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米国の問題は製造業と金融業の内部対立だ 統計ねつ造を認めた遼寧省マイナス成長に それでも政府への信頼度は中国が世界一か 
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投稿者 軽毛 日時 2017 年 1 月 27 日 00:23:59: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

米国の問題は製造業と金融業の内部対立だ

田原総一朗の政財界「ここだけの話」

2017年1月27日(金)
田原 総一朗

(写真:ロイター/アフロ)
 1月20日、ドナルド・トランプ氏が大統領に就任した。大統領就任演説を聞いて僕がまず感じたのは、彼は被害者意識の塊だということだ。

 例えば、演説の中にこんな箇所がある。1月21日付の朝日新聞に掲載されたトランプ大統領就任演説全文から抜粋する。

 「何十年もの間、私たちは米国の産業を犠牲にして外国の産業を豊かにしてきました。自国の軍隊の悲しむべき疲弊を許しておきながら、他国の軍を援助してきました。私たち自身の国境を守ることを拒否しながら、他国の国境を防衛してきました。そして、米国のインフラが荒廃し、劣化する一方で、何兆ドルも海外につぎ込んできました」。

 トランプ大統領は「アメリカは被害者だ」と強く訴えているのだ。

 さらに、こんなふうにも言っている。

 「私たちは、首都ワシントンから権力を移し、国民の皆さんに戻すのです。あまりに長い間、この国の首都の小さな集団が政府からの恩恵にあずかる一方、国民はそのつけを背負わされてきました。ワシントンは栄えましたが、国民はその富を共有しませんでした」

 つまり、グローバリズムによって、一部の企業やエスタブリッシュメントたちが非常に豊かな生活を営むようになったが、そのために多くのアメリカ人が貧しい生活に苦しんでいるということだ。工場が閉鎖され、雇用が失われ、賃金は安くなり、たくさんのアメリカ人が大きな格差による苦しみに耐えられなくなったことを示している。

 トランプ大統領は、こうも言っている。

 「私たちが守るのは2つの単純なルールです。米国製品を購入し、米国人を雇用するということです」

 中国や日本、メキシコなどから安価な製品が輸出されてきて、アメリカは「モノを買わされてきた」というのだ。アメリカ人が働く工場がどんどん海外へ出て行ってしまった。だから、工場をアメリカに取り戻し、アメリカで作られた製品をアメリカ人が買うことで、雇用を創出していこうというのだ。

 それに賛同するアメリカ人たち、主にプアホワイトと呼ばれる白人の低所得者層がトランプ氏を大統領にした。

 しかし、本当にそんなことはできるのだろうか。

 そもそも、アメリカから工場が出て行ったのはなぜなのか。答えは単純だ。アメリカ人の給料が他国より高いからだ。ワーカーレベルであれば、メキシコ人の給料はアメリカ人の8分の1程度だという。中国人の給料も、アメリカ人よりはるかに安い。

 中国やメキシコの人件費が安いから、アメリカの工場は海外に出て行って、安いコストで製品を作ることができた。これがアメリカに輸出されていたのだ。

 こういった背景があるにも関わらず、「アメリカの工場を取り戻す」とはどういうことなのだろうか。取り戻したところで、給料の高いアメリカ人を雇ったら、製造コストがかさんで価格が高くなり、売れなくなってしまうのではないか。

 サンフランシスコやロサンゼルス、シアトルなどの都市で、段階的に最低賃金を時給15ドル(約1700円)にまで引き上げる条例を可決する自治体が出始めている。企業の規模や業態、あるいは自治体によって適用する企業は異なるが、いずれにせよコストの上昇分は製品やサービスの価格に上乗せせざるを得ないだろう。そうなると、海外からの輸入品との価格差はさらに大きくなる。トランプ大統領の目指す「理想の米国像」は分かるが、実現できるとは到底思えない。

アメリカの問題は、「製造業」と「金融業」の内部対立だ

 アメリカには2つの大きな産業がある。1つは製造業。こちらは工場がどんどん海外に出て行ってしまって失業者が増え、大きな問題になっている。

 もう1つは金融業だ。ウォールストリートを中心にした金融は、非常に好調である。しかし、金融業で儲かっているのは一部のアメリカ人だ。まさにそれは、トランプ大統領の言うニューヨークだろう。

