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なぜベルギーから続々とテロリストが生まれるのか 移民コミュニティの中で育った同時テロの実行犯たち(JBpress)
http://www.asyura2.com/16/warb17/msg/477.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 4 月 04 日 15:01:40: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

ベルギーの首都ブリュッセルの地下鉄駅での爆発を受けてブリュッセル中央駅周辺で警戒する軍の兵士と警察官(2016年3月22日撮影)。(c)AFP/EMMANUEL DUNAND〔AFPBB News〕


なぜベルギーから続々とテロリストが生まれるのか 移民コミュニティの中で育った同時テロの実行犯たち
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46493
2016.4.4 山口 昌子 JBpress


 3月22日にブリュッセルの空港と地下鉄で同時テロが発生し、32人が死亡、日本人1人を含む約300人が重軽傷を負った(3月31日現在)。衝撃をもって世界に伝えられたが、今回のテロは起こるべきして起きたとの見方がある。


 昨年(2015年)11月13日に、フランスのパリ、サンドニで同時テロ(死者130人、重軽傷者約350人)が発生した。その実行犯のうち「10人目のテロリスト」と呼ばれ逃走中だったサラ・アブデスラム(26)が、3月18日にブリュッセル西部のモレンベーク地区で逮捕された。その4日後に、今回の同時テロが発生した。


 今回のテロは「ベルギーに潜伏するテログループがサラの逮捕に報復した」、あるいは「サラの逮捕が、もともと計画中だったテロ実施を早めた」という指摘がある。ベルギー当局は本来なら警戒を最大限に強化するべきだったのに、それを怠ったと非難されている。


■貧困地区のクスリの売人だったサラ


 サラは、フランスの事件発生から4カ月間も逃亡生活を続けていた。「イスラム国(IS)」の本拠地シリアに脱出したのではないかとの見方もあったが、ベルギーから一歩も出なかったとされている。


 サラは欧州連合(EU)加盟国を中心に顔写真がばら撒かれ、手配された。それにもかかわらず、なぜ逃避生活を続けることができたのか。その理由は、モレンベーク地区を中心に、ベルギー中に支援グループ網が張り巡らされていたからだ。


 サラがベルギーとフランスの合同特殊部隊によって逮捕されたのは、そのモレンベーク地区のアパートだった。同地区には両親の自宅があるほか、同時テロで自爆した兄ブライム(31)がバーを経営していた。サラもそのバーを手伝っていたが、クスリの密売などが発覚してテロ直前に閉鎖された。


 サラとブライムの父親は、ブリュッセルの市電運転手(数年前に引退)だった。父親も母親も、アルジェリア北西部のオランという街でフランス植民地時代に生まれた。モロッコを経てベルギーに移住した後も、フランス国籍は維持したままである。サラら5人の子供も国籍はフランスだ。


 ブライムは、2005年に強盗事件、2010年には偽造文書事件で逮捕されたことがある。服役中にイスラム教過激派サラフィストの服役仲間や説教師によって過激な思想を吹き込まれたとみられる。2015年初頭にはシリア入りし、軍事訓練も受けている。


 弟のサラは同地区で遊び仲間から「クスリの売人」として知られていた。イスラム教徒なのに禁止されているビールをがぶ飲みし、「祈りの時間も守ったことがない」と批判されていた。


 この点は、「コーランを読んでいるのを見たことがない」(近親者)と言われた、サラの幼な友達でパリ同時テロのコーディネーター役だったアブデルアミド・アバウドと同類だ(アブデルアミドはテロ5日後にパリ郊外での警官隊との銃撃戦で射殺された)。ただ、サラの自堕落な生活は捜査当局をあざむくための「仮の姿」だったとの指摘もある。


 サラとアバウドは、ガレージ(自動車修理工場)襲撃未遂事件で2年間刑務所に入れられた。2人もまた服役中に過激化したといわれる。


■ベルギーテロ、実行犯の父親はモロッコからの移民


 ブリュッセルでの同時テロの実行犯は4〜5人とみられる。そのうちの中心人物が、ブリュッセル北部ラーケン地区生まれのエル・バクラウイ兄弟である。空港で自爆したのが兄のイブライム(30)、地下鉄内で自爆したのが弟のハリド(27)だ。



