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日本の大学教育が機能不全を起こす根本原因 単なる「卒業厳格化」だけでは何も解決しない(東洋経済)
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/445.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 2 月 23 日 16:32:30: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

      日本の学生が、海外並みに勉強する日はやってくるのでしょうか?(写真:IYO / PIXTA)


日本の大学教育が機能不全を起こす根本原因 単なる「卒業厳格化」だけでは何も解決しない
http://toyokeizai.net/articles/-/159139
2017年02月23日 雨宮 紫苑 :フリーライター 東洋経済


2人に1人が大学に進学する日本では、「大卒」はもはや決して珍しいステータスではない。しかし、就活や就職後に大卒者が優遇されることも現実だ。学問をするために進学するというよりも、「就職するためにとりあえず進学する」という学生も少なくない。大学も積極的に「就職塾」としての役割を担っていて、卒業生の就職先を「実績」として掲げている。

■卒業を厳しくするだけでは解決しない

高等教育機関であるはずの大学は、なぜここまで威厳がなくなってしまったのだろうか。さまざまな原因が考えられるが、いちばんの理由としては、「卒業が簡単である」ことが挙げられるだろう。事実、中央教育審議会による『学士課程教育の構築に向けて』という答申では、「学生を本気で学ばせるとともに、単位制度を実質化させることは、入難出易といわれてきた我が国の大学において大きな課題」とされている。

日本の大学では基本的に入学試験でふるい分けを行うので、入学後は勉強をそれなりにやっていれば、問題なく卒業ができる大学・学部が多いのが実情だ。しかし、それは大学が、中身のない空っぽの学位を学生に与えているにすぎない。だからこそ、学生にしっかりと勉強させ、大学が高等教育機関としての価値を取り戻すために、「卒業を難しくすべき」という主張は理解できる。

だが実際、「卒業を難しくする」とはどういうことなのだろう。筆者は立教大学のドイツ文学専攻を卒業した後、ドイツでも大学に入学し、日本とドイツの両方で学生を経験した。その経験を踏まえ、「卒業を難しくする」ことについて考えてみたいと思う。

卒業が難しいドイツでは、卒業を延ばしたり、中退する学生が多い。ドイツの統計局の発表によると、2014年に規定学期数(基本的には6学期)で卒業した学生は、46%となっている。また、ドイツ大学科学研究センター(DZHW)の統計では、2010年の学士の中退率は28%だった。つまり、最低在籍期間で卒業するのは2人に1人以下、中退者は4人に1人以上もいるのだ。

これに対して日本はどうだろう。文部科学省の統計では、2007年は78.1%の学生が規定学期数で卒業、2012年の中退率は2.65%となっている。大学に入学した8割弱の学生が、所定修業期間に卒業しているのだ。そう考えると、「卒業しやすい環境」であることは間違いない。逆にドイツは、「卒業しづらい環境」といえる。取得単位数を考えても、立教大学ドイツ文学専攻の場合、卒業要件は124単位だったが、入学したドイツの大学は180単位となっていた。それだけでも、卒業のハードルが高くなる。

■ドイツの学生生活はシビアなものだ

ドイツの大学での授業の様子も紹介しておこう。筆者が所属していた学部は、ひとつのモジュールに対し、講義とゼミナールがセットになっていた。たとえば「EUの政治の仕組み」というモジュールなら、月曜日の講義で「EU議会」について学び、水曜日のゼミで「EU議会の問題点」について話し合う。ゼミでは、学生がプレゼンテーションをして、それに対し議論する。

授業にある程度慣れたらバイトをしようと思っていたのだが、すぐにそれは甘い考えだったと気づいた。言葉の問題ももちろんあるが、とにかくやることが多いのだ。ゼミは週3回あったが、議論に参加するために、毎回大量の資料を読み込んでいかなくてはいけない。講義も、テスト前にまとめるには量が多すぎるので、つねにある程度理解している状態を維持しなくてはいけない。グループワークやプレゼン、学期内リポートなどで、頭はつねにパンク一歩手前の状態だった。

単位の取り方も、日本とは違う。日本では、講義とテストやリポートがセットになっているのが主流だ。だがドイツでは、履修登録とテストの登録は別で、テストを受けたい学期に別途申し込む必要がある。ドイツには、同じ必修の授業を3回落とすと学籍を失うという、厳しいルールがある。たとえば、経済学部の必修である「簿記」を3回落としたら、経済学部の学籍を失い、2度とドイツ国内で経済学部に入学することはできない。そのため、学生の多くは、テスト1カ月前からアルバイトやクラブ活動を休み、さながらセンター試験直前の受験生のような「勉強モード」に入る。