 つまり、根本的な問題は中国や日本、メキシコといった外国との貿易というよりも、米国内の製造業と金融業の内部対立だということだ。

 保護主義にすればどちらも好調になるというものではない。金融はグローバリズムによって発展してきたものだからだ。

 こういった矛盾もある。製造業はドル安であるほど輸出には好都合で、利益が増える。ところが金融業はドル高の方が株や債券などの資産価格を押し上げるメリットがある。トランプ氏が製造業を優先することで、米国の金融業にマイナスの影響を与えるとすると、これが世界全体に広がっていくだろう。

 トランプ大統領はこの内部対立について、きちんと分析できているのだろうか。

アメリカの歴代大統領は、製造業復活に失敗し続けてきた

 実はこの内部対立は、アメリカが長年抱えていた問題でもある。

 例えば、ロナルド・レーガン大統領の時代も、イギリスのマーガレット・サッチャー首相、日本の中曽根康弘首相とともに、製造業を伸ばそうとしていた。しかし、結局失敗して金融を優先してしまった。

 この失敗はレーガン大統領だけに留まらない。その後の大統領も製造業の復活を試みたが、最終的に失敗して金融中心になってしまった。この積み重ねによって金融市場が過熱してしまい、2008年にはリーマン・ショックが起こってしまった。アメリカ人の不満はこうしたところから蓄積している。だからこそ、製造業の復活に賭けたい気持ちも理解できる。

 長年失敗し続けてきた製造業の回復を、トランプ大統領は本当に実現できるのか。これは非常に難しい問題だ。

 23日、トランプ大統領は「日本は、アメリカの車の販売を難しくさせているのは問題だ」と批判していたが、これも筋が違う。アメリカは、日本から輸出される自動車には2.5%の関税をかけているが、日本がアメリカ車を輸入する場合の関税はゼロなのだ。つまり、アメリカの方が日本に輸出しやすいはずだ。

 菅義偉官房長官も、「アメリカは関税をかけているが、日本はかけていない。それなのになぜ日本を批判するのか」と反論していた。

 では、なぜアメリカ車は日本に入ってこないのかというと、大きな理由はサイズが大きく、日本の道路に合わないからだ。燃費などの性能も、日本のクルマの方がはるかに良い。関税の問題などではない。

 トランプ大統領は、このようにまだ分析の甘いところがたくさんある。

パリ協定を形骸化させてはならない

 もう一つ、大きな問題がある。トランプ大統領は24日、オバマ政権が地球温暖化対策として導入した「気候行動計画」を覆し、化石燃料の使用を増やすと発言した。

 オバマ政権時代、すべての国に温暖化対策を義務付けた「パリ協定」に基づいて、アメリカは「2025年に温室効果ガスを05年比で26〜28%削減する」という目標を決めた。この実現には大変な努力が必要だ。

 ところが、トランプ大統領は、パリ協定を無視しようとしている。オバマ政権時代に中止していた2つのパイプラインの建設再開を即断した。カナダからテキサス州に原油を輸送する「キーストーンXL・パイプライン」と、ノースダコタ州からイリノイ州までつなぐ「ダコタ・アクセス・パイプライン」の建設だ。これによって鉄鋼業の再興や関連産業で雇用が増えると自慢げに語っている。

 だが、石油や石炭の使用増加は二酸化炭素の排出を増やすことにつながるわけで、時代の流れに逆行している。国際的な取り決めを反故にするような決断は、世界のリーダーたる存在のアメリカが取ってはいけない選択だ。アメリカが無視するようになれば、他国も環境対策を軽視する可能性がある。そうなると、パリ協定自体が形骸化しかねない。

 このように、トランプ大統領の発言には様々な矛盾や問題が見える。実際のところ、それらをどのようにしていくのか。「独りよがり」の政策では、切り抜けられるものではない。


このコラムについて

田原総一朗の政財界「ここだけの話」
ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/012600005/?ST=print

 

「統計ねつ造」を認めた遼寧省、マイナス成長に

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

それでも「政府に対する信頼度」は中国が世界一?
2017年1月27日(金)
北村 豊

 1月16日、米国のPR会社「エデルマン(Edelman)」は2017年の「エデルマン信頼度バロメーター( Edelman Trust Barometer)」(以下「信頼度指標」)を発表した。エデルマン社は、毎年年初の1〜2月にスイスの保養地「ダボス(Davos)」で開催される世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議(World Economic Forum Annual Meeting)」に合わせて信頼度指標を発表し、ダボス会議初日の朝に行われるエデルマン社主催の朝食会で同社CEOが当該指標について報告を行うのが慣例となっている。今年のダボス会議は1月17日から20日までの4日間開催されたが、初日の17日朝にエデルマン社CEOによる信頼度指標に関する報告が行われた。

「政府に対する信頼度」中国が第1位?

