてはならない一線だ。また、関税同盟の一員であり続けるなら、第三国と個別に通商協定の交渉を行う機会は失われ、新任のリアム・フォックス国際貿易担当相は仕事がなくなってしまう。

 とはいえ、これらの仕組みを離脱すれば、英国は多国間のサプライチェーンからも離脱することになり、貿易、投資、雇用の面でもそれに伴うコストを支払うことになるだろう。

 フィリップ・ハモンド財務相は、金融サービス業界(これが中心だが、これだけではない)に関連するリスクやトレードオフを、同僚たちよりも早く理解してきた。同氏は、ほとんど人に気づかれないままトップに登り詰める、けばけばしさのない過小評価された政治家の1人だ。今回、ずっと切望してきた役目を手に入れたことになる。

 しかしハモンド氏は、「とにかく離脱しよう」という言葉より少し高度な見解に耳を貸してもらうことに苦労している。いわゆる「ポスト・ブレグジット・バウンス(ブレグジット後の景気回復)」の熱気にあまりにも多くの同僚が巻き込まれてしまったからだ。彼らはもう、財務省の警告には耳を貸さない。この件について言うなら、米国政府や日本政府からの警告も聞き入れない。これでは、ハッピーエンドに似たものは一切保証されないことになる。

 

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