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参院選で問われるもの(上)与党への絶対評価 尺度に 経済政策争点化、新味なし:「坊主憎けりゃ…」と「あばたもえくぼ」
http://www.asyura2.com/16/senkyo208/msg/227.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 6 月 20 日 19:53:19: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


参院選で問われるもの
(上)与党への絶対評価 尺度に
経済政策争点化、新味なし 

河野勝 早稲田大学教授

 7月10日に参議院選挙が行われる。首相に解散権のある衆議院の選挙と異なり、参院選は3年に1度、必ず実施される。この定期性は、今どのような変化が日本の政治に起きているか、またそれらの変化がどれぐらい重大なものであるかに思いを巡らすうえで、一つの道標となる。


 この観点から振り返ると、最近の日本政治にはいくつもの重大な変化が起きている。自民党と「二大政党」を張り合った民主党の民進党への衣替え、みんなの党の消滅、そして橋下徹前大阪市長の退出は、3年というごく短い間に日本の政界地図が大きく塗り替えられたことを示唆する。

 政策に関しても、経済ではマイナス金利が導入され、安全保障では集団的自衛権を容認する新しい法制が成立した。さらに今回の参院選では、18歳の人も投票できるようになった。いずれも「戦後初めて」という修飾句がついて語られるべき画期的な政策・制度上の転換である。

 しかし数々の劇的な変化が起きているにもかかわらず、参院選に対する有権者の関心は決して高いとはいえない。それどころか現下の日本政治には、漠とした停滞感が漂っているように感じられる。

 参院選の意義を考えるうえで最も重要なのは、制度上、その結果をどう解釈してよいかが極めてわかりにくい選挙だという点にある。まず参院選は政権を選択する選挙ではない。極端なことをいえば、たとえ今回の選挙で野党側が過半数の議席を確保する番狂わせを起こしたとしても、衆院で自民党と公明党による連立政権の首相指名を阻止することはできない。

 また現行の憲法では、参院の議席の半分を3年ごとに改選していくという仕組みになっている。それゆえ自公両党は改選部分のみの過半数を勝敗ラインとすることもできれば、ややハードルを下げて改選されない部分も含めた院全体の過半数を目標に設定することもできる。さらに与党側が設定する目標と野党側の目標が一致するとも限らない。民進党は、憲法改正に必要な3分の2の議席を自公にとらせないことを「最低限」とうたっているが、与党の側がそれを選挙の勝敗基準として受け入れているわけではない。

 勝ち負けを定義するルールのない競技スポーツは、定義矛盾で無意味か、このうえなく退屈かのどちらかだ。全く同じ理由から、与野党が何を目標にしてこの参院選を戦うのかが明確にならない限り、政治に対する有権者の熱意を掘り起こすことはできない。

 有権者の関心が低迷する理由としては、選挙の争点に新鮮味がないということも指摘できる。現在の第2次安倍政権にとっては、これが3回目の国政選挙だが、この間、中心的な争点は常に経済および経済政策であり続けている。

 選挙のたびに憲法改正が争点化する気配はあるものの、結局それが前面に押し出されることはない。結果として「アベノミクスの評価」という紋切り型の題目が政治家やメディアにより繰り返され、有権者はなぜ同じことを何度も問われなければならないのかと静かにいら立っている。

 アベノミクスの是非は、これまでも決着がつかなかったし、この参院選を通しても決着がつくことはあり得ない。アベノミクスに限らず、一般に経済政策の成果をどう測るかについては、専門家の間でさえ意見の一致がない。ましてや一般の有権者からみれば、経済政策に対する評価は、数値化された指標がどうあれ、自らの景気判断や暮らし向き感覚により左右される。

 特に選挙が近づくと、経済を巡る人々の認知や態度は党派的なバイアス(ゆがみ)に影響されることを免れない。

 このことを示すため、米国で大統領予備選挙が佳境に入ろうとする昨年11月に実施された世論調査の結果から、一例を紹介しよう。表は「2009年にオバマ大統領が就任してから今日まで、失業率は高くなったと思いますか、低くなったと思いますか」という質問に対する回答の分布を支持党派別に集計したものである。