 2017年の信頼度指標は、2016年10月13日から11月16日までの期間に世界28か国の約3万300人を対象に各人が居住する国の政府、企業、メディア、NGOに対する信頼度について評価してもらった結果を取りまとめたものである。4項目を総合した信頼度(28か国平均:47%)は、第1位:インド(72%)、第2位:インドネシア(69%)、第3位:中国(67%)であった。中国は2016年の信頼度指標では73%で第1位であったから、2017年は信頼度が前年に比べて6%低下したことになる。<注1>

<注1>2017年信頼度指標で日本は4項目総合では28か国中の第25位(35%)であったが、後述する政府に対する信頼度では37%で第14位であった。

 さて、上述の通り、中国は2017年信頼度指標の4項目総合では第3位であったが、そのうちの政府に対する信頼度(28か国平均:41%)では76%で第1位であった。中国の政府に対する信頼度指標を過去に遡って調べると、2010年:74%、2011年:88%、2012年:75%、2013年:81%、2014年:76%、2015年:82%、2016年:79%であり、基本的に第1位から第3位の間に位置していて、政府に対する信頼度は非常に高く、盤石という結果になっている。

 
 今年のダボス会議には中国“国家主席”の“習近平”が初参加し、会議初日の1月17日に基調講演を行い、3日後に迫るトランプ次期米大統領の就任を念頭に、欧米諸国に蔓延する保守主義的傾向に懸念を表明し、経済グローバル化の重要性を強調した。エデルマン社が発表した2017年信頼度指標のうちの「政府に対する信頼度」で中国が世界28か国中の第1位であったことを習近平が知っていたかどうかは分からないが、国民の中国政府に対する信頼度の高さが習近平の発言に重みを持たせる役割を幾ばくか果たした可能性は否定できない。

 ところで、多少なりとも中国の国情を知っている者なら、「政府に対する信頼度」で中国が世界28か国中の第1位(76%)であるとするエデルマン社の2017年信頼度指標に疑問を抱かざるを得ないし、上述した過去の信頼度指標の数字も到底信じられないだろう。エデルマン社の中国における信頼度調査の対象者は一体どのような基準で選定されているのか。選定されて調査対象者となった人々がいかなる圧力も受けることなく、自分の考えを素直に表明していれば、政府の対する信頼度が上述したような高い数字を示すはずはないと思うのだが、これは間違っているだろうか。

 さて、話は本題に入る。2017年1月17日、遼寧省の第12期人民代表大会第8回会議が省都“瀋陽市”の“遼寧人民会堂”で人民代表571人出席の下で開幕した。開幕直後に“遼寧省党委員会副書記”兼“遼寧省長”の“陳求発”が遼寧省政府を代表して「“省政府工作報告(業務報告)”」を行い、「2016年に遼寧省は多大な困難を克服し、財政収入は前年比3.4%増の2199億元(約3兆6720億円)を実現し、予算超過で目標を達成した」と述べた。

遼寧省、データねつ造を公式に発表

 2016年の財政収入は前年比3.4%増であったが、2014年の財政収入は前年比23%増であったから、両者を比較すれば財政収入の伸びは20%も減少したことになる。この点について、陳求発は「このような差異が生じたのは、過去に出現した問題による数字の食い違いを回避することができなかった」と述べた後に、2016年に“国家審計署(会計検査院)”が発行した報告書を引用して、「遼寧省の管轄下にある“市”および“県”には、2011年から2014年まで財政データのねつ造が普遍的に存在した。それは長期間にわたって継続し、関係する範囲も大きく、多種多様な手法が用いられていたなどの特色があった」と言明した。すなわち、陳求発は、2011年から2014年の4年間に“官出数字, 数字出官(役人が数字を作り、数字が役人を出世させる)”問題が存在し、経済データに“水分(水増し)”が加えられたことを遼寧省として初めて公式に確認したのだった。

 今から10年以上前の2005年8月28日付でニュースサイト「人民網(ネット)」が報じた「人民日報」編集員“夏長勇”の『人民時評:“官出数字, 数字出官”はいつ終わるのか』という記事には次のような記載がある。

【1】少し前にメディアが報じたところによれば、関係部門はすでに統計法改正指導グループを組織しており、統計法の改正作業は具体的な実施段階に入っている。統計法を改正したとしても、現在統計数字の水増し現象は絶えず深刻さを増している。