ベルギー連続テロの自爆犯と特定されたハリド・バクラウイ容疑者(左)とイブライム・バクラウイ容疑者の写真(2016年3月23日入手)。(c)AFP〔AFPBB News〕


 イブライムは中学生時代から学校をさぼってはカーラジオなどの窃盗を繰り返していた。2010年には両替店を襲撃して警官隊と銃撃戦になり、警官1人にケガをさせて9年の実刑判決を受ける。だが、刑期半ばの2014年に、保護観察など一切なく出所する(このときのベルギー司法当局の杜撰ぶりが指摘されている)。ハリドは大学に行ったが就職先がなく、ブラブラしていた。


 兄弟の父親はモロッコからの移民である。食肉店を経営し、一時は羽振りも良く、ラーケン地区に3階建ての立派な自宅も購入。この家でイブライムとハリドは生まれた。だが2000年代に経営問題で査察が入り、食肉店を閉鎖。その後、メッカに巡礼に行っている。


 兄弟は決して貧しくて悲惨な環境に育ったわけではない。自宅にはそれぞれの個室があった。父親も、イスラム教徒によくみられるような、子どもに対する超権威主義者でもなければ、暴力をふるうこともなかった。


■2組の兄弟は「移民」居住地区で育った


 サラとブライム、イブライムとハリドという2組の兄弟テロリストはフランスとベルギーと国籍は異なるが、ブリュッセル市内の移民が多い地区で育ったという共通項がある。


 サラの幼な友達だった前述のアバウドは、生前、「モレンベーク地区にはシリアから90人が送られている」と明かしていた。約160人が死亡した両事件にはテロリスト約30人(15人が自爆や射殺)が関与したが、そのうち逃亡中の数人を含めて約半数が同地区出身者やかつて住んでいた人物だ。


 モロッコ系移民などのイスラム教徒、貧困層が居住者の多数を占めるモレンベーク地区は、「テロリストの武器庫」として国際的に知られる。ボスニア紛争やアフガン戦争終了後に大量に流出したカラシニコフなど「戦争の武器」と称される重武器の密売買が盛んにここで行われている。クスリの売買地区としても知られる犯罪地区だ。


 一方、ラーケン地区はブリュッセルの中心部に近く、王室の居城もあるが、公立中学の生徒の約80%がイスラム教徒である。同時テロのあった日、あるクラスでは、地下鉄を利用して職場に向かう途中の母親が犠牲になったのを知って号泣する生徒がいる一方、「やった!」と叫んでテロを称賛する生徒もいたという(ルモンド)。


■言葉巧みに若者を取り込む過激派


 イギリスやフランスと異なり、ベルギーにはアラブ系の植民地がない。そのため、アラブ系の移民にとってベルギーは比較的羽根を伸ばしやすい。「旧植民地出身」というレッテルを張られることなく生活できるからだ。


 また1970年代には、フランス北部の炭鉱地帯で働いていたアラブ系の炭鉱労働者が、炭鉱閉鎖に伴い大量にベルギーに流入した。それらの労働者の多くは、もともとはフランスの植民地であるモロッコの炭鉱で働いていた。


 ベルギーは連邦国家の形をとっているが、北部のオランダ語圏と南部のフランス語圏では文化や生活様式が異なり、両者の対立のせいで行政が不安定だ。2010年から2011年にかけて政府が2年近くも機能しない時期もあった。移民対策や失業対策はもとより治安対策もなおざりな状態が続いている。また、アラブ語圏の植民地がゼロだったので、治安当局や情報当局にアラブ語を解する捜査官もほとんどいない。


 こうした中で、ベルギーでは犯罪を働くイスラム系の若者たちが増えていった。そして彼らの前に現れたのが、イスラム教徒過激派サラフィストの説教者だ。彼らは「アラーの神を信じて“善行”を積むことで、罪が帳消しにされる」と説き、若者の心を巧みに捉えっていった。善行とは「殉教」、すなわち「テロ」のことである。


 ベルギーはますますテロリストの温床となりつつある。どうすればそれを食いとめることができるのか。28カ国に膨れあがり機能マヒ状態も指摘される欧州連合(EU)にとって、きわめて頭の痛い問題だ。


 

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