 この分布からは、明白な党派性バイアスの影響をみてとれる。民主党支持者の間では76%が失業率が「低くなった」と答える一方で、共和党支持者の間では「高くなった」という回答が過半数の53%を占める。政府発表の統計値によれば、オバマ政権の下で米国の失業率はほぼ一貫して低下している。世論調査の結果と統計指標とのかい離は、疑いようのない経済動向についてさえ、党派性バイアスが人々の認識を大きくゆがめる効果を持つことを如実に物語る。

 ともするとわれわれは重要な国政選挙では、与野党がそれぞれ別個の争点を掲げ議論がかみ合わないよりは、共通の土俵で論争が繰り広げられる方が、熟議を深めるのでより有意義だと思いがちだ。しかし争点が一致したからといって、多くの有権者がどちらかの主張で説得されるようになるとは期待できない。

 現在、安倍政権は消費増税を再延期するにあたり、その根拠を世界経済の停滞に求めている。一方、野党は増税再延期自体がアベノミクスの破綻を立証するという主張を展開し、形のうえでは論争が経済政策の評価という同じ土俵で繰り広げられている。この論争もおそらく、安倍政権にもともと同情的な有権者は前者の解釈を、もともと批判的な人々は後者の解釈をとるということに終始するだろう。

 参院選は政権を選択する選挙でなく、政権与党のその時点までの業績に対して中間的な評価を下す機会だ。それゆえ参院選は野党に有利に働くメカニズムを内包している。

 衆院選では、与党と野党はともに政権構想を有権者に訴えなければならない。その際、様々な実績を誇示できる与党に対して、約束事しか語れない野党は圧倒的に不利な立場に置かれる。しかし政権選択でない選挙であれば、野党には自らの政権構想を明確にすることなく、主に政権与党の政策を検証してその非を明確にするという選挙戦略が可能となる。

 米大統領選のはざまの「中間選挙」で、しばしば大統領与党の議会勢力が大きく後退するのは、まさにこうしたメカニズムが働くからである。

 しかし安倍晋三首相は、今回の参院選を評価でなく選択の選挙として位置づけようとしている。衆院選を同時に行うかを最後まで明言しなかったこと、消費増税の先送りについて「国民に信を問う」と攻勢をかけていること、そして今回の選挙が「自公対民共」の対立であると印象づけようとしていることなど、その演出は周到である。

 選択の選挙かそれとも評価の選挙かの違いは、有権者の判断を与野党間の相対評価に求めるか、政権与党だけに対する絶対評価に求めるかの違いである。絶対評価とは、本人自身がベストを尽くした場合の理想の到達点をレファレンスポイント(参照点)にして、実際はどうだったかに成績をつける作業である。

 野党がどうあれ、政権与党に「あなたがたは国政に最善を尽くしているか」を問うことは、民主主義の重要なプロセスであると、筆者は考える。もちろんライバルである野党がていたらくであればあるほど、相対評価よりも絶対評価の方が厳しい基準となる。それゆえ、今求められているのは、政権与党が自ら進んでそうした基準に基づく有権者の判断を仰ぐことなのである。

ポイント
○政権選択でない参院選結果の解釈難しい
○有権者の支持党派が経済政策評価を左右
○与党に最善尽くしているか問うのは重要

 こうの・まさる 62年生まれ。上智大卒、スタンフォード大政治学博士。専門は政治学

[日経新聞6月16日朝刊P.29]

 

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コメント
 
1. 2016年6月20日 20:52:46 : 694ENOyseM : Q4rH_gqACJI[146]
政治を判断するにおいては、自分にとって利益なのか不利益なのか、で判断すること。客観性はどうでもいい。政治に客観はありえないのだから。主観(真実)は作ることができないが、客観(ウソ)は作ることができる。

失業率も同じだ。判断に必要なのは自分の労働環境であって真実性の疑わしい統計数値ではない。まして実在すら疑わしい他人の労働環境や「平均的」な労働環境をどう評価するかはどうでもよく、自分のおかれた環境で全てを判断、政治行動に結び付けることだ。

統計は大衆操作の道具にすぎない。


2. 2016年6月20日 21:52:08 : 2FbCg9vijk : ylRMDBXhDG8[148]
騙しには 乗らぬそれなら 恐喝で

3. 2016年6月21日 03:22:12 : tHIVKuZsdo : _YgkBQOb_8U[991]
都々逸参ります。

問うが重要、与党の最善。問うが答えず、逃げ回る。
(御捻り歓迎)


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