また、テストの多くは、記述式だ。知識の量を測るというよりは、理解度を測る問題が並んでいる。口頭試験もあり、「州と国の役割は、ドイツ基本法でどのように定められているか」というような質問に、その場で答えなくてはいけない。期末リポートは10〜15ページの分量が必要で、しっかりと出典を明記しなくてはいけない。出典のミスがあった場合、内容がよくとも落第する可能性が高い。

プレゼンや学期内リポートの点数が悪いと、テストを受けることすらできないこともある。ドイツでは、これらをすべてクリアして、初めて「大学卒業」の肩書を手に入れることができるのだ。だからこそ、「大卒」の肩書に価値がある。ドイツの大学といってもさまざまだが、私が経験したドイツの学生生活は、このようにシビアなものだった。

だがその分、勉強に集中できるような制度が整っている。授業料は1学期300ユーロ以下(約3万6000円)が多く、家賃が格安の寮が完備されていて、学生証で地域内のバスや電車は乗り放題、博物館や美術館などでも優遇され、国からの経済支援も充実している。だからこそ学生は、「学生だから勉強しています」と胸を張って、勉学にいそしむのだ。

残念ながら、日本には胸を張って「勉強している」と言える学生は多くはない。だからこそ、「学生に勉強をさせろ」というのは、当然の主張だ。実際、横浜国立大学は大学の成績(GPA)2.0以上、山口大学はTOEICの点数を卒業要件に定めるなど、卒業のハードルを上げている大学もある。

■成績や専攻を軽んじる日本社会

しかし、学生が勉強しないのは、単に怠惰だからではないのではないか。一部の理系学部や医学部を除き、成績や専攻を軽んじる社会では、大学で勉強する必要がないのだ。なぜなら、まだまだ就職時に大学名や大卒資格を重視する学歴主義が残り、大学教育の中身自体が信用されていないからである。偏差値が違う大学の成績を比較することはできないため、大学名を重視するのは、ある意味合理的かもしれない。また、有名大学に合格した学生を評価すること自体が間違い、というわけでもない。とはいえ、大学名で学位の価値が決まるのなら、学生が「なにも入学してから必死に勉強することはない」と思うのは仕方ないことだろう。

「学生が勉強しない」ことの根本的な問題は、「学生の勉学に対する姿勢」ではなく、大学名を重視する学歴主義や、大卒であるという事実だけを採用の指標にする考え方にある。事実、偏差値という概念が存在しないドイツでは、専攻した学問と、得た成績が重視されるため、学生たちは大学で必死に勉強しているのだ。求められているのは、「学生が勉強しないから卒業を難しくする」といった、その場しのぎの対処療法ではない。「大学で勉強した内容を評価する社会」への、評価基準の本質的な変革が必要とされているのだ。

 

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コメント
 
1. 2017年2月23日 21:57:52 : Uth8eW5rTM : nMv1Hu096QY[120]
> 「大学で勉強した内容を評価する社会」への、評価基準の本質的な変革が必要とされているのだ。

ドイツでは、成績表に全国共通の点数が付く。就職時の能力は卒業した大学名では無く、この点数で評価される。
イギリスでも成績表に全国共通の評価が書かれる。
それ故、ケンブリッジ大学卒と地方の名も無い大学卒でも、能力の評価は大学名では無い。

日本でも成績表に全国共通の評価を書くようにすべきである。
そして、東大や京大の大学名よりも全国共通の評価が重視されれば、学生は今よりも真面目に勉強するだろう。

日本の大学制度には成績表に全国共通の評価を書く制度が無いと言う致命的な欠陥がある。


2. 2017年2月24日 02:45:59 : IJjjrLkBu1 : Tp0IihGPIW0[1531]
  何よりも、官庁の幹部職員らが天下り先のポストとして順送りしているような教授陣では、日本の大学が世界に並ぶ位置づけとはならないだろう。
   入るは易く、出るは難しい、という仕組みは、教授陣の質を試されるのであるから、日本の大学では変革はしたがらないのではないか。
   何より官庁というのは、守旧、前例踏襲、上意下達が至上命題であるところ、アカデミズムとはむしろ正反対の体質を持っているのであり、かつまたそれを徹底して守り抜いた者しか、再就職先を大学に選べる立場にはならないのである。
   となれば、天下り先として教授になった場合にはどのようなつまらない授業が展開されているのか、押して知るべしではないのか。
   そういう意味で、ユニークな教授陣が居ない役所の延長のような日本の大学入学は、明らかに親の無駄な投資であるように思うが、海外の四年生大学に入学するには日本の大卒資格が必要なようであり、日本人は親子共々大事な時期と資金を無駄にしている事は確かだろう。

3. 2017年2月24日 19:20:05 : Gml50uxUzo : bCqP4fQkRDc[110]
カネすべて だからいびつに 成り下がり

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