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イスラム諸国、親・反米派ともにトランプ氏支持
イランやトルコ、エジプトの隠れた思惑
米ニューヨークを訪問中のエジプトのシシ大統領（右）と会談するドナルド・トランプ氏（9月19日）
By YAROSLAV TROFIMOV
2016 年 10 月 21 日 11:19 JST
【ドバイ】米共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏のイスラム教徒に対する発言を考えると、中東には同氏を応援する人がほとんどいないと思うだろう。だが、投票日が11月8日に迫るなか、親米派と反米派のイスラム諸国が共にトランプ氏支持でまとまるという奇妙な現象が起きている。
大まかにいえば、そうした国は2つのグループに分けられる。一つは中東における米国のプレゼンス（存在）に長きにわたって反発してきたグループで、トランプ氏の孤立主義的な考えに鼓舞されている。彼らは米国内のイスラム教徒に対する差別を、数十年にわたる米国の中東への介入を終わらせるための代償としてとらえており、それを受け入れることはできると考えている。トランプ氏が勝利すれば、米国の世界的な立場が大いに弱まると彼らは期待しているのだ。
もう一つは、オバマ大統領のもとで疎外感を強めてきた米国の同盟諸国で、彼らは民主党候補のヒラリー・クリントン氏が勝利すれば中東の民主化を促進する米国の取り組みを再開すると恐れている。とりわけエジプトやトルコの政治家たちは、トランプ氏が他国の人権侵害問題を批判したがらないことに安堵感を見いだしている。
トランプ氏の発言にイランで喜びの声
「こうした国々は民主化プロジェクトの再開に多大な懸念を抱いている。彼らにとって、トランプ氏を支持することは実利的な選択だ」と話すのは、ヨルダンの首都アンマンにある独立系シンクタンク「MEMPSI」を率いるアメル・サバイレ氏だ。「彼らの重要な優先事項は力を失わないことであり、トランプ氏がイスラム教徒をどう見ていようと関係ない」と述べた。
米大統領選に対するイランのスタンスは特に興味深い。表面的にはトランプ氏はイランに対してタカ派のように見える。同氏はオバマ政権が欧州など5カ国とともに成し遂げた核開発を巡るイランとの合意を批判しており、これは今回の選挙運動を支える主張のひとつでもある。だがクリントン氏と異なり、トランプ氏は中東における現在の混乱についてイラン側の考えを受け入れているようにも見える。彼はイランとシリアのアサド政権、そしてロシアをテロリズムと戦う勢力として描いてみせた。
大統領選の2回目の討論会でトランプ氏は「アサド（大統領）はISIS（アイシス＝イスラム国）を殺害している。ロシアはISISを殺害している。イランはISISを殺害している」と発言した。オバマ政権はイランとロシア、シリアの政権がイスラム国に抵抗する穏健な反体制派に対して武力を行使していると指摘しているが、トランプ氏は19日に行われた3回目の討論会で、こうした反体制派はアサド政権より悪いかもしれないと発言した。
ワシントンにある中東研究所のイラン専門家、アレックス・バタンカ氏は「トランプ氏が（オバマ政権の指摘を）ひっくり返して、シリアでイランは正しい側についていると言えば、イランでは喜びの声が上がる」と話す。だが、イランの指導者たちが彼を支持する本当の理由はもっと深いとバタンカ氏は指摘。彼らはトランプ政権のもとなら、さらに多くのことが許されると確信しているのだという。
バタンカ氏は「イランの強硬派はトランプ氏が大統領になれば、この10年にイランが経験してきたような国際的に連携した反イラン政策を米国が達成するのははるかに困難になるとみている」とし、「世界は彼の話を聞かないであろうし、それ自体がイランにとって国際舞台での好機になる」と話す。
トルコもエジプトも好意的
米国の同盟国であるトルコのエルドアン大統領は、トランプ氏がイスラム教徒の入国禁止を提案した際、当初は怒りをあらわにした。6月にはイスタンブールにあるトランプ・タワーの改称さえ要求したほどだ。
ところが7月のクーデター未遂事件後、大統領のトーンは劇的に変化した。欧州諸国の首脳やオバマ政権と異なり、トランプ氏はクーデター未遂後にトルコで起こった大勢の拘束や免職処分を批判せず、エルドアン大統領を称賛したのだ。
エルドアン大統領はそれに報いるかのように、9月のテレビインタビューでは、イスラム教徒に関するトランプ氏の発言は単に選挙のための話題作りだとして取り合わなかった。それ以降、トルコの政府系メディアは米大統領選に関して、驚くほどトランプ氏に好意的な報道をしている。
同じような動きがエジプトでも出ている。同国のシシ大統領は9月にニューヨークを訪問した際、トランプ、クリントン両氏と面談した。大統領は2013年に、民主的な選挙で選ばれたモルシ前大統領を追放し、数万人もの反対派を収監した人物だ。
クリントン氏は面談中にエジプトで人権が損なわれていることを強調した。一方、トランプ氏は、選挙陣営の記録によると、何も批判しなかった。それどころか、自分が大統領になった暁には、米国は「単なる同盟国ではなく、忠実な友人になる」と述べた。
訪米中にCNNが行ったインタビューでシシ大統領はイスラム教徒に関するトランプ氏の発言を批判しなかった。トランプ氏が強いリーダーになると思うかとの問いには「疑いの余地はない」と答えてみせた。
ニューヨークにあるシンクタンク、センチュリー財団のシニアフェロー、マイケル・ワヒド・ハナ氏は「トランプ氏のアプローチには、シシ大統領やその他の独裁主義者たちが特に好む部分がある。彼の政策は人権と民主主義をまったく気にかけていないので、こうした独裁者にこの分野で自由な裁量を与えることになる」と話す。
同時にハナ氏は、世論調査でクリントン氏が顕著にリードしている現実によって、トランプ氏に向けられているこうした共感が「かさ上げ」されていると指摘する。
ハナ氏は「彼らは（トランプ氏が）勝つとは思っていない。そのため、共感を抱いた聴衆がどれだけ熱心になれるかには限界がある」と語った。
（筆者のヤロスラフ・トロフィモフはWSJ中東担当コラムニスト）
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米当局、不正投票を装うロシアのハッキング攻撃に警告
［２０日 ロイター］ - 米情報・司法当局は２０日、ロシアの情報機関とつながりのあるハッカーらが、不正投票の証拠と称してオンライン上に書類を掲載し、米大統領選の信頼性を落とそうとする可能性があると警告した。
当局者らは、匿名を条件に、米国の選挙制度は非常に大規模で広い範囲に渡って、昔からの方法で行われるので、ハッカーらが１１月８日の投票結果を変更することは不可能だろうと話した。
その上で、ハッカーらが偽造の可能性のある書類などを掲載し、不正投票が横行しているという認識を与えようとする可能性はあると指摘。
こうした計画に対する特定の証拠はないが、州や地方の選挙当局はハッキング行為に警戒するよう呼びかけていると語った。
米政府は１０月７日、米大統領選のプロセスに干渉するために、ロシアが民主党陣営にハッカー攻撃を仕掛けていると初めて公式に非難した。
http://jp.reuters.com/article/usa-election-cyber-idJPKCN12L06J
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