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2016.09.26  ファシズムは死語になったのか   ―60年前に丸山真男が書いたこと―(リベラル21)
http://www.asyura2.com/16/senkyo213/msg/468.html
投稿者 gataro 日時 2016 年 9 月 26 日 10:27:59: KbIx4LOvH6Ccw Z2F0YXJv
 

2016.09.26  ファシズムは死語になったのか

  ―60年前に丸山真男が書いたこと―


半澤健市
 (元金融機関勤務)
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-3706.html

《「ファシズム」の出てこない日本通史》

 「ファシズム」という言葉はなくなったのか。「現政権はファシズム政権」と書く新聞は一紙もない。テレビ局も一つもない。それは現政権がファシズム政権でないから当然なのか。それとも、大東亜戦争下のように、あるものをないとしか書けないマスメディアの現状が、ファシズムの現実を示しているのか。

「岩波講座」の日本通史で、私が閲覧可能なものは、1970年代、1990年代、2010年代の、三回分である。各回とも、二十数巻を擁する。「ファシズム」が、タイトルに含まれる論文は、70年代に四つあった。90年代には論文タイトルには含まれず、全25巻の索引に「ファシズム」「日本ファシズム」と単語が各一回だけ出てきた。10年代講座にはタイトルになく、索引がないので文中の出現の有無は調べられなかった。すなわちリベラル派の日本歴史でも「ファシズム」は、賞味期限が切れた単語なのである。
私の手許にある丸山真男著『超国家主義の論理と心理』(岩波文庫、2015年刊)には、9本の政治論文が載っている。うち3本のタイトルに「ファシズム」が含まれている。
流通しない言葉が「古典」となるのか。我々にファシズムを忘れさせないために古典があるのか。

《丸山による二つのファシズム論》

 下記に一部を紹介する「ファシズムの現代的状況」と題する文章は、1953年4月に『福音と世界』という雑誌に発表された。政治学者丸山真男が、同年2月に日本基督教会信濃町教会で行った講演を補訂したものである。上記文庫中では短いものである。

丸山はファシズムの定義は難しいが大別して二つがあるという。
狭義では、スペインや東欧・中南米などの後進国と、近代化の遅れた高度資本主義国(独・伊・日)とに見られる現象という。一党独裁、非議会主義、全体主義、自国至上主義、排外主義を主張する。アングロ・サクソン系国家でこの解釈が支配的である。自分たちはそういう国家だと思っていない。独・伊・日のファシズムが倒れた今、ファシズムの再現はありえないし、民主主義の旗手米国がファシズムに陥ることなど到底考えられない。これが自由主義陣営の自己認識である。
広義では、概ねマルクス主義的解釈による「現段階における独占資本の支配体制」とする見方となる。ここでは「ブルジョア民主主義・社会民主主義・ファシズム」の差は小さくみられる。丸山は、前者の復活を警戒すべきは当然としても、米国にも歴然としたファシズムの兆候は現れているとみてこの文を記したのであった。
「ファシズムという現象が、決して近代社会の外部から、その花園を荒らしに来た化け物ではなくて、むしろ近代社会、もっと広くいって近代文明の真只中から、内在的に、そのギリギリの矛盾の顕現として出て来た」というのである。
丸山は、ファシズムの特徴として「社会の強制的同質化」、「強制的セメント化」を挙げる。それは非合法的暴力、合法的立法、教育・宣伝など多様な手段で達成される。反対勢力を弾圧するのは、古今東西に共通の手法だが、ナチスの場合は次の二点に特色がある。
一つは、抑圧が「止むをえぬ害悪」としてでなく反対勢力の圧伏自体が目的化し絶対化するニヒリズムであること。二つは、市民の組織を、バラバラな「マス」に再組織(=同質化)すること。あらゆる組織や階層を混ぜ合わせて、無性格・無規定な「マス」に変えるのである。次にこの「マス」を、セメントのように固める。これを「革命」とか「新体制」と呼ぶのである。しかし資本主義的生産方式には一指も触れずにこの同質化は実行される。