【2】“政績不够, 数字来凑, 官出数字, 数字出官(政務上の業績が不足なら、数字をかき集めれば良い。役人が数字を作り、数字が役人を出世させる)”。この有名な“順口溜(早口言葉)”は何年も前に流行したものだが、悲しいことに今日でもまだ時代遅れになっておらず、役人は数字をねつ造してさらに大きな官職を盗み取る。こうした事件は常に報じられるが、古い話であっても蒸し返して十分分析することが必要である。

【3】数字の水増しは個別の現象だろうか。そうは言えまい。今年(2005年)の年初、メディアが報じたニュースには驚かされた。2004年の各省・自治区・直轄市が中央政府に報告した通年のGDP(国民総生産)<注2>を取りまとめた数字は、“国家統計局”が発表したGDPの伸び率に比べて3.9%も高かった。この差は2兆6582億元(約44兆1260億円)だった。今年はすでに半分以上を経過したが、この方面の状況は改善されたのか。私は楽観していない。それは目下、“数字出官(数字が役人を出世させる)”という奥義を熟知している人は少数ではないからである。少なからぬ地方では、役人の上から下までが数字のねつ造に狂奔しており、それが出世への通行手形となっている。これは非公開の事実であり、多くの幹部たちはそれを見慣れてしまっている。

<注2>中国では一級行政区(省・自治区・直轄市)のGRP(域内総生産)をGDP(国内総生産)と呼び、それらを取りまとめたものを国家のGDPとして発表している。

 上記の記事からも分かるように、“官出数字, 数字出官”は長年にわたって培われた役人が出世するための奥義であり、非公開のものだったが、陳求発はこの事実を白日の下に晒したのだった。遼寧省の経済専門家によれば、遼寧省の一部の“県”や“区”は過去に経済データを少なくとも20〜30%水増ししていた。瀋陽市周辺のある県では、2013年の財政収入は24億元(約400億円)であったが、“国家審計署”の検査後に修正した金額は11億元(約180億円)に満たなかった。また、2015年に“国家審計署”が発表した資料によれば、2013年に遼寧省“鞍山市”に属する“岫岩満族自治県”の財政収入は8.47億元(約140億円)であったが、これは大幅な水増しによるもので、実際の財政収入を127%も上回っていた。

順繰りの水増しで膨れ上がる

 この点について、腐敗に取り組む国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)」アジア太平洋地区責任者の“寥然(Liao Ran)”は、次のように述べている。すなわち、中国大陸では、役人による統計データのねつ造は、中国共産党が政権を打ち立てた時から今日までずっと存続している。高い成長を示す経済データは政務上の業績である。要するに、役人は上部機関から与えられた目標値の達成を義務付けられ、目標値をどれだけ上回ることができるかで業績を評価され、昇進が促される仕組みになっている。

 そうであれば、「馬鹿正直に正確な数字を提出するより、適当に水増しした数字を上部組織に提出して、出世コースに乗るに越したことはない」と考えるのは世の常で、水増しが露見したら露見した時のことと腹をくくり、誰もがやっているから皆で渡れば怖くないと、各地・各階級の役人が数字の水増し競争に現(うつつ)を抜かすことになる。GDPや財政収入などの業績として考慮される数字が、末端の“鎮”・“郷”から“県”、“市”を経て“省”へ報告されるまでには、順繰りに水増しされて膨れ上がり、最終的なねつ造数字が形成されるのである。

 機密情報公開サイト「ウィキリークス」は、2010年に李克強にまつわる米国務省のメモを公開した。それは、まだ李克強が遼寧省のNo.1である“遼寧省党委員会書記”であった2007年3月12日に、当時北京市で開催中であった“両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)”に参加していた李克強は米国駐中国大使館の招待を受けて、同大使館内でランド大使(Clark. T. Randt, Jr.)と会食したというものであった。

「李克強指数」以外は参考まで

 この会食の席上で、遼寧省の経済状況に言及した李克強は、「中国のGDPは人為的に作られたもので、信憑性が低い。遼寧省の経済状況を把握するには、〔1〕電力消費量、〔2〕鉄道運輸量、〔3〕銀行融資総額の3項目に重点を置いて分析すれば、比較的正確な経済成長速度を算定することができる」と述べた上で、笑いながら「その他の数字、とりわけGDPのような統計データは参考でしかない」と言明したという。これを受けて、2012年12月9日付の英誌「エコノミスト」は、上記の内容を報じ、李克強が提起した3項目の数字を中国経済分析のための「李克強指数(Keqiang Index)」<注3>と命名した。

<注3>李克強のローマ字表記は“Li Keqiang”。

 一方、“中国共産党中央委員会”の機関紙「人民日報」は2016年12月8日付で国家統計局長の“寧吉普hが寄稿した『法に基づき統計し、法に基づき統計を管理することを堅持し、統計データの真の正確性を確保する』と題する文章を掲載した。寧吉浮ヘこの文章の中で、統計データのねつ造について次のように述べている。

 『“中国共産党紀律処分条例”』は、“弄虚作假(ねつ造)”行為に対しては、直接責任者と指導責任者をその情状の程度に応じて、“警告”あるいは“留党察看(党籍保留のまま謹慎)”の処分を与えると規定している。総書記の習近平、国務院総理の李克強、同じく副総理の“張高麗”は、基礎データの質を高め、統計のねつ造を厳罰に処さねばならないと、幾度も指示を出している。それにもかかわらず、現在も一部の地方では統計のねつ造が時々発生している。これは統計法規違反の行為であり、党の思想路線に背き、最低限守るべき党規約に抵触している。

 中国の統計をつかさどる国家統計局の最高責任者が、地方政府による統計データねつ造の存在を公式に認めたのは前代未聞のことであり、「一部の地方」と言葉を濁しているが、実際は統計データのねつ造が全国的に蔓延している可能性を伺わせたのだった。

 上述した遼寧省長の陳求発による遼寧省内の一部の県や区で過去に数字の水増しによる統計データのねつ造が行われていたとの発言は、1か月前に統計データのねつ造が存在することに言及した国家統計局長の寄稿文に誘発されたものと言えるのかもしれない。

監視下ではマイナス成長に

 2016年第1四半期(1〜3月)のGDPは、遼寧省が全国31省・自治区・直轄市の中で唯一マイナス成長となり、GDP成長率はマイナス1.3%となった。なお、遼寧省の2015年通年のGDP成長率は3.0%であったが、これも全国31省・自治区・直轄市の中で最低の成長率であった。実は、2014年に“中央巡視組(中央巡視チーム)”<注4>が遼寧省を巡視した際に、すでに遼寧省の経済データに虚偽があることを確認していた。遼寧省に対する中央巡視チームによる再検査は2年後の2016年2月27日から4月28日までの2か月間行われたが、経済データに水増しのねつ造が存在することを改めて確認する結果となり、過去2年間に遼寧省が水増し分を絞り出してねつ造問題の徹底的な解決を図った形跡が全くないことが判明した。

<注4>中国共産党の“中央紀律検査委員会(党の監督機関)”と“中央委員会組織部(人事の担当機関)”が連合して設立した中央政府や地方政府による党紀違反や法律違反を査察する組織。

 上述した2016年第1四半期のGDPは同年5月26日までに遼寧省と黒龍江省を除く29の一級行政区が数字を公表していたが、当該第1四半期に中央巡視チームの検査を受けていた遼寧省と黒龍江省はGDP数字の発表時期を大きく後ろにずらさざるを得なかった。遼寧省は中央巡視チームが検査する中では、経済データをねつ造することができず、最終的には実際に近い数字を出したため、GDPはマイナス成長に転落したのだった。ちなみに、遼寧省のGDP成長率は、2016年上半期がマイナス1.0%、第3四半期がマイナス2.2%であった。2017年1月24日時点では2016年通年の各一級行政区のGDPは公表されておらず、遼寧省のGDP成長率がどうなったかは分からないが、恐らくマイナス成長からの脱却は不可能だろう。

 遼寧省では2015年に財政収入が二桁の落ち込みを示した。遼寧省長の陳求発は、2016年1月に行った「省政府工作報告」でその原因に言及した後、「我々は面子上みっともないという圧力を受けつつ、真剣に水増し分の除去に努め、2015年の財政データを確固たるものとし、2016年以降はその他の経済データも確かなものとするよう努力する」と述べていた。

 しかし、遼寧省は水増し分の除去努力を怠ったばかりか、旧態依然の“官出数字, 数字出官”の発想から脱却できなかったために、全国最下位のGDP成長率、しかもマイナスの成長率で呻吟(しんぎん)している。中国経済が下降線をたどる中、遼寧省に危機が迫っている。


このコラムについて

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」
日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/012500082/


 

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