《マッカーシー旋風への批判》
 第二次大戦後のファシズムは、ナチスのように手荒ではない。公然とファシズムの看板は掲げられない。そこで民主主義とか自由とかの標語を掲げざるをえなくなった。「民主的自由や基本的人権の制限や蹂躙がまさに自由とデモクラシーを守るという名の下に大っぴらに行われようとしているのが現在の事態です」と丸山は述べている。
1950年に、米国ではジョゼフ・マッカーシーの赤狩りが始まり、数年間荒れ狂った。日本国内では、朝鮮戦争勃発を機に、政治は「逆コース」に入った。民間、公務員のレッド・パージが始まった。日本共産党は、GHQによって非合法化された。丸山の論はこのときに書かれたのである。彼は米国における「反対者に許される発言の自由」と、ナチスにみられた「同種の発言だけを許す自由(同義反復)」に触れたあとこう続ける。
「こういう基準に照して今日のアメリカを見ますと、この〈自由世界〉の元締の国での社会的雰囲気は/(一部略を示す)前者の意味での「自由」観から、後者の意味での「自由」観に驚くほどの勢で移行しているのを認めないわけには行きません。/あらゆる分野での〈忠誠審査〉はまさに大審院判決のいう信条告白の強制であり、F・B・I(連邦捜査局)や非米活動委員会での「赤」や「同調者」の摘発は、アメリカ国内に未だ嘗て見られなかったほどの規模での思想的恐怖をまきおこしているように見えます」、「何も好んでアメリカの暗黒面を並べたてるというつもりではなく/自由を守るためには自由を制限するという考え方は、現在の客観情勢の下ではズルズルとファシズム的な同質化の論理に転化する危険があるととするならば、わが日本のような、自由の伝統どころか、人権や自由の抑圧の伝統をもっている国においては、右のようなもっともらしい考えの危険性がどれほど大きいかは言わずとも明らかであろうと思います」。

《天皇夫妻とジャーナリストの会話》

 このあと丸山は、ファシズムが強制する種類の国民のマス化は、現代資本主義の下では、産業界でも、政治の世界でも、あらゆる組織化とともに不可避的に進行しているというのである。その上、「マス・コミュニケーション」(今なら「マスメディア」)の発達が、この傾向を加速する。丸山の結論は、ファシズムのもつ強制的同質化作用は、近代社会、近代文明の条件や傾向に内在して、根が深いというものである。
それに抵抗するにはどうすべきか。
「国民の政治的社会的自発性を不断に喚起するような仕組と方法がどうしても必要で、そのために国民ができるだけ自主的なグループを作って公共の問題を討議する機会を少しでも多く持つことが大事と思われます」。この策は真っ当で平凡である。

『文藝春秋』(2016年9月号)に半藤一利・保阪正康両氏の対談が載った。本年6月14日に明仁天皇夫妻と両氏が数時間の会話したときの内容報告である。天皇夫妻が、日本近代史に詳しいこと、両氏に鋭い質問をしていること、四人の問答の水準も高いものであること、がよくわかる。両氏は学者でなくジャーナリストだが、近現代史の世界ではアカデミズムとジャーナリズムに垣根がないのが実態である。天皇夫妻が、二人を呼んだ目的はわからない。ただ、二人のジャーナリストは、インタビューに長じ実証に強い人たちである。さらに近年、この二人は「反戦・平和」を訴える発言が多い。現政権が限りなく「ファシズム」に近くて危険だというラジカルな発言もある。
私は、丸山がキリスト教の教会で発した言葉が、なぜか気になってこの一文を書いた。ファシズムは本当に死語になったのか。言葉は目に見えない。しかし世の中、見えないから存在しないといえないこともあるのだ。(2016/09/23) 
 

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コメント
 
1. 中川隆[4197] koaQ7Jey 2016年9月26日 10:39:18 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[4604]
ファシズム = グローバリズム+新自由主義

だからな。 言い方が変わっただけ:


安倍晋三政権は「戦前への復古」と「アメリカへの従属」を目指しているが、これは矛盾していないどころか、コインの裏と表の関係にある。幕末から日本の支配層は基本的にイギリスやアメリカの巨大資本を後ろ盾としてきた、つまり強い影響を受けてきたのだ。この関係が機能しなかったのは、ニューディール派政権だった1933年3月から45年4月、あるいはジョン・F・ケネディが大統領だった1961年1月から63年11月くらいだろう。

 現在、この従属関係を「日米同盟」と呼ぶが、かつては「対米協調」と表現されていた。そうした政策を打ち出した代表的な政権は1929年7月から始まる浜口雄幸内閣。アメリカ巨大資本の要求に従った政策、フランクリン・ルーズベルトやベニト・ムッソリーニが言うところのファシズム(注)を導入、例えば、緊縮財政と金本位制への復帰を実行した。最近の表現を使うならば、新自由主義的な政策を導入したのだが、これによって貧富の差が拡大、東北地方で娘の身売りが増え、欠食児童、争議などが問題になる。

 こうした経済政策の中心にいた人物がJPモルガンと緊密な関係にあった井上準之助であり、こうした背景を抜きにして、1932年の血盟団による井上準之助や団琢磨の暗殺、また1936年の二・二六事件を理解することはできない。二・二六事件では、昭和天皇も井上たちと同じ立場だということが明らかになった。

 ウォール街が支援していたハーバート・フーバー大統領をルーズベルトは1932年の大統領選で破ったのだが、その3年前にニューヨークで株式相場が暴落、経済破綻が顕在化していた。

 第1次世界大戦(1914年から18年)でライバルのヨーロッパ諸国は疲弊したが、アメリカは戦場とならずに物資の販売や金融で大儲け、自動車の大衆化が進み、映画やラジオの登場など技術的な進歩で豊かになっているように見えた。

 しかし、富が一部に集まる政策が推進され、社会は衰退する。大戦後に兵士が帰国すると街には失業者が溢れ、ストライキやデモが続発していた。そうした中、1919年にボストン近郊で起こった現金輸送車襲撃未遂事件が起こり、ニコラ・サッコとバルトロメオ・バンゼッティが逮捕された。1920年4月にマサチューセッツ州サウスブレーントリー駅近くで起こった強盗殺人事件でも有罪とされた。

 いずれの事件もふたりを有罪とするような証拠、証言はなく、1925年には別の事件で収監されていたセレスチーノ・マデイロスという男が「真犯人は自分たちだ」とする書面を提出しているが、裁判官は無視して死刑を言い渡している。ふたりが「アナーキスト」だったということが理由だと見られている。ふたりは1927年の8月に処刑された。

 勿論、1950年代から60年代にかけて公民権運動が高まるまでアメリカでは人種差別が公然と行われ、決して「自由で民主的な国」とは言えない。そうした国の内部で庶民の不満は強まり、1932年の大統領選でニューディール派を勝たせることになる。

 当時、日本の支配層が従属していた相手は「自由で民主的な」アメリカ人でなく、富を独占し、人種差別を行う人びと。フランクリン・ルーズベルト政権の誕生は、日本の支配層がウォール街に従属するという関係を崩した。この関係が復活するのは、1945年4月にルーズベルトが執務中に急死してからだ。

 このアメリカと日本が戦争を始める切っ掛けは、言うまでもなく「真珠湾攻撃」。この攻撃がいかに無謀だったかを語る人は多いが、日本はすでに戦争をはじめていた。1927年5月に山東出兵、31年9月に柳条湖事件と呼ばれる偽旗作戦を実行して侵略を開始、中国東北部に「満州国」と称する傀儡国家を樹立させた。1937年7月の盧溝橋事件後、宣戦を中国の全域に拡大、そして41年12月の真珠湾攻撃だ。

 しかし、日本が東アジア侵略を始めたのはその遥か前、1872年に琉球国を潰して琉球藩を設置したところから始まる。本ブログでは何度か指摘したが、1871年7月に廃藩置県を実施済みなわけで、この琉球藩設置は台湾へ派兵する口実作りの可能性が高い。実際、そのころ来日していた厦門の領事のチャールズ・リ・ジェンダーは外務卿だった副島種臣に台湾への派兵を勧めていた。そこから江華島への軍艦派遣(朝鮮に対する挑発)、日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦へとまっしぐらだ。この背後にはイギリスとアメリカが存在していた。

 東アジアを侵略している間に盗んだ財宝も曖昧なまま、アメリカ支配層と山分けした可能性が高い。その過程で吸った甘い汁を日本の支配層は忘れていないはず。アメリカ支配層の最近の動きを見ていると、過去の「成功体験」を再現しようとして失敗しているようで、日本がアメリカの真似をして再び中国を侵略しようとしたなら、取り返しのつかないことになりそうだ。

 こうした道へと日本を導いているのが安倍政権。危険な流れを察知した人びとが小沢一郎の率いる民主党を選挙で勝たせたのだが、それをマスコミと検察が潰し、菅直人や野田佳彦は国民の期待を裏切って現在がある。ここで諦めたなら、支配層の思う壺だ。


【注】

(1) ベニト・ムッソリーニは1933年11月に「資本主義と企業国家」という文章の中で、巨大資本が支配するシステムを「企業主義」と呼び、資本主義や社会主義を上回るものだと主張した。これが彼の考えたファシズムであり、全体主義だとも表現されている。

(2) 1938年4月29日にフランクリン・ルーズベルトはファシズムについて次のように定義した。「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを人びとが許すなら、民主主義の権利は危うくなる。本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201606300000/



2. 2016年9月26日 13:15:50 : ZQaUpuhUK2 : cc0dtlqGZdo[42]
●巨大資本が国を支配するファシズム体制を実現するTPPを推進する政府と応援するマスコミの醜悪さ
ウォール街がクーデターで排除しようとしたフランクリン・ルーズベルト大統領は1938年4月29日、ファシズムについて次のように語っている。
「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを人びとが許すなら、民主主義の権利は危うくなる。本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」
TPP、TTIP、TiSAはファシズムの支配圏を作りだし、中国やロシアを中心とする勢力を締め上げようという目論見でもある。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201602040000/
●巨大資本という私的権力が各国の政府、議会、司法を支配する仕組みがTPP/TTIP/TiSAであり、参加国をファシズム化することになる。新自由主義はファシズムの一形態だとも言えるだろう。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201604120001/
●アメリカでは巨大金融資本が大きな影響力を持ち、歴史的にファシストと結びついている。フランクリン・ルーズベルトは1938年4月29日、ファシズムについて、「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを人びとが許すなら、民主主義の権利は危うくなる。本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」と定義している。巨大資本とファシズムは表裏一体の関係にあると言えるだろう。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201608070001